オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2007.01.02

 街に戻れば薬があるというのはつまり、街に戻らなければならないということで。
 当然のことなのだが、結局はバカ面さらして街に入らなくてはならないのだと気付いたのは、街に入ってからだった。

「ディク先生。森にお出かけ?」
「ええ。今帰ったところです」
「先生! こんにちはー!」
「はい、こんにちは。風邪はもう良いようだね」
「ディク先生! 昨日は助かりました!」
「あれからどうかな? もしも痛みがひかないようなら……」
 街のあちこちから声がかかる。何だか人気者っぽいイメージだなあ。
 でもあの、できれば早くどこか人目につかない場所に、避難したいんですけど……。
「ははははは、ディク先生?」
 歩きながら、颯爽と前を行く背中に問うてみた。
「ディクスン・ラックといいます。ディクで結構」
「そうなんだ。あははははは」
 いちいち笑う自分が鬱陶しい。というか、いい加減疲れてきた。お腹が痛いとかもう通り越して、なんか痙攣みたいの起こしてるよー。

「ほら、そこの建物の二階が私の家ですよ」
 指されてその建物を見てみれば、そこは通りから店中が見渡せるような作りの酒場であるらしい。昼間から客を入れてるようだけど、悪い雰囲気の場所じゃない。外の階段を登って行ける二階と三階が、間借りスペースになっているらしい。
 とにかく家とやらに着いたわけだな。助かったああ。

 招き入れられて、ディク先生とやらは、オレとシイナにひとつずつ小さな包みをよこした。
「まずは即効性のそれを飲んで。すぐ笑いは止まるから。そのあと毒を消すこれを」
 さらに、もうひとつずつ。
「あはははーい」
 大量生産じゃない手作りの薬だから、オレの鼻も利きやすい。妙なものは入っていないようだと素直に口に含んだら、シイナも続いてそれを飲んだ。
 さりげなくオレを毒見役にしたな、お前。
 て、おお、これは確かに。
 見る間に笑いがひいて行く。ずっと顔に張り付いていた笑みが消えて、どんどん人生に疲れた若者のような顔になって行くオレたち。
 いやもうマジで……疲れたし。
「助かった……」
 グラスに注いでもらった水でもうひとつの薬も飲み干して、ようやく安堵のため息が出た。笑ってたのは一時間にも満たないくらいだと思うんだけど、それでも凄いよ、笑いの消耗ってのは。これが数時間続くと思うと、笑い茸の毒も侮れない。
「えーと、ありがとう、本当に助かった。オレはポーラス中央地区でハンターやってるコーラス。で、こっちがシイナ」
 薬の容器を片付けながら、長身の美形は頷いた。
「先ほども言ったが、私はディクスン・ラック。もともと旅の薬師だが、今は少しここで落ち着いて薬売りをしているのだよ」
「街の人の信頼が厚いようですね。声が沢山掛かっていた」
 シイナの言葉に、彼は肩をすくめる。
「仕事柄ね。この街は小さくて、まともな医者もいないから」
 だから、ここに留まってるのかな?
 真相のほどはわからないけど、悪い人間ではないように見える。あくまで一見の話だけど。人望もあるようだしね。
「先生、女の子にモテそうだよね。カッコイイし、薬師なんてやってて」
 自然に出てしまった言葉に、シイナの鉄拳が後頭部に炸裂。
 いったーい。素直な感想述べただけじゃんよー。
「うーん……人に好かれるのはありがたいことだが、女性にモテても困るな。私には興味がないし」
「え、そうなんだ? もったいない」
「それどころではないんでしょう。あまり頭の悪そうな会話を展開しないで」
 人前だから微妙に女言葉。あはは、気持ち悪ーい。
 ……あ、こめかみに怒りの四つ角。また思ってることを読まれたっぽい。
「……」
 ディク先生、口許に手を軽くあてて、少し視線を泳がせた。
「えーと、コーラス君」
「コーラスでいいよ」
「ではコーラス。無理も無いから一応きちんと説明しておくが……」
「うん?」

「私は女だよ」

 え?
「初対面では大抵間違われるから仕方ないが」
「えええええええ!?」
 うそお!
 オレより頭ひとつ分も身長あって、クールビューティーで精悍なその顔でもって、全体的にその、立ち居振る舞いなんかもワイルドで、洋服の趣味だってそれ、ちょっとインテリ男子だぞ!?
 さすがにこれにはシイナも驚いている。めっちゃディク先生凝視してるぞ、お前。
「マジ!?」
「マジだ」
 信じられない。言われても、どう見ても男なんですけど。
 ここにも魂の秘術の実践例が!?
「てうか、どうして俺の周りにこういうのが集まってくるわけ!? 女かと思えば中身男だったり、今度は男の見た目で」
「やかましい!」
 う、シイナ首はやめて首は。そこは絞められたら死ぬ。
「……」
 ディク先生、無言でオレとシイナの手をとった。
「キミにはちょっとサービスになるが」
 ゆっくりと、その手を自分の胸元へと導く。
「う……」
 ふわっと。これは微かながら、やわっと。女性特有の……。ふわふーわ。コートの上から見ただけではわからない、柔らかさが……。
 ていうか先生、片方のコギャルも、中身男ですから。
 じゃなくて!
「一応身体もそれなりに女なんだが。見るかい?」
「わー! ごめんなさい! もうわかった、わかりましたから!!」
 慌てて手を振り払って引っ込めた。
 やわやわやわ。ああ、なんか感触が消えない……。
 シイナ、微妙に顔赤いぞ。これでわかっただろ、もうオレの前でポンポン服脱ぐなよなーって、そういう問題でもないのかもしれないが。
「まあ、わかってくれればよろしい」
 ニヤリと人の悪そうな笑顔を浮かべ、彼もとい彼女は机の上に置かれた紙の束にペンを走らせた。
 そう言われても触っても、やっぱりこう見ると男みたいなんだけどなあ。
「では、これをよろしく」
 ス、とその紙を差し出される。
 なんだこれ。

「薬の請求書だ」

 その台詞と同時に目に飛び込んできた紙面の金額に、本日二度目の精神的クリティカルヒット。
「ご、ごはんが!」
 食べられなくなっちゃう……。

 先生、お触り代とか入ってないんだよね、これ……?





==椎名の呟き==
妙な薬売り登場。果たしてレギュラーなのかイレギュラーなのか。
まあ、そんなに深く考えるような話でもないんですけどねw

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