オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2006.12.31

「……コーラス」
 フワリと、赤毛の少女が微笑んだ。
「うん……」
 オレの顔にも、自然と笑みが浮かんでくるのがわかる。
「フフ……ははは」
「あはははは」
 ふたり視線を合わせたまま、笑い合った。

「アハハハハハハハハハ!」
 もう止まらない。
「コーラス、フフ、だからあれほど、ハハ、ちゃんと選別しろって言ったはずだははははは!」
「オレだってちゃんと、分けたつもりだっはは、たけど、多分うっかり混ざって……うひゃひゃひゃひゃ!」

 さっき煮て食べたキノコの中に、どうやら笑い茸が混入していた模様。
「ハッハハ、大体、カサに笑い顔みたいな模様が入った、いかにも笑えと言わんばかりのフフフ、目立つキノコを、なんで外し忘れるのか……ハハハハハッ、エホッゲホッ」
「気付かず食べたお前だって、人のこと言えな、うはははは、ハハ」
 森に自生するキノコの中でも、厄介な笑い茸。うっかり食べてしまったのは何年ぶりか。
 こいつはある意味無害だし、食べれば実は素晴らしく美味。けど身体の中の、横隔膜だかなんだか変なところを刺激するらしく、食べた後はしばらく笑いが止まらない。「あ、なんかこれすげえ美味い」と思った時には遅かった。
 大体、シイナが腹減ったって急かすからこういうことになるんじゃないか。
「人のせいにするなっはははは!」
 人の考えを普通に読むな!
「シイナ、治癒の魔法、使えるんじゃないのか、ははッ」
「オレの、ちフフゆ魔法わっはは、細胞活性とか、ハハハ、再生速度の向上の、ほうで、毒の類には効かなっはははは」
 何言ってるのかわかんないよー。
 とにかく、毒物には治癒魔法が使えないってことか。これから数時間、バカ面さらして笑い狂ってなきゃならないのかあ? もうすぐ森も抜けるってのに、これじゃ街にも入れないじゃないか。
 や、オレのせいですけどね。確かに、ええ。

 笑いってのは、例えそれが不本意なものでも、その行為そのものが人の心を浮き上がらせる効果を持つものだ。
 何だかとても楽しい。愉快な気分だ。
 もう楽しすぎて、胃の中身とか出てきそうー。
 たーすーけーてー。


「ずいぶん楽しそうですね」
 げらげらと笑い合うオレたちの前方に、人影が現れた。
「「あはははははははははは」」
 ふたり揃って、ご挨拶は笑顔で。よく出来ました。
 って、挨拶にすらなってないけど、今は無理。
「大分お困りのようだ」
 森の中の散策には似つかわしくない、洒落たスーツにコートをまとった長身の人物は、人が良いんだかなんだかわからないような含み笑いで、座り込んで笑っているオレたちを見下ろした。整った顔をしているせいか、なかなかの迫力だ。
 これだけケタケタ笑ってる状況で、よく困ってるってわかるもんだ。
「わかりますよ。笑い茸の毒にやられたのでしょう」
 また考えを読まれた。オレってそんなにわかりやすい?
「私はこの先の街で薬売りをしている者ですが、解毒剤が要りようでは無いですか」

 実に都合よく、薬屋さんがきたああああ!!

「ははははは!?」
 いかん、もう何を言っても笑いになる。
 すでにシイナは半歩くらいあちら側に行きかけているっぽい。
「生憎と今手持ちにはないですが、街に帰れば笑い茸用の解毒剤もありますから。いらっしゃいますか?」
 必死の形相(でもかなり笑顔)でコクコクと頷く。
 知らない人間にヒョイヒョイとついて行くのはどうかとも思うが、今はなんかもう、そんな場合じゃない。街中なら人目もあるだろうし。
 それにオレは、これで薬物には結構詳しい。身分が身分だけに、昔鍛えられたからね。変な薬だったら大概わかる。なら笑い茸くらいきちんと選別しろってシイナあたりに言われそうだけど、だって笑い茸は命には関わらないもん。って、心の中だけで押し問答してても意味無し、オレ。
 とにかくこの愉快な状況から、一刻も早く脱出したいんだよ。ああ辛抱たまらん。

「では、頑張ってついて来て下さい」
 名も知らぬ彼は、微笑んできびすを返す。腰まであるライトブラウンの髪がサラリと揺れた。
 女の子にモテそうだなあ。いや、マジでそんな場合じゃないだろ、オレ。
 一見モテ男な彼の後を、オレたちふたりはヘラヘラと笑いながらついて行くしかなかった。





==椎名の呟き==
笑い茸ネタは、この物語を考えた当初から入れるつもりではあったのですが、なんか都合よく出会いに結びつけちゃいましたね。
いい出会い? 悪い出会い? さてさて。

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2006.12.30

 冬の寒さがちょいとこたえる森の中に、たちこめる白い湯気。
 湯煙だ!
「温泉がある!」
「オレいちばーん!」
 シイナ早ッ!!
「ここにもあったんだなあ……」
 今通っている森の中に、湯の湧いている場所がいくつかあるのは知ってたけど。
 崖崩れでちょっとルートを変えていたから、今目の前に温泉があるのはラッキーだ。湯の沸くポイントが点在しているんだろうな。きっと。
「ところで、この湯安全だよな?」
 シイナがフンフンと鼻を利かせながら、湯を覗き込む。
 見た感じ安全そうに見える湯だが、正真正銘安全だ。この辺の土地にはおかしな毒性は無いし、刺激の強い泉質でもない。
「ほら、あそこ」
 指を差してやった先では、耳長猿の大家族がゆったりと湯に浸かっている。ここいらでは良く見られる光景だ。十数頭が一列に並んで、ひとつ前の仲間の福耳を掴んで引っ張る光景は壮観だね。行動の意味はわからないが。一説では情愛の証だとかなんとか。
「なるほどね。じゃあオレ入っちゃっていい?」
「どうぞ」
 シイナ、温泉珍しいのかな。まあひとりだったらヒョイヒョイと高速移動できるらしいから、何日もかける旅なんてしたこと無いのかもしれないけど。
「コーラス、一緒に済ませるのはやっぱりまずいか?」
 何を言います、この人は。
「それはまずいだろ」
「まあそうか……変なモンスターやら変な人間やらに襲いかかられたら、フォローのしようがないもんな。素っ裸で戦闘して凍死したくない」
 それ以前の問題もあるんですが。
 ポイポイと服を脱ぎ捨てていくシイナに、慌てて背を向ける。
「お前な、自覚無いのかよ。一応女だろ。今までずっとそんな調子だったのか」
 ザブン、と湯の波打つ音が聞こえる。
「そんなわけ無いだろ。別にお前は知ってるんだから問題ないだろ」
 あるっつーの。
 例え中身がオレ様だろうが男だろうが、外側はれっきとした若い女だってのに。オレはたとえこれがかーちゃんや姉や妹だったとしても、一緒に風呂に入るのは遠慮するぞ。兄弟はいなかったけどさ。
「いいから浸かっとけ。何なら泳いでもいいぞ」
 背を向けたまま言えば、おかしなヤツだと言わんばかりのため息が聞こえる。
 ザブン、バシャバシャバシャ。
 ホントに泳いでるよ、あの男は。

 もういいぞーと声をかけられて振り向けば、長い赤毛をギュウギュウと絞り上げるシイナが目に入る。あれ、冷気で凍ったりしないのかな。
 ボン。
 一瞬髪が舞い上がって、一瞬で水気を吹き飛ばした。
 魔法って便利だね……。

 オレは別に躊躇する理由も無いから、さっきのシイナ同様、さっさと服を脱ぎ捨てて湯に浸かる。
 あー、やば、極楽。
 ヤツのように泳ぐ趣味の無いオレはただゆっくりと湯を楽しむ。
 けどこれはこれで問題あるというか、ああ、だんだん集まってきた。リスやらネズミやらの小動物が。
 彼らも温泉は大好きで、大抵は岩場や縁に器用にしがみついてプカプカ浮いているのだけど、こうやって大人しくしていると、良い足場が出来たとばかりにたかられる。まあ、オレはリスやネズミは襲わないし食べないからね。

 しばらくまったりと湯を楽しんで上がれば、すぐそばに座り込んでいたシイナが。

 ……寝てるよ。あぐらをかいたまま、器用に。

 そんなに疲れてたかなあ?
「おーい、シイナ」
 肩を揺さぶってみれば、ガクガクと首を揺らしたあと、そのまま地面に倒れこんでしまう。うう、おまえそんな、バカ面さらして平和そうに。
「シイナってば。おい」
 揺すっても揺すっても起きやしない。ちょっと、幸せそうですらあるんだけど。

 どうするんだ。
 まだ日も高いから、進めるところまで進んじまいたかったのに、ここで足止め喰らうわけ? でももうすぐ、街も見えてくる頃合なんだけどなあ。
 ……仕方ない。
 シイナを引きずり起こし、木に寄りかからせて、そのまま背負った。地べたにへたり込んだ人間を背負うのって、想像以上に大変なんだぞ。しかもこれだけ動かしてもまだ寝てるし。寝つきがいいにもほどってものがないか、シイナさん。

 シイナと荷物を背負ったり抱えたりしたまま、足場の良くない森を歩き続ける。
 なんだかな、けっこうきついんですけど。
 つうか、まだ起きないんですけど。
 オレは深々とため息をついた。
「これで本当は精霊石なんて無いんだって知ったら、シイナどんな反応するかなあ……」

「なんだと!!!」

 ガバリと、背中で寝こけていたシイナが跳ね起きた。
「テメエ、やっぱりたぬき寝入りか!!」
「……!!!」
 嘘だよ、もちろん。精霊石はちゃんとあるけどね、多分。
「騙したな!!」
「怒る前に歩くのをサボるな!! 大変ナンだぞこっちは!!」
「か細い女ひとり背負うくらいで何言ってる、軟弱者!!」
「それだけ筋肉つけて、か細い言うな!! 結構重いんだよ、男女!!」
 ひとしきり言い合って、お互い肩で息をする。
 ……何やってんだろうね。オレたち。
「わかったよ、そんなにお前が軟弱な男だったんなら、オレも悪かった。じゃあおあいこにしようじゃないか」
 オレの背中から降りたシイナが、数歩前に歩み出た。
 そのまま身をかがめて、微妙に男らしい笑顔で振り向く。
「さあ、おぶされ!」

「……」
 無理です。
 いくら中身が男でも、その、外見も男のプライド的に。





==椎名の呟き==
ここのとこ、どうも漫才みたいですね。
一応まったりがメイン(?)の話なんで、割とこんなノリだと思って下さると……(殴

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2006.12.29

 それまで黙って歩いていた足が、ピタリと止まった。
「シイナ?」
 一歩先を行ってしまってから振り向けば、足を止めたシイナは、いかにも深刻そうな顔で一点を見つめている。
「茶屋が見える」
「はい?」
 言われて思わず再び進行方向に向き直れば、確かに視界の隅にはありますね。峠の茶屋もとい街道の茶屋が。
「オレのカンが正しければ、この先しばらく茶屋の類は無い」
「はあ」
 うん、その通りです。
 ていうか、カンとか以前に、この先のうっそうとした林道を見れば、人家や店の類はなくなるだろうなということは容易に想像できると思うけど。すでに人気も殆ど無いこの近辺、茶屋があるだけでも驚きなくらいだ。
 だからこそ、重宝する旅人も多いって話なんだろうけどね。
「休みたい」
 ああ、それが言いたかったのね。
「いいけど、あんまり金ないんだぞ。甘いものとかガバガバ食うなよ」
 主食の後の桃色まんじゅうみっつは衝撃的だったぞ。あれが普段のペースなら、オレ、養える自信がありません。
「金なら持ってる。困らない程度には」

 じゃーあーなんでおごらせたー。

「甘いものはナシでもいい。むしろ茶屋じゃなくてもいいから、とにかく休ませろ」
 意外とオレ様なシイナ、なんかもう目がすわってる。
 そりゃどうせ、休憩無しには行けない道程なんだから別にかまわないけど、どこでもいいなら目の前の茶屋は関係ないと思うけどなあ。
 まあいいやと、客のいない茶屋の、ふたつしかない長いすのひとつに陣取った。

「女ってのは、本当に体力が無い……」
 自分でも不本意だと思っているのか、シイナはげんなりと姿勢を崩す。
「どこから来たか知らないけど、お前よく今までひとりで各所ほっつき歩けたな。魔法力でひとっ飛びとか、そういうのは出来ないわけ?」
「それに近いことはできなくはない。けど、この身体で、お前を連れては無理だ」
 あ、できるんだ。
 この身体では無理ってことは、本来の身体はさぞ体力もあったんだろうなあ。
 確かに女ってのは一般に男よりも体力とか少なそうだけど、一緒に旅なんてしたことがないから、どうも感覚が掴めない。そして男から女に転身したヤツの感覚なんて、もっとわからない。

「シイナさ、初めてその体に入ったときってどんな感じだったわけ?」
 そこが気になって気になって仕方がなかった。
 シイナは脱力したように空中に視線を彷徨わせる。
「そもそもはじめはこの身体も死にかけてたから、微動だにできなかったよ。そのおかげでヤツにも気付かれなかったけど、倒れたまま治癒の法で負った傷を治すのに丸一日かかった」
 治癒の法まで使えるのか。じゃあ多少傷つくっても治療費浮くじゃん。やったー。
「で、なんとか起き上がれるようになって、最初に……身体を触りまくったな」
 なんですと!!!
「シイナ、エロい!!」
「エロくない!! 当然の行動だ!! 自分の身体と全然違うんだぞ!! あちこちふにゃふにゃモチみたいに柔らかいし、全体ぽったりしてるし、腕なんか棒みたいでちょっと力入れればポッキリ折れそうなんだからな! そもそも重心から違うから、立ち上がるのさえ困難だったんだ!! お前も一度女やってみろ!!」
 それはたとえやりたくても無理です。いや、別にやりたくはないけど。
 ふーん。性別が違うってのは、色々大変なんだねえ。普通はそんな現象起こらないから、想像もしてなかったけどね。
「身体を作るまでに今までかかった。多分、もともと体力の少ない子だったから。見ろ、オレだってかなり頑張ったんだ」
 むきゃ、と腕に力こぶを作ってみせる。
 おお、普段全然わかんないし見た目細いのに、結構筋肉ついてたんだなー。
 でもできれば、腹筋を割るレベルまで行っちゃうのはやめといてね。って、別に本人の自由だけどさ。
「体力だけじゃない。魔法使う精神力を極力発揮できる身体にするのだって大変なんだからな」
 もらった身体で贅沢は言えないんだろうけど、だからこそ苦労も多いらしい。

 お互い3年間大変だったねえ。
「そんじゃあ、そんなシイナさんの努力を労って、蜜団子くらい食ってもいいよ?」
 それまで遠くを見るようだったシイナの焦点が、一気にオレに合わされた。
「おごりか!?」
 ……………………。

「……ひと皿だけな……」





==椎名の呟き==
シイナのキャラが、当初の予定と違うんですけど……。
まあこれはこれで作りやすいかも。あははは。

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2006.12.28

 その国は小さな島国で。
 小ささに似合わずイイもの沢山あったから、変に頑張っちゃってたんだけどね。
 その国の名はサンレイク。

「サンレイクで、国の名を冠するのは王族のみだ」
「うん」
「そして、ミドルネームを有さないのは、王ただひとり」
「うん」
 ほんっと、よく知ってるなあ。
「別に隠してたわけじゃないけどさあ。もう無いも同然の地位だし。大体、オレの名前聞いただけでわかるヤツなんて、そうそういないって」
「王族が、生き残っていたのか……」
 わーるかったですね。
 まあ、そのうち話す機会もあるかなーくらいには考えてたから、それが今だって全然かまわないけどさ。

 サンレイクは、3年前の騒乱の際に、一夜にして滅ぼされた。
 確かにオレは王位継承権は持ってたけど、その時はオレの祖父が王で、俺の前に王位継承するはずの父親ですら、まだその地位にはついてなかった。
 ウチの国は王制の小さな島国で、人口も少なかった。名前さえ知らない人間が多いはず。
 でもその小ささに似合わず、とても貴重な物の産出国でもあって。
 それが、精霊石。
 精霊石の産出量はおそらく世界でも有数というかむしろトップで、その純度も高く、国民は精霊石の上で生活しているようなものだった。もう、島全体が精霊石で出来てると言っても過言じゃない。
 で、モノがモノだけに、その乱獲やら悪用を恐れて、サンレイクの国は随分長いこと国を閉ざしていて、本当に僅かしか、他との国交を持っていなかった。ご丁寧に国全体に厳重に結界まで張り巡らせてさ。
 うっかり戦争にでもなったら、絶対に勝てない自信もあったしね。
 けど、その結界をものともせずに国土に侵入し、国全体を一瞬にして焼き払ったヤツがいる。
 何故そんなことが可能だったのか、今でもわからない。
 いよいよ最後まで残っていた城も焼き払われる段になって、オレは王と父親から、そこにあった僅かな精霊石と自分の愛用の剣を持たされて、お前だけは逃げ延びろと城の背後の断崖絶壁に、力いっぱい放り出されたわけだ。

「崖から放り出されて無事なんて……頑丈にできてるな」
 おいおいおい、シイナさん。
「頑丈とかいうレベルじゃないよ。普通に死にます、死ねますよ。空中分解だって夢じゃない」
 持たされた精霊石に守護のまじないがかかってたせいで、空中散布されずに済んだだけだ。だって断崖絶壁って、下は海で、海面までの距離は城の高さ3つ分くらいはあったんだぞ。海ポチャしてから近隣の島に流れつくまでの記憶なんて、さっぱりない。

「お前は生きて道を探せ。コーラス・サンレイク!」
 オレを放ったときに、王である祖父はそう叫んだ。
 それまで持っていたミドルネームを取り除いて。
 そうして転落していくオレの視界の隅で、城は一気に炎上した。
 王位の継承から国の消失まで、一瞬で終了。

「まあだからね、その遺志を継いで王の名を語ってはいるけどさ、実際は何の意味も無いわけだよ。国自体がもう存在しないんだから」
 それを知っているのだって、オレの周りではハンターギルドの上部の人間だとか、とにかくほんの一部しかいない。
「……納得がいった」
 シイナが深々とため息をついた。
「はい?」
「その剣の腕と、生まれたときに与えられている精霊石。それと、白の塔に関する知識。おかしいと思った」
「良かったなー。謎が解けて」
 ガツン。
 いてえ。
 女らしくをモットーにするなら、他人の頭をグーで殴っちゃダメでしょ。
「でーまあね、後になって調べたんだけど、サンレイクの周り、新しく結界が張られてるんだよね」
「結界?」
「外部からまったく干渉できないようになってる。その内側に、何かが潜伏してる可能性が高いわけで」
「一度焼き払った地で、何を……」
「だろだろ?」
 サンレイクが滅ぼされた理由が「土地」にあるのだとしたら、狙っていたのは「精霊石を有する土地」ってことで。その土地を乗っ取って何かを成し遂げようとする輩が結界の内側で何事かを行っているのだとすれば。
 それは将来的に、かなり怖いことになりそうな気がする。
 オレはそれを黙って見ているつもりはない。人ん家で何やってやがる。
「つまりオレもお前と同じでさ。どうにも出来ないように思えても、生きてるからには諦めるわけにもいかなくてね」
 どうせ一度は失いかけた命だから、捨てるのは簡単かもだけど。
 だったら、捨てる前に色々やったっていいじゃん。いつでも捨てるつもりでさ。
「前向きな王様だな……」
「へへ。それはどうもありがとう」
「本当に前向きだ」
 なんで呆れますか。
 肩をすくめて歩き出すシイナの後を追う。オレが先導しなきゃ、道わからないだろーがよ。

 だから、やれることをやるとして。
 今やるべきは、鍛冶屋の許へと向かうこと。というわけだ。





==椎名の呟き==
いかん、情報量が多すぎて消化できない。
読んでくださる方、あまり難しく、辛く考えられませんようにw

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2006.12.27

 まんじゅうみっつとかが、あの身体のどこに入っていくのか謎だ。
 甘いものは別腹~とか言うヤツの胃袋が本当に二つあるわけじゃないし、あったら怖いし。
「言いたいことがあるなら言え」
 据わった目で睨まれた。
 いえいえ、決してそんな、滅相もない。
「別にないない。それより一度中央ギルドに戻らなきゃならないんだけどね。来る?」
 魔女盗賊の件も片さなきゃだし、その間ただ待っているのも退屈だろう。
「行って大丈夫なのか」
 安心しなさいよ。いきなりこいつが犯人です、なんて突き出しやしませんてば。って、そういう意味じゃないか。
「オレが用があるのは受付窓口だから大丈夫だよ。そこはハンター志願者も来る場所だし、普通に関係者以外のヤツもうろついてるから」
「ふうん」
 そう言ったきり、黙ってついてくる。ほどほどに興味はあるらしい。


 いつもの調子でギルドの受付に顔を出してみれば、相変わらず代わり映えのない面子が建物の中にひしめき合っている。
「やっほー、事務員さん」
 無表情に書類整理に勤しんでいた事務のおねーさんに声をかければ、無表情なまま出迎えてくれる。
「コーラスさん。お疲れ様です。相変わらず収穫はなしですか? ……まさか、その後ろにいるのが」
「違う違う。犯人だったらちゃんと確保して連絡するなり連行するなりするって」
 速攻シイナを疑われてしまった。
 いや、実際間違いなくこいつが犯人なんだけどね。
「それよりさ、ちょっと遠出するんで、休職願いを出そうと思って」
「休職願い? 遠出ってどちらへ?」
「鍛冶屋のとこ。そろそろ剣を見てもらおうと思って」
 もうそんな時期ですか、と呟いたおねーさん、しかしツッコミは忘れない。
「盗賊の件はどうするんですか。まだ手掛かりないじゃないですか」
「あー、それなんだけど」
 オレは朗らかに後ろに立つシイナを手で示した。
「もう3日現れないじゃん? 3日前に盗賊に襲われたっていう彼女に会ってさ、彼女に聞いたら、もうその盗賊この辺にいないんじゃないかって話なんだよねー」
「そうなんですか?」
 おねーさんの目が驚きで見開かれる。きっとシイナの目も驚きで見開かれている。
 さりげなく振り返ってみれば……ははは、やっぱりね。
「ええと、お嬢さん、どういうことですか?」
「え、いや、え……」
 当然のごとくに戸惑ったシイナ、けど意外に早く、次の言葉が出てきた。
「えーと、そうなんです。私、3日前に宝石商から精霊石の飾りを買った直後に、女の盗賊に襲われて精霊石を盗られたんですけど、その石を見るなり盗賊はそれを捨ててしまって、西のほうに飛び去ってしまったんです。その時、この街はもう用なしだなって呟くのが聞こえて……」
 凄いなー、シイナ。伊達に白の塔のトップにはいないね。って、それは関係ないか。よくもまあ咄嗟に、これだけの言葉が出てくるもんだ。尊敬に値するなあ……ははは、そう睨むなよ、証人のお嬢さん。
「それじゃあ、この街に、まともな精霊石はないと判断して、他に移動したのかしらね……実際その通りだけど」
 書類をガサガサとあさりながら呟くおねーさんに、うんうんと頷いてみせる。
「オレが用のあるいつもの鍛冶屋も西の方角じゃん? だから手掛かりがあれば伝達も出来るし」
 シイナのでっち上げとオレの向かう方向が同じだったのは、まったくの偶然だ。
「そうですねえ……ギルドにはハンターの拘束力はないですしね」
「拘束力?」
 おねーさんの言葉に、シイナがポツリと呟いた。
「ああ、ハンターってのは基本的にギルドに仕事を取りに来るモンだからさ。本来資格があってそのギルドに登録されてるってだけで、ギルドはその行動を強制、抑制することはできないんだよ」
 休職願いなんてのは便宜上の言葉で、実際に書類なんかは存在しない。
「へえ」
「オレみたいに凄腕になると、ギルドの方から仕事の依頼を出されたりすることもあるんだけどさー」
「とにかく」
 ソッコー話を遮ってくれました。さすが中央ギルド敏腕事務員のおねーさん。
 何だよ、本当のことなんだからいいじゃんよー。
「そういうことでしたら、どうぞ行ってらっしゃい、コーラスさん。ちゃんと無事に帰って、ギルドに顔を出してくださいね」
「はいよ~」
「それと鍛冶屋の工房のイエローストーンのグラスセットをふたつお願いします」
 さり気に土産要求されました。いつものことなんだけどね。
「了解」
 話は終了と受付から離れたところで、おねーさんは別の事務員に口頭で伝達した。
「への153番コーラス・サンレイク、不在になります」
 これで安心して旅立てますよ。
 と、中央ギルドの建物から出たところで、後ろから物凄い勢いで肩を掴まれた。
「おい待て、コーラス!」
 うわ、シイナさん怖い。
「悪かったってー。でもシイナがちゃんと答えられなくてもフォローは出すつもりでいたし、せっかく第三者がその場にいるんだから、説得力を持たせようとだなー」
「そんなことじゃない!!」
 あーらら、さっきまでのしおらしい態度はどこへ行っちゃったのさ。

「コーラスお前、サンレイクの人間なのか」
「……」
 耳がいいなあ。
「コーラス・サンレイク、ミドルネームは」
「ないよー」
 シイナは瞬時に顔色を変えた。
「そんなバカな」
「バカって言うな」

 さすが白の塔。
 ……やっぱり知ってるんだなあ。





==椎名の呟き==
ちょっとひっぱってみたり?
でもまあ、あくまでライトシリアスで軽いノリですから~。

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2006.12.26

 鳥だの魚だのを取り混ぜた揚げ物の皿盛りをムグムグと口に運びながら、シイナがふと壁にかかっている品書きに目をやった。
「なあ、桃色まんじゅうって食べていいか?」
 うげ。
 別に何を食べるのも勝手だけど。
「桃色まんじゅうって、お前、それクソ甘い花の蜜がまんじゅうの皮被ってるようなモンだぞ? それ食うの?」
 ていうか、食っていいかって、確認取るのはそれ、もしかして飯代オレ持ちな訳?

 湖の端で話し込んでいた俺たち、ふたりの腹が盛大に切ない音を立てたのをきっかけに、街中の飯屋に場所を変えていた。

「オレはもともと甘いものは苦手な方だよ。けどこの身体が甘いもの好きらしくてな。こいつで一度食べたら不思議と美味いと感じるようになって」
 桃色まんじゅうみっつくださーい、と、胸の熱くなるようなオーダーをしやがったシイナは、揚げ物の残りの征服にかかる。
 いくら甘いもの好きな身体って言ったって、みっつは食いすぎじゃないのか。みっつは。

 女の身体、というキーワードで、ふと気色悪い事実を思い出してしまった。
「そういやお前、出会い頭は女言葉使ってなかった?」
 今も見た目は女なんだけど、本人の言葉だけでなく、話してみればこいつの中身は確かに男だ。女の格好してるからって、わざわざ女らしく振舞うこともないと思うんだけど。
「言葉遣いの悪い女は好きじゃない」
「へ?」
「この子、今生きてたら18歳だぞ。オレはこんな妙齢で乱暴な振る舞いをする女はあんまり好きじゃないの。だから自分もやらない」
 そうなんですか。
 ていうか、そういう問題なのかな?
「それに、格好が女である限り、女らしく振舞っといた方が何かと得だぜ。初対面の人間は、それだけで油断するし」
 女らしい女は、槍振り回して魔法ぶっ放さないと思うけど。
「じゃあなんで、今は素なんだよ」
 素朴な疑問だったが、シイナはあからさまに表情を歪めた。
「一度バラしちまったモン、今更取り繕ったって気持ち悪いだけだろ」
 うんまあ、それはそうだけどね。
 これで中身が凄まじくオッサン年齢だったら、いくら女は女らしく、なんてモットーを抱え上げたとしたって、何かアレな気はする。いや、若けりゃいいって話でもないけどさあ。
「シイナっていくつ?」
「22」
 へえ。オレよりふたつ上か。にしちゃあ、持ち合わせてる女性像とか、妙に考え方オッサンくさくないか。
「お前は? ていうかオレ、お前の名前も聞いてないぞ」
 あれ、そうだっけ。
「コーラス。20歳だよ」
 へえ、とシイナは目を丸くした。
 うん、言いたいことはわかる。けど言うなよ。20歳には見えないとかそういうことは。それはあちこちから言われ続けて、けっこうコンプレックスなんだからな。
「見えないな。この子と同じか下くらいだと思ってた」
 言うなっつーのに。
 でもまあ、見た目が有無を言わさずその人の印象になるものなのは確かだよな。
 積み上げられた桃色まんじゅうを手にとって嬉しそうにかじりつくその姿は、確かに歳相応の少女にしか見えない。今はわざとそう振舞ってるわけでもないだろうに。
 ああ、湯気になって立ち上がる甘ったるい匂いがたまらない。

「しかし、どうしたもんかな……。自分で発掘するしかないのか? そんなことやってる時間ないんだけどな」
 桃色の物体をほおばりながら、シイナは片手で頬杖をついてため息をついた。
 精霊石の話か。
 しかしこいつ、こんなトコでオレと飯食ってて、オレに賊としてハンターギルドに連行されるかもしれないなんて、全然考えてないのかな。考えてないんだろうな。
 オレもそうするつもりはないけどさ。
 けど、確かにこいつの今の一番の問題は精霊石だ。
 ちゃんとした精霊石を手に入れようとすれば、普通ではちょっと考えられないくらいの金がかかる。今は産出量も極端に少ないから尚更だ。でもって、それだけ出ないってことは、発掘だってそうそう出来るものじゃない。私有地でない場所で、魔法に使えるほど質のいい精霊石を偶然発見、なんて、一攫千金夢物語だ。
 だからこそ、こいつは追いはぎみたいな真似をしてたんだろうし。
 実際、それしか方法が無かったんだろう。
 それを手に入れたからって、どうにかなる問題なのかって、それはわからないけど、そこから始めなきゃ一歩も前に進めない事だってある。

「お前がついてくる気があるなら、心当たりがないでもないんだけど」
 ポツリと呟くと、まんじゅうを持ったシイナの手がピタリと止まった。
「……はあ!?」
 予想通りのリアクションありがとう。
「コーラス、お前実はどこかの凄い御曹司か? 誕生祝に精霊石ってのも不思議な話だとは思ったけど」
 とてもそうは見えないとでも言いたそうだな。
 でもオレが今目の前でヒョイと精霊石を出してあげるわけではなくてだな。
「ちょっと遠いけど、知ってる鍛冶屋のところにあったはずなんだよ。質は間違いなくイイぜ。多分売ったり使っちゃったりはしてないと思う」
 シイナがげんなりと顔を前方に傾ける。
「あのな……それでそれは一体いくらするんだよ。そんな金があったら、わざわざ盗賊まがいのことなんてやってない」
 オレも、盗賊まがいのことやってた人間に金の話なんて持ち出しませんよ。
「タダでもらえるはずだよ。ちょっと訳アリの一品だから」
「訳アリ?」
「別に盗品だとか、呪いがかかってるとかそういうものじゃないから安心しろよ」
 シイナはいぶかしそうな顔をするけど、今ここで長々と世間話のように話すようなことでもない。
「それがまだそこに残ってれば、確実にもらえる。どうする? 来る?」
 数秒の間。
 手に持ったそれは、早く食べちゃいなさいよ。
「…………わかった」
 うん、それしか今は道がないもんね。

 とりあえず、これで話は決まったって訳だ。





==椎名の呟き==
お食事処でのんびりですか。
でもコーラスは何食べてるんでしょうね。
鳥や魚や果物の蜜や、でもまんじゅうや揚げ物って、身体にいいんだか悪いんだか。

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2006.12.25

「オレはシイナ・ウエスコット・デラ・ウィザーズ。白の塔の次期マスターだった」
「次期ますたあ!?」
 マスターといえば、白の塔の最高権力者ですよね!?
「当時マスターだったセロ・マイヤ・アン・ウィザーズはいい加減ご老体だったから、そう遠くない将来に、オレが地位を受け継ぐ予定だった。事実を言えば、塔の中で一番魔法力の強かったのはセロの爺さんじゃなくてオレだったんだ」
 わー、いけしゃあしゃあ。
 でもまあ相手はご老体だし、力の衰えとかあっただろうしなあ。
「それで、オレが狙われた」
「え」
「正確には、オレの身体」
「身体?」
「優れた魔法を操れる優れた身体。それを手に入れるために、白の塔は襲撃を受け、破壊され、オレは自分の身体から追い出された」
 えーと。
 そういうことが、可能なんですか。
「お前、思ってること顔に出やすいな。……魂の秘術。超高等魔術で、誰でもお気軽に扱えるものじゃない。だがそれをやってのける奴が、オレの魂を追い出し、身体を乗っ取った。殺すのではなく追い出したのは、身体に余計な傷をつけないためだ」
「なんのために?」
「知らん。けどそれだけの力を持っていながら、更にその力を増幅させる器を欲したという事は、それ相応の目的があってのことだろう」
 それはそうだ。
「ていうか、えーと、シイナだっけ? 何でお前はそれで女の格好してるわけ? 身体が無くなって無事でいられるもんなのか?」
 シイナが、一瞬目を伏せた。
「普通は無事じゃ済まないさ。この身体は、襲撃のときに死んだ女のものだ。マスターの世話係をやっていた」
 うえええ? 亡くなった人にとり憑いたのか?
「ちゃんと息のあるうちに本人の許可は取ったぞ。というか、むしろ彼女の意志でこの身体に引きずり込まれた、と言うべきか。オレ自身の力が強かったこと、魂だけがむき出しになっていたこと、相手の魂が消えかけていて、なおかつ受け入れる意志があったこと。全部が重なって成し得た、偶然の秘術の完成だ。そうそう出来ることじゃない」
 なるほど、なあ?
 ちょっとまだ理解に苦しむ。
「そうやってオレは生かされた。だからオレは、白の塔を壊滅に追いやった奴を探している」
「復讐する気か?」
 俺の言葉には、シイナは何とも曖昧な表情を見せた。
「殺された人間たちの仇は取ってやりたい。生かされたことにも報いたいとは思う。白の塔って機関そのものの壊滅に関しては、本当はどうだっていいんだ」
 うわ、言い切っちゃってダイジョーブ? 次期マスター。
「もともと白の塔の統括になるなんて自覚には乏しかったんだ。だから再建したいなんて願望も持ち合わせちゃいない。オレはまず、オレの身体を使って勝手なことをする奴の存在を許しておけないだけだ」
 まあ、確かに。
 正体不明な奴に無理やり身体を奪われて、そいつはその身体を使って一体何をやらかそうとしているのか。想像するのも怖い。でもロクな使われ方はしないと容易に想像できてしまうから、なお怖い。
「けど」
 だから自分の力とこの身体との相性が合わないんだと呟きながら、シイナはその場にドタリと寝転んだ。
「心・技・体。これが揃って、初めて優れた力は生まれるもんだ。けどこの身体は大きな魔法力に耐えられる器じゃない。物理的な体力にも乏しい。そうでなくとも、心も技もまだ全然足りちゃいないんだ」
 だから、力を増幅させる精霊石を欲しがったってわけか。
 でも、その優れた身体とやらを持っていたときですら敵わなかった相手に挑むつもりなわけだよな。途方もない話じゃないか、それって。

 まあ、わかってるんだろうけど、そんなこと。
 途方もないけど、だけど。
 自分が何者かに狙われて、そのせいでひとつの機関が丸ごと潰されて。沢山の命が奪われた。
 白の塔という存在自体はどうでもいいって言ってたよな。
 だとしたら、今こいつが動く原動力は、責任感とかではなく、自責の念、なんだろうな。

 多分、同じだよなあ。
 シイナがあの騒乱のときの被害者であって、それでそのことに対する何がしかの志があるのなら。
 それなら。

 それなら、こいつとオレの目的は、同じはずだ。





==椎名の呟き==
7回目で名前が出てきました。連載前に予告していた、管理人椎名と同名キャラ。某オンラインゲーでは、シイナというキャラをむしろメインで動かしてたんですけどね。
別にモデルが私とかそういうことではないので、さらりと読み流してくださいませw
もうひとりが出てくるのはいつかな~。

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2006.12.24

 なんだか力が抜けているところ、申し訳ないんですけどね。
「あのさ、お嬢さん」
「お嬢さんとか言うな」
「ああごめん」
 でも見た目お嬢さんなんだもんさ。
「あのさ、オレの精霊石欲しがってるみたいだけど、ムダだぜ? これオレの銘入りだもん」
 そう言った途端彼の目つきが変わった。
 うわコワ。そりゃ無理ないけどさあ。
「銘入りだと!? その歳で、どうやって」
「しょーがないじゃん。この精霊石の剣、オレの誕生祝いでもらったんだから」
 普通に誕生日の祝いとかではなく、生まれた時に祝いとしてもらった品だ。

 精霊石ってのは実に妙な鉱物で、一部では、意志を持つ無機物、なんて言い方をされていたりする。長年近くにおいて愛用していると、その使用者との相性がどんどん良くなって行く不思議なアイテムだ。で、そうなってくると、その精霊石は他の人間が使用しても、効力を発揮しなくなってしまう。
 そうなったものを、俗に銘入りと呼ぶのだ。
 かれこれ、20年そばに置いてるからなあ、これ。
 普通は誕生祝に精霊石なんてもらう奴は滅多にいないから、想像もつかなかったのは当然だと思うけど。
 気の毒に。
「そういうことは、最初に言え……ッ」
「そんな暇くれなかったじゃんよー」
 彼は、ガックリと肩を落とした。

 一見すると、可愛らしい少女としか見て取れない魔法師は、胡坐をかいて座り込んだまま、疲れ切った眼差しで一点を見つめている。いや、何も見てはいないのかもしれないけど。全身大打撃を喰らってへたり込んでいるオレの姿も、至近距離にして見えているのかいないのか。

「白の塔を知っているか」
 ポツリと呟く声。

 白の塔……?
 オレは記憶を辿った。
「名前は知ってる」
 白の塔といえば、アレだ。世界中の魔法師のエリートで構成される、魔法使い集団だ。
 オレが所属しているハンターギルドと同じように、その筋に長けている者が所属している機関、てことだけど、正直彼らが集まって何をやっているのか、どんなことをやっているのかは、まったくの謎。そして、世界各国に支部を持つハンターギルドと違って、白の塔はこの世にひとつしか存在しない。といっても、白の塔という機関そのものを、オレはこの目で見たことがない。
 白い塔の中で魔法師たちが切磋琢磨して魔法力を磨いている、というような見解で合ってるのかな。
「白の塔の内部情報は公にされていないから、名前しか知らないというのも当然だな。むしろ一般人はその存在すら知らないはずだ。だが実際やっている事は案外地味なことばかりなんだ。技術を磨き、魔法力が必要な場面には機関の人間が派遣される」
 うん、確かにそれだけ聞くと地味っぽい。
 大体、魔法力を自在に扱える人間自体が相当に少ないらしいから、そこいらでお目にかかることなんて滅多にない。だから彼らが普段どんなことをやっているのかも、わからないし想像しにくい。どこぞの王様の外交の護衛だとか、機密物の搬送時に活躍しているなんていう話は聞いたことがあるけど。
「だから、公にされていないから知っている人間は少ないが、白の塔は3年前に壊滅しているんだ」
「ええッ!?」
 そいつは初耳だぞ。
 道理で最近噂を聞かないはずだ……って、もともと噂なんてほとんど流れてこないってば、オレ。
 いや、ひとりボケツッコミしてる場合じゃなくて。
「なんで!?」
「……」
 いや、なんでってことはない、か。
 3年前といえば、大きな騒乱がひとつあった。
 この国では直接的な被害は無かったから、その事件に関して大きな危惧を抱いている人間は少ないけど、あれは、尋常じゃなかった。
 エルフの末裔だとか言われている召喚師たちの住んでいた大樹海や、精霊石の大量生産国が襲撃を受け、精霊石そのものの集積体と言われた原産国である島国は、国そのものを丸ごと破壊され、滅ぼされた。
 世界各地で起こった破壊活動は、どれも他の国との国交が極端に少ない場所だったから、誰も身近な記憶としては留めていない。
 各地で一斉に起こり、あっという間に鎮まってしまったせいもある。
 そうでなくとも、情報の入りにくい他国で起こった事件なんて、ピンと来ないのが普通だ。せいぜい、そのせいで精霊石が希少価値になってしまったという事実があるだけで。

 その事件の被害に、白の塔も遭ってたのか。

「オレとかハンターギルドの連中は、騒乱を起こした犯人は白の塔からの出奔者じゃないかって思ってたけどな? でかい魔法を使って攻撃してたし。塔が壊滅したってのは、それと関係してるのかな」
 要所要所でほぼ時間差無しで起こった事件だったから、魔法師数人(か数十か数百か)が、完璧な連携を保って計画的に起こしたんじゃないかってのがオレたちの見解だった。で、一国を叩けるほどの魔法師といえば、白の塔の関係者なんじゃないかと。
 頭の中で事件を組み合わせてみるオレだが、その解答には首を横に振られてしまった。
「白の塔は関係ない。犯人は別にいる」
 そうなのか。
 てか、やけに詳しいな。
 あ、アレか。こいつも魔法師な訳だから、白の塔の一員ってわけかな? てことは、もしかしてズバリガッツリ被害者?

「オレのせいなんだ」
「は?」
 なにが?

「各国の襲撃はどうだか知らないが、白の塔が壊滅させられた原因は、オレにある」
 ええ?
 それは一体、どういう事なんだろう。





==椎名の呟き==
あーもー、目立ちませんけど、ずんどこ風呂敷がでかくなってきましたよー。回収忘れのないようにね、椎名さん。

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2006.12.23
てな訳でたまには近況も。


コミックで無駄遣いしすぎ……orz
マ王大研究とか腐女子的なものを買ってうはうはしてみたり、足洗邸で義鷹を見つめていたり、もやしもん新刊をフィギュアつきで買ってしまったり。
細菌フィギュア、どこにつけりゃいいんだい……。
どうも最近気付いたんだけど、椎名は虫とか細菌とか微生物の類、けっこう好きみたいなんだよね~。
DSのお勉強シリーズ理科編(正式なタイトル忘れたよ)、いつか買っちゃうかもしれないよ~w
(ミジンコとかいいじゃない)



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2006.12.23

 数秒動きを止めてしまったオレ、目の前の魔女が再び臨戦態勢に入ったところで我にかえった。
 馬の尻尾のように後頭部で束ねまとまられた赤毛が、ふわりとなびいて空を切る。瞬時にそれは、彼女の身体ごと至近距離まで迫ってきていた。
 ぼんやりしている場合じゃありませんでしたね。
「ちょっと、ちょっとお嬢さん、せっかくそんなかわいい顔してるのに、眉間にしわ寄せて他人に殴りかかる生活なんて、人生半分損してるよー!」
 ついつい叫んでしまった言葉に、魔女は更に表情をきつく歪ませる。
「容姿は関係ないでしょう」
 いやそりゃそうですが。
 ブンブンと高速で繰り出される槍の攻撃を、ヒョイヒョイとかわしながら、目の前の人物をついついしげしげと観察してしまう。よくもまあ、長身で重量もありそうな槍を、苦も無く振り回せるもんだ。
 まあ当たらなければ意味がないのだが、なにぶんオレはプロのハンターであるからして。そこいらのなんちゃって格闘家なら、簡単になぎ倒せる技術と力はあるよなあ。魔法師は、体力ないのが多いって話だけど、こういうのもいるんだな。
「でも、悪いけどオレ負けないから。やめといた方がいいってば! 顔や身体に無駄な傷つけたくないだろ?」
 ギリ。魔女が歯噛みしたのがわかる。
 うはあ……怒ってる怒ってる。
「怒られついでに言うけど、自分より弱い女の子に攻撃ってしにくいんだって! 結果の見えてる戦いはやめようよー!」
 ピタリと、魔女の動きが止まった。
 オレの言葉を聞き入れた……わけではないっぽいけど。
「……かわいいとか弱いとか女の子とか……」
 わなわなと震える彼女の空いている方の掌に、青い光がみるみる集積して丸い形を形成していく。
 うーわ、なんかヤバそうな気配。
「知った風な言葉をポンポンポンポン吐くな!!!」
 ぎゃ、キレた!!?

「オレだって好きで女やってるんじゃねえよボケ――――ッ!!!」
「うぎゃ!!」
 いきなり台詞が男前――ッ!

 魔女の掌から放たれた青い光は、ぶっちゃけまったく見えなかった。
 目にも留まらぬその速度。
 気付いた時には、俺の身体は数メートル後方へと吹っ飛んでいた。
 その時に感じたのはバカでかい衝撃だけで、痛みだの炎のような熱波だのが、一瞬後から襲ってきた。痛え、熱い、もひとつおまけにイッターイ!!
 オレは大地にひれ伏したまま、さすがに今回は即座には体勢を整えられない。

 ていうか、なんですって?
 好きで女やってるんじゃないってのは、うん? どういう意味なのかな?
「えーと、なに? ホントは男に生まれたかったとか? 身体は女だけど、心意気は漢とか、そういう……」

「オレは、男だ!!」
「……えー?」
 よくわかんなーい。
 よくわかんないけど、憤怒の表情は、マジで怖いよお嬢さん。
「生まれたときから、オレは男だ!! この身体はオレのじゃない!!」
 ????????
 えーと、何を言っていますか、この人ー?

 右手に槍を握ったまま、それでも全身の力が抜け落ちたように、魔女はその場に胡坐をかいて座り込んだ。
「本当なら、精霊石なんて必要なかったんだ……オレの本来の身体なら……クソッ」
 言っている内容がわからない。
 本当は男だとか、本来の体だとか、まるで今は他人の身体を使っているとでもいうかのような、その口ぶりですが。
「えーと? その身体は、本当はあんたのものじゃないって?」
「そうだよ」
「で、今は女の身体を使っているけど、本当は男だって?」
「そうだ」
 そんなことが、有り得るのか?
 他人の身体で行動するなんて、簡単にできましたっけ。
 そりゃあ、嘘を言っているようには見えないんだけどさ。

「もしかして、なんかめっちゃ訳アリ……?」
 ホフク前進のままズルズルと近づいたオレの言葉に、魔女(でいいのかなあ)はまるで小馬鹿にしたような視線を向けてきた。
 うう、斜めに見下ろさないで下さいって。
「当たり前だろう。理由もなしに強盗なんてやるものか」
 いやあ、ただの金目当てって連中も掃いて捨てるほどいるけどさ。

 オレがようやくその場に上半身を起こすと、彼女(彼)は、ガクリと俯いて、深々と長いため息をついた。




==椎名の呟き==
実は男前な魔女、ポニテですよ、ポニテ。
何気なく決めた設定だけど、けっこう趣味丸出しなのかなあ?
(言いたいことはそれだけか)

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2006.12.22

 青い空。白い雲。輝く緑の大地。
 なあんて穏やかな午後のひと時だろう。

 ……って、なあ。

 目的も無く(いや、あるんだけど)こうやって外でゴロゴロ過ごすようになって、今日で何日目だ? 3日目か。まだそんなに経っているわけでもないか。うん。……いやいや、充分だってば。3日も何もせずにうすらぼんやりと空を眺めてられるオレって、実際凄いって。
 朝からぶらりと散策に出かけて、日が落ちるまでぬたぬたと過ごし、夜になったらひっそりと佇む街外れの酒場で一杯ひっかけて深夜帰宅、なんて。
 働き者のオレ様、飽きます。そろそろ限界です。

 噂の魔女ってヤツ、いい加減現れてくれないものかなあ。
 向こうがどこにいるのかわからないから、こっちはただ待つしかないってのに。わざわざわかりやすいように、精霊石で出来たブレイド、腰から引っさげて日がな一日寝転んでるんだからさ。
 穏やかに晴れた日が続いてるけど、今は一応冬真っ只中なんだぜ? すがすがしいを通り越して、けっこう寒いんだけどな。

「暇すぎる……」
 ついつい独り言を洩らして、寝転んでいた草地から身体を起こせば、目の前に広がる湖が反射する光に目を射抜かれる。
 なかなかの絶景、と思う暇も無く、ザクリと鈍い音が背後から聞こえた。
 つい今しがたまでオレの頭があった場所に、いや、正確に言えばギリギリはずれた、頬を掠めそうな位置に、大振りな槍の鋭い刃が突き立っていた。

「運が良いこと」

 鈴を転がすような声と共に、なかなかの細工を施された槍が、強い力で引き抜かれる。
 オレの後方2メートルほどの場所に、黒に近い紺色の外套を羽織った人物が、槍を構えて立っていた。
 あああ……やあっと現れてくれましたか。
「それとも、運ではなくて? 私の気配を読んで避けたのだとしたら、大したものなのだけれどね」
 なるほど、情報はデマではなかったらしい。
 フードを深く被っていて顔は見えないけど、小柄な身体や高い声は確かに女性特有のそれだ。でも魔女だなんていうから、ついうっかりワシ鼻の婆さん的なものを想像しちまってたのに、思ってたより若そうというか、むしろ、少女? 的な?
「その身に着けている精霊石を渡しなさい」
 言葉と共に、魔女が槍を構えた。
 見かけによらず力持ちィ~。
 というか。
「なんで魔女が槍なわけ? 魔法使いは杖を振るモンなんじゃないの?」
 そんな物騒なもんを振り回す魔法師なんて、聞いたことないよー?
 オレが疑問を投げかけても、魔女は槍を構えた手許を緩ませたりはしない。
「いつの時代の先入観で物を言っているの? 時代遅れもいいところ」
 はあー、そうなのか。
 なにぶん、魔法師自体の人口が少ないもんで、あまり本物にお目にかかったことがないんですよ。
「いいから精霊石を置いて去りなさい!」
 いきなり、魔女はブンと槍を振り回した。
 オレごと空気をなぎ払うような勢いだが、避けられないほどのスピードじゃない。身体を使った戦闘は、本業じゃないんだろうになあ。
 ヒョイとかわすと、魔女は顔色を変えた。多分。
「やはりさっきのは運じゃないってことね? 何者……」
「普通の人間だったらヤバいくらいの威力はあるけどね~。オレハンターだもん」
「ハンター!?」
 一般人は、こんなでかい精霊石を使った剣なんて持ってませんて。もっとも、中央ギルドの中でもこんなものを持ってるのはオレくらいだけど。
「ハンター相手にいさかい起こさない方がいいと思うけど。面倒なことになるよ?」
「うるさい!」
 ブンッとまたひと振り。
 おおっと、今度は危ない。なかなかどうして、槍の扱いに慣れているようではあるけど。
「あれだよね。魔法力が足りないから、精霊石が欲しいわけだろ? そんでもって、その精霊石は手に入ってないんだから、魔法力不足を補うためには、実戦で使える武器も技術も必要って、つまりそういうことだよね。その槍は」
「……ッ!!」
 瞬時にして、槍を構える魔女の両手に青い光が生まれた。
 みるみる槍全体を覆いつくしたその光は、まといきれない輝きを、空気中に散らしながら、力を蓄える。
「甘く見ないで!!」
 うわー、ヤバい。当たったら痛い。
 槍を真正面に構えて向かってくる魔女の身は軽い。ウエイトはないだろうけど、スピードは超能力級じゃないか!? さっきのはやっぱり多少手加減してたって訳か。
 間一髪横に避けたけど、まとった魔法力だけは、完全には避け切れなかった。
「……ッだあアァ!!」
 喰らう衝撃は想像以上。いってえええ~。感電、に近いのか、これは?
 衝撃で吹っ飛んだ身体を即座に立て直すと、真正面に低い姿勢で立つ魔女のフードが、オレとは逆の方向への力のあおりを食らって、ふわりと肩に落ちた。

 あらわになる魔女の赤みの勝った長い髪と、大きな茶色の瞳。
 俺は痛みも忘れてきょとんと見入ってしまった。

 あーらら。かわいい顔してるんじゃないかあ。





==椎名の呟き==
なんつーかもう、日記形式で連載ってのは無理があるものだと、早々に諦めてしまった感があります。はい。
短くて面白い話が書ける人がうらやましいんですよね~TT

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2006.12.21

「コーラスさん、その収穫物は本日のものですか」
 早速のツッコミですか。

 日帰りできるはずの行程を丸二日もかけたオレ、二日目の夜遅くにギルドに収穫物のお届けに参上したのだから、事務員の表情があからさまにイヤな感じに歪むのも無理はないが。
 中身が中身ですからねえ。
 死んだ後の腐敗速度がすこぶる速い三本角ウサギ。しかもその姿と腐敗臭といったら、他の追随を許さない阿鼻叫喚絵図であるらしい。オレは実物を見たことがないんだけどね。現在肩から背負ってはいるが。
 まあ、すぐバレる嘘をついても仕方がない。
「いやー……昨日の……」
「今回の討伐は、三本角ウサギでしたよね」
 うう、切り返しが早いです、事務のおねーさん。
「そうデスが……」
「では、その中身はどこか遠くで解体して、角だけを持参してください。三本で一頭の計算で報酬を出しますから」
「えええええ!!」
 この中身を、自分で解体しろと! オレしばらくご飯食えなくなっちゃうじゃん!
「何のための近距離行程だと思ってるんですか。三本角ウサギの腐敗速度の速さは知っているでしょう」
 そうだけど。それはそうだけど!
 オレにだってそれ相応の事情というものが……って、寄り道して食い倒れてたってのは事情とは言えないのだろうけど。そこは、何とかご慈悲を与えてはくれないものか。
「……まあ、冗談ですよ。それはこちらでお預かりします。ですが、焼却してからの処理になりますから、報酬のお渡しが遅くなりますよ」
 ああそうか。普段なら歩合制の場合、収穫頭数ですぐに報酬金額が割り出せるけど、今回はそうはいかないってわけか。
 三本角ウサギの角は、炎で焼いたくらいじゃビクともしない強さを誇るから、焼却した後でも頭数を割り出すことはできる。だから武器や飾りに重宝するってわけで……ビバ三本角ウサギ。証拠が残る収穫品で良かった良かった。
「本来まとめて焼却するものを、別途で処理するんですからね。あまり手間をかけさせないで下さいよ。それと、今回の依頼からは外れてもらうことになります」
「ええ!?」
 あと数日はこれでやってこうと思ってたのに! オレ、そんなにデカいヘマをやらかしたってこと? ウサギ腐らせたから!?
「変な顔しないで下さい。単にね、との808番が頑張っているので、早々に間引きが終了してしまいそうなんです」
 との808番って誰だ。知らないヤツだ。
 あ、あれかな? 荷車引いて張り切ってた奴。きっとそうだ。どうせ一日で何度も往復したりしたんだろう。体力有り余ってそうだったし。
「それと、ちょっと急な話が入りまして、できればコーラスさんにはそちらに回っていただきたいんですよ」
「急な話?」
 事務のおねーさん、近くの引き出しの中からガサガサと紙の束を漁りだす。
「最近、博物館や宝石商を狙った盗賊の噂があちこちから出てるのはご存知?」
 んー、うすらぼんやりと。
「どうも、狙われているのは精霊石のようなんです」
「精霊石?」
 何のために。
 そりゃあ精霊石ってのは、それなりに高額取引されるものだけど、金が目的にしたって、博物館の守備はそれなりに高度だし、宝石商が持ち歩いてるのなんて、ほとんど装飾目的のクズ石ばかりじゃないか。
「その賊は魔女だ、と報告されているんですけどね」
 ……魔女。ということはだ。
「精霊石の本来の効果を知ってるってことかな?」
 オレの呟きに、おねーさんはただ頷く。
 精霊石は武器に使われることも多いが、さらに有効な活用方法がある。魔法力の増幅だ。ただこれは一般にはあまり知られていない。ハンターギルドや一部の機関の機密事項だからだ。それなりに、あちこちで情報が漏れ出しているだろうとは思うけどね。
 確かに欲しくても手に入りにくいものだから、盗賊に狙われる可能性がないわけじゃあない。
「被害はどのくらい?」
「襲撃回数は激増してるんですが、実害は今のところ皆無です」
「皆無!?」
「博物館や展示場の類は管理が厳重ですし、宝石商の持ち歩いているものはほぼクズ石です。賊は、硬度純度の低いものには目もくれないようで」
 それ見ろ。そんなのを狙ったって、たかが知れてるんだ。もしもそいつが魔力増幅のために石を欲しがっているなら、そんなところ狙ってもダメなのはわかりきってるハズなんだけどなあ。
「なんか、闇雲に精霊石欲しがってる?」
「そのようですね。どうしてか、精霊石を狙っている以外は他のものに手を出したり人を傷つけているわけではないので危険度は低いのですが、このままでは安心して街を歩けなくなりますからね。あなたにはその調査と、できれば確保をお願いしたいのです」
 それはいいけど……。
「オレひとりだけ?」
「必要なら増員もしますが、あまり大きな警戒態勢を敷いても混乱を招くだけですので。相手はひとりのようですし、さほど強い魔法力を持っているわけではないようですから」
「なんで、オレ?」
「ギルドではトップクラスの実力を誇るハンターでしょう?」
 ウサギは腐らせるけどね。
「それに」
 おねーさん、チラリとオレの腰のあたりに視線を流した。
「コーラスさん愛用のその剣、精霊石で出来ているものですよね」
 ええ。
 そうですけどね。
「つまり、手っ取り早く囮になっておびき出せ、と」
「そうです」
 にっこり。

 おねーさん、まるで恋人に向けるかのような晴れやかで素敵な微笑みは、勘弁して下さい。





==椎名の呟き==
あれえ、おっかしいなあ。
予定では、この半分量くらいの長さの予定だったんだけどな?
どんどん日記形式と言えなくなっていく……。

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2006.12.20

 仕事の帰りに、子供たちの多い新興住宅街をゆるゆると歩いていたのがまずかったらしい。

 石畳の路上で、もっさりと子供たちに囲まれてしまった。ワイワイぎゃわぎゃわ、ギュウギュウとおしくら饅頭状態で纏わりついてくる子供、こども!!
 各ご家庭からひとりふたり、三人四人と、ジョロジョロと溢れ出て来たときには戦慄が走ったよコーラスさん!!
 なんだなんだ、この騒ぎはナンだ。
「お兄ちゃん、神様のおつかいなんでしょ! その袋の中、プレゼントなんだよね!!」

 あああああ。
 すっかり忘れていた。ばかばかオレ。
 今日は年に一度の、神様の下界ご機嫌うかがいの日じゃないかあああ。

 今日はアレだぞ。一年に一度、神様が世界を創造したと言われるこの日に、地上の皆さんお誕生日おめでとうとプレゼントを引っさげてやってくるという、胡散臭い記念日じゃないか!
 しかもだ、神様ひとりじゃ下界の人々にプレゼントを配りきれないからと、無数の使いを一斉に下界に派遣するのだそうだ。何でもその使いは、目立つように赤い服を着ているのだとか。
 ……オレ今日、渋めの赤の上着羽織ってるな。単にこの上着、衝撃に強く出来てるからハンター稼業で重宝してるだけなんだけど。うう、いちいち間が悪い。
 どこの世界でも似たようなイベントがあるのかなあ。
 毎年この国の政府がささやかな記念品を各家庭にひっそりと配布しているせいで、子供たちの多くはこの日に降臨して来る神様とその使いの存在を、心から信じているらしい。
 実際のところ、神様がプレゼントなんかぶら下げて下界を散策するなんて現場にはもちろん居合わせたことがないこのオレ。というか、そんな神様を見たことがあるなんて話は、生まれてこのかた聞いたこともないっての。
 所詮人間が作った後付けの記念日だろうがよ。
 神様ってのは、みんなの心の中にいるものなんだぜ。ははははは。なんて。
 あいにくとオレは、幼少から超現実的な英才教育を受けていたせいで、いるのかいないのかわかりもしない神様の存在など、信じたことがないのだよ!
 その英才教育の内容はどんなかって? それはまた今度。

「プレゼントはなーに? その中、何が入ってるの!?」
 爛々と輝く子供たちの瞳。
「えーと……」
 この袋の中には、今日討伐した三本角ウサギの亡骸が、ぎっしりと詰まっているのですよ。
 決して口を開けないで下さいませ。

 なんて路上で往生していたら、子供たちに混ざって、大人たちまで顔を出してきた。
 よもや彼らまで、オレを神様のおつかい扱いするんじゃないだろうな?

「こらこらあなたたち、お兄さんに迷惑でしょう!」
 少し離れなさい、と、数人の保護者らしき人物たちが、オレから子供たちを引き剥がしてくれる。オレと子供たちの間に、涼しい空気が割り込んだ。ああ、助かった。
「子供たちがご迷惑をおかけしてごめんなさいね」
 ……ほ。さすがに大人たちは、盲目的に神様の使いを信じているわけではないらしい。ひと安心。神様を強く信じるこの地域に来てまだ数年、この地において家庭という空間で過ごしたことのないオレにはどうも勝手がわからない。
 最初に声をかけてきたご夫人に、軽く会釈で答えれば、記念日にうかされたような、極上の笑顔が返ってくる。
「聖なるこの日に神様のお使いのような姿でいらっしゃるんですもの。せっかくですからうちで食事でもしていってくださいな。ぜひ!」
「ああ、それならうちでも、ぜひ!」
「それじゃうちも、ぜひ!」

 …………そうでした。
 ここいらではこれもあるんでした。
 地域で大なり小なり差もあることでしょうが。この地域では、今日この日に外をほっつき歩いている人間は、容赦なくそこいらの家に引きずり込まれ、歓迎と接待をこれでもかと浴びせかけられるんだった。
 お祝いは、みんなでしたほうが楽しいんですよね、そうですよ。
「お腹もすいていらっしゃるでしょう? さあ!」
 いやね、そりゃ腹は減ってますよ。こちとらモンスター討伐の仕事の帰りですからね。でもね、だからできれば早いトコ中央ギルドに帰還して、ゆっくりと羽を伸ばしたいと思ったりなんかして……。
「さあ、さあ、さあ!」
 ううう、お断りできる雰囲気じゃない。
 まあねえ、断わる理由もないけどさあ。タダ飯にありつけるわけだし?
 地域全体を上げて祝いムードの華やかさを、オレの付き合いの悪さでぶち壊したくはないんだけどね、確かに。

 もうこうなると、お言葉に甘えて見知らぬおうちにお邪魔するしかなさそうだ。
 仕事の後のゆったり静かなひとときは、今日は諦めるしかないんだろう。
 潔さも時には必要だぞ、コーラスよ……。


 結局夜が明けるまで、これでもかと美味い飯を食わされ(後半味がよくわからなかった)、翌日も祝いムードのあおりを食らってあちこちに引っ張り込まれて、いよいよ意識が浮遊しだした頃、ようやくオレは解放された。
 まさか住宅街ひとつを通り抜けるのに、丸一日以上を費やしてしまうとは……。
 まあ、それは別にいい。
 過ぎてしまえば楽しい時間だったと、表現できなくもない。
 こうなって、今心から心配していることがあるとすれば、ただひとつだ。
 肩に担いだこの袋。
 口を閉じれば密閉状態になるこの袋の中で、死んだら速攻腐り始める三本角ウサギの亡骸が、一体どんな素敵状態になっているのか。
 それだけが、本当に心配だ。というか恐怖だ。


 中央に帰って、この袋。マジで、心底。
 ……開けたくないなあ……。





==椎名の呟き==
えーと、ちょっと早いですけど、クリスマスネタって感じで。
クリスマスという名称ではないですけど、ちょっとやってみたくて。

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2006.12.19

 今日も一日ご苦労さん、オレ。と。
 一応確認のために、腰のベルトに無造作に差し込んであった紙クズ、もとい依頼状を広げる。

『ハンターID への153番 コーラス・サンレイク 殿』

 ポーラス西中央南部東地区の
 三本角ウサギの大量発生現場の間引き作業をお願いいたします

 ポーラス中央ハンターギルド事務局


 ……とな。
 凄まじく曖昧な依頼状なのはさておき。
 今日はこんなモンでいいんじゃないかなあ~と自己判断で中央ギルドに帰るとしよう。
 こんなちっさい依頼ばかりこなしてたら、ハンターとしての誇りも自覚もずんどこ粉砕されて行きそうな勢いなんだけどね。最近凶悪モンスターも大暴れしないから仕方ない。なんて、モンスターの襲撃とか望んでるわけじゃないけども、決して。
 しかしだな、依頼主である中央ギルドの施設から日帰りできる距離を、討伐した三本角ウサギがみっしり詰まった袋を肩から引っさげてのらくら歩くってのも……。
 こんなことがしたかった訳じゃないんだけどなあ。

 昔は世界中に、モンスターなんて存在しなかったらしい。
 いつから、どうして人間を襲うモンスターが出現したのか、諸説はあれど、どれも曖昧で微妙。そのせいで人間は魔法やら戦術やらを発達させ、現在のように対抗策として使いこなせるようになったというのだから、まあそう最近の話でもないんだろう。何百年か何千年か知らないけどさ。そういう勉強してないし。
 モンスターの討伐やら、時には人間の不埒な賊なんかの粛清に欠かせないのが各地のハンターギルドって機関で、ぶっちゃけこの機関に所属していない人間のこういった活動は認められていない。というか単に正式な依頼状なしには報奨金が出ないだけなんだけど、行き過ぎた行為が発覚すれば、それは罪にもなる。
 モンスターだって実は、害のない奴らだって結構いるんだな。
 人間相手の場合だって、どんな悪人だろうが、個人で勝手に裁いて回られたら訳わからん事態になってくだけだし。
 この三本角ウサギだって、本当はそんなに危険なモンスターじゃないんだけど。
 ここ最近西中央南部東地区で大量繁殖しちまって、餌の激減が原因で人家を襲う事件が大発生してるから、その間引き作業の依頼が発生したって寸法で。
 ついでに言うなら、この三本角ウサギの頭に生えてる三本の角。これ武器だの飾りだのに最適らしい。時々中央ギルドは、こういう収集品目的の討伐命令も取り扱う。

 なんつうか、それってどうかなあ~とは、思うんだけどねえ。
 モチベーション激ダウンというか。

 多少報酬が良くても、そういうのは、どうもやる気が起きないのが本音かな。今回みたいなのは、別の目的もあるから納得ずくではあるけれど。
 オレだって生活する金に困ってないわけじゃないし。

 こいつらにしたって、亡骸をばら撒いてくるわけにはいかないから、身体ごとギルドに持ち帰りはするけども、後には角を残して焼却処分だよ。こんなテンポの悪い間引き作業、オレを含め、依頼を請けた数人の作業で、あとどれだけかかるやら……。いやでも、荷車引いて出かけてるヤツもいたよな、確か。オレはそこまでやる気がない。今回の報酬は討伐頭数の歩合制だけど、そんなに大金はいらない。生活に困らないだけの金が手に入れば問題なし。
 せめて袋の中にすし詰めになってるこいつらが、食用にでもなれば少しは気分も違うんだろうけどな。


 ……食っちゃおうかなあ。こいつら。


 いやいやいや、いかんいかん。どうも腹が減ってきたらしい。
 このウサギ連中は亡骸放っとくと、速攻腐りだすモンスターだぞ。身体に変な細菌ごっそり持っているに違いない。てか、腐らなくてもモンスターは食うなよ、コーラス。
 早いトコ帰還して、飯食おう。オレはまだ腹から胞子飛ばしたくない。
 そんで明日も元気にウサギ狩りだ。

 て、はぁ~あ。
 いつになったら、目的果たせるんだろうなあ、オレ。





==椎名の呟き==
第一回、説明臭くてすんません……。
つうかすでに日記っぽくないじゃんね。あーあ。
なんかまだ、勢いもついてないし!
この連載、長かったり短かったりライトだったりシリアスだったりと、節操のないブツになると思われます。ご了承を~orz


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2006.12.19
あまり堅苦しくない、お手軽な小説を書けたらいいな~などと考えて、こんなブログを作成してしまいました。

起承転結ナンのその、フィクションの中の登場人物の日常を、日記風に表現してみたいと思います。ので、あまり壮大な展開は期待しないで下さい;;
毎日更新は難しいかもしれませんが、どうか大目に見ていただきたく候(いきなり予防線)。
大まかな展開は決定してますが、どのくらい長く続くかは未定です。
寄り道脱線おふざけなんでもありで!

とりあえず開始いたしますタイトルは「コーラス・ブレイド」
普通にファンタジーな、冒険、モノ? なの?
自信なさげだね
主人公は放浪の少年だか青年だかの「コーラス」。
なんか、タイトルまんまですね。思いつきませんでした、ごめんご。

ん~、名前の由来?(別に訊いてないよ)
某オンラインゲーで使ってたキャラの名前です。あっさりとな。
全然まともに使ってやれなかったので、ここで活躍させてやれればなと。他にもそのゲームで使用していたキャラ名を出す予定なので、管理人椎名とよく似た名のキャラも出てくる可能性が大……。ていうか出ます。

ゆっくりまったりと、焦らずご覧下さい。
お願い♪


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オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
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