オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2008.08.13

「楽しかったか?」
 シイナの問いかけに、ララクセルズは素直に頷く。
 収穫感謝祭は二日にわたって開催された。ララクセルズも一晩プロンテラに滞在して、その二日間を大いに満喫した。シイナは二日目も大聖堂の出し物である舞台に出演していたから、それも再び見に行った。シイナは来るなと言っていたが、準備に追われている隙に客席に潜り込まれてしまうのだから、止めようもない。もちろんソルダムとコーラスも一緒だった。
「まあ……もういいや」
 見られてしまったものはしょうがないと、シイナは諦めのため息をつく。
 これはこれで楽しかったと言えなくも……ない。
 シイナは広場のベンチを見つけて、そこに腰かけた。ララクセルズもそれに続く。
「ララク、ほら」
 シイナは、ララクセルズの目の前に、小さな青い箱を差し出した。幅20cmほどの、宝箱のような古めかしい箱。
「なんだ?」
「これは一部のモンスターが時々持っている箱でね。彼らは自分で気に入りのものをこういう箱に入れて取っておいてるらしいんだ。彼らの感性もそれぞれでさ、まあ大抵、箱の中身はガラクタだったりするんだけど、まれに、凄まじく高価な物が入ってるときもあって、討伐でこの箱を手に入れると、結構な高値で取引されるんだ」
「ええー?」
 箱は、開けてみなければ中身がわからない。
 高い金を出して、ガラクタを掴まされたとしたら損ではあるが、もしも高価なものが入っていた場合に、買値の何倍もの儲けが出ることもある。もちろん、自分で使用するという手もあるだろう。
 つまりが、当たりが出たらラッキーというギャンブル感覚なのだ。
「感謝祭だからね。それは、一応感謝の印。いつも色々、ありがとう」
「え、色々って……」
 ララクセルズは、キョトキョトと箱とシイナを見比べる。
「色々は色々だよ。それはオレが修道院跡地で拾ってきたやつだからさ。遠慮せずに受け取っておきなよ」

 いつも色々、なんて。
 感謝なんてされるような事をやっているかな、と、ララクセルズは思う。
 それに。

「あ、あのさ」
「うん?」
 あのさ、と言ってしまってから、後悔する。
 でも今一番、聞いておきたいことでもあった。
「シイナはその、オレと一緒にいて窮屈だったりしないのか?」
「窮屈?」
「えーと、ソルダムとコーラスが、シイナはひとりでいたがってた、みたいなこと言ってたから」
 遠慮がちなララクセルズの言葉に、シイナはああ、と苦笑する。
 またあいつらは余計な事を、とでも思っているのかもしれない。
「ま、あいつらの言ったそれは間違いではないけどさ。……ん、前に、修道院跡に単独出かける理由ってのは、言ったことがあったかもしれないけど」
 それ以外にも理由はあってね、と、シイナはララクセルズから視線をはずして、賑わう広場へと目を向けた。
「ちょうど君と出会った頃。あの時は、オレも自分の存在意義みたいなのを模索しているときだったから」
「存在意義?」
「うん。オレにも以前は、一緒にモンスター討伐に出かける相棒みたいなヤツはいたんだよ」
 ソルダムとコーラスに、そのことは聞いた。
 その詳細を、隠すこともなく話してくれようとするシイナに、ララクセルズは黙って頷いた。


 彼は、魔法を得意とするウィザードで。
 大魔法も平然と駆使する素晴らしい技の持ち主ではあったけれど。
 それ故にか、個性的かつ繊細な精神の持ち主でもあって。
 あまり他と馴染めないというか、極端を言ってしまえば、この世の中自体と馴染めないような、そんな印象を他に与える人でもあった。
 偏屈で、我儘で、でも正義感は強くて、けれどわが道を行くその精神は、多くの者には理解され難い。我儘であるがゆえに、理解されようと努力もしない彼の心は、どんどん世界から置いて行かれる事となり。
 それでも理解し合っていると思っていたシイナに、彼は別れを告げた。
「多分、今度オレが傷を負ったり死にかけたりしたとしても、お前の魔法では治癒することができない」
 彼はシイナに、そう言った。

 モンスター討伐は、命懸けだ。
 危険と隣り合わせだからこそ、プリーストの治癒能力は必要不可欠である。

 けれどそれは、生きようとする意志があればの話。

 シイナがアインブロックでシドクスを助けることができなかったように、生きる気のない者、生きる力のない者に、聖職者の治癒魔法は効かない。

 彼は、自分がいつ死んでしまってもかまわないと、シイナにそう言ったのだ。
 世界も自分も、もうどうでもいいのだと。
 彼は、全てを棄ててしまっていた。
 だから、そんな自分の姿を見せるのも、そんな自分にシイナが巻き込まれるのも本意ではないからと。
 シイナは「そうか」とだけ言った。止めようもなかった。

 その日を境に、彼はシイナの前から姿を消した。
 その後、彼を見たという噂すらも、一度も聞くことはなかった。


「今ではもう、どこかで死んでいてもおかしくはないよね」
 クスクスと困ったように笑うシイナ。
「……」
 ララクセルズは言葉がみつからない。
「オレはずっと一緒にいながら、彼が世界に絶望していくのを止めることができなかった。すべてを捨て去ることを留まらせる、足枷にすらなれなかった。――その程度の、相棒だった」
 彼が一番心を許していたはずのシイナ。そのシイナですら、彼を止めることはできなかった。
 自分がどんなに強く誰かを思ったとしても、何も変えることができないなら。
 足枷どころか、邪魔にしかならないのではないか。
 そんな自分が、誰かと共にあることに、意味なんかないんじゃないのか。
「シイナ!」
 思わず叫ぶララクセルズに、シイナは笑いかける。
「わかってるよ。極論だ。どうしようもないことって、誰にでもある。そしてそれが、自分の価値にすべて繋がるわけじゃない。生きていくのに理由なんてないかもしれないけど、理由を見出すことだって、絶対にできないってことじゃない。今は、そう言える」
 そう、言えるようになった。
 ララクセルズに会って。
 だから、その出会いに、シイナはとても感謝しているのだ。

「それ、開けてごらんよ」
 シイナは、ララクセルズが手に持つ箱を指差して促した。
 ガラクタがほとんどだけどね、と笑うシイナに、ララクセルズも笑みをこぼし、箱の蓋に手をかける。
 どんなものが出てくるのかとほんの少しわくわくしてしまい、なるほど高値で取引されるわけだと納得する。

 開いた箱の中には、一輪の花が入っていた。

「……うわ」
「ははは。本当に見事にハズレだ」
 何の変哲もない小さな花に、シイナは笑う。
「でも、結構かわいい花だぜ?」
 ララクセルズも笑いながら、その花を箱から出す。根もないたった一輪の小さな花が、この箱の中で今まで生きていたのは不思議だ。
 視界を彩る、明るいオレンジ色の花。
 大した価値もなくてゴメンな、と、さして申し訳なさそうでもなく言うシイナに、しかしララクセルズはありがとう、と返した。
「帰るまで枯れないといいな。ちゃんと活けてやろうぜ」
 律儀なヤツだな、と、シイナはまた笑う。
 生きていくうちには色々とあるけれど、この笑顔は本物なんだよな、と、ララクセルズは、そう思った。
 それが自分と出会ったせいであると、シイナが言ってくれるのなら。
 その思いにこそ、感謝を。
 そしてこれからもずっとそう思ってもらえる自分であり続けようと、そんな風に、思った。


 しかし、ララクセルズが持ち帰ったこの花。
 これが、意外なほどの生命力だった。
 一輪だけ差した花瓶の中で、いくつかの花をつけ。茎の半ばから、小さな根までもが姿を現した。
 それを見たララクセルズが鉢に植え替えると、それはしっかりと土に根付き、数を増やして。
 アインブロックの、決してきれいではない空気の中でもすくすくと育つ強い花を、もう少し増やしたら、街の人にも分けてあげようと、ララクセルズは考えていた。

 それは、シイナがララクセルズに感謝する気持ちのように。
 アインブロックという街を愛する気持ちのように。
 少しずつ街の中へと広がって行き。


 埃と煙に包まれるこの街に、いずれ、たくさんの花を咲かせるのだろう。





==椎名の呟き==
長いわ!
いつもの倍だわ!
途中で切ろうかとも思いましたが、なんか半端なので、一挙掲載と相成りました。
というわけで『感謝祭』もこれで最終話となります。なんつうか、半端感が否めませんが、終わりです! お付き合いありがとうございました。
青い箱はねー。本当に花が出た時の実際のガッカリ感ときたら(笑)。
小さな箱の中から、時折槍だの鎧だのが出てくる不思議(笑)。

次回作は、ROはお休みしてオリジナルに戻ろうかなとか考えてたんですけどね。
予定は未定というか、ある程度の骨組みはあるんですけど。
ちょっと、お休みをいただくかもしれません。ちょっとだけね。

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



スポンサーサイト
2008.08.06

 ベタな大団円で、物語は幕を閉じる。
 女性聖職者のナリで奔走していたシイナが最後のシーンでまとっていた衣装は、純白のウェディングドレスだった。
 言わずもがな、聖騎士との結婚式だ。
 騎士役を演じていた彼女が、最後にウェディングドレス姿のシイナを横抱きに抱き上げるという力技をもって、この舞台の終幕とした。
 それは盛大な拍手と笑いを取った、大聖堂初の舞台となった。

「劇の主演二人が、中庭でお披露目してるって話だぞー!」
 劇が終わってざわついていた客席で、誰かが叫んだ。
 叫んだその人も大聖堂の聖職者であるらしく、ノリノリな雰囲気だ。主演二人の普段の姿もよく知っているのだろう。
「格好の見世物だな……」
「気の毒に……」
 呟くソルダムとコーラス。しかし、顔は笑っていた。
「これは、見に行くしか!」
 喜び勇む二人。
 傍で見ているララクセルズは、しかし冷や汗をかく思いだった。
「黙ってこっそり観劇してたこと、バラしていいのかなあ……」

 中庭でウェディングドレス姿であくせくしていたシイナは、三人の姿を見て、一瞬で顔色を変えた。

「お、お、お前ら……ッ」

 シイナはドレスの裾を両手で掴むと、三人の方へと物凄い形相で駆け寄ってきた。
「見たなあ――――ッ!?」
「うわッ」
 その勢いに思わず半歩下がる三人だったが、シイナはまず、コーラスに狙いを定めたようだ。
 おののくコーラスのこめかみに、ぐわっと両の手のこぶしを当ててぐりぐりと動かす。
「イタイイタイ痛ーいッ」
「ララクをそそのかしたのはお前かァ――!!」
「ちがッ、オレはッ、そりゃここまで連れてはきたけど、彼は最初から痛ァ――ッ!!」
「ふうん……」
 言い訳をするか、と、シイナはクールダウンした眼差しで、コーラスを見てニヤリと微笑む。
「抱き上げろ」
「えっ!?」
 一瞬何を言われたのかわからず、コーラスはシイナの顔をマジマジと眺めてしまう。
「許してほしかったら、オレを抱・き・上・げ・て・み・ろ。非力な聖職者である彼女にも出来たことが、お前に出来ないとは言わないよなあ?」
「ば、馬鹿にするなよ」
 これでもコーラスは本物の騎士だ。相手が男であろうが、人ひとり抱き上げる事くらいは造作もない。
 シイナの意図がわからないまま、コーラスはシイナをよいしょ、と抱き上げた。
 するりとコーラスの首にまわした腕を、シイナはもぞもぞと動かし始めた。
 コーラスの頬に、首に、背中に。
「ちょっと、シイナ、くすぐった……」
「落としたら、タダでは済まないと思え」
「えぇ――――!?」
 低レベルないじめだ。言っている間にも、シイナはさわさわとコーラスの身体をまさぐる。
「やーめーろ――――ッ!!」

「…………」

 これまでシイナのこんな姿を見たことがないララクセルズは、驚きを隠せない。
 自分と接する時には、多少意地の悪い発言があったとしても、ここまでだったことはない。コーラスが「自分はいじめられてばかりだ」と言っていたが、今なら成程と納得できる。
「ま、コーちゃんはああいう役、だからなあ」
 ララクセルズの横で、ソルダムが笑顔で呟く。
「役?」
「コーラスはすーぐああやってシイナにつっかかるからな。シイナも遠慮なくあんな風にしてるけど。かといって、君やオレに対する態度が猫を被ってるのかというと、そういう訳でもなくてなー」
 ま、あれはあれでいいんだよ、とソルダムは楽しげだ。

 コーラスの腕から下りたシイナが、のそのそとララクセルズの許まで歩いてきた。
 舞台用のメイクだけは落としているが、ドレスが微妙に似合うというか、それでも笑えてしまうその姿に、目をそらすべきかどうか。
「なんだって、これだけの人の中で偶然出会っちゃうかなー」
 眉間に皺を寄せ、口をとがらせるシイナ。
 三人がここまで来てしまった経緯を、コーラスから聞き出したらしい。
「悪かったよ……でもそんなにむきになって隠すほどのことでもないじゃないか」
 それでも半笑いなララクセルズに、シイナはドレスの裾をグイ、と持ち上げる。
「ララクは自分のこんな姿、オレに見せたいと思うか!?」
「あー、それはー……」
 確かに、と笑うしかない。

「オレの時と随分な差じゃないかー。やっておしまい!!」
 怒り心頭なコーラスの声と共に、数回のフラッシュが焚かれる。
「!?」
 カメラを構えていたのは、大聖堂の聖職者の面々だ。
「ちょっと、こら! お前ら! それ寄越せ!!」
 追いかけようとするシイナの前に、大聖堂室長であるテルーザが歩み寄った。
「これは大聖堂の歴史の一端となるイベントの記念ですから」
 にっこりと微笑むテルーザの後ろから、騎士の扮装をしたトリーシアも歩み出る。
 表情を引きつらせるシイナの肩をグイ、と抱き寄せ、満面の笑顔が男らしい。
「さあ、記念写真をどうぞ」
 テルーザの一声は、聖職者でありながら、悪魔の囁きのようだった。

 気の毒に……。
 このイベントを必死で隠そうとしていたシイナの気持ちが、少しだけわかったララクセルズだった。





==椎名の呟き==
ミッドガルドにカメラってあるのかなーと思った椎名ですが、アインブロックの空港にいたキリシュとか、記念撮影に応じてくれたりしたから、あるんだろうなと(笑)。
次回でこのお話最終話にできますかね。
一応その予定なのですが、今のこのお話書き下ろしなので、はみ出たら持ち越しになりそうなんですけど、どうだろう(ぇー

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.07.30

 街道を埋め尽くす露店を冷やかしながら歩いていたソルダムが、一点を指差した。
「ほら、あそこ」
 指さした先を、ララクセルズは仰ぎ見る。
「あそこがプロンテラ大聖堂」
 あそこの礼拝堂で、劇の発表をするんだよと、ソルダムは笑う。
 礼拝堂で劇の発表とは。プロンテラ大聖堂が個性的なのか、それともどこの教会もそんなものなのだろうか。ララクセルズには判断できかねるところだったが。
 しかし。

 荘厳な大聖堂の佇まい。
 大聖堂に限ったことではないが、この国のこんな神聖な建物群を見ていると、この国に溢れ返る法力だとか、シイナの振るう魔法の力の源となる『何か』の存在も、感じ取ることができるような気がする。

 大聖堂の入り口で、柔らかな笑顔のシスターから劇のパンフレットとかいうものを受け取る。
 コーラスが、それを見て首をかしげた。
「神聖なる地、ミッドガルドの神の御許で繰り広げられる、愛と正義あふれる大逆転劇……だって」
「やけにスペクタクル活劇っぽいコピーだなあ」
 ソルダムも覗き込むが、ククク、と含み笑いをする。
「ま、なんだかんだで大聖堂の連中って、変わってるからなあ」
 ……そうなのか。
 何であれ、この出し物にシイナが関わっているということで、それがどんな風であるのかは、三人とも大変に興味がある。
 礼拝堂に設えられている椅子に腰かけて、劇の始まるのを待つ。まだ幾分か時間はあるようだった。


 客席側の明かりは落とされ、臨時で作られた壇上に光が射して舞台が始まった。

「……え」
「ぶ……ッ」

 一瞬、何が始まったのか、わからなかった。
 何やら魔物の脅威に怯える村のエピソードがナレーターの声で告げられ、それに合わせてぞろぞろと登場してきた、村人役の人々。
 そこに、違和感があった。
「えーと」
 村の女性役と男性役。全てが、逆だった。
 つまり、男性の役を女性が、女性の役を男性がやっていたのだ。
「なんだこれ……」
 ララクセルズは思わず口を半開きにしてしまったが、会場のあちこちからも、笑い声が聞こえてきた。
 男性役をこなす女性の方はともかく、女性役をこなす男の方はどうしても違和感を隠せないというか、すでに滑稽でしかないのだ。
 これは……どうしたものか。
 大聖堂がまさかこんな、お笑いを目指していたとは。
 大逆転劇とは、まさにそういう意味だったのか。
 笑い声が、おお、と、感嘆の声に変わる。もちろん笑いを含んだものではあるが。

『聖騎士の名において、私が指揮を執る者となろう!』

 長い黒髪を揺らして登場した、騎士の正装をまとった人物の、高いながらも精悍な声。
 その騎士の役をこなしているのも、女性だった。その細い身体と高い声は女性特有のものだが、もともと美人なのだろう、身長も高くて男装が似合い、格好良いと言ってよかった。
 この騎士役の女性を中心に、話は進んで行くようだ。きっと彼女扮するこの騎士が主人公なのだろう。
「これって……もしかして」
 呟くララクセルズの声に、頷くコーラス。
「このノリでいくと……」
「そうだなー」
 ソルダムの声がやけに楽しそうだ。

『私も、共に行きます!』

 どわっはっはっは!
 ひと際高くなる客席の笑い声。
「……………………」
「……クッ」
「し、シイ……」
 女物の聖職者のドレスをまとい、登場したシイナ。
 展開は予想できていたが、まさか、ヒロインで登場してくるとは。
 呆気にとられたララクセルズも、自然と身体が震えるのを止めることができない。笑いたい。しかし笑っていいものか。でも笑わせるのが目的なのだろうし。そうでなければこの滑稽な配役の意味がわからない。
 会場での笑い声も、他よりも豪快な反応を見せている一角は、どうやら舞台では仕事のない聖職者の集団らしい。
 なるほど……シイナが見せたがっていなかった理由がわかった。

 身長は、シイナは確か170cmほどはあるはずだが、主人公の女性との釣り合いは取れている。女性側が、高いヒールの靴で底上げしているのだろう。素で165cmくらいあればなんとでもなる。
 見た目は悪くないが、あくまでシイナは男だから、それを知ってしまっていると違和感は隠せない。が、確かシイナは以前、度々女に間違われるというようなことを言っていたような気もする。なるほど納得だ。
 それから、それで……。
「だ、だめだ」
 どんなに考え事で気を紛らわそうとしても、舞台上のシイナの姿を視界に入れてしまうと、集中が途切れてしまう。
「笑ってもいいんじゃねーのー?」
 ソルダムに肩を叩かれた。
 コーラスは、すでに腹を抱えている。

「はは……はははははは」
 遠慮なく楽しんでいる二人に挟まれて、ララクセルズもとうとう、こみあげる笑いに身を任せることになってしまうのだった。





==椎名の呟き==
今再放送している鬼嫁日記が気の毒すぎて、集中できませんでした……(´Д`;)
そして某新聞屋に「いらないって言ってんの。わかんない? 聞こえない? しつっこいよ?」と断りを入れるのにいらん労力を使いました……。
そして注釈ですが、シイナの女ものの衣装はオリジナルです。決して女プリーストの衣装ではございません。
いくらなんでもあの巨大なスリットとガーターベルトは 無 理 です。
(ていうかROの女プリーストって一体)

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.07.23

「ああ~、君かあ」
 ララクセルズが二人の男に声をかけると、そのうちのひとり、シイナと同じハニーブロンドの男が陽気に笑った。
 君か、と言われたララクセルズの方は、何の事かと目を丸くするしかない。
「シイナがアインブロックに引っ越して、誰かと同居してるって聞いてたからさ。いつもひとりで飄々とどこでもほっつき歩くシイナには珍しいなと思ってたんだけど」
 にこにこと笑う金髪に、黒髪の騎士らしい格好をした少年がうんうんと頷く。そしてずい、とララクセルズに迫ってきた。
「お前、シイナと暮らしてて大丈夫か? 遊ばれたりいじめられたりしてないか?」
「いや、それはないよ……どっちかというと優しいヤツだと……」
「ええー!?」

 なんだ。なんなんだ。

 シイナを知っているらしい二人組がいたから声をかけたララクセルズだが、この二人は想像以上にシイナと関係の深い人間なんだろうか。
「シイナにそんな扱いを受けてるのはお前だけだよ……と、ごめんな。オレはソルダム。こっちがコーラス」
 金髪の、この人は、鍛冶屋か何かだろうか、アインブロックのブラックスミスギルドの連中と似たような雰囲気を持っている男が、自分と騎士を交互に指さす。
 彼がソルダムで、こっちの騎士がコーラス。
 ララクセルズも自己紹介をすると、双方から同時に握手を求められ、両手が塞がった。面白い連中だ。
「オレたちは幼馴染……ってほどでもないが、結構昔からツルんでてね。一緒に旅することも少ない、たまに街で顔を合わせたりするだけなんだけど、なんか腐れ縁。つかず離れずで仲良くやってるよ」
「オレはあんまり仲良くないぞ! あいつはオレの顔を見れば小突くかいじめるかばっかりでさ! なんでソルダムはいじめられないわけ? ズルいじゃん!」
「お前のそういうところがな~」
 テンポのいい会話。
 確かに、この打てば響くような反応の良さは、なんとなくいじめ甲斐がありそうというか。しかし、シイナが誰かをからかったりいじめたりなんて、あんまり見たことがないから、ララクセルズには意外だ。
「お互いひよっこの頃、プロンテラで知り合って以来だから、本当に長いよ」
 そう言った後で、ソルダムはじっとララクセルズを見つめる。
「……?」
「君が、ね。ふうん……」
 なんだ。何が言いたい?
 ララクセルズは、ソルダムの瞳を見つめ返すしかできない。
「怖いもの知らずなんだな。それと、勇気と行動力を持つ人。きっと、シイナの拒絶もものともしないで、シイナの前に立ちはだかったんだろう」
 ソルダムの言葉に、シドクスの一件を思い出す。
 あの時、シイナの言うとおりにその関係を断ち切っていたなら、今の自分たちはなかったかもしれない。ソルダムの言っているのは、そういう事だろうか?
「感謝しているんだよ。相棒だったヤツと離れて以来、シイナはあんまり人と深く関わりたがっていなかったから」

 相棒?

「オレたちは腐れ縁だけど、なんかそういうのは別問題だもんなー。生活していく上での相棒とか仲間とか、お互いそういう風にはなろうとしてないっていうか」
 首を傾げて考えながら言うコーラス。
 はた目から見てこの三人の関係というのは、一見ではわかりにくいが、当人たちも良くわかっていないのかもしれない。
「相棒だったヤツと離れてって?」
 先ほどの言葉をそのまま反芻するララクセルズに、ソルダムは一瞬目を見開いた。
「聞いてないのか」
 頷くと、ソルダムは顎に手を当てて考えるしぐさをする。
「……まあ、聞いて面白い話でもないし、あいつ自分からはそういう話しないからなあ。オレもあいつ自身からは、かいつまんでしか聞いてないし」
「オレがソルダムからその話聞いたのも、シイナが初めてアインブロックに出かける少し前くらいだったけど、実際は結構前の話みたいだしな。オレたちそんなに頻繁に会うわけでもないし」
 オレにはそんな話振る素振りもないし、とむくれるコーラス。
 何か、のっぴきならない事情があって離れた相棒がいた、ということだろうか。それ以来、誰かと関わることを避けてきた?
 あの時シイナに拒絶されたのは、事件が事件だったしと納得していたが、それ以外の理由もあったのかもしれない。
「まあいいじゃん。シイナ自身、別にその話隠したいと思ってるわけじゃないみたいだぜ? そういう嫌な話はさー、どんどんさせちゃえばいいんだよ。よっぽど口外できない話じゃない限り、どんどん口に出して昇華しちまった方がいいに決まってるじゃん」
 あっけらかんと言うコーラス。
 暢気そうに見えるが、色々考えてるんだな、と思う。なんだかんだと文句は言っているようだが、やはり仲はいいのだろう。
「まあその内聞いてみるといいよ」
 その言葉には、ただ頷いて見せるララクセルズ。
 そんな折があれば。話せるのであれば、聞いておくのも悪くないとは思う。

 と、それよりは。
 この二人に声をかけた目的を忘れそうになっていた事に気づいて、ララクセルズはそうだ、と呟いた。
「大聖堂って、どこにあるのかな。オレシイナの劇見たいんだけど」
「ああ……場所、聞いてないのか?」
「ていうか、シイナがオレには見せたくないらしくて、話題に出さなかったから。こっそり見ちまえばいいかなと思って」
 ララクセルズの言葉に、二人はアハハハ、と軽快に笑う。
「やっぱりか! あいつ、オレたちにも何も言わないんだよ。大聖堂の連中から噂には聞いてたけど、やっぱ気になるよなあ」
 ソルダムの言葉に、コーラスも乗っかってくる。
「オレたちも、こっそり見ちまおうかなって、これから向かおうと思ってたところ。どうせだから一緒に行こうぜ!」
 考えることは皆一緒らしい。
 これは確かに、渡りに舟だったらしい。

 心強い仲間を得て、ララクセルズも笑顔で頷くのだった。





==椎名の呟き==
シイナとソルダムとコーラスの描き分けが上手くできない……。
中身が同一人物なんだから仕方がない……。
IDが一緒の三人だから、同時に世界に存在できません(ひとりずつしかログインすることができない)。
そもそも一緒に狩りなんてできるわけがないんじゃー(どんがらがしゃーん)。

三人どころか、ララクも含めて、誰がしゃべってるんだかわからないですよねー。あらためて。
要修行だあ……。

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.07.16

 収穫感謝祭当日。

 アインブロックからプロンテラへの移動は、シイナのワープポータルでの移動も可能だったが、二人はあえてそれは使わず、シュバルツバルドとルーンミッドガッツを繋ぐ飛行船を使った。
 時間も金もかかるが、その方が観光気分を満喫できるというものだ。
 主に飛行船のターミナルで仕事をしているララクセルズは、しかし自分は実際に飛行船に乗ったことはなかった。他の街や他国に移動する用事が無かったのだから仕方がない。
 空を飛ぶ乗り物の珍しさに、ララクセルズはあちこち眺めて回る。
「凄いよなー、これ。落ちたりしないのかなー」
「ターミナルの案内員とは思えない言葉だな」
 ララクセルズの言葉にシイナは苦笑し、まあ落ちる時は落ちるんだろうけどね、などと意地悪な事も言ってみる。それでララクセルズが動揺して騒ぎ立てるようなこともなかったが。

 飛行船を国内線から国際線へと乗り換え、その国際線が降り立つのが、プロンテラの衛星都市となる、イズルードだ。海沿いにある小ぢんまりとした都市だが、ここも感謝祭の賑わいで、いつもよりも人出も多く華やいでいた。
 首都プロンテラへの交通手段はないが、歩いてすぐの、隣接した都市だ。イズルード自体がそんなに巨大な都市ではない。隣町、といった感覚だ。
 以前訪れたゲフェンとは趣が違うが、相変わらずの自然豊かな景色と空気のよさに、ララクセルズは感嘆した。
 吹き抜ける潮風の匂いも、はためく万国旗のような祭り用の派手な飾りつけも、アインブロックでは感じたことも見たこともない。色とりどりの新鮮な収穫物も、目に鮮やか過ぎて眩しいほどだ。
「プロンテラはもっと派手だぜ」
 苦笑するシイナが、なぜ苦笑しているのか一瞬わかりかねたララクセルズだが、すぐに眉根を寄せてシイナを睨みつけた。
「田舎者とか思ってるんだろ」
「そんなことはないよ。シュバルツバルドのリヒタルゼンなんかと比べれば、プロンテラだって充分に田舎の域に入るんだろうし」
 リヒタルゼンを訪れたことはないが、近代文化の象徴であるような華やかな都市だと、シイナも聞いている。
 ただ、シイナのようにあちこちを旅してまわっている訳ではないララクセルズの反応が新鮮すぎて、面白かっただけなのだ。
「ほら、もうすぐプロンテラだ」
 シイナの言葉通り、その景色は徐々に、彩りを増してきていた。

 そこは首都の名にふさわしい、荘厳で華やかな都市だった。

 計算しつくされた幾何学的な模様の石畳や、煉瓦を基調とする街並み。シュバルツバルドの大統領制とは違い、ルーンミッドガッツは王制であるから、街の北側には巨大な王の城も鎮座している。人も建物も数はアインブロックの比ではないが、排煙もないから、空気は全然悪くない。甘い果物や花の匂いで溢れかえる、美しい街だ。
 普段はそうでもないらしいが、今日はお祭真っ只中という事で、あちこちで臨時のバザーがひらかれ、大道芸人の姿も見えた。それぞれの団体が、それぞれの個性を駆使してさまざまなイベントを用意しているらしい。
「綺麗な街だな、ここは……」
「うん、そうだね」
 ララクセルズの感嘆の言葉に、シイナもいらぬ謙遜をすることもなく頷く。
 誰が暮らすどこの街にも、それぞれの良さがある事がわかっているから、それを素直に認めているだけだ。

 シイナに案内されて見た、騎士団の模擬戦も、臨場感たっぷりで白熱した。
 弓手村主催という的当てや、商人組合の渡来品バザーも楽しかった。
 これが、祭というものか。

 個人の出す収穫物の臨時販売を眺めている時に、シイナがチラリとララクセルズを見て切り出した。
「そろそろ、オレ行かなくちゃ」
 できるだけ無難に切り出したシイナに、ララクセルズも戸惑うことなく頷く。
「ああ、そろそろイベントの時間なのか」
 追求されることなく頷いてくれたララクセルズに安堵したシイナが、大きな噴水を指差す。
「あれがこの街で一番の目印だから。あそこで二時間後に待ち合わせな。あそこなら、もしどこかで迷っても誰でも知ってる場所だから、誰かに声をかければ連れてきてもらえる」
 劇の所要時間は一時間ほどらしいが、色々準備があるらしく、シイナは二時間と指定した。
 わかったと頷くララクセルズに手を振って、それ以上の追求を許さないように、シイナは走り去ってしまった。
 感心するほどに早い。

 ――さて。

 あの様子では、シイナは本当にララクセルズの企みに気付いていないのだろう。
 あれほどシイナが隠したがるほどに楽しいイベントが待ち構えているというのに、ララクセルズが素直にシイナの言う事を聞いて大人しく待っていると思っているのだろうか。
 そこがシイナの敗因だ。

 ララクセルズは、誰かに大聖堂の場所を尋ねようと、辺りを見回した。
 地元なら誰でもおそらくは大聖堂の場所くらい知っているだろうが、この地に慣れない観光客も多いだろう。
 逡巡してうろうろしていると、雑踏の中からはっきりと聞こえる声があった。
「シイナ、大聖堂の劇に出るんだってな」
「うん、本人から聞いたわけじゃないけど」

 シイナの知り合いか!

 渡りに船というべきか。運がいい。
 シイナという名前は多いだろうが、大聖堂のイベントに参加するシイナというのはおそらくひとりしかいないはずだ。

「あの、ちょっと!」
 ララクセルズは、シイナの名前を出した二人の男に向かって駆け出した。





==椎名の呟き==
彼らと彼の邂逅です。やっと出番がまわってきた彼らです。
(Beautiful Worldの最初にしか出てない気の毒な彼ら)

個人的にクリティカルヒットな出来事があって茫然自失であった椎名ですが、なんとか頑張ってます。ははははは。
いえ、諸兄にご心配をかけるような出来事があったわけではないのでご安心を、と申しておきますが。

ただ単に、半年しか使っていないPCのマザーボードがオシャカになっただけですから。ええ、ええ。
(死)

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.07.09

 アインブロック、ララクセルズとシイナの暮らす家。
 ソファに深く座ったシイナがついた微かなため息に、ララクセルズは振り返った。
「どうした?」
 うっかりした。ため息をついているつもりはなかった。お茶をひと口すすって軽く吐いたつもりの息が、ララクセルズにはきっちりため息と認識されてしまったらしい。
 シイナは両手で持っていたお茶のカップを、さりげない仕草でテーブルに置く。
「ああ、いや」
 笑顔で返すも、シイナは困惑を隠せない。
 頭にあったのは、収穫感謝祭の事だ。
 まさか、あんな展開になるとは思っていなかったから。
 自分から誘っておいて、今更収穫感謝祭の話を無かった事に、なんてあまり言いたくはない。言いたくはないのだが。
「ララク、感謝祭の事だけど……」
「ああ、それならちゃんと休みとれたぜ!」
 ララクセルズ、笑顔全開。

 ……ああ……。

 やっぱり今更無かった事に、なんて言えない。
 そもそも、感謝祭自体が駄目になったわけではないのだ。案内するのも、さして問題はない。今更取りやめにする理由なんて、実はあまりない。
 ただ、どうしても。
「あ、あのさ。当日オレ、大聖堂の方のイベントがひとつ入っててさ、それの手伝いで、どうしても二時間くらい、時間取られちゃうんだよ」
「へえ?」
「その間、ひとりにしちまって平気かなって……」
 大聖堂の出し物、それは、劇の公演。
 そう、シイナが大聖堂で室長に打診されたのは、その劇への出演だった。トリーシアが主演となることだけが決まっていた、劇の出し物。そのトリーシアの助演として。まさか、自分が指名されるなどと、思ってもいなかった。
 あの内容を、ララクセルズには見せたくない。シイナが避けたいのは、その一点だけだった。要はそのイベントさえ、ララクセルズをやり過ごせれば、それでいいのだ。
 そう、他は何の問題もない。
「イベントって? 何だ?」
「ああ、ちょっと……劇を……」
「劇? シイナも出るのか?」
 劇と聞いて、ララクセルズは嬉しそうに食いつく。
「え、いや、そういうわけじゃ、……」
 シイナの返事は歯切れが悪く、ついでに表情にも出ている。
「……? でもなら別に、お前が劇の手伝いやってる間、オレはその大聖堂の劇を見てればいいだけじゃないか?」
「そ……ッ!」
 それが、困るのだ。

 とにかく、ララクセルズにその劇を見せたくないのだ。

 だったら劇をやるなどと言わなければいいのだが、何をやるのだと聞かれて、具体的な嘘はつきにくい。それに、その嘘がもしもバレた時に、多分ララクセルズは怒るだろうし。
 大体、普段の収穫祭は皆で育てた農作物や衣料品をバザーにだしたりとか、そんなことばかりやっていた大聖堂のくせに、何で今年に限って劇なのか。
 ここに至って心の中でだけ悪態をついてもはじまらない。
「劇なんか見たって面白くないぜ? 神様の恵みがどうとかいうつまらないものだし、大聖堂の有志だから、本物の舞台とはレベルが違うし」
 シイナ、必死だ。
「で、お前出るのか?」
「え、や、いや……少し、かな……」
「へ~」
 大体のところを、ララクセルズは理解した。
 おそらくシイナは、その劇にがっつりと出るのだろうと。そして、それはとてもララクセルズに見せたくないような内容なのだろう、と。
「大聖堂が劇をやってる間、他が何もやってないわけじゃないんだろ?」
 ララクセルズの言葉に、シイナはうんうんと頷く。
「だったら別に、その時間くらいその辺を見ててもかまわないけどさ。オレはプロンテラの街をよく知らないから、待ち合わせの場所だけちゃんと決めててくれれば」
「そうか……そうだな」
 あからさまに、ほっとした表情を見せるシイナに、ララクセルズは悪びれない笑顔で返す。

 何も、どうしても劇のことをごまかしたいらしいシイナに、ララクセルズが気遣って優しさを見せたわけではない。
 要は、黙って見てしまえばいいだけなのだ。
 これほどに見せたくないものを見たい見たいと連呼しても、シイナはどんどん深みにはまってしまうだけだろうし、そこから喧嘩に発展してもつまらない。あげくに、土壇場にきて病欠でもされた日には。もっとも、ララクセルズに見せたくないという一心だけで、そんな無責任な事をする男ではないと思ってはいるが。

 これはちょっと、楽しみかもしれない。

 この話は打ち切りとばかりに再びお茶に手を伸ばすシイナを尻目に、ララクセルズは隠し切れない笑顔を覗かせるのだった。





==椎名の呟き==
騙しあいですか、あなたがた。
シイナの、演技力とかはどうなんでしょうねー。舞台なんて懐かしいなあ。
(椎名さん、はるか昔の高校時代は演劇やってました)

それと、全然関係ないお話。
某友人との会話を受けて、ひぐらし数話とデスノの最終話をアニメで見たりしました。
(ちょっとそんな話題が出たので)
ふ~む~~。やっぱり、アニメよりも原作のが遥かに き っ つ い なあ(笑)。
凄惨シーンがあるってわけじゃなくてねー、心理的にきっつい作りになっていると。やっぱり、この辺全部アニメにしちゃうと、色々と問題があるんだろうなあ。時間の調整も難しいだろうし。
ひぐらしの滅菌作戦時の隊員の心情あたりと、デスノの月死亡後の松田たちの後日談とか、あの辺は入れてほしかったな~とか。月の死に様も、アニメも悪くは無かったけど、原作のほうが納得はできたかも。あまりにも無様で。
大分今更な話ですが(笑)。

★『感謝祭』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.07.02

「休み?」
 自分の言葉をオウム返しにしたララクセルズに、シイナは頷いた。
「うん、今すぐじゃないけど、週末に二日くらいまとめて取れないかなって」
「それは調整すれば何とでもなるけど……」
 ララクセルズの仕事は交代制だ。そこそこ定期的に休みは回ってくるが、必ず同じパターンでシフトが回るという事はない。が、最近はそれほど忙しくない事もあって、休みを取るのは難しくない。
「けどなんでだ?」
 当然の質問に、シイナも淀むことなく答える。
「ふた月先に、プロンテラで収穫感謝祭があるんだよ。それで色々な出し物もあって、結構なお祭り騒ぎになるからさ、たまには観光してみるのもいいかと思ったんだけど」
 シイナの言葉に、ララクセルズはへえ、と目を丸くする。
 シイナの出身であるルーンミッドガッツの国には、シイナのワープポータルに乗って一瞬足を踏み入れた事しかない。確かそこはゲフェンとかいう土地だったっけと思う。あの時は一時話をしただけで、どこを見て回るでもなく帰ってきてしまった。
 今更だが外国からひとっ飛びなんて、魔法の力は偉大だ。
 あの都市も随分華やかで、豊かなイメージがあったが、あそこはシイナの生まれた首都よりも、随分静かなんだと言う。
 雑音的なうるささで言えばアインブロックも負けてはいないが、人が賑わい昼も夜も活力に満ちているという首都プロンテラに、いつかは訪れてみたいと思ってはいた。
 シイナの生まれ故郷でもあるし。
「それなら別に大丈夫だよ。二日や三日くらいの休みなら、すぐに取れる」
 収穫感謝祭とはどんなものなんだろう。ララクセルズには経験がない。
 楽しみだなと笑うと、シイナも同様の笑みを返してきた。

 今から一番近いお祭りである収穫祭。プロンテラを観光として巡るなら、ちょうどいい時期だとシイナも思っていたのだ。
 賑やかなあの街を一緒に歩いて案内できそうだと、シイナも嬉しく思っていた。


 が、現実はなかなかそうは上手くいかないのである。


「シスター・テルーザ、それは……」
 シイナは苦虫を噛み潰したような顔で室長の顔を見つめる。
 プロンテラ大聖堂、室長室。
 収穫感謝祭ではそれなりにどこも何がしかのイベントを用意しているもので、大聖堂も例外ではない。だから、そこに所属しているシイナも、そのイベントでは協力を余儀なくされる。
 それはいい。
 それだけなら、予想のうちというか、多少の仕事はあるだろうなと漠然と思ってはいた。
「しかし室長、それは私ではなく、だれか別の人間のほうが……」
 心底嫌がっている素振りを隠そうともしないシイナの言葉を、室長テルーザはぴしゃりと遮った。
「このイベントを担ってくださるプリースト・トリーシアの指名です。ですからこれは、大聖堂の総意でもあります」

(総意って、みんなここぞとばかりに難を逃れてるだけじゃないか!)

 それにしても、トリーシアの指名とは。
 油断した。
 彼女をイベントの中心人物に置く事に、何の異議もなかった。むしろふさわしいとすら思っていた。まさかそれが、こんな結果になって返ってこようとは。

 トリーシアも、生まれた時から大聖堂にいる。同世代であるシイナとは、だから幼馴染で、まるで兄弟のようにして育ってきた。勿論トリーシアだけでなく、大聖堂にはそういう人間が沢山いる。家族のように育った人間は多い。
 厳格な大聖堂にあって、一般的な家族と同じ意味での家族になる事は出来ないかもしれないが、ずっと共にいる慣れ親しんだ間柄の人間が多いというのは事実だ。
 その中でも、シイナとトリーシアは、本当の兄弟のように仲が良かったのだ。
 こんな事になるなら、トリーシアの役目に断固反対しておくんだった。
 が、今更何を言っても遅い。

 反論の余地もなく室長室を追い出されたシイナを、廊下で佇んでいたトリーシアの笑顔が迎えた。
「よろしくね、シイナ♪」
 聡明な美しさを持つプリースト・トリーシアは、腰まである長い黒髪を、優雅に揺らしてお辞儀して見せた。
「トリーシア! 君は私に何の恨みが」
「あら心外。私は私のパートナーとして、もっともふさわしい人物の名を挙げただけだわ。違うと思うのなら、相応の誰かをここに連れてきてちょうだいな」
 そんな事を言って、誰を指名しようがトリーシアは断固として受け入れないに違いない。のみならず、誰を指名しようが、指名された本人が首を縦に振らないだろう。
 すでにシイナは人身御供なのだ。
「人聞きの悪い事言わないでよ……感謝祭は皆で楽しむものよ。協力して頂戴ね」
 にっこり。
 シイナに逆らいようがないのは、テルーザから話を出された時点でわかっていたことではあったが。
 しかし。これは。

「はああ……」

 今更ララクセルズに、感謝祭の観光はなかったことに、なんて。
 言える訳もないよなあ……。

 シイナは心底困った面持ちで、プロンテラの高い空を見上げるのだった。





==椎名の呟き==
今回は初の、クエストとは関係のないオリジナルのお話です。
あ、プロンテラに収穫感謝祭なんてイベントは本当はございませんが(笑)。
クリスマスとかはあるんだけどねー。

★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.06.25

*RO恋人クエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 問いかけるようなシイナの視線を受けて、アークは楽しそうに瞳を伏せた。
「カーラちゃんがね。シイナをうらやましがってたのよ」
「え?」
「シイナのように、大切なもののために他のすべてを捨てることのできる勇気と強い意志が欲しいって」
「……」
 そんなようなことを、初対面の時にも言われた。特にここに移り住んだことに対して言っていたようでもあるが。
「オレは別に、そんな大層な志しがあったわけじゃ……」
 ないと言いかけて、シイナは考える。
 ……いや。
 そうでも、ないかもしれない。
「私はわかる気がするわよ。あんたにとって大切なもの。あるんでしょ、ここには」
 住み慣れた土地を離れて、この街で暮らす理由。それだけの価値があるもの。
 この地に存在する大きな謎と、愛すべき人々。
 放ってはおけなかったもの。
 捨てられずに、選んだもの。
「……あるかもね。確かに。そのためにオレは全てを飛び越えて、ここにいる」
 あまりにもたやすく選びすぎていて、自分では気付いていなかった。
 それほど親しくもないというのに、それを見抜いていたカーラはさすがと言うべきなのだろうか。女性ならではの勘の鋭さというヤツか。
「時にそれは辛いこともあるかもしれないけど、そうできる勇気があるってのは幸せなことだと思うわ」

 アークが初めて見た時のシイナは、全身血まみれで呆然と立ち尽くしていた。何かを失ったような目をして、だからこそ、まだ失っていない何かを必死で守り通そうとしていたその姿。
 アークはそんなシイナを、知っている。

 シイナがあの時何を失ったのかを。
 どうしてあの時自分の手を取ったのかを――本当はもう、アークは知ってしまっている。
 自分が、一番大切にしていたものを、永遠に失ってしまったという事を。
 シイナがずっと隠し通そうとしているから、今は言わないけれど。自分はもう失ってしまったけれど、シイナには失くして欲しくないと、アークはずっと思っていた。こんな思いをするのは、自分だけで充分だと。
 生きていく上で、悲しく辛い別れなどいくらでも経験するものかもしれないけれど。

 この街であんたが見つけた大切なものならば、私も守ってあげられるから。
 あんたがそうしようとしてくれたように。

「……あのさあ」
 野菜サンドをガブガブと胃に押し込んでいたララクセルズが、辛抱たまらんとでも言うように、眉間に皺を寄せて口を挟む。
「さっきからお前らが何の話をしてるのか、さっぱりわからない」
 ララクセルズの言葉に、アークは思わず目を見張った。
「シイナがここに移り住んだ理由って話だけど」
「だから、この街に気に入った部分があったからだろ? それが何かなんて知らないけどさ、それだけじゃダメなわけ? 何もってまわったような会話してるんだ?」
「……」
 あっきれた。
 アークのそんな呟きに、ララクセルズは何も言えずに口をつぐんでしまう。呆れられるようなことを口にした覚えはないのだが、アークの訳知り顔は、あまりララクセルズの得意とするところではない。この年長者には、これまで言葉で勝てたためしがないのだ。
「核にいる人間ほど、気付かないものね……」
「何がだよ!」
 アークに食って掛かるララクセルズに、シイナはたまらず笑い出した。
「あははは。いいんじゃない? ララクの言い分が一番明確だよ。オレが一番いたい場所にいられるのが幸せって話」
「なんだよ、シイナまで……」
 むくれるララクセルズを適当にあしらっていたシイナだが、ひとしきり雑談した後で、彼の肩に手を置いて立ち上がった。
「オレはそろそろ家に戻るよ。カーラさんに見つかる前にね」
「そうか?」
 シイナの言葉に、ララクセルズは懐中時計を取り出す。まだ時間の余裕はあるが、そろそろ頃合かもしれない。相変わらず仕事熱心なララクセルズは、自分もそろそろ戻ろうと腰を上げた。
「今日は暇だから、夕飯の支度でもしておくよ」
 シイナの言葉に、ララクセルズはうんざりと首を振る。
「今日はオレがやるからいいよ……昨日のお前の鳥肉との格闘はちょっと酷かったぞ」
 パンの焼き方は少々上達したシイナだが、相変わらず料理の腕は男前だ。
「人のこと言えないだろ……」
 今度はシイナがむくれる。どっちもどっちだ。
「あんたらねえ! たまには私のところに料理教わりに来なさいよ! あんたらの作るものって、時々ホントに見てられないんだから!」
 常時腰にぶら下げているフライパンを掲げて叫ぶアークに笑顔だけで手を振り、シイナは街道を歩き出した。
 こんな会話のひと時も、シイナが手に入れた幸せのひとつだ。
 プロンテラにいたら手に入らなかったかといえば、そうでもないかもしれない。あそこはあそこで幸せな空間だった。けれど今手に入れたこの生活は、それとはまったく異質なもの。離したいとは思えない、とても大切なもの。

 そんな幸せのために飛び立つ勇気が欲しかったのだろう。あの少女は。

 けれど彼女はひとりではない。クルトがいて、いつか彼もカーラのために一歩を踏み出してくれるなら。彼との幸せにたどり着くそのために、彼女は強くなれるだろう。
 否。彼女はもう、そこへと向かって歩き出している。
 シイナをうらやんでいなくても、もう大丈夫なはずだ。
 シイナだってひとりでここまで来たわけじゃない。ひとりで幸せになろうとしているわけじゃない。ひとりであったなら、こんな風にはなっていなかっただろう。
 共にいたいと思える人に、出会えたから。

 ――君が、オレの勇気だ。

 今は訳のわからなそうな顔をしていた彼も、どうせすぐに気付くだろう。言葉にしないことも上手に拾い上げる、繊細な気持ちを持つ人だから。
 その時に、シイナがどれほど望んでここで暮らしているのかを知ってくれればいい。
 彼女がうらやむほどに、シイナが今、どれほど幸せであるのかを。

「とりあえず今は、結婚式待ちかな」
 あのもどかしい男女の未来の夢を脳裏に描きながら。
 シイナはひとり呟くと、ゆっくりと家路を辿って行った。





==椎名の呟き==
小さな恋のものがたり編は、これにて完結です。おつかれさまでした!
次回は~、少し番外編のような短く軽いモノを書こうかなと。場所はミッドガルドのプロンテラで。ROシリーズの最初にしか出てこなかった彼らも交えて、ララクとご対面させたりなんてー、ちょっと考えています。
クエストとは関係ないので、ネタバレはナシになるかな?

★『ちいさな恋のものがたり』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.06.18

*RO恋人クエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 広場でゼイゼイと息をつきながら、二人はぐったりとベンチに腰掛けた。
「シイナ。お前の苦労性ってさあ、絶対その性格が災いしてるだろ」
「性格だから苦労性っていうんだろ……」
 疲労困憊のせいか、わけのわからない会話だ。
「まあ、悪いことばかりでもないけどな」
「うん?」
「カシスさんのおかげで、パンの焼き方は上手くなった」
 ボスっと、シイナはララクセルズの膝にひとつ残った紙袋を放った。
 材料集めを手伝わされた際に、パンの美味しい焼き方まできっちり伝授してくれたカシスには、一応感謝してもいいかもしれない。
「なるほど……」
 ガサガサと袋を開きながら、ララクセルズはシイナを見る。
「お前さっき、キリシュに自分の分やっちまわなかった?」
「ああいーよ。もう食欲も失せましたー」
「バカ言ってないで食えよ」
 ララクセルズは袋から、さっきシイナが焼き上げたばかりのパンで作った野菜サンドを取り出すと、ひとり分というにはいささか量の多いそれを半分に引きちぎってシイナに掴ませた。
「どうも……」
 真面目に食欲のなさそうな顔でそれに噛み付くシイナを呆れ顔で見やってから、彼も野菜サンドを口に運ぶ。確かに最近のパンは美味くなっている。具材の切り方は、相変わらず大雑把だったが。

「アンタら、広場の真ん中で愉快なやりとりしてくれるわよね……」

「ぶは」
 突然背後からかかった声に、二人は危うく口にしたパンを吹き出しかける。
「アーク。驚かすな」
 ベンチに腰掛ける二人の真後ろに立つのは、オネエ言葉が不思議と似合う、マッチョなダンディ、自称世界一の料理研究家、本業は鍛冶屋であるアーク・クラインだ。二人とは随分歳が離れている年長だが、妙に気の合う友人である。
「つうか愉快なやりとりって何だよ」
 ララクセルズの抗議にも、アークはただ肩をすくめるだけだ。
「疲労困憊した男二人が、油の匂いと煙が漂う広場のベンチで仲睦まじくパンを分け合う光景を、愉快と言わずしてなんて言うのよ」
「……」
 成り行き上、仕方のないことではあるが。
「そういえばシイナ、あんたカーラちゃんとは会ったの?」
 ゲフ。
 またもやパンを吹き出しかけるシイナ。何故アークからその名前が出てくるのだ。
「ここ何日か、彼女あんたのこと探してたのよぉ。事情がわからないから、家までは教えなかったんだけど」
 それには本気で感謝する。
 しかし、何度もシイナの所在を訊かれたらしいアークには、事情を話しておいたほうがいいのかもしれない。シイナは一通りの成り行きをアークに聞かせた。

「……あんたがこの街で目立つのって、外国の人間だからってだけじゃなかったわけね」
 アークはため息をつく。
「目立ってるかな」
 シイナにその自覚はない。ここに居ついた珍しい外国人という噂の種になっていることは知っているが。
「目立つっていうか、良く名前を聞くのよ。カーラちゃん以外にも、近所の子供だとか町外れの修理工だとか、ベフの酒場でまで『最近見ないけど元気かい』なんて言われて驚いたわ」
「……」
 アークの言っている人物の全ての顔を、瞬時に思い浮かべる事ができる。
「あちこちで色々な事に手を出してんじゃないの? 人がいいんだから」
 からかいまじりのアークの言葉には、ララクセルズも無言のままうんうんと頷いた。そう言われると心当たりがありすぎるだけに、シイナは反論のしようがない。
 何だかんだと面倒見のいいシイナは、誰彼となく話をしてはあらゆる場面で手を伸ばし、他人のために走り回る。聖職者という職業柄もあるだろう。大体、世界中をほっつき歩く冒険者などという人種は、もともと根がマメにできているのだ。
「まあね……でもオレは、この街もこの街の人も好きだからさ」
 シイナの言葉に、アークは「んまあぁ!」と叫んでシイナの首を後ろからギュウギュウと抱きしめる。痛い痛いと真面目に涙目で抗議して、ようやく腕を緩めた。
「こんな街を好きって言ってくれるのは嬉しいわよ。まあ、ね。こんな街だからこそ、他の住人と付き合いを密にするのは悪いことじゃないわ。でも変に利用されないようにしなさいよ」
「言えてる……」
「はいはい」
 アークとララクセルズのふたりに言われて、これまた反論できないシイナは渋々頷く。面倒くさがりのクセにお人よしの巻き込まれ体質なのは事実だ。先刻ララクセルズに苦労性だと指摘されたばかりである。
「それがあんたのいいトコなんだけどね。彼女の言う事もわかる気がするわ」

 意味深な笑顔を見せるアーク。
 彼女とはカーラのことだろうかと漠然と考え、シイナはニヤニヤと笑うアークの顔を見つめた。





==椎名の呟き==
確かに自分でアインブロクに移り住んだし(というかセーブポイントにしただけ)、この街が大好きですが、この街の屋外で食べるサンドイッチが本当に美味しいのかはかなり謎です(笑)。本当に空気の良くない街だしなー。
さて、このお話も次回で最終話になります。最後までまったりと(笑)。

★『ちいさな恋のものがたり』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



2008.06.11

*RO恋人クエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 こういう訳だったんだと。

 空港のロビーを歩きながらかいつまんで状況を説明するシイナに、ララクセルズは首をかしげた。
「話はわかったよ。それでどうして、シイナが彼女に追いかけられるんだ?」
 もっともな質問ではあるが。
 ハア。ため息ひとつ。
「そのときに彼女がすごく喜んでさ。お礼に何かって申し出てくれたんだけど、彼女が出来ることってことで、秘伝のマッサージだかなんだかってのをやってくれたんだ」
 ララクセルズは目を見張る。
「また突拍子もない礼だな」
「カペルタ秘伝とかでさ、工場での重労働には特に効くっていう凄いヤツだったらしいんだけど」
「はあ……」
 カペルタの工場で働いている人間は、あの家人のその恩恵を受けているという事だろうか。カーラならいいが、その母親だとアレかもしれないな、と、母と話したこともないくせに、ララクセルズは暢気に考えていた。
「それで今日偶然会ったらさ、外出を許されるようになったって言って、それはまあいいんだけど、もう一度お礼を、とか言い出して、マッサージしようとするんだよ……」
 だから逃げてきたと、シイナは情け無い形相で呟いた。
「何で逃げるんだ?」
 何だかうらやましい話に聞こえなくもないのに。
「痛いんだ! 物凄く! しかも、うら若き乙女に全身身包みはがされて、背中から圧し掛かられるんだぞ!!」
「ぶっ」
「笑い事じゃない!」
 ほぼ全裸にされて腰の上に跨られた挙句に、悶絶する痛みをこれでもかというほどに与えられた。しかも横目で眺める母親付きだ。彼女の目もあって、娘を振り払って逃げる事も叶わない。今その光景を思い出すだけでげんなりしてしまう。それだけ無茶をされても翌日にもみ返しが来なかったことだけは、さすがというべきかもしれないが。
「でも効き目はあったんだろう?」
「そりゃそうだけどさ……」

 話しながら空港の休憩所を目指していた二人だが、シイナがふと立ち止まった。
「……ヤバ」
「え?」

 カーラにでも見つかったのかと思って辺りを見回したララクセルズだが、それらしき人影は見えない。空港の利用客もまばらで、目立っているのはどこかそわそわしている空港の荷物管理人の姿くらいだ。
 と思っていたら、その管理人の視線がこちらへと向けられた。
 なぜかシイナが隠れようとするが、遅かったようだ。
「シイナさん!!」
 なんだなんだ。
「キリシュさん! 今日はちょっと忙しいんで、ジュノーまで行っている余裕はありませんから悪しからず!!」
「ええ!? でもだって、またカシスからの弁当が届かないんです! また材料不足で彼女が困っているのかと思うと、僕はいてもたっても……」
「今日は却下! ほら彼女直伝のパンあげるから! 今日はこれで我慢して!!」
 言うが早いか、シイナは手に持っていた紙の袋をキリシュと呼ばれた男におしつけた。
 ララクセルズには、わけがわからない。

「シイナ? キリシュと知り合いだったのか?」
「シイナさん、ララクセルズと知り合いだったんですか」

「あーもう!」
 頭を抱えるシイナを尻目に、キリシュはララクセルズに向かって目を爛々と輝かせた。
「シイナさんにはカシスのことで世話になったんだよ!」
「カシスって誰」
「知らないのか!? ジュノーから僕にいつもパンを届けてくれる友達だよ! ジュノーでパン屋をやってる!!」
 知らない。というか話したこともないくせに、何をひとりでハイテンションになっているのか。最近空港の荷物管理係に配属になったキリシュとは、そんなに長い付き合いがあるわけではないが、こんなにハキハキと明るい彼は初めて見る。
「……シイナ?」
「……ジュノーに行こうと思って空港に来た時にさ……彼女からの弁当が届かないんで、何か病気にでもなっていたらどうしようって話をきいて、様子を見てやったことがあるんだよ……」
「彼女だなんてそんな!!」
 ……やかましい。
「そしたら彼女、材料不足でパンが焼けないとかでえらく落ち込んでて、その時調達してきてくれと泣いて懇願された材料が、ミルクとチーズとクリームとフライパンを各50個……」
「……」
「あの時は助かりました!!」
「もう二度とゴメンだ!!」

 ……全部、集めたのか……。

「あっ、シイナさん!」
 シイナはララクセルズの腕を掴んでクルリときびすを返した。
「ララク、外で食べよう」
「うおっと、おいおいおい!」
「シイナさーん!!」
 キリシュはシイナを呼び止めようと叫ぶが、職務中はその場から離れられない。
 強引に腕を引かれて走りながら、ララクセルズは呆れ顔で天を仰いだ。

(お人良し……)





==椎名の呟き==
キリシュとの絡みは、実は食パン(口にくわえる事のできる頭装備下段アイテム)を作るクエストの一環であります。キリシュと話さなくても、ジュノーにいるカシスと話すだけでクエスト開始になるんですが、その前にキリシュと話をしておいた方が、クエストの内容に深みが増すという(笑)。
アインブロクにいる色男のためにと思って奔走していたら、気付いたらパンが出来上がっていたんで驚きましたよ。
ああ、これアイテム作成クエだったのか! と(笑)。

★『ちいさな恋のものがたり』最初から読みたい方はこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



プロフィール

椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

インフォメーション

Twitter

管理人へのメールフォーム

pixiv
pixivは二次創作腐向け小説と絵。ジャンルは雑多。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

04月 | 2017年05月 | 06月
 日  月  火  水  木  金  土
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


訪問者数
ラグナロクTV

このブログ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
ブログ全記事表示
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。