オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2007.02.28

 ディク先生の作ってくれた夕食は、あまりにもシンプルだった。
 一見、ソルダムとかオレたちの作るのと大差ないように見えなくもないんだけど。何故だかこれが、異様に美味いんだな。
 オレたちよりもほんの少し綺麗な形で素材を切って。味付けはあくまでシンプルに余計なものを使わず。これをきっと適量と言うんだろうな。素材の味自体が好きなオレだけど、上手に調味すると、ここまで素材を美味くすることができるんだなあ。
 感涙。
 オレとシイナが大食漢なのを計算してくれたおかげで、美味い美味いと食いまくるオレたちのせいで夕飯が足りなくなることもなかった。
 召喚獣率いるミリネーズもいたのに。
 もっとも、夕飯で表に出ていた召喚獣はサウロだけだったけど。こいつはミリネの参加する晩餐で、引っ込んでいたためしがない。
 おかげで人数が多いから座れる人口が少なかったんだけど、立ったままでも食べられるような工夫もちゃんとしてくれてたし。女性だからなのか職業柄か、繊細なセンス持ち合わせてるんだなあ、ディク先生って。
 ソルダムは馴染みだから知っているのかと思いきや、ディク先生のこういう一面を見るのは彼も初めてらしい。

 えーっと、そうだった。
 夕飯の味に感動してばかりもいられなかったな。うん。

「じゃあディク先生も、協力してくれるの?」
 食後のお茶まで用意してくれたディク先生に問いかけると、当然だという視線でオレの方に向き直る。
「そのためにここまで来たんだ。キミを助けると言っただろう?」
 有言実行。そういう人だとは思ってたけどね。
「それで本題なんだが」
 数少ない椅子に座ってもらっていたディク先生、おもむろに立ち上がった。
「戦闘要員の数が随分多いようだな。それほどに必要なのか?」
 ハンターギルドの総督と話し合った作戦に、疑問を示すディク先生。
 確かに、力の弱くなっている相手に、かなり多くの戦闘要員を用意している。この半分はサンレイクを囲む海での戦闘用で、対モンスター要員だ。島国という事を考えて、海での活動に強い人間を、ウェルバーさんが募ってくれていた。自ら志願してくれた人間も多い。彼らの援護には、やっぱり水を得意とするエルフについてもらう。
「サンレイクの港から潜入するとして、おそらくそのエルベルンという魔法師が潜伏しているのは、城跡付近と見ていいのだな?」
「うん。城は精霊石を下地とした高台に立ってるからね。港からも一番遠い位置だし、精霊石が守り石の役目を果たしてくれる」
「守り石というのは、こちらにとって不利な存在ではないのか?」
「本当にお守りみたいなものなんだよ。エルベルンだって、城を襲った時にはものともしなかった。無いよりはマシかなって、その程度なんだよね」
 魔法の威力が多少弱くなるとか、その程度のものなんだけど。それでも今のエルベルンにとっては必要なんじゃないかな。
「サンレイク潜入には、もちろんエルフも連れて行く。戦闘要員も大量投入するけど、彼らはサンレイク内にいるかもしれないモンスター対策。城にはオレとシイナ、ミリネとその召喚獣と数名のエルフで行く」
 敵はエルベルンひとりだけど、彼が放つモンスターの数は把握できない。大量にモンスターの活性化を図る力は残されてないかもしれないけど、モンスターは人間の負の感情にも左右されやすい特性があるし、油断は出来ない。
 余裕に見える戦いに必要以上に人員を割くのは、決して無用の被害を出さないためだ。サンレイクを襲う直前の、力のある状態の相手が敵だったらそれは逆効果にもなり得るけど、今回はそうじゃない。
「結界の外には出られないようにするから、一気に片をつけるよ」
 オレにはそれが、出来る。
 サンレイクの結界を知り尽くしている人物がいることにまで、エルベルンは多分気が回っていない。この『オレ』が生き残っていることも、三年間知らずにいたんだろうから。
 これまでは、相手がどれほどの力を持っているのかわからなかったし、ひとりでは結界を解くのに難儀するのがわかってたから手を出せなかったけど、今は違う。協力者がいるし、何よりもエルフの存在がある。彼らがいなければ、今でも手をこまねいていただけだったかもしれない。
「ということは、ソルダムは戦闘員の方に組み込まれているわけだな」
「その通り」
 ソルダムは、エルフと交信を図りつつ戦闘員の指揮にあたる。
 それを確認して、ディク先生はニヤリと笑った。視線はテーブルに置かれた小さな地図に注がれている。サンレイク全体の見取り図だ。
「ならば私も、その戦闘員と共に陽動に当たろう」
「え?」
「サンレイクの面積を考えれば、港から城まで移動するのに一日近くかかるだろう。その間出来るだけ敵をひきつけた方がいいだろう? 私はなかなか適任だぞ。戦闘員が守ってくれるのなら、何の問題もない」
 確かにそれは心強いけど。
「やらせとけって。前にも言ったけど、こいつを女だと思うなよ。でもって、戦闘向きじゃないが、それをサポートさせればかなり優秀だからな」
 任せて大丈夫だ。
 ソルダムはそう言って笑った。なら本当に大丈夫なんだろうな。
「それじゃあ、よろしく頼むよ。オレたちは港から城まで一気に主要道路を通って抜けていく。おおよそ歩く速度でね。それだけわかってくれてれば、方法は任せるよ」
 ディク先生やソルダムたちの部隊がモンスターをひきつけてくれれば、こちらはかなり手薄の中を抜けられる。モンスターってのは直情的だからね。エルベルンはモンスターを活性化させて凶暴化を図っているのかもしれないけど、その行動までは操ることはできない。エルベルンだけでなく、人間には不可能だ。
 ディク先生は、満足そうに頷いた。
「信頼は裏切らんよ」
 うん、信じてますよ。
 こうやって自ら危険に身を投じてくれる、みんなの気持ちと強さをね。


 オレたちの出発は明後日の夜。先発隊は明日の夜には動き出すはずだ。
 これで、全部終わらせるぞ。必ずね。





==椎名の呟き==
本当に『ほんの少しだけ』形が良かったのかは、甚だ疑問ですがね。
ともあれ、また解説の回。ここでジョークのひとつでも飛ばせれば、一人前の男なのにね、コーラス(一人前じゃないのは椎名だ)。

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2007.02.27

 ハイキング半分だった昨日と違って、今日はやたらと忙しい一日だった。
 とはいっても溜まった洗濯物やら洗い物やらを片付けて、夕飯の買い物を済ませてと、半日はもっぱら主夫業(と言っていいのか)で、午後になってからはハンターギルドの総督様と会談してただけだけど。いや、だけってことはないよな。サンレイクに乗り込むための綿密な打ち合わせという、かなり内容のある会談だったし。

「手配はみんな向こうでやってくれるんだから、楽なもんじゃないか」
 あまりに疲れきった顔をしていたせいか、またもあっさりとシイナに考えを見抜かれてしまった模様。
 街中の飯屋のテーブルで突っ伏していたオレ、壁のメニューを指差してみる。
「桃色まんじゅうは食わないの?」
 ケティさんの身体を使っていた時にはオレの金でみっつも食いやがったシイナ、今は心底イヤそうな顔をしてくれる。
「食わん」
 あ、やっぱり。
「アレは甘すぎてダメだ。もしかしてと思って試してみたが、やっぱり甘いものが苦手な味覚は変わってない」
 試したのか……。いつの間に。
「苦手なものがあるってのは、人生半分損しているような気がするな。世の中には甘いものは結構多い」
 いや、そりゃそうだけど、辛いものも苦いものも甘いものに負けないくらいあるんだから別にいいんじゃないかなあ、なんて、オレも甘いもの得意じゃないけど思う。
 やっぱり一度食べられる経験すると、もったいなく感じるものなのか? 未知の領域だからさっぱりわからない。

「こんなところにいたのか」

 急に声が掛かって、オレもシイナも仰天してしまう。
 ここで聞くことになるとは思ってもみなかった声だったからだ。
「ディク先生!?」
 屋外に設えられたテーブルについているオレたちの方へと、ゆったりと歩み寄ってくる長身。なんでこんなところにいるんだろ?
「キミたちが街を出て一日二日のうちに、西地区がモンスターに襲われてね」
 ああ、そうだなあ。中央も襲われかけたあのタイミングで、他の地域も襲撃を受けてるって話があったっけ。
「ディク先生は無事だったんだね」
 勿論、と、ディク先生は頷く。
「ハンターギルドの人間と地区の一般人とで共闘して街を守ったからな。もっとも私は、身体を使った戦闘はあまり本職ではないから、裏方に回っていたが」
「裏方?」
「私は火薬の作成も得意でね」
 ニヤリと微笑む色男。じゃなくて色女。いやなんか言葉が違う。
 火薬、ねえ……。つくづく敵に回したくないタイプの人だな。
「そこでのっぴきならない事情だと判断してキミたちと合流しようと、こうして出掛けてきたのにキミはいないし、エラールに聞いても街中としか言わずにお嬢さんに挨拶に行ってしまうし……まったく召喚獣というのはきまぐれな生き物だな」
 ははは。どこでもミリネの召喚獣には苦労してるみたいだなあ。でもきっとディク先生とエラールは気が合ってるんだろうけど。
「ところで」
 ディク先生はいかにも不思議そうな顔でオレたちを見る。
「シイナはどうしたんだ?」
 ああ……やっぱりそう来たか。
「オレがシイナですよ」
 シイナが冗談めかしてヒョイと手を挙げてみせる。
「……なんだって?」
 さすがのディク先生も、状況を把握するのに時間がかかってるみたいだ。
 そりゃそうだよなあ。つい最近まで小柄な赤毛の少女だった人間が、金髪碧眼のヤロウになってるとは、普通考えない。くそう、シイナ、オレよりちょっとだけ身長高いんだよなあ。
「私を担ぐような人間ではないよな、キミたちは……。話だけ聞いた時は今いちピンとこなかったが……まさか本当に魂の秘術なんてものが存在したとはな。驚きだ」
 ディク先生、あなたは間違ってません。オレだってそんな魔法の存在、微塵ほども知らなかったもんね。
「エラールがやたらと急かすわけだ。色々あったらしいな。話は後で聞くとして、さっきキミの家に寄ってきたが、ソルダムが楽しそうに野菜を切り刻んでいたぞ。アレは一体なんだ?」
 ヤバい。ソルダムが一番、主夫が板についてきている。
「そろそろ夕飯の支度してる頃だし」
「夕飯? それでキミたちは、飯屋なんかで何をしているんだ? 夕食を家で食べなくていいのか?」
 確かにもうすぐ夕食の時間だけどさ。
「これは間食。ハンターギルドに寄って来たら、腹減っちゃってさ」
 ディク先生呆れ顔。オレたちの食欲の旺盛さを理解しがたいらしい。
「まあキミたちに限って太る心配などとは無縁なのかもしれないが……では夕食には戻ってくるんだな。私はソルダムでも手伝うとしようか」
 おおお、ディク先生も料理ってするんだ。って、おかしい話でもないか。一人暮らしの女性だもんなあ。
「ヤツがひとりで作るよりはマシな物を食べさせてやれるだろう。期待して帰ってくるといい。詳しい話はそれからだな」
 やったー、と笑顔でディク先生を送り出すオレたち。いや、ソルダムでも充分食えるものを作ってくれるんだけどね。ゴメンね、オレたち、こんなところで遊び呆けてて。でもオレとシイナのセットは台所に立つのを禁止されてるもんで。

 手を振るディク先生を見送った後で、オレはシイナをしげしげと眺める。
「なんだよ」
 視線に気付いて、シイナはあからさまに顔をしかめた。
 実は「シイナはどうした」というようなことを聞かれたのは、今日になって三度目だ。
 一度目は中央ギルドの受付のおねーさん。彼女はどうしたんだと訊かれたから「ちょっと旅に出てる」と返してみたら、どうせ何か嫌われるようなことをしたんだろうとかなんとか、散々叱られた。理不尽だ。
 二度目は総督ウェルバーさん。彼にはちゃんと説明してあげたんだけど、やっぱり理解するのに相当時間を要したようで、今のオレみたいに、シイナをしげしげと眺めてたっけ。
「実際オレも、実はかなり微妙だったりするわけよ」
「微妙?」
「オレの国は焼かれて滅ぼされて、国民も家族も誰も残らなくてさ。オレはそんな仕打ちをしてくれた人間の、名前と顔しか知らなくてさ。その張本人の姿をずっと心に焼き付けて、絶対に探し出してやると誓って三年間を過ごしてきたわけだよ。あんまり話題に出すことは無かったけど、それこそ三年間、一日たりともその顔を思い出さなかったことなんてないんだ。その憎ったらしい顔がさー、今普通にこうやって隣に並んでるんだから、運命ってのは良くわからん」
「……」
 シイナは無言で瞳をそらす。
 そりゃそうだ。シイナにとってそれは一生の不覚であって、きっと黙ってれば一生引きずるかもしれない負い目なんだろうな。自分の身体を奪われて、その姿、その顔で、ヤツはオレの国を滅ぼしたんだから。そして多分、他の精霊石産出国も。
 何も言い返せないのも無理はない。
 でも、それじゃ困るんだ。
「それでもやっぱり全然違うんだもんな。中身が違うだけで、こうも変わるものかね」
 獲物をひと呑みにしようとする蛇みたいなエルベルンの瞳とシイナのエメラルドの瞳は、本当に別人のように違う。そして、まとう空気も。同じ顔なのに、こうも違って見えるのも不思議だけど、以前のケティさんの身体を使っていた頃のシイナと今のシイナ、どっちも同じシイナに見えるんだから、もっと不思議だ。
「エルベルンの罪は、お前の罪じゃないんだからな。それだけは憶えとけよ」
「……」
 そう無言で複雑そうな顔をしないで欲しいんだが。
「シイナが身体を盗られたことを迂闊だっていうなら、国を盗られたオレなんてもっと迂闊になっちまう」
「……」
 しばらく黙ったままだったシイナ、意地の悪そうな微笑みをオレに向けてきた。
「んーなこたァ、お前に言われるまでもねえよ」
 真意は、きちんと読み取ってくれたらしい。
 シイナは笑顔のまま、立ち上がった。
「そろそろ行こうぜ。連中が待ってる」
「おいおい、待てって」
 上機嫌に見えるシイナが歩いて行く後を慌てて追いかけようとして、グイ、と後ろから肩を掴まれた。

「コーラスさん、お会計」
 それは愛想笑いを浮かべる、店の主人。
「……」
 シーイーナーーー。





==椎名の呟き==
ディク先生、忘れてたわけではありませんよー。
思えば彼女と別れてから、殆ど時間経ってませんね。

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2007.02.25
「長い歴史の中では、稀にエルフが人間と深く関わる事例も無い訳ではない。例えば今回のエルベルンのようなケースもあるがな」
 サウロはエヘンと咳払いする。
「まああらためて話さなければならないほどたいそうなことでもないが、サンレイクの建国にも、エルフが関わっていた訳だ」
「へえ……」
 としか言いようがない。それは初耳だあ。
「前にも話したとおり、人間がこの世界に台頭してきた時から、エルフはその繁栄を人間に任せるようにしてきたわけだが、サンレイクの精霊石に関してもそうだった」
 サウロは遠い目をする。
 つってもサウロが実際にその場に居合わせた訳ではないだろうが。なんて言ったらくちばし攻撃が待ってるだけだから口には出さないけどさ。

 つまりが。
 精霊石の集積体である、この世にふたつとない島。
 その島を代々において護り生きていくという役目を、はるか昔、エルフはひとりの人間に託したのだという。
 それが、サンレイクという国の始まり。
「勿論ひとりだけでは人間の短い人生では限界があるな。託されたその人間は、ある程度の数の人間を集めて集落を作った」
 そして精霊石そのものを使って巨大な結界を作り、精霊石を護るという民族が誕生した。
「精霊石はその力ゆえに、それを欲して戦乱を引き起こす可能性もある。だからエルフは、その石の使い道を人間の間に氾濫させないように努めた」
 何がしかの力があるのに、それを使わないなんてもったいない気はするけどね。確かにサウロ様のおっしゃるように、人間はあまり頭の良い生物じゃないんだろうから、どちらかというとロクな使い方を思いつかないんじゃないかな、実際。
 だから、魔法力増幅だとか結界に使えるだとか、そういうことはサンレイクやハンターギルドの一部の人間しか知らされていなかったと思う。あと多分、白の塔かな。
 一応、長い歴史の中で頑張って護ってきた方なのかなあ。
 最初にエルフにそれを託された人間てのは、よほど信頼に足る人物なんだろうね。
「それを王であるお前が知らんとは何事だ」
 そう言われましてもー。第一オレが王位を継いだ一瞬後には国は滅びてたんですけどね。
「だって一度もそんなこと知らされなかったよー」
「代々それを伝え護っていくという約束を交わしたのだぞ、お前の祖先とは! まあもっとも、あまりに長い歴史だ。どこかで血縁も途切れている可能性もないではないが」
 そうでしょそうでしょ。
 だってオレだって建国史とか勉強しなかったわけじゃないけど、そんな始まりがあったなんて一度だって……あ。
「もしかして……あれかな」
「なんだ」
「そういやうちに、そんな本があったかなって」
「うちにそんな本がって、お前な」
 ソルダム苦笑。
 うむ、まるで絵本でも探すような言い方をしてしまった。
「なんか、オレが20歳を越えたら読みなさいとか言われてる古い書物は確かにあった。一度表紙を見せられただけで、普段は厳重に保管されてたから勿論内容は知らないんだけどね」
「発禁本かよ……」
 シイナ、発想がエグい。
 でももしかしたらその本に、そういう内容が書かれてたかもしれないな。今となっては当然知る由もないけどさ。
「まあ」
 サウロ、ややあらたまった口調になる。
「そうやって伝え受け継がれることが出来なくなった時には、こうやってオレ様のように口頭でそれを伝えてやる存在が現れる。そういうものだな。歴史なんぞというものは」
 確かにそれは言えている。
「それに、サンレイクがこうやって標的になったのも、何もこれが初めてというわけでもない。それくらいは知っているだろう」
 さすがに、それはオレでも知っている。
 ここ最近はなかったけど(最近といっても何百年という単位だけど)、国の歴史が長くなれば、そういう話がまったく無い方がおかしいってもので。サンレイクだって、何がしかの理由で結界が破られたりだとか、外交に手を伸ばしたおかげで侵略されかかったりと、それなりの危機は何度となく体験してきた。
「サンレイク以外の精霊石の産出国にも、同様に昔エルフが護人を配置したものだが、さすがに島国のようにうまくは行かなかった。その辺は人間がそれなりにうまくやっていたようだがな。それに精霊石は、一度無くなったらそれっきりというものでもない」
 まあね。乱獲されれば勿論なくなってしまうけど、精霊石自体は時間をかけて生成されるものらしいし。ホントに時間かかるけど。
「だがサンレイクは特別だ。あそこは精霊石の聖地と言ってもいい。精霊石がなくなったからといって、世界が滅びるわけではないが、あの大量の精霊石が間違った使い方をされれば、世界など簡単に滅びるのだぞ」
 ギロリとオレを睨むサウロ。
 どうしろっていうのさー。
「まあ、その運命すらも、エルフは人間に任せたのだから、どんな結果になろうとも容認するつもりではあったがな。本当の世界の危機なんてものが訪れたその時には、エルフが活動を始める覚悟があったわけだしな」
 その時には、人間の尻拭いに走るわけですね。
 ああ何というか、まさに今がその時なのかもしれないけど。
「大体において、あれほどの精霊石の力を使って張られた結界が、人間に破られるはずがないんだがな。エルフでも無理だというのに」
 そうなんだけどね。
 シイナの身体を得たエルベルンが大暴走して国を滅ぼしたってのも恐ろしい話だけど、あれだけ無茶な力の使い方が出来るヤツのやり方なら、それはまだありえない話じゃないと思える。でもサンレイクのあの結界を破るっていうのは。
「誰かが、故意に結界を解かない限り不可能だ」
 サウロの言葉には頷くしかない。
 誰かが、故意に、ねえ。
 それはサンレイクの中に、国を滅ぼそうとするエルベルンに加担した裏切り者がいるという訳で。エルベルンの狙いに気付いていたかどうかはともかくとして、許可無く結界を解くのはやってはならない重罪だ。
 それに。
 故意に結界を解けるなんて、そんなことが出来る人間自体が限られている。
 これまではもしかして、結界を破る方法なんてのがあったのかなあ、位に思ってたけど、ミリネたちに出会ってそれが不可能だと知ってしまえば。
 やっぱり結界を解いた犯人がいるってことなんだよなあ。

 オレが良く知っているはずの、要人の中の誰かが。
 もう、今更な話だけどね。





==椎名の呟き==
ハイキング続行中なんだけど、コーラス何も食べてない。
お腹すかないんですか。

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2007.02.24

 ソルダムが突貫工事で扉を直してくれた翌日は、実に気持ちの良い快晴だった。
 ハイキングにはうってつけのこの陽気。
 って、この非常時に呑気にハイキングを楽しんでいるというわけでもなくて、ミリネやサウロと打ち合わせをするのに、水場に近い方がいいって言うから湖のほとりまで出かけてきているだけの話だ。
 勿論弁当持参で。
 料理をさせると前衛的な代物が出来上がってしまうオレとシイナは勿論手を出すことは出来ず、人数分の弁当をひとりで作り上げたのはソルダムだ。
 この男、本当に何でも出来る凄いヤツ。
 でも昨日シイナと家に帰ったら、壁際のベッドの上に作りつけの寝床が増えていたのには驚いた。ご丁寧にハシゴつきで。確かにシイナたちがいる間は重宝するんだけど、さすがに3段ベッドにするわけにはいかず。ソルダムは椅子や床で充分なんだって。本当にどこでもどんな状況でも暮らしていける男だな、ソルダム。たまには交換してやってもいいよ。
 と、そういう話はともかく。

「サウロ。なんで水辺がいい訳?」
 地面に敷いたシートの上を歩き回って、直に置かれた数々の食料をビスビスとつつくサウロに問いかけてみれば、たった一言。
「そのうちわかる」
 顔も上げないのか、お前は。
 オレの好物であるピクルスを集中攻撃しているサウロから、それを守ろうと容器に手でフタをしたら、思いっきりつつきまくられた。むしろ刺された。そのくちばしにはオレの手では勝てない。あああ、せっかく食べごろになるまで取っておいたのに。
 そのサウロを避けて器用に食べ物をつまむメンバーを尻目に、オレは釣竿を取り出した。
 いいもんね。オレは今日の夕食確保もするつもりでここに来たんだもんね。
 ここならさすがにアザラシは釣れまい。
 餌をつけて湖面に糸を放る。
 さて、と思う間もなく、いきなり竿がしなった。
「早ッ!!」
 オレってこんなに釣りの腕良かったっけ?
 ていうか、これだけ早いと腕以前というか。
 急いで竿を引いて、それでも逃がさないように慎重に糸を手繰る。
 と。
 釣りあがったのは、見たこともないような水色の、なんというか、綺麗な魚。
「なんだ、これ……」
 糸の先でビチビチと跳ね回るそれを、しげしげと眺める。こんな魚、この湖にいたっけ。何かの突然変異かな。
 その水色の魚が。
 急に、ドロドロとゼリー状に溶け出した。
「うえええええ!?」
 溶けたその身体が、針から離れ落ち、土の上でうだうだと蠢き出す。なんだこのきっしょい生き物はあ!?
「おお、アッシェ。待ってたぞ」
 後方で、サウロが何事もなかったようにその塊に話しかける。
 なに、なんですって!?
 そのゼリー状の塊は、蠢きながら徐々に地面に広がり、みるみるうちに人の形を取り始めた。ただし、下半身は魚のまま。
 人魚か? それは人魚なのか?
 一見美しい女性の姿に変身した、下半身魚の生物。しかし豊満な上半身は、なぜかフカフカのセーターのようなものをきっちりと着込んでいる。長くウエーブの掛かった水色の髪と水色の下半身に、金糸銀糸を織り交ぜたピンク色のセーター。こんな往来で何も着てないのも困りものだが、アンバランスにも程ってものが。それとも、一応この冬流行バージョン、みたいなのがあるのかな? 人魚にも。この冬って、ピンクが流行だったっけ。
 いや、ツッコミどころはそこじゃないだろ、オレ。
 一体この生物は。

「ちょっとアンタ!! なんてことしてくれるのよ!!」

 うわ、しゃべったあ!!
 そりゃ人間の姿してるんだから、しゃべってもおかしくはないけど、さっきまで魚だったじゃん!!
「この私を釣り上げるなんて、どういう了見!?」
 どういうって言われても。ちょっとちょっと。
 この人魚に話しかけたサウロを振り返る。助けて鳥さま。
「そいつはお嬢の召喚獣だぞ、坊主」
 ああああ……やっぱり……?
 なんでそんなのが、湖を泳いでる訳?
「ちょっと、ちゃんと答えなさいよ、アンタ!!」
「召喚獣が普通に餌に食いつくなよ!!」
 仮にも召喚獣なら、なんで放った餌に速攻食いつくかな。そりゃあオレだって釣り上げちゃうってば。
「本能だもの、仕方ないでしょう!? 私は水属性の召喚獣なんだから、それに殉じた生き方をしているに決まっているでしょう!!」
 鳥の餌を食べてるサウロなんて見たことないぞ!? オレの好物のピクルスなら完食する勢いだけどな!?
「ていうか、人間の姿の召喚獣って初めて見た」
 下半身魚だけど。
 すると人魚、えーと、アッシェ? はツンと唇を尖らせる。
「召喚獣は何にだって姿を変えられるわよ。いつもは属性に沿った基本形でいるけど。でも私は基本形が魚だから、エラ呼吸じゃ地上では死んじゃうでしょう!? 召喚師の身体にいる時は別だけど」
 エラ呼吸なんだ……。
 人間の姿でもあくまで下半身魚なのは、単に趣味か?
 オレホントに、ミリネの召喚獣の作成センスを疑いたくなってきた……。
「大体なんで召喚獣が湖を泳いでるんだよ……。召喚師や召喚獣は、一息で空間移動とか出来るんじゃなかったっけ?」
「出来なくはないわよ。でも私は水の中の方がより動きやすいの。水から水へ渡り歩くならお手の物よ。海、川、湖どんと来いってね」
 理屈はわかるけど……。
「アッシェには、調べ物をさせていたのさ。別に誰でも良かったんだが、こいつが久しぶりに海を泳ぎたいとうるさかったんでな」
 サウロ、今度は卵焼きに穴をあけ始める。微妙な親子関係が……。いや、召喚獣は別に関係ないのか。
「アッシェ、さっさと本題を話せ」
 イラつくように言うサウロに、そうだったわと目をぱちくりさせたアッシェは、ホフク前進で敷いてあるシートへと向かう。そして野菜をはさんであるパンを、ムシムシとかじり始めた。
 普通に食ってんじゃん。
「ミリネちゃんの予想通り、あいつかなり力失ってるみたいよお。サンレイクをがっちり結界で囲って、さらに誰も近づけないように、海のモンスターを活性化させてるわ。そんな余力があるなら、力を貯める方に集中すればいいのにね。バカみたい」
「え……」
 それはもしかして。
「エルベルン?」
「そうだ。こいつにサンレイクを探らせていた。結界で固めているということは、やはり力を失って篭城していると見ていいな。あれだけ力を消耗した上に、今の身体は魔法力の弱い身体だ。元通りになるまでにはかなりの時間が必要だろうが、叩くなら早いうちがいいだろうな」
 エルベルンの様子を直には調べられないんだな。そうか、サンレイクの結界は精霊石を使ってるものだからなあ。それもハンターギルドみたいな小さなものじゃなくて、島全体が精霊石だし。エルフでもそこには侵入できないって言ってたもんな。
「まったく、精霊石の結界だけはエルフにも破れんことをヤツが知っていたとは思えんが、偶然にしろ最良の隠れ家を作りやがって。怠慢だぞ、サンレイクの王。せっかくエルフがお前の先祖に番人を任せたというのに」
 へ?
 なんだって?
「番人?」
「なんだ、そんなことも知らんのか」
 知りませんが。
「まあ、人間なぞが憶えてもいられんくらい昔の話だがな。聞きたいか?」
 そりゃあ、もう。オレは無言のまま頷いた。
 仕方ないなと、サウロは思い出したように容器をひとつつきして、ピクルスをぽりぽりとくちばしで噛み砕いた。

 ああ……最後の一個、終了……。





==椎名の呟き==
コーラス、好物ピクルスなんだって。椎名も今日知りました。
つまり今日考えました。
アッシェは人魚なので女性です。何故って、男の人魚ってのはヴィジュアル的に、椎名が引いてしまうからです、はい。昔参加したPBM(多人数参加型ゲーム)では、筋骨隆々のオヤジ人魚と懇意にさせていただきましたが。ディクが。

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2007.02.24

おかげさまで、ブログランキングの方も伸びが良くなってきている様で、いつもありがとうございます。
順位がどうとか、これって好みの問題なのであまり意識しているわけでもないのですが、このブログをご覧になってくださって、わざわざそのお手でボタンを押してくださる、そういう方がいてくださることが、本当に嬉しいです!!
自分ひとりじゃないのね! これを読んで下さってる人は!!
そんなのカウンタでもわかるじゃん、て感じなのですけど、うっかり通りすがってしまった不運な方も中にはいらっしゃることでしょうし……あうあうん。

もちろん、ロムのみの方だって大歓迎ですよ。
椎名自身が案外そういう人間だったりするので^^;

最近ちょっと仕事の方でごたごたしてたり(嫌な事があったり、なんてことじゃないです。単に改装とかで純粋に疲れてるだけ^^)、寒さで冬眠モードになってたりで、ちょっと更新がまばらだったりもしたのですけど、それにも関わらずいらっしゃってくださる方々に、本当に感謝です!!

読んでくださる方が自分以外にひとりでもいらっしゃる限り、更新は続けますよー(あと、書けなくならない限り;;)!!

ん、感謝するなら更新しないとね。
日付が変わる前に更新できるといいな~。


2007.02.23

 結局人の多いところに行く気も起きなくて、オレとシイナは湖の傍まで来ていた。
 シイナとオレが初めて会った場所だ。この湖のほとりには、ちょっとした談笑に使えるような東屋みたいなものがある。雨を避けるには好都合だ。
 だけどその東屋に設えられた椅子に腰掛けるオレとシイナの距離は、これまた微妙。
 なんなんだかな。とは思うんだけどね。

「お前、知ってたんだな」
 また最初に口火を切るシイナ。
「何を?」
「オレがケティの身体を使ってる限り、長くは生きられないってこと」
「……」
 うんまあ、ケティさんから聞いてたからね。
 だからシイナを元の身体に戻す方法がないかって模索もしたし、できればシイナがやったような、ふたりの身体を傷つける、なんてこともしたくはなかった。ふたりとも、無事のまま残したくて。
 でも守りたくて、守ることしか考えられなくて、結局は何も出来なかったんだけど。
「実際参ってるよ、オレは」
 そんなオレの心境を知ってか知らずか、シイナがフウ、とため息をついた。
「一寸先は闇。いつ切れるかもしれない命を抱えて、未来なんて存在しないつもりで生きてきたのにさ。元の身体に戻るなんて奇跡的なことが起きて、急に未来が開けちまった。困ってるんだよ。この先どうしたらいいんだろうな」
 ……そうか。
 そりゃそうだよな。
 死期を宣告された病人みたいな気持ちだったんだろう、これまで。だからその命を使い捨てるつもりで、その状況を作った原因を追うことに専念して。

 でも多分もうシイナは、その命を無駄にすることなんて出来ない。
 ケティさんとモーラによって生かされたってのもあるだろうけど。多分それ以外にも、オレと一緒で。オレにとってはシイナが、シイナにとってはケティさんが。自分の命を捨ててまで何かを成し遂げようとしたことが、こんなにも辛い。
 そうだよ、オレだって。
 その命を捨ててまでなんて、そんな風になって欲しくないって、そう思ってたんだから。だから、自分もそういう風にはなっちゃいけないんだって。
 自分のそばにいてくれる人を、そう簡単に残していってはいけないんだって。
 そう思ってたんだから。

「シイナがこれから何をしたって、どう過ごしたっていいよ」
 オレが呟いたら、シイナはゆるゆると視線をこっちによこした。
 やっと、言っても負担にならなくなったから。今まで思ってたこと、やっぱりちゃんと言っておかなきゃ。
「どういう風でもいいからさ。だから……生きててくれないかな」
「コーラス?」
 心底不思議そうな顔。そりゃそうだ。直球すぎた。
 でもどういう風に言えば、ちゃんと伝わるのかな。
「もう捨てるとか死ぬとか、そういうことは無しにしてさ、何でもいいからとにかく、生きてくって方向で、これからのこと、考えてくれないかな」
 自分で言っててよくわからないな、これは。でも。
「オレはシイナに、生きてて欲しいんだよ」
 無茶言ってるかな。
 いや、普通に考えれば無茶なことなんて全然ないと思うけど。
 でもやっぱり、もしもオレがあの時シイナと同じ立場だったら、シイナの言うとおり、シイナと同じ行動取ったかもしれないくせにさ。
 勝手だと言われればその通りだと思う。
 でも。それでも。
「……」
 シイナが、真っ直ぐにオレを見る。
「言いたいことは、わからなくはないがな」
 あ、なんか否定的な言葉が返ってきそうな予感。
「オレたちが相手にしているのは、世界の敵になり得る人間だぞ。お前が国を背負ってた頃の感覚でものを見てみろよ。ひとりの命と、多くの命、国土。どっちが大事だ?」
 もしも、自分が命を捨てることで、他の多くが助かるような状況になったら。
 考えたことが無い訳じゃないけど。
「目の前のひとりを守れもしない人間が、多くの命を守れる訳ないよ」
 これだけは、俺の中では絶対だ。
「……」
 シイナが目を丸くする。
 やっぱりアレかな。オレって、国を背負ってくみたいな立場には向かないのかな。もっとも今は、背負ってくべき国なんてないんだけどさ。
「……オレは」
 シイナが呟いた。
「オレはのうのうと生きてる権利なんてあるのかな。自己満足のために、ケティを見殺しにしてさ。散々利用するだけした後で……。大体、最初に秘術が成立した時だって、結局やったのはオレなんじゃないか。ケティがやったんじゃなくて、オレが自分で、ケティの身体を乗っ取った」
 そうかもしれないけど。
 だけどどうにかして、どんな手を使っても、その時の絶望的な状況を突破しようとして、そうしたんだろ。シイナも、ケティさんも。
「結果的にそのおかげでケティさんだって生きてられたじゃないか。そうじゃなかったら、白の塔は全滅してるはずだったんだ。シイナも含めて」
「……」
 そうだよ。
 シイナはケティさんの身体を使ってここまで来て。
 一度はケティさんの命ごと、自分の命も捨てようとして。
 それでケティさんは自分を犠牲にしても、シイナの身体を元に戻して。
 色々無茶ばかりだったし、危なく失うところだったけど。
 でもまだ失ってはいない。
 何だかんだ言ったって、そこにまだ道はあるじゃないか。ただ闇雲に探すだけだった道が、はっきりとわかってきて。今だって、消えずに行先を示してくれてる。
 シイナたちのやったことが、ちゃんと良い方に転んでるじゃんか。
 オレが今までやってきたことだって、ここに今がある限り、無駄になったりしてないってことだよな。絶対。

 オレたちはちゃんと、良い方へ進んできた。結果的に。
 大丈夫。

「結果オーライだよ。失敗も後悔も、いくらでもあるけど」
 今度はオレがシイナの顔を見た。
「躓けば越えられる。躓かないように用心して止まってたら、その分前に出るのが遅れるだけだ。だから大丈夫。オレたちは、大丈夫だよ」
「……」
「大体だ。オレが生きててくれって言ってるんだから、そうですかって素直に聞いてりゃいいんだよ。そう思ってる人間がいるんだって肝に銘じろ。そしたら絶対、命を粗末になんて出来ないんだからな」
 シイナだって知ってるはずだ。憶えてるはずだ。置いていかれる者の思いを。
「コーラス、お前なあ……」

 お前って、本当に。

 シイナがそう呟いたように聞こえた。
「なんだって?」
「なんでもねーよ」
 またそういう。なんでみんな、途中で言いたいことやめるかな。
「お前の能天気さを、ここのとこ忘れてたよ。その強引さもな」
 それはお互い様だと思うんだけど、どうよ。
「じゃあコーラス。お前も、無駄に命を捨てるようなことはしないと約束できるんだろうな」
 シイナが派手な仕草で息をつく。
「それはもちろん」
 人にそうさせて、自分だけ話は別って訳にはいかんだろうよ。
 つい最近まではいつ捨てても良いつもりでいたってのは、とりあえず秘密だ。っていうか、すでに言ってしまっていたかもだけど、そこはまあスッパリと忘れてくれ。あの時オレは若かった。ほんの数日前だけど。
「シイナが『そうしてください』ってお願いしてくれるなら、いくらでも?」
 からかい混じりで言ってみたら鉄拳が飛んで来るかと思いきや、腰掛けたまま足が出てきた。
 男のシイナさんは足技もアリですか。
「ま、後味の悪い平和ほど、イヤなものもないからな。せいぜい気をつけようぜ。お互いにな」
「そうだな」
 ホントにな。
 とりあえず、後悔や自己嫌悪してる暇があるなら、次を考えないとな。うん。
 前向きが、オレの信条だったはずなんだから。
 そうか。そうしとこう。
 オレの取り柄は、剣と前向きさってね。





==椎名の呟き==
あー、煮えた煮えた。
連載開始当初から、ここいらで一番煮えるんだろうなあと予想していた部分で、やっぱり煮えた。
次回からアクティヴでお願いします。マジでw
(誰に頼んでいるのか)

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2007.02.21

 外は珍しく雨。
 真冬のこの時期に雨って、物凄く寒そうで嫌だなあ。実際は、今日あたり普段より全然暖かいらしいんだけどね。
 鬱陶しいというか、陰鬱になるというか……。

 椅子に座ってぼんやりしてるオレの後方では、シイナがオレのベッドを占領して、やっぱりぼんやり奥の壁に寄りかかってる。
 ここのとこ、こいつがベッド占領してるせいでオレとソルダムはずっと床寝だぞ。この間までは女の子の格好してたせいで、何となくそれで当然みたいな気になってたんだけど、よく考えたらシイナひとり勝ちじゃないか、それって。
 わかってんのか、コラ。
 なんて心の中だけで悪態ついてみてもな。
 何となく今、シイナと話しにくい状況なのはつまり、オレにシイナに対する負い目がある、せいで。

「コーラス」
 ふいに声が掛かってびくりとしてしまう。いかんいかん、うっかり肩飛び上がらせたりしてないだろうな、オレ。
「なんだ?」
 何気ない動作で振り返る。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか。お前。昨日から殆ど黙ったままで、辛気臭い『何か言いたいオーラ』が垂れ流しになってるぞ」
 辛気臭いってお前な。
 ……はああ。
「……いや。別に。ていうかその、な」
 うーん、確かにウザい、オレ。
「結構落ち込んでるんだよ。これでも」
「なんで」
 速攻切り替えされると、なお話を展開しにくいというか何というか。
「……とりあえず、黙って聞けよな。……その、さ。オレは国にいる頃から、そんで国を失ってからも、まあいつでもなんだけど、剣しか取り得がなくてさ。だから逆に、剣だけは誇れるようにって、そうしてきたつもりなんだけど。結局」
 結局この剣で、シイナを傷つけてしまった。
 ケティさんの身体とシイナの身体と。一番したくないことだろ、それ。
 しかも。
 しかも、それは、オレ自身がやったことじゃない。
 オレはただ、そこに立ってただけだ。
 もしもオレが自分で、この剣を使ってシイナやケティさんを傷つけたのなら、かえってこんなに落ち込まなかったかもしれない。多分そこには、何がしかの思いや理屈だって存在したんだろうから。
 だけどオレは、何もしてない。
 オレが何もすることが出来なかったから、それをシイナにさせてしまった。
 自分で自分を傷つける――なんてことを。
 自分で自分の命を捨てるなんてことを。
 あれほどためらうなと、説かれたしわかってもいたのに。
 オレには絶対にそんなことは出来なかったし、きっと今だって出来ない。
 これは、オレの弱さそのものなんじゃないか。

 そんなことをまくしたててしまってからチラリとシイナを見てみたら、彼は俯いたまま目を伏せてた。なんか、呆れられたりしたのかな。

「……それは不可抗力だろうが」
 あ、口きいた。
「何度も言うが、オレがお前でも、多分同じことしか出来なかった。それで多分、お前がオレでもやっぱり同じようにしただろうさ。勢いに任せた感心できない行動だったと今でも思うが、あの時にはそれしか方法を思いつけなかった」
 それを言うなら、とシイナはまた俯く。
「結局オレのやったことはケティを見殺しにする行為だ。あの時のオレが自ら死を選ぶということは、ケティをも殺すということなんだからな。だが結局ふたを開けてみれば、オレはこうやってのうのうと元の身体に戻って、ケティはエルベルンにさらわれてしまった。それこそ最悪な結果だろ」
 でもそれは、ケティさんの意志で。
 別にシイナが悪いわけじゃないと思うんだけど。
 でも結局シイナの行動を今こうやって肯定していても、それを行使してやることの出来なかったオレには、何も言ってやることはできない。
「そんなオレの浅はかさがお前の剣を汚した。それだけだ。お前はオレを恨んでくれたっていいんだぜ」
「そんな馬鹿なことを……」
 そっぽを向くシイナと、目をそらすオレ。
 何だかものっすごーく微妙な距離感があるんだけど。

「お前ら鬱陶しい」

 部屋を取り巻く陰湿な雰囲気とはトーンの違う声が、入り口から部屋の中を突き抜けた。
「ソルダム」
 どこからか持ってきた木材を、ガラガラとその足許にばら撒く。
「こんな狭い部屋の中に閉じこもって、何をうじうじ呟きあってるんだ、お前らは。若い子は元気に外に飛び出しなさい」
 狭い部屋って……そんなにはっきり言ってくれなくても。シイナじゃあるまいし。
「でも雨だし」
 陰湿なのは天候のせいもあるぞ、きっと。
「お前らに雨なんてかんけーないだろ。酒場でもどこでも屋根のあるところはいくらでもあるしな。オレはこれからこの壊れた扉を直したいの。外気直接吹き込むから余計に寒いんだよ空気が。お前らみたいないじけた男ふたりはジャマなことこの上ないから、どこかに出かけて来い」
 ええー……。てかさりげなく、寒いとか言われた。それってオレたちの雰囲気含めてって話だよな。
「とにかくどこへなりと外に出かけて、気の済むまで討論してから帰って来い!」
 ちょいちょいとつままれて、オレたちふたりは家の外へとポイ捨てされてしまった。こういう時のソルダムは、激しく強引だ。そりゃわかってはいるんだけど。ソルダムはオレたちのことを心配してるんだろうし。

 だけど、どこに行ったらいい訳よ、オレたちは。





==椎名の呟き==
どこへなりと行きなさいて!
今回でこの雰囲気払拭するつもりだったのですが、あえなく行数オーバー。
相変わらずしつこい作風です、椎名。
ホントそろそろ信じてもらえなくなってきてるかもだけど、これ『時々シリアスなライトコメディ』なんで!!<はっきりコメディとか言っていいのかね。実際これ。
こ、この辺の話さえ通り過ぎれば、きっと!!
技量不足で申し訳ない……orz

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2007.02.20

 少しの間黙っていたサウロは、少し雰囲気を変えてまた話し出した。
 サウロの雰囲気の違いを読み取れるようになってしまったオレってのも、どうかとは思うけどね。
「エルフというのは、この世界のあらゆる物質の持つ力が人の形を取ったものと考えて間違いない」
 あらゆる物質の持つ力? って何だ?
「大地の強固な力、炎の燃える力、水の流れる力、光の輝く力、その他様々な物質の特性、それらを体内に抱え、生まれ出でる。そしてそのいくつかの力を、エルフは召喚獣として作りだし、使役することができる。召喚獣という形を取らなくとも自身でその力を振るうことも可能だからつまり、この世界に存在するありとあらゆる力を、借りることが出来るという訳だな」
 サウロが前に言ってたことと合わせて考えてみれば、つまりエルフってのは人の形をしていながら、この世界の一部でもあるから、借りるというか、その力は自分自身の力である、と思ってもいいんだろうな。多分。
「エルフの生命体としての命は消えても、力は残ることがある。多分小僧の魂の秘術を可能にしたのは、モーラだろう」
 サウロはシイナを見た。
 モーラが? 死んでしまってもなお、その力を、エルベルンの行先へと飛ばして?
「お嬢がお前らに見た綺麗な色というのは勿論、お前らの心そのものの輝きもあるんだろうが、それ以外に」
 あら、サウロ様さりげなく認めちゃったよ。
「モーラの守護の力がかかっているんじゃないかと、オレ様は推測する」
「守護の力?」
「まずはシイナの、白の塔での魂の秘術の成功。半ば強引に魂の秘術を試みたケティという小娘が、シイナの魂を引き寄せるのに成功したのは、おそらくモーラの力がそこに加わったからだ。でなければ、そう簡単にそんな高等なマネが出来るわけがない。だが」
 だが?
「魂の秘術自体、それを術式として行使したのは、他の誰でもないシイナ自身だがな」
 サウロの言葉に、シイナが一瞬眉を寄せた。
「オレが?」
「そうだ。魂の秘術を受けた者は、その秘術を使えるようになることがある、という話はしたな。それは実際には、魂の秘術により身体から魂を追い出された者にも当てはまる。大抵の場合、身体を追い出された者の魂は当然死に至る訳だから、その力に目覚めることはまず無いがな」
 そりゃそうか。
 拠り所となる身体が無くて消滅する訳だから、その術を体得している暇はないって訳だな。
「だが今回のケースでは、モーラの力が加わり、ケティの身体にすぐに受け入れ体勢が整ったせいで、魂の秘術は成立した。エルベルンから術を受けたその一瞬のうちに、シイナは自分でも無意識のうちに、秘術の体得と行使を成功させたのさ。確かに稀に見る能力の高さだな」
 勿論それはモーラから聞いたわけではないから、推測に過ぎないと、サウロは付け足す。だがおそらく間違いはないだろう、とも。
「今回の騒ぎを起こしたのがエルベルンだと確定するまで、それは確信できなかった。だが犯人がわかった時点で、全て繋がった。コーラス、お前がケティが生きている、と言ったことも、その材料になった」
 え、そうなのか。なんでだ? ケティさんが生きている理由も、モーラさんが関係してるのかな。
「魂の秘術が成立した時点で、その身体に元からあった魂が、その身体で生き続けるのは通常不可能だ。元の魂を追い出してこその秘術だからな。だがそこに、モーラの力が加わった。モーラの力がケティの魂をその身体に留まらせ、奥底で眠らせた。普通、まずやらないことだが、今回ばかりはモーラはそうせずにはいられなかったんじゃないか。――お嬢が感じた魂の輝きは、おそらくモーラの力の片鱗も含めてのことだろう。今ならはっきりと言う事が出来る。そしてコーラス、お前もしかりだ」
「え、オレ!? の何が?」
「お前がひとり無事でいられたのも、モーラの力あってのことだ。精霊石の力もあるだろうが、それだけでは生きてエンデリックにたどり着けた可能性は、かなり低い」
 そう、なのか?
 あの時にすでに、モーラの力がオレにも?
「お前たちふたりの中には、とてもよく似た色の輝きがあったのさ。同一のものと言っても良いくらいのな。それが、モーラの力がそこにある証になっている」
 ふう、と、長く放し続けるサウロはひとしきりため息をついた。
「エルベルンの凶行から、できるだけ多くのものを救いたかったんだろうさ。もしかしたら他の壊滅させられた地域でも、モーラの力が加わって被害が軽減した場所があるかもしれんな」
 あれほどに惚れた騒ぎをしていたエルベルンも、モーラのその力に気付くことはなかった。それに絶望するように、サウロはらしくもなく俯く。
「エルフが世界を託した人間の言う愛などというものは、その程度か。幻滅させてくれる。だがここには、救いとなる純粋な忠誠心も存在したようだな」
「純粋な忠誠心?」
 ケティだ、と、サウロは言う。
「今回の魂の秘術は、ケティが行使したものだ。彼女もつまり『魂の秘術を受けた者』な訳だからな」
「あ、そうか」
 シイナと同じで、ケティさんの魂はそこから消えてしまった訳じゃないから。秘術を体得できる可能性はあった訳か。だとすればきっと、あの時シイナが意識を失った瞬間に。ケティさんはシイナの魂を、元の身体へと押し出したのか。
「だが彼女の力はあまり強いものではない。エルベルンの魂を追い出す力の無かった彼女は、魂の交換を行うことで例外的に秘術を完成させたのだろう」
 追い出すよりは、交換した方が簡単だ、ということなのかな?
 でもそれって、自分にとってリスクが大きいような気がする。あのエルベルンに、自分の身体を渡すなんて真似は。
 でも。
「ケティさんが何よりも望んでいたのは、シイナを元の身体に戻すことだったから」
 あの時オレにそのことを訴えたケティさんの必死な姿を思い出す。
 自分のことはどうでもいいと言った、彼女。
「そうなのだろうな。シイナがあの時自分の命を犠牲にしようとしなかったとしても、他人の身体で長く生きることは出来ない。エルベルンのように数十年保てる者もいるが、一年と持たない者もいる。こればかりはどうしようもない。だから、白の塔の頂点であるシイナを生かすために、彼女はどんな手段を用いても、シイナを元の身体に戻すことを最優先させたのだろう。その忠義は感心に値する」
「……」
 無言のまま、何事かを考えているシイナ。
 それもそうだろうな。当然だ。オレだってそうだ。

 気付かないうちに助けられてたんだな。オレたちは。
 モーラの命は消えてしまったけど。ケティさんは、まだ手遅れじゃない。いや、本当はそんなことわからないけど。でもそう信じてなければ、きっと彼女を救うことなんてできない。
 オレたちが、エルベルンを止めないと。
「まあ今は、詰め込みすぎた頭の中を整理するがいい。余裕のない脳みそは、ろくでもない考えしか生み出さんからな」
 相変わらず口の悪いサウロの物言いだけど、それでもオレは納得してしまった。
 そうだ。今は何を考えても、きっと混乱が先に立ってしまう。

 少し落ち着いて、それから考えないとだよな。
 これから、どうすればいいのかを。





==椎名の呟き==
状況解説の回、これにて終了!! ……ホントか?
書く方も大変だったので、見る方も大変なんじゃないかと推測しますがどうでしょう!!
一応念のため、このお話、大筋はライトですから! ライトって言っても、某死のノートの出てくるお話の主人公のことではなくってよ!!<そろそろ頭の中切れてきた模様。

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2007.02.19

 とりあえずオレの家に帰ってきて、より一層狭くなった家の中で、それぞれに話しやすい体勢をとる。
 シイナはベッドの上にあぐらをかき、サウロはテーブル、他は椅子に腰掛けて。
 ミリネが傷の治療を申し出てくれたのを、シイナは柔らかく断わっていた。何だかもう殆ど自分で治癒させてしまったらしい。多少の違和感は感じるのかもしれないけど、動くのにはさほど支障はないみたいだ。
「ケティには申し訳ないが、時間稼ぎにはなったんだろうな、結果的に。多分今エルベルンは必死なんじゃないか」
 そうなのかな?
 でもまあ、ケティさんの身体の方が、物理的に満身創痍っぽかったけど。
「身体に穴はあくは、力を使いきってる上に、ケティの身体的魔法能力は低いは、挙句に左腕の骨折、完治させてなかったからな……」
 そうか。骨折もあったんだっけ。
 ケティさんの身体を傷つけたのはオレの剣だもんな……。申し訳ないなんて、思うのも見当違いなのかもしれないけど。
 なんだかな。
 いや、今は落ち込んでる場合でもない。

「まあとにかく、身体の方は殆ど大丈夫らしいな。ならば、お前たちの知りたがっていたことを教えてやろう」
 あくまでこちらの仮説もあるが、と含みを置いてから、サウロは口を開いた。


 モーラは以前から、ひとりで大樹海の外の世界を、用も無くフラフラするのが好きだった。エルフの中では、そういう性格はかなり珍しい。遥か昔に外部との接触を断ってきた彼ら種族は、基本的には外界に姿を現すことはない。
 けれどモーラは、外を歩く。
 森で、空で、時には海で。モーラはこの世界の風景を眺めるのが好きだった。
 そうやって外を出歩いている時に、モーラはエルベルンと出会ってしまった。
 その時の彼は、まだほんの子供だった。

 エルベルンは、生まれながらに魔法力を持っていた。
 彼のひとつ上の兄も魔法力を持っている子供で、そのせいで、彼ら兄弟は、いつも誰からも孤立していた。
 魔法力を持っているからといって、必ずしも誰もが迫害を受けるという訳ではない。けれど、彼らの魔法力を制御する術を教える人間がいなかったせいで、兄弟は、しばしば子供らしい大胆さで魔法力を暴走させた。
 だから自然と、周りからは疎まれることになる。
 彼らの母親は、下の子であるエルベルンを生んでしばらくした頃、どこへともなく姿をくらませてしまったらしい。
 母親もまた、魔法力を持っていた。
 けれど彼女自身、あまりその能力を良きものとして捉えていなかったのか、魔法力を持って生まれたふたりの兄弟を育てることを放棄し、彼らの前から消えてしまったのだ。
 子供ふたりを押し付けられ、捨てられた父親。
 その後も子供たちの魔法力によって孤立を強いられた彼は、その憤りを、誰にぶつければ良いのかわからなかった。
 子供が魔法力を持って生まれてきたのは、そもそも母親が魔法師だったせいではないのか。誰のせいでもない、母親のせいではないか。なのに何故、自分がこんな目に遭う。


「でも……魔法力ってのは、遺伝する訳じゃないんじゃなかったっけ」
 確か、シイナの魔法力は遺伝じゃなかった気がする。
 その疑問には、シイナが答えた。
「正確にははっきりしてないんだ。遺伝することもあるかもしれない。突発的に発生することも多い、というだけで」
 そうなのか……。
 相変わらず良くわからない世界だ。


 憤りをぶつけるべき相手は、今目の前に存在しない。父親の怒りの矛先は、子供たちへと向いていった。
 魔法などというものは、自分自身にとってはまるで無縁のものなのに。自分は何も悪くないのに、周囲からの批判を受けるのは、魔法師の保護者である自分。
 何故ちゃんとした教育が出来ないのか。
 親がそんなだから子供が。
 ――知ったことか。ならお前たちが育ててみろ。
 魔法力を持つ子供の育て方など、誰も教えてはくれなかった。
 彼は、子供たちを遠ざけるようになり、それでも近寄って来ようものなら、暴力で突き放した。
 魔法なんてものが、何故この世に存在するんだ。存在するなら何故、それは受け入れられないのか。
 受け入れられないのは魔法のせいではなく、それを行使する者の未熟さのせいであるという事実に、彼は行き着くことが出来なかった。


「そんな彼らを、モーラは陰からずっと見つめていたんだな」
 サウロは目を伏せる。


 そんな折、ただの人間であった父親は、唐突に魔法力に目覚めてしまう。
 遅い能力の開花。
 滅多にあることではないけれど、まったくないケースでもない。
 これまでずっと憎み続けていた魔法力に目覚めてしまった父。魔法が使える子供が悪い、それを産んだ母親が悪いと、ずっと憎み続けていた『魔法』に。
 父親の中で、何かが切れた。
 これまで使うことも出来なかった魔法のせいで、どれほど虐げられてきたことか。

 ならば。
 これまで被ってきた理不尽な扱いの分だけ、この力を、行使してやればいい。

 畑を焼き、家屋を倒壊させ。人を傷つけ。彼は狂気によって、破壊の限りを尽くした。
 そしてその狂気は、エルベルンの兄に及ぶ。
 兄は、父親の魔法によってその身体を引き裂かれた。
 人としてありえない姿となって地に転がった兄を、その目で見つめていたエルベルン。次の標的は、間違いなく自分。
 殺される。バラバラにされる。
 恐怖に逃げ惑うエルベルンを、父の魔法が容赦なく襲う。

 傷つき、体を動かすことすら出来なくなって、死を覚悟したエルベルン。その目の前に、モーラが現れた。
 死を待つだけのエルベルンを、魂の秘術によって救ったのだ。
 エルベルンの父親その人に、エルベルンの魂を移して。

 私情で動いたのは確かだ。けれど、あの父親を野放しにしておくことなど出来なかった。そして、小さな命を、その恐るべき父親の身体ででも、せめて生かしてあげたいと。

 救った命ではあるけれど、父親の犯した凶行は消し去ることは出来ない。その姿で生きていくのは困難であると判断し、モーラはエルベルンを大樹海へと連れ帰った。
 そして周囲の反対を押し切って、エルベルンの心を癒すことに専念したのだ。

 モーラによって救われ、その心を癒され、若い魂を育てられたエルベルン。周囲に疎まれ続け、肉親に殺されかけた彼が、長い間共に過ごした彼女に恋心を抱いたのは、それから10年も経った頃。
 愛されることに貪欲なエルベルンが、モーラに同じ想いを強要するようになったのは、そうなってみれば当然といえる現象かもしれなかった。
 しかしエルフは、その想いに答えることは出来ない。
 人間が異性を愛するようには他人を愛せないエルフと人間では、エルベルンの望む関係を作り上げることはできないのだ。
 けれど何度それを説いても、エルベルンは納得しない。
 本格的に、エルフたちはモーラにエルベルンとの別離を迫る。
 もう彼はひとりで生きていける。そもそも、エルフの社会の中で、人間が生きていくのは不可能だ。もう彼の心にも限界が近づいている。
 モーラは周囲の意見を聞き入れ、エルベルンを外の世界へと連れ出し、自分だけが大樹海へと戻ってきた。
 それで終わったと思っていたエルフたちの誤算が、そこにあった。
 モーラは、外の世界で密かにエルベルンと対面を繰り返していた。
 そして、何度も何度も、彼が納得できるまで説得し続けていた。
 もうやめろと、エルフたちはモーラが外の世界へ出て行くことを禁じた。そしてエルベルンがモーラを求めてやってきた時には森を閉ざし、その逢瀬を食い止めた。
 その段になって、モーラもようやくエルベルンに会うことを諦める。
 どんなに話してもわかってもらえないなら、もう会わない方がいいと、その時にようやく判断した。
 とても近しく、愛していた人だったけれど。
 そうして彼らが再び会うことはなく、20年ほどの時が過ぎる。
 年月の間で姿を見せることもなくなったエルベルンのことを、誰もが心に思い描くことがなくなった頃。
 ひとりの男が、大樹海に迷い込んできた。
 まれにだが、こういうことはある。
 だがその男は、森の中央付近まで深く入り込んだ後で、急に名乗りを上げた。
「私は世界を制する魔法師、ダーゼオン!! 狭い世界で守護者を名乗る愚かなエルフたちよ、貴様らを残さず焼き払ってやろう!!」
 一瞬にして森を結界で包み込んだ男は、間髪いれずに大樹海全体を業火で焼き尽くした。
 もちろん、人間の張る結界など、エルフが破るのはたやすいこと。エルフたちは再びの厄災を恐れ、森を捨て各地に散った。
 その時、モーラの命だけが、その場で消え去った。
 彼女にだけ、エルフのものではない結界が張られているのを、大半のエルフが察知した。けれど、それを瞬時で解き放ったモーラは、その場で消えることを選択したのだ。
 まさかと、誰もが思った。
 これは、あの男の仕業なのかと。だとすれば、モーラがその命を捧げることを選んだのは、彼と、そしてエルフたちへの贖罪のつもりだったのではないかと。
 けれどこんな。
 こんな大それた事態にまでなるなんて。
 大樹海以外の各地をも襲った厄災は、その後ぱったりと止み、その男は世界から気配を消してしまった。
 だから、確信は持てなかったが。


「おそらくエルベルンは、年老いた父親の身体を捨て、魂の秘術によって新しい身体を手に入れたのだろうな」
 だから、当時彼に気付くことができなかったのか。
 で、その後すぐにエルベルンはシイナの身体に乗り換えている。無茶苦茶だ。
 そして、唯一護ったはずのモーラの行方がわからなくて、悶々としていたんだろうな。まさか、あの時に死んでしまったのではないかと。けれど、そんなはずはないと。きっと、そう自分に言い聞かせながら。
「色々な意味で気の毒すぎて、安っぽい同情心すら湧いてこないな……」
 呟いた言葉に、サウロはいつものごとくに鼻を鳴らした。
「愚か者の自業自得だ。共感なぞしてくれるなよ、坊主。お前を力の限りつつき尽くしたくなるからな」
 それはマジでカンベン。
 もちろんオレは、彼に共感なんて出来る訳がないんだけどね。
 それが普通なのか、単にオレが人の深い部分を知らなすぎるのか、それはどうだかわからないけど。
 ただ、そんな風に生きることだけは、絶対に出来ないんだろうなとは思うよ。
 これから、世界や人の、どんなことを知ってもね。





==椎名の呟き==
なーがーいー。
シイナの件にかすりも出来なかった。とっほっほ。
そろそろいつもの軽さを取り戻したい今日この頃。

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2007.02.18

 ふたり分の体重に圧し掛かられて、オレは身体の自由を奪われたままだ。
 実際、動けないことは無いのかもしれないけど、どうやったら身体が動いてくれるのか思い出せない。
 オレの剣で貫かれたままのふたりがどうなっているのか。
 こんなところで仰向けになって呆けてる場合じゃないだろう、と頭の中だけで言葉が形成されるけど、どうすればいいのかわからない。
 そうだよ。シイナの状態を、確認しなきゃならないだろうが、オレ。
 視界の端でソルダムが走り出したのを確認したのと同時に、手元に妙な違和感を覚える。

 剣を握ったままの手が、わずかな動きを感じた。

 シイナの上に乗りかかっていたエルベルンの身体が、微かに、動いた?
 まさか。
「……グッ……」
 そこから漏れる声。
 その気配を察して、ソルダムも驚いて足を止めた。
 そんな。
 シイナが、身体を張ってもダメなのか。
 無傷のままのオレが何とかしなきゃと思うのに、まったく身体が動かない。第一、今もし妙な動きをしたら、エルベルンの下にあるシイナの身体の傷が、もっと酷くなる。
 目を開けないシイナの身体を置いて、エルベルンの身体だけが、少しずつ力を込めて腹に刺さった剣を抜こうとしてる。
 どれだけの気力なんだ、それ。身体を貫通した刃物を自分で抜くなんて、そうでなくとも難しいのに、刺さっているのは身体のほぼ中央で、場合によっては致命傷なのに。
「……」
 ぎっちりと目を閉じたまま眉間にしわを寄せるエルベルンを、オレはただ見ているしかできない。
 ソルダムとサウロがジリ、と動きを見せたところで、エルベルンから言葉が漏れた。

「……待て」

 えっ?
 その言葉と同時に、エルベルンの身体から、完全に剣が抜けた。
 その傷口からほとんど新たな出血がないのは、治癒魔法で傷をふさぎながら剣を抜いていたからか。
 荒い息をつきながら、仰向けになったままのオレの上で、それでもまだ手をついたまままともに動けない様子のエルベルンが、ゆっくりと瞼を押し開いた。

 真上からオレを見下ろすその瞳は、さっきまでの獲物を睨むような灰緑のものではなく。
 深く澄んだ湖水のような、エメラルド。

「……コーラス」

 今誰に呼びかけられたのか。
 頭で考えるよりも先に、感覚が察知する。
 この呼びかけを、オレはこれまで何度も耳にしてきたんだ。
 けど、そんなまさか。
「……シイナ?」
 オレの呼びかけに、目を細める金髪碧眼。まさか、本当に。
「シイナ!?」
「待てコーラス、動くな」
 瞬間飛び起きかけたオレの身体を、言葉で押し留める。
「ケティの身体を、何とかしないと……」
「あ、そうか……って、そんな場合じゃないってシイナ!! 自分の傷が先だろ!!」
「私が」
 うわ!
 気配を感じさせずに、オレの真横にミリネがいた。
 力をこめているのをまったく感じさせずに、ミリネが少しずつ目を閉じたままの赤毛の少女の身体を剣から引き抜く。
 物凄く、力持ちだったんだな、キミ。
 完全に身体が引き抜けた拍子に、剣はガラリと硬い音を立てて地に転がった。さっきまでその柄を握っていたオレの手は、完全に麻痺している。
 その身体からの出血もほとんど止まっていた。ミリネが治癒させてくれたんだろう。

「お、お前、ホントにシイナなのか」
 ついさっきまではエルベルンと認識していた金の髪の男を凝視する。
「他の誰かに見えるか?」
 だって、オレがこれまで知っていたシイナは赤い髪の小柄な少女で。気の強そうな大きな栗色の瞳で。もちろん声だってまったく違って。
 でもなぜか、目の前の男がシイナであると、オレは確かに認識していた。
 なんていうか、そこから感じるオーラが違うというか。
 ディク先生の時とはまったくケースが違うけど、やっぱり人は見た目じゃないらしい。
「戻った、のか? なんで? どうやって?」
 ずっと自分の腹を押さえたままのシイナが、深く息をつきながら首を振る。さすがにパッと傷をふさぐことは出来ないのか。
「わからん……でも多分」

 シイナがそう言いかけた瞬間、その場に横たわったままだったケティさんの身体が跳ね起きた。
「!!?」
 一瞬で、彼女の身体が飛び退る。
「な……」
 全員の視線を釘付けにした状態で、その栗色の瞳が歪められた。
 これまでシイナの声として認識していた高い声が、まったく違う人間の言葉を紡ぎだす。でもそれは、以前に聞いたケティさんのものじゃない。
「許さんぞ……貴様ら」
 まさか。
「エルベルン!?」
 どうなってるんだ、一体!?
 エルベルンの魂が、ケティさんの身体に? なんでだ!?
「私は貴様らなんぞに倒されんぞ……いずれ目に物見せてくれる!!」
 苦しそうに顔を歪めたエルベルンの身体が、スウッと宙に浮いた。
 逃げるつもりか。
 結界を解いていたらしいミリネが、慌てて向き直る。
「待て!! 貴様、ケティの身体を……!!」
 瞬間立ち上がりかけたシイナの身体を、今度はオレが押し留めた。
「無理だシイナ!! 今のお前の身体じゃ!!」
「けどな!!」
「今闘っても、ケティさんの身体を傷つけるだけだって!!」
 オレの言葉に、シイナの身体がピタリと止まる。
 お前、自分の時もそれくらい素直に出来なかったか。
「ミリネ、いいよ。結界は張りなおさなくていい」
 ミリネは状況を正確に判断していたのか、俺の言葉にただ頷く。次の瞬間に、エルベルンの拠り所となったケティさんの身体が、その場から消えた。
 正確には高速移動なんだろうけど。
 もう、捨て台詞を残す余裕さえも残っていなかっただろうな、あの様子じゃ。
「クソ……ッ!!」
 シイナは悔しそうにエルベルンの消えた空を見つめる。
「あいつがどこに行くかはもうわかってるんだし。あの様子じゃすぐには動けないだろ」
「けど、ケティが」
「シイナがあの身体にいた時だって、ケティさんは生きてたんだよ。今だってまだ生きてるかもしれない。だったら無闇に傷つけるのはまずいじゃん」
 シイナが、諦めたようにため息をついてその場に座り込んだ。
「ケティが生きてるってのは本当だったんだな……」
 人の言葉を疑ってたのかよ、お前は。
「半信半疑だったオレは、生きてるかもしれないケティの身体さえも犠牲にして、エルベルンを倒そうとしたのにな……オレを元の身体に押し出す、ケティの力を、感じた」
 え、そうなのか。
 ケティさん、実は凄い力持ってたりする?
「ていうか、そもそも、どうしてこんなことになってるんだ? あのままふたりとも死んでもおかしくない状況だったのに、なんで」
 こんな、そっくり魂を入れ替えるような状況に。

「そのケティとかいう女と、モーラのせいだな」

 サウロが急に口を開いた。
「え? なんだって?」
 ケティさんと、モーラ? なぜその組み合わせ?
「やれやれ……エルフと人間はまったく格の違うものだが、どちらの種族も、女はタフにできていると見える。心がな」
 言っている意味がわかりません。
「どういうことだ?」
「フン」
 訳がわからないオーラ全開のオレの言葉にサウロは鼻を鳴らしたけど、どうやら他人に気を遣うというスキルを手に入れたらしい。
「とにかくまず、その小僧の傷を治せ。大体の話の筋は繋がってきたからな。必要なら、その後で聞かせてやる」
 そうだ。わからないことが沢山ある。
 エルベルンとサウロのやり取りや、今起こった魂の交換のことも。

 でもそうだよな、まずはシイナの腹の傷を治さなきゃだよな。
 後のことは、それからだ。





==椎名の呟き==
この一週間の更新ペースが、トロいですね。ごめんなさーい。
ちょっと仕事でグダグダ、ヒットポイントが激減……ううう、まともに出勤する人雇用してくれないかな。マジで。
いや、愚痴ってる場合じゃないですって。安定したペースに戻れるように、頑張りますね~(ん、別に身体を壊すほどには頑張らないので心配は無用ですw)。

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2007.02.16

 一瞬でエルベルンの懐まで飛び込んだシイナを、大慌てで追った。
 とても魔法師とは思えない戦闘スタイルだな、しかし。
 でもエルベルンの攻撃もサラサラと避けていたシイナのことを考えると、もしかして魔法師に魔法攻撃っていうの、あまり有効じゃないのかもしれない。いろいろ知り尽くしてるだろうしね。
 いや、そうじゃなくて。
「シイナやめろ! 早まるな!!」
 オレの言葉には耳を貸さず、シイナはエルベルンの間合いに入って、槍でなぎ払う。エルベルンは後ろに跳び退ったけど、妙な感じで地に足を着いた。なんか、後ろに壁でもあるみたいな感じ?
 あ、もしかして、ミリネの結界か何かがあるのかな。だとすると、それ以上は後退できないはずだけど、シイナの背後にはオレがいるし、側方にはソルダム、ミリネ、サウロがそれぞれ構えている。
「シイナ、それお前の身体だろうが!!」
「だからなんだ!!」
 シイナはエルベルンを見つめたまま、こっちを振り返ることなく怒鳴る。
「そうだよ、オレの身体だ!! だからこそ、これ以上その身体を使って破壊殺戮を繰り返されるのを黙って見てられるか!? どうせもう戻ってこない抜け殻相手に躊躇してられるか!!」
 そうだけど。それはそうかもしれないけど。
「だけど待て!! 戻れないかどうかわからないじゃないか!! もし戻れる方法が見つかったとしたって、お前の身体そのものがなかったら、どうしようもないじゃん!!」
「そんな理想論を練り上げてる場合じゃないだろうが!! こいつが弱ってる今、叩くしかねえんだよ!!」
 弱ってるって。やっぱりそうなのか?
「そうだな。いくら優秀な魔法師の身体を使っているとはいえ、無駄に魔法力を使いすぎだ。召喚師を探してあれだけ全国各地を一息に魔法で行き来していれば、力も無くなるというものだな、エルベルン」
「……黙れ!!」
 叫ぶエルベルンは、けれどそこを動こうとはしない。息も大分上がってきてるところを見ると、シイナたちの言ってることが正しいんだろうな。
「だからお前もいちいちためらうな!!」
 だけど!
「けどシイナ、ケティさんが!! ケティさんは、その身体の中で生きてるんだよ!!」
 シイナがその身体の中に居にくくなるだろうと思ってたけど。でも出て行く方法なんてないんだからと思って黙ってたけど。
 どうしようもなくて、言ってしまった。
「……何?」
 シイナが振り返る。
「ケティさんは死んでない!! オレは彼女と話したんだから!! だからもし、シイナがもとの身体に戻れれば、ケティさんだって……」
 そううまく行くかどうかはわからないけど。
 でも可能性はゼロじゃないし、ケティさんだってそれを望んでたんだから。自分のことはともかくって言ってたけど、シイナのことだけはって。
「バカな、ケティが……」

 目を見開くシイナの首元に、エルベルンの腕が背後から素早く回った。
「……!!」
 しまった。シイナに隙を作らせた。
 シイナの身体を盾にするように、自分の身体の真正面でその首を締め上げる。
「エルベルン!!」
 剣を構えて間合いを詰めたけど、でもそれを振るう隙がない。エルベルンよりも先に、シイナの胸元に届きそうな距離で、オレの剣の切先は動きを止めてしまった。あとほんの少しで、エルベルンを捕らえられる距離なのに。
「動くな!! まだ女の身体ひとり分くらい致命傷を負わせる余力は残っているぞ!!」
 くそ。言われなくても動けない。羽交締めにされているシイナの身体を避けては剣を振るえない。もっとも、シイナという障害物が無かったとしても、オレには剣を振る勇気がないかもしれないけど。
 だけど、エルベルン。
 それでお前はどうするつもりなんだ。ミリネの結界からは人間のお前じゃ脱出できないだろうに、ここからどうやって、突破口を開くつもりだ? オレたちを全滅させる力はないし、シイナを連れて逃げるなんて、できるわけないだろうし。

「……わかった」

 シイナがやれやれと言うように、深くため息をついて、身体の力を抜いた。トントンと、自分の首に絡まるエルベルンの腕を叩いて、まるで「少しは緩めろ」とでもいうように触れる。
「やっぱりオレだって命は惜しいしな。ケティが生きているというなら尚更だ。どっちの身体も粗末には出来ない」
 シイナの諦めたような言葉に、エルベルンは一瞬目を見開いた後で、唇を引き結んだ。それは少しだけ、笑みの形になっている。
 本当に、シイナの本来の姿とはいえ、憎たらしい顔だ。
 シイナは、自分の胸に届きそうなオレの剣を見つめた後で、オレの顔に視線を向けた。
「コーラス、そのまま。動くなよ。絶対に」
 そりゃ動けないよ。動けないけど、じゃあどうすればいいんだ。
「動かすなよ。1ミリたりとも」
 念を押すように繰り返したシイナの身体が、一瞬ぶれて見えた。
 一瞬の視界のぶれに眉間にしわを寄せてしまった時には、シイナの顔が、前髪が触れ合うくらいの至近距離に迫ってきていた。

「……えッ!?」

 シイナの顔がここにあるっていうのは。
 それだけ、身体が至近距離にあるっていうのは。

 モンスターも一振りで両断する精霊石の剣が人の身体を貫くのに、抵抗を感じることは殆どないだろう。それだけ良く切れる剣だ。
 オレが長年愛用してきた自慢の剣だし。
 その剣が。
 シイナの身体と、背後のエルベルンの身体を真っ直ぐに貫いていた。
「……な」
 どういうことだ。
 どういうことだ、これは。
「……悪い。これしか方法が無かった。高速移動以外の魔法は感知されるだろうから」
 シイナ、そうじゃなくて。
「おのれ……貴様!!」
 シイナの背後で歯噛みするエルベルンは、それでもそこから逃れることはできない。絞めたいのか引き剥がしたいのかわからない、シイナの首に絡まったままの腕は、シイナの肩に爪を食い込ませたまま、ただ震える。
「無理だよ。こうなった今、お前の余力じゃオレの束縛からは逃れられない。温存してたんだぜ。これでも」
「おのれ……おのれ!!」

 シイナとエルベルンの身体から力が抜けて、二人分の体重がオレに圧し掛かってきた。その重量に耐え切れなくて、オレもその場に背中から倒れこんだ。剣から離すことができないオレの手に、ふたり分の血が流れてくるのを感じる。
「ゆるさ……」
 言いかけて意識を失ったエルベルンの体重を背中に受けて、シイナは深く息をついた。
「まあ、そりゃそうだよなあ。ためらうのも無理はない。オレがお前の立場だったとしても、やっぱり同じにしかできなかっただろうな」

 論点は、そこじゃねーだろ!!

「な、なんてことしてんだよ、シイナ!!」
 なんでこんなことになってるんだ!!
「だから仕方なかったって言ってるだろ……。オレがタメなしで使えるのなんて、この方法しかなかったんだから。せっかく油断させたって、察知されたら元も子もないだろ」
 だからそうじゃねえって言ってんだろ!!
 なんでこんな。
 もっと他に方法はあっただろ。なかったか?
 本当にこれしか、方法はなかったか?
 もう、わからない。
「精霊石!! ダメだ、シイナを殺すな!! オレの剣なんだから、言うこと聞けよ!!」
 これまで一度も話しかけたことなんてない精霊石に、ただ怒鳴りつける。
 意志を持つ無機物、なんて。
 だからってオレのいうことを何でも聞く、生きてる石って意味じゃないのに。
 でももう、何が何だかわからない。

 シイナの身体からも、一切の力が抜けた。
「バカシイナ!! 寝るな!! 寝たら死ぬぞ!!」
 この期に及んで、何を言ってるんだろうね、オレは。

「シイナ!!」
「シイナさん……!!」
 ソルダムの声と、ミリネの初めての叫び声を、オレはやけに遠くから聞いてるような気がした。





==椎名の呟き==
あーもーシリアスですか、そうでもないですか。
魔法の定義が面倒くさくて大変大変。<お前が言うな

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2007.02.14

「貴様は大樹海まで足を運び、密かにモーラだけに結界を張ったな。そして何年もそこで生かされたという恩も忘れ、大樹海を焼き払った」
 あ……なるほど。だから大樹海の場所知ってたのか。
 なんでだか知らないけどモーラという召喚師に命を助けられる場面があって、そして大樹海で生きてきた、と。だよなあ。オレなんかもちろん場所を知る機会なんて無かったけど、そこを目指そうなんて考える興味本位の人間は、誰も発見できてないもんな。大樹海。
「人間の張る結界なぞ、エルフには効かん。物理的に魔法や暴力で傷つけられれば命にも関わるが、エルフの張る結界を通すことはできんし、当たらなければ意味がない。それはモーラですら、貴様には教えてなかったな」
「……」
 エルベルンが、無言で空を見つめた。
「……何だと……」
 信じられないって顔だ。
 エルフに魔法力が効かないってことが? それとも、モーラが自分に教えてないことがあったって事実が?
「まあエルフは結界を張ることはせずに全員がそこから逃げおおせた訳だが、モーラは」
 ギロリと、サウロがエルベルンを睨みつけた。
 眼光鋭く応対しても所詮鳥なんだけど、鳥は鳥で目つきが悪い。
「……モーラだけが、貴様が自分に張った結界を解き、貴様の破壊魔法を甘んじて受けたんだ」

「……!!!」

「個々でありひとつでもあるエルフは、それでも性格というものは持っている。……召喚師たちは何度も反対した!! 人間個人に肩入れしすぎるなと!! 大樹海で住まわせるなど、言語道断だと!! だがモーラは貴様を保護することをやめなかった。その心を癒すことに専念した」
 バサリと羽を広げるサウロに対し、エルベルンも片手で大きく空をなぎ払った。辛抱たまらんという感じ?
「そうだ。エルフたちはこぞってモーラを弾劾し、責め立てた!! あの心優しい彼女を!! 人間を見下し、それに手を差し伸べる存在を、許さなかった!! だから私は……!!」
 だから、モーラをエルフたちの社会から救い出す、という理由をつけて、大樹海を焼き払った? やっぱり無茶苦茶じゃないか。
「その優しさの結果がこれだ!! モーラの行動が、結局は貴様の盲愛を産んだ!! だから、だからモーラは、その『結果』を、ひとりで受けることを選んだんだ!!」
 俗な言い方をしてしまえば、責任をとって?
 こうなってしまった原因が、自分にあるから?
「……こうなってくると、逆にそのモーラさんってのに会ってみたくなるな。ここまで盲目的に人に愛される女性ってのは、一体どんなだったんだよ」
 あまりにも呑気なご意見。発したのはソルダムだ。
 いやそのね。オレも実は、それって思うところなんだけどね。
「そりゃあモーラは見た目は上等だ!! 人間などとは比べるにも及ばんわ!! 性格も聡明でしとやか、非の打ち所のない完璧な!! だがそんなことは、エルフ全体に言えることだ」
 相変わらずオレ様意見だな。別にお前が褒められた訳じゃないだろう、サウロよ。
 召喚獣ってのは、自分そのものよりも、召喚師に誇りを抱いてるものなのかね。ミリネのことも凄く誇りに思って大事にしてるみたいだし。
「モーラ自体、そんなに個性があるわけじゃない。こうなってしまった理由は、モーラ自身ではなく、ヤツの生きてきた環境にある」
 あ、やっぱりそこも重要だよね。
 共に危機的状況に陥った男女には愛が芽生えやすいって話だし。って、これはそういうケースでもないか。
 なーんか、根が深そう。
「召喚師たちは、モーラを止めようとはしたが、モーラ自身に責があるとは考えていなかった。だがモーラは自身の招いた事態を清算するために、貴様の下らん情念を甘受した!! 他の誰でもない貴様が!! モーラを殺したんだ!!」

「違う、違う違う!!!」

 違わないってーの。
 と、わなわなと震えたエルベルン、その両手に一瞬で生まれた赤い光を、オレたちに向かって放出した。
 うわ、タメなし!!
 少し離れた場所にいたシイナが、瞬時にこっちに移動してくる。
「コーラス、サウロ、そこを動くな!!」
 多分それは結界。
 シイナの作った透明な壁? が、その赤い光をそのままエルベルンへと撥ね返した。けどその壁は、その力を受けて瞬時に消え去る。撥ね返されたその力を、エルベルンは横に避けてやりすごした。
 なんか、息が上がってるように見えるのは気のせいかな?
「ミリネ!! 躊躇するのはわかるが、その男に手加減などしなくていい!! 守っているだけでは埒が明かないぞ!!」
「……」
 シイナの言葉に、ミリネがほんの少し、悲しそうな表情を作る。
 あ、そうか。ミリネも結界か何かで守ってくれてたのか。
 しかも、エルベルンの身体はシイナのものだ。そりゃあ躊躇もするってものだろう。きっとミリネ自身、できれば人を傷つけたくはないんだろうし。
 オレだって困ってる。
 どうもエルベルンの力が弱ってそうに見える今、なんとなくやって出来なそうな感じはないんだけど、できればあの身体を傷つけたくないんだけど。
 シイナに言うと激怒されそうだけどね。
「そうだな、お嬢。遠慮することはない。他を攻撃するは召喚師の本意ではないがな。身体を変え、我らをたばかった愚か者だ」
 そういえば、大樹海を焼いた時も偽名使ってたんだよな。そんでもってエルフたちがエルベルンに気付かなかったということは、魂の秘術か何かで、身体も変えてた可能性が高い。多分モーラだけが、彼に気付いたんだろうな。
 で、そのあとすぐにシイナの身体を乗っ取った訳だよな。そんな高等な秘術、連続使用しちゃって大丈夫だったのかね。

「理論上、エルベルンは限界を迎えてるはずだ。今逃がすわけにはいかない」
 シイナがエルベルンへと向かった。
 理論上って何!?
 ていうかちょっと待て、待ってくれってばシイナー!!





==椎名の呟き==
シリアスな言葉の応酬中、あまりにその場にそぐわないコーラスのモノローグ。でも実は往々にして、そんなものだったりしません?w

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2007.02.13

 次々と放たれる赤い光を避けつつ、オレとシイナは二手に分かれてエルベルンに接近を試みる。
 思っていたほどには速くもでかくもない魔法なんだけど……こっちには弱みがあるんだよなあ。
 エルベルンの身体、あれシイナのなんだもんな。
 ケティさんは、シイナの身体を取り戻す方向で、なんて言ってたけど、イザとなったらどうすればいいのかさっぱりわからない。実際彼女も、確実に上手くいく方法が存在するなんて思ってないんだろうけど。
 ミリネとサウロは涼しい顔をしてその場に留まったままだ。多分人間の魔法は彼らにはほとんど効力を発しないんだろうから、それについてはかなり助かる。

 シイナが、目にも留まらぬ速さでオレの至近距離まで寄って来た。
 小さな声で呟く。
「オレの身体を使っているくせに、魔法力が鈍い。多分……」
 そこまで言って、飛んできた赤い光を避けるために、また離れる。
 多分、なんですってー?

「お前たちに何がわかる! この私の……」
 エルベルンの身体全体が、赤い光で染まった。
 魔法ってどの瞬間に何が起こるのかわからないから、正直苦手だよー。これまで魔法師相手に戦ったことなんてないもん、オレ。それっぽいことするモンスターはいたけど、彼らの行動パターンは読みやすいことが多いし、やっぱり思ったより遅い小さいとはいえ、当たったらかなり痛そうなのには変わりないし。

 棒立ちになってエルベルンを凝視していたソルダムが叫んだ。
「コーラス! 今度の光はさっきまでみたいな鉄砲玉じゃない! 放出型だから避け切れないぞ。離れろ!!」
 うおっと、ヤバい。
「目がいい人間がひとりいるようだな」
 ものの本質を見る目というのは、先読みも得意だ。それを理解したエルベルンの矛先がソルダムに向けられた。まずい。

「モーラは消えた。なのに何故貴様はまだ愚行を繰り返そうとする」
 サウロの言葉に、エルベルンの動きが止まる。
 ぐるりと、狂気に染まる目をサウロに向けた。
「お前にはわかるまい。モーラと共に生きることだけを考え、永い時を過ごした私のことなど……どれだけ心を裏切られようと、共に歩むこと以外に道を見出せなかった者のことなど!!」
「裏切っているのは貴様の方だ。モーラによって生かされた力のない人間のくせに、その命を破壊で使い尽くそうとするその愚かさ。だから、召喚師は人間などと関わるべきではなかったんだ」
 ……えーと、どういう話なんだ、それ。
 こうなった原因は私怨? というか、それよりは……。
「なるほど、魂の秘術を施されたものは、その秘術を行使する力を得る、の見本のような男だな。そうやって次々と身体を取り替えて生きていくつもりか。人として生まれた以上、その魂の寿命は変えられんというのに……」
 はい?
 今さらりと、何か重要なこと言いませんでしたか?
 エルベルンと距離を取って、オレはサウロの姿を視界に入れた。
「なんだそれ、どーいうこと? 魂の秘術って、そういうものなの?」
 そんな場合でもないだろうに、サウロはその場でふんぞり返る。
「人間どもは知らんだろうが、魂の秘術は、どんなに獲得しようとしても不可能な術だ。それを行使できるのは召喚師と、魂の秘術を行使されたことのある人間のみだ。また、だからといって確実に使いこなせるものでもない」
 そうだったのか。
 要は伝染病みたいなものなんじゃん……。
 なるほど秘術とか言われるわけだ。必死になって体得しようとしてる人間もいるんだろうになあ。

「モーラと関わり命を救われ、彼女に懸想する愚かさは致し方ない。所詮人間だからな。だが召喚師と人間では生きる次元が違うのだということを、いつになったら理解するのだ、貴様は!!」
 あ……やっぱりそれ、そういう話なの?
 エルベルンが、見開いた目でサウロを睨みつけた。
「だから私は次元を超える!! 召喚師がそうであるように、この世の全てを手に入れ、人間よりも遥か高位に立ち、召喚師という枷から彼女を開放し……!!」
 あんた、無茶苦茶言ってないか。
 人間が人間を超えてって、そんなことができるものかね。
「ちょっとお前、一緒にいたいなら、それは可能だったんじゃないの!? 現にミリネとオレたちは、一応一緒にいるぞ!?」
 ずっと行動を共にしてたわけじゃないけど、同じ場所で話をして、姿を見て、そういうことは今までしてきた。そのモーラとかいう召喚師と知り合っていたエルベルンなら、それは可能だったと思うんだけど。
 しかしサウロは鼻を鳴らす。こんな時まで嫌味なヤツだな、お前。
「そうはいかんのだよ、坊主。人間の愚かさがそこにある。人間の持つ恋愛感情とかいう厄介な代物は、必ず、相手にも同様のものを求めるようになる。召喚師と人間ではそれも不可能だということを、ヤツはいつまで経っても気付かない」
 うわー、きっぱり言った。恋愛感情。
 なにそれ、つまりこれって痴情のもつれ、とかいうことなのか?
「坊主、お前のようにのほほんと呑気に暮らしてきた人間にはわかるまいが、人間の激情というものが、いちばん厄介なんだ。欲しいものを手に入れないと気が済まない傲慢さを引き起こす。お前にもいずれわかるかもしれんが……こうはなってくれるなよ。ウザいことこの上ない」
「ウザいってお前な……」

「エルベルン!! モーラは貴様に対し、愛情だけは存分に注いできた!! 貴様には特別に肩入れをしてきた彼女だ。だがそれ以上を求めても無駄だと、何度彼女に言わせた!! 人間のように遺伝子で繁殖しない召喚師に、貴様の求めるような恋愛感情など、存在しないのだということを、何度!!」
 ああ、そうなのかあ。
 愛はあるが、恋愛はないってか。繁殖する必要がないんなら、それはそうなんだろうなあ。
 今言われただけでオレは納得できたんだけど、どうしてエルベルンにはそれがわからないんだ?
 それが愛というものなのさ、とかいう感じ?
 ていうよりは。
「人間がするように愛し合っていけないなら、それなら自分が人間を超えた存在になって、せめて同等の立場で共に生きたかった、とかいう結論?」
 生きる世界が違うというなら、同じになろうとか。
 そういうこと?
 オレに視線を移して睨みつけてくるエルベルンは、オレの言葉を否定しようとしてないみたいだから、多分外れてはいないんだろうな。
 そして、モーラを召喚師という枷から解放するために。
 てことは。
 そのために、大樹海を襲撃して、召喚師の存在、その社会自体を一掃しようとした?
 彼女だけは、守るつもりで。

「じゃあなんで、モーラだけ消えるんだか……」
 頭の中だけで考えてたことの末端の疑問だけをうっかり口に出してしまったら、サウロの視線が一瞬こっちに向いた。
「見かけによらず、頭の回転はいいようだな」

 ――見かけによらずって言うな。鳥。





==椎名の呟き==
君たち話が長い。手が止まってますよー。

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2007.02.11

「テメエ、今オレに向かって憎ったらしいツラとか言ったか!!」
「いや違、そこまで言ってないし、別にお前に向かって言った訳じゃねーだろシイナ、オレはあいつに、トロイアに向かって……てかお前さっき何て言った!?」
「なぜ召喚師が生きているのかと聞いている!! ならばやはりモーラも生きているのか、ええ!? 召喚獣!!」
「貴様は己の愚行に反省の色もナシか、ダーゼオン!! 人間ごときが秘術におぼれて慢心しやがって!!」

 ちょっと、何が何だかわからないんですけど!!

「なんでシイナがトロイアに向かってアーザスとか呼んでる訳!?」
 アレは確かにトロイアだ。サンレイクを滅ぼしたあの顔、忘れるわけがないじゃん!! どーせただの人間のオレは、シイナや召喚師みたく気配とかでわかんないからさ、ずっとこれまであの顔だけを目印に探してきたんだから!!
「だーからアレはアーザスだって言ってんだ!! オレの身体を乗っ取りやがった張本人だっての!!」
「お前はこの身体の持ち主か。なぜまだ生きている。しかもサンレイクの子せがれ付きか。揃いも揃って往生際の悪いことだな!!」
 サウロがバッサバッサとホバリングを続ける。
「それは貴様の方だろう!! なるほど、ちょっとばかり気配がかわったと思えば、また貴様は強い身体を手に入れに走ったという訳か!!」

「あのさあ」

 ソルダム、額を突き合わせるオレとシイナを引き剥がした。
「もしかして、大樹海を焼いたのも、白の塔やサンレイクを滅ぼしたのも、あいつひとりなんじゃないのか?」

「…………」
 シイナとオレ、敵とする男の顔を同時にガン見する。

「まさか、全部お前ひとりでやったってのか!?」
「それがどうした」
 目の前の男は、目に見えてイラついたように答える。
「じゃあなんで各地でいちいち名前変えてんだよ!!」
「バカかお前らは!! 攻撃しようとするのに、本当の名を名乗るなどという間抜けなことをする訳がないだろう!!」
「だったらわざわざ必要もないダッサい口上垂れ流すなっつーのー、紛らわしい!!」
「ダッサいとは何だ!!」

「落ち着け」
 ソルダム、引き剥がしたオレとシイナの額を、再び両手でガツンと突き合わせた。
「いってえ!!」
「お前さん方、言い争いで体力消耗してどうするんだ」
 うう、そうだった。
 論点はそこじゃない。いや、そこでもいいような気もするけど。
 ヤツもそう思いなおしたらしく、怒鳴りあって荒くなった息を整え始めた。
「大樹海でも白の塔でもサンレイクでも、ひとつまみずつ取りこぼしがあったか。まあいい、お前らだけで何が出来る訳でもなかろう」
 冷たい色の瞳を、やっぱり憎たらしく細めながら笑う。シイナ、お前の本当の姿って、かなり人相悪いぞ。
 そうとも、きっぱり言ってしまえば、何も出来ない。
 でも、取りこぼされた小さな存在は、失った物の数だけ大きくなることだってあるんだぜ。

 飛び回っていたサウロが、地上に降りて羽をたたんだ。
 なんだかとても機嫌悪そうなのが、空気から伝わってくる。そりゃまあ今この時に上機嫌な訳はないんだけど。
「なるほど、貴様がモーラと関わっていた人間と言う訳だな。まさかまさかと思ってはいたが、それで合点がいった」
 サウロの言葉に、ヤツは弾かれたように目を見開く。
「モーラは生きているのか!! どこにいる!!」
「……エルベルンといったか。貴様の本当の名は。いくら説いてもわからない愚かな貴様に教えてやろう」
 サウロは目を閉じる。
「大樹海襲撃の折に消された召喚師など、ほぼ皆無だ。皆逃げおおせているさ。ただひとりを除いてはな」
「……」
「消えたのは、モーラだけだ」

 男――エルベルンの瞳が、これ以上ないくらいに見開かれた。
「バカな!! そんなバカな!!!」
 閉じた目を開いたサウロは、その眼光を怒りに燃やした。
「バカは貴様だ!! 貴様のその浅はかな愚行と下らん情念だ!! この世での自分の位置づけも理解しない貴様の……馬鹿さ加減が……」
 エルベルンは、一歩下がった。
 ブルブルとその首を振る。
「違う……私は……私は全てを手に入れる。その力を授かった。そうでなければならない。私は全てを手に入れ、そして……」
「貴様のその愚かさは、もう治らん。貴様は幾度も過ちを犯し、取り返しのつかないことをやってきた。どれだけの犠牲を出しても、これからさらにそれを増やしても、貴様はそれに気付くことはないのだろう。故に我々も、貴様を許すことはできん」

「わからんのは……お前たち召喚師のほうだ……」

 エルベルンの両手に、赤い光の球が生まれた。
「まずい。来るぞ」
 シイナが目を細めて槍を構える。

 もう全然成り行きがわからなくて混乱してるってのに、それを噛み砕く余裕も与えてくれないんだもんなあ。
 とりあえずオレも、剣を構えるしかないじゃんよ。





==椎名の呟き==
すんません、もう私でもどうにもできないので、ソルダムさん、彼らの舵取りお願いいたします。椎名逃走。

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2007.02.10

 サウロはモンスターの襲撃に備えろと言っていたけど、街の中はまだ静かだ。でももし街中でモンスターが暴れだしたりしたら、人間には逃げ場もない。今までモンスターが人の居住区に入り込んで暴れるなんて現象は、ほとんど無かったからなあ。もちろん、ほどほどにというレベルだったら沢山あったけど。モンスターだって、自分が危険になるようなことはみすみすしないだろう。

「おねーさん、ちょっと緊急事態!」
 中央ギルドの受付にたどり着くなりオレは叫んだけど、すでに事務のおねーさんは、緊急招集に応じたハンターに指示を飛ばしまくっていた。
「……は北の森入り口封鎖、けの502、その114、ぬの265は東門で待機、あとは街の外で沈静作業をお願いします……あらコーラスさん」
「情報早いね」
 おねーさんはフウ、とため息をつく。
「あなたがそうするように打ち合わせたんじゃないですか。ここ中央はまだ何も起こってないですけど、すでに各地ハンターギルドから警報来まくってますよ。モンスターが街中に侵入してきているって。総督が警戒するようにと打診した直後ですから、もたついている地域もあるようですが」
 打ち合わせたって……確かにそうだけど、総督殿、もう各地に伝令済ませてたのか。昨日の夜のうちに? 仕事速いなあ。
「こっちはまだ大丈夫みたいだね。どうしてだろ」

「召喚師がすぐさまモンスターの沈静に当たったからだ。早くに襲撃を受けた各地の被害ももう減少するはずだ」
 飛来した深緑色の鳥が、俺の肩に止まって小さな声で告げる。
「サウロ」
 こっちもやること早いな。速攻じゃないか。召喚師は離れていても一瞬で意思の疎通が完了するらしいから、当然といえば当然か。
「モンスターの行動に関しては本来傍観するべきだが、こうも例外的に暴れられては、莫大な被害が出るからな。仕方がない。……それはそうと」
 サウロが肩からオレを見た。
「お嬢がヤツとの接触を試みている。お前たちも来い」
「ええ!? 危なくないのか!?」
 そんな、ミリネひとりでなんて。
「召喚師をなめるなと言っている。どんなに力のある人間だろうが、召喚師に傷など負わせることは出来ん。そして、召喚師の作る結界を破ることもな。とにかく急がんか、ボケ!!」
「はいはいはい、場所はどこなんだ」
「こっちだ」
 本来一瞬で空間移動出来るサウロは、オレたちが走る速度にあわせて、目前を翼で移動する。
「破れない結界が張れるなら、どうして大樹海は襲撃受けたんだ? わざわざ逃げ出さなくても良かったんじゃ」
「その方が良いと判断したからだ。そうでなければ、おそらくこの先何度でも襲撃を受けることになるだろうという予測も出来たし、思うところもあった」
「思うところ?」
 前を飛ぶサウロは、一瞬首だけをこっちに向けてカッとくちばしを開いた。
「話は後だ! つべこべ言わずついて来い!!」
 どこまで行くんだろ。街中って訳にはいかないとは思うけど。
「シイナ、ついてこられるか?」
 結構体力ないはずだよな、その身体。
「問題ない。精霊石のおかげで、魔法力の調整が簡単になった。走る程度の高速移動ならなんてことはない」
 へええ……。実際、シイナの魔法力って、ホントに強いらしいなあ。
「お嬢は姿を見せてしまったが、他の召喚師の存在をヤツに知らせるわけにはいかん。状況がどう転ぶかわからんうちはな。だからお嬢は、ヤツとの接触を自ら試みることにしたんだ。おそらくヤツは、今もお嬢を探して各地をほっつき歩いていたんだろうからな」
 え、そうなのか。
 だけど、滅ぼしたはずの召喚師が生きてて、それに驚くのも、慌てて確保しようとするのも、わからないわけじゃないけど、なんでそんなに探すほど召喚師に執着するんだ? そいつは。
「……近いな」
 中央地区の南の森をいい加減深く入った場所で、シイナがちょっと眉を寄せた。魔法力を感じているらしい。
「あそこだな……気をつけろ」

 暗い森の中に立ち尽くす、ミリネの小さな後姿。
 そこから少し離れた場所で、やっぱり立ち尽くしているように見える、フードを目深に被った……おそらく、人間の男。
 あれは。
 あれは、あの男は。
 まさか、まさかこんなところで。

 こんなところで、あいつに出会うなんて。

 ミリネを凝視している蛇のような瞳が、驚愕に歪んでいた。
 そして、ミリネに向かって叫ぶ。
「なぜ召喚師が生きているのだ!! モーラは生きているのか!!」

「やはり貴様か!! 気配が違っていたからわかりにくかったがな!! 人間の分際で大樹海を焼いた落とし前はつけてもらうぞ、ダーゼオン!!」

「トロイア貴様、オレは忘れてねえぞ、憎たらしいその金の髪と、蛇みたいな灰緑の目!! 何故サンレイクを襲った!!」

「テメエ、アーザス!! オレの身体から出て行け!!!」

 サウロとオレとシイナは、そいつに向かって同時に叫んだ。
 って。……って?

 なんですって――――――ッ!?





==椎名の呟き==
ぐだぐだです。やっとここまで来ましたが。

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2007.02.09

「まさか、オレがお前に敵わないことがあるなんてなあ」
 快晴で迎えた朝。
 テーブルで頬杖をつくソルダムの表情は、疲れ切っている。
「敵わないって?」
「酒の強さ」
 ……そうですか。これって自慢になるかな。
 ていうかその言葉、他のことではオレはお前にまるで敵わないという解釈でいいのかな、ソルダムくん?
「わかりやすい顔で怒るな」
「別に~」
 とりあえず水をくれ、と呟くソルダムは、どうやら二日酔い。親切にも使われてやるオレは、まったくもって元気なんだけどね。
「この分じゃシイナもエラいことになるかな……」
 ベッドに転がったままのシイナに目を向けたら、タイムリーにゴソゴソと動きを見せた。ムクリと、だるそうに起き上がる。
「……気持ち悪い……」
 あ、やっぱり。
「シイナも水飲むか?」
 ようやっと身体を起こしたものの、俯いたままのシイナに声をかけると、フルフルと首を振ったシイナがこっちを見た。
「なんだ、ソルダムは二日酔いか。弱いな」
 シイナ、人のこと言えないだろ。
「お前だってそうじゃん」
 オレの言葉に、シイナはクッと目を細める。
「オレのは違う」
「は?」
 どう違うんだ。
「魔法力があるってのも、便利なんだか不便なんだかな……。お前ら気付いてないだろうが、今朝になってからそこいら中に変な気が漂ってるぞ」
「なにそれ……」
「魔法師ってのは、魔法力に敏感なんだよ。だから魔法師同士ってのは、すぐにわかるもんだ」
 へえ。でもそれって、白の塔にいた時とか大変だったんじゃないのか。周り中魔法師だらけじゃん。
 そう言うと、シイナはまたも首を振る。
「別に普通の魔法力なら感知は出来てもどうってことはない。けど今朝のこれは、質が違う」
 そういうものなのか。
 って。
「一体何が漂ってるって? 何の話だ?」
「嫌な気だ。言葉で言うなら悪意みたいな質のものが、ガンガン押し寄せてきやがる」
「……それって……」
 ソルダムが、おっくうそうに立ち上がった。
「なんか行動起こしてるんじゃないのか。お前らが追ってるうちの誰かってヤツが」
「そういう感じの気だな」
 うげ。
「何だそれ。シイナお前呑気すぎ!」
 だったら早く、えーと、どうすればいいんだ。
 とにかくあれだよ。そいつがどこで何をやろうとしてるのか、何が起こりつつあるのか調べなきゃならないじゃん!
 でもどうやって?
「焦るなっつーの。オレが感じるくらいなんだ。かなりでかくて近い。今どういう動きしてるのか見極めてるんだから、ちょっと待て」
 待てって言われてーもー。

「大変だァ――ッ!!」
「ミリネがかどわかされたか!?」
 バーンと家の扉を突き破って飛び込んできたサウロに、条件反射で叫び返してしまった。
 うう、今ならディク先生の気持ちが良くわかる。
 お前は壁になるものを壊さなけりゃオレたちのところに来られないのか。玄関壊されたワンルームって致命的だぞ。でもそういえば、オレたちが室内にいたとしてもミリネはいつも瞬時にオレたちの目前に現れるけど、サウロが単独で来る場合は毎回何かを突き破ってくるな。召喚師と召喚獣の差がここにあるのか。
「そうそう何度も不覚を取ってたまるか!! というか前回のアレは、お嬢がわざとだな」
「わかったわかった。で、何が大変?」
「このイヤな気に気付かんのか、鈍感坊主が!!」
 普通の人間には無理です!!
「いや、シイナが気付いてたけど、それがどうしたって? 何かやった?」
「だったら何をのんびりしてんだボケ――ッ!! こんなところでくたくたしてる場合じゃねーだろ!!」
 サウロの口調が乱れている。初めて会った時みたいだな。ということは、かなり動転して、ついでにご立腹ということなんだろう。うん。
「オレたちは召喚師みたいに事細かに感知できないんだよ。今探ってたところだ」
 シイナがイラついたようにこめかみを押さえる。
「これだから人間ってのは!! 今動いてるのは、お嬢をかどわかしやがった張本人だ!! 各地を高速で動いてやがる!!」
 うわあ。早いお出ましだ。
「各地……? オレが感じた力は、ごく至近距離だったけど」
 顔を上げるシイナに、サウロは食って掛かる。
「さっきここいらに来て、またすぐ移動したってことだ!!」
「それでもこんなに気を残してるのか……」
 怒りに任せて怒鳴り散らすのに疲れたのか、サウロは一瞬バサリと羽を広げて、すぐさまため息をついた。むしろ深呼吸か、それ。
「この気は、モンスターを呼び寄せる。グズグズしてらんねーぞ。ヤツの気配は召喚師が追えるが、すぐに街の中にまでモンスターが来やがるぞ」
「ええ!!」
 それはちよっと、いやかなり困るじゃん!!
「すぐに動ける準備をしとけ!! オレ様とお嬢はヤツを追う」
「わかった」
 オレが頷いたのを見て、サウロは速攻壊れた扉から飛び出していってしまった。……修理代、請求できないよなあ。

「いーい具合にテンション保ってるぞ~。二日酔いのオレをナメんな」
 ソルダム、底意地の悪そうな微笑みを空に向ける。
 えー……。お前、調子良くない時に燃え上がるタイプ?
「とりあえず、街中をチェックだな。中央ギルドにも報告しないと」
「はいよー」
 オレたちは、頷きあって小さな家を飛び出した。





==椎名の呟き==
もともとそういうつもりで書いてますけど、呑気ですね、アンタら。

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2007.02.08

 空になりかけたオレのタンブラーに酒を注ぎながら、ソルダムはふと首をかしげた。
「けど……実際シイナはどうするつもりなのかな?」
「どうって?」
 シイナつながりで何かを思いついたらしいソルダムは、視線をベッドに転がるシイナの方へと向けた。
「白の塔もなくなっちまってさ。その原因を突き止めて、それをどうにかできたとして、その後さ。再建するつもりはないって言ってたけど、具体的にどうやって生きて行くつもりなのかなって。何か聞いてる?」
 具体的に、どうやって……。
「ん……うん」
 シイナの口から直接聞いた訳じゃないけど。シイナがどういうつもりでいるのかは、別の筋から、聞きかじってしまっている。
 多分。
 多分シイナは、具体的なことなんて何も考えてないんだろう。
 自分の中に生きてるケティさんのことも死んでしまったって思ってるし、今のままだったら、彼女の身体で長くは生きられないって知ってるし。いつでもその時を迎えるつもりでいるんじゃないかな。
 誰にも何も、告げないままで。
 オレもそんなこと、ソルダムにもシイナにも、言葉に出しては言えないけど。
「コーラス?」
「ん、いや」
 言えないよなあ。シイナから直接聞いたわけでもないのに。
「どうした?」
「……いや、ね。そのさ、シイナって、オレのこと嫌いかなあ?」
 つい出てしまった言葉に、ソルダムは本気で目を丸くした。
「何だよ急に。……少なくとも、オレには全然そんな風には見えないけど」
「ならさ、それなら……」
 オレが生きててくれって言ったら、生きててくれないかなあ。
 諦めることなんてしないで、生きてける道を一緒に探してくれないかな。
 死んだらダメだって、生きてて欲しいんだって、オレがそう望んでるだってこと、わかってくれたら、そしたら――。
「……なんでもない」
「何だよ。お前こそ言いかけてやめるなよ」
「お互い様だ」


 結局適当にごまかして済ませたけど、やっぱりソルダムは、オレが濁す言葉はそれ以上は訊かないでいてくれる。オレが何事か考えてるってこと、気付いただろうに。
「ホントにこいつは風邪ひかないのかね……」
 ひとつしかないベッドをシイナが占領してるから、冬場にシャツ一枚で過ごせる超健康体ソルダムは、平気平気と笑いながら毛布に包まって、床に転がって眠り込んでしまった。酔いの勢いもあってのことなんだろうけど、ホント狭い家でゴメンナサイ。
 オレもいい加減寝ようかと思ったけど、やっぱり床じゃなきゃダメかな。
 何とかシイナを端に転がしてベッドに潜り込もうかとも思ったけど、やっぱりひとり用の狭いベッドじゃ無理がある。何とか入り込んだとして、寝ゲロでも炸裂されちゃ敵わないし。
 やっぱり床で寝るしかないかあ。
「……」

 ――オレもね。
 オレも、一度失くしかけた命、いつ捨ててもいいつもりでいたけど。いつ捨ててもいいものだから、いつでも捨てるつもりで、やれることを出来る限りやろうって、そう思ってたけど。
 多分、それは少し違うのかもしれない。

 気付かないうちに、失くしたくないものはどんどん増えていた。
 オレに失くしたくないものがあるように、もしも、もしもオレのことを、そういう風に思ってくれる誰かが、何かが、ひとつでも存在するなら。
 多分オレは、捨てるなんてことを、考えちゃいけないんじゃないかな。
 だってシイナがそういう風に考えてるんだってことが、オレにとっては凄く悲しい。きっとシイナ自身だって。
 前に進んでいけるように、この目は前に向かってついてるんであって、誰だってそうやって生きてていいはずなんだ。そうやって生きてくための手段がきっとどこかにあるって、そう信じてなければ、たとえそれが皆無に思えたって、探さなければ見つけられない。

 ああもう、本当に、命って重い。

 ひとつひとつがこんなにも重い命を、王であった祖父は、国民の数だけ背負って生きてたんだな。後継者であった父も、そしてオレも。
 いちいち後悔して立ち止まったりはしないけど、守りきれなかったその重さは、オレは一生忘れない。

 多くも、ひとつも、自分自身も。すべて等しく。
 大事に出来るような。そして大事にしてもらえるような。そういう人間になりたいよな。オレも、出来ればさ。




==椎名の呟き==
たまにはコーラスの思考補完、みたいな。
しかし最終行、この男弱い。なりたい、じゃなくてなろう、くらいに言って欲しいところですが、なにぶん完璧な人間でもないんで(苦笑)。

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2007.02.07

以前にちょこっと書いた、このブログの連載物の過去記事置き場らしきサイトができあがりました。
過去記事置き場と言っても、UPされるまでにタイムラグが2週間~1ヶ月くらいはあるので、昔の記事を読んでみたくなったとか、忘れたから読み直し、みたいな時に活用してくだされば便利かなーって。
途中をピンポイントでブログ内で探すより、わかりやすいかと思われます。

一応あまりみっともないのもイヤなので、普通にひとつのオリジナル小説サイトみたいな顔してやがりますけどねw
よろしければ、ご覧になってやってください。
肉付けは、徐々にしていくかもしれません。

現在はコーラス・ブレイドVol.24までUPされてます。

過去ログサイト『Antarcti_Ca』はこちら

2007.02.06

 結局シイナは総督室でつぶれてしまった。
 背負って歩くオレの肩に盛大に胃の中身をぶちまけるというオマケつきだ。
 きっちり貸しにしておいてやりたいけど、この男のことだから、どうせそう上手くはいかないんだろうさ。はあ。
 それでも家に帰って風呂を沸かしてたら、しっかり乗り込んできて一番風呂を乗っ取った挙句に、綺麗さっぱり気分良くベッドを占領して高いびきをかましてくれるあたり、その神経は太いなんてモンじゃない。

「どーする、ソルダム? とりあえず飲み直すか?」
 オレが酒の瓶を棚から取り出すと、ソルダムはげんなりと首を振る。
「お前、どれだけ飲むんだよ……。オレはもういいよ。シイナが持ってきた茶でも入れるから」
 そう言ってどこからともなく取り出したのは、何故かお茶用のポットだ。うわ、ちゃっかりギルドの事務所から戴いてきたのか、もしかして。
「事務のおねーさん、頼んだら喜んでこれくれたぞ」
 そりゃそうでしょうよ。
「あれだけ気に入られてりゃね」
「いや、ちゃんとお前にって」
「そうなんだ?」
 それは意外だ。
「ああ見えて、心配してるみたいだったよ。お前のこと」
「へえ……初耳」
 まあね。あれでもあの人、オレの正体知ってる数少ない人間でもあるし。普段はもちろん、そんなこと表面上に出したりしないけどさ。

 湯を沸かしてちゃんと入れたお茶と果実酒という、変な組み合わせの飲み物をテーブルに並べて、オレたちは飲みなおした。
「でもまあ良かったじゃん。あの時はそこしかアテがなくてハンターギルドに身を寄せたんだろうけど、肌に合ってるみたいでさ」
「まあね~」
 もともとオレは身体ひとつになったら剣しか取り得のない人間だし。大雑把で気さくな連中が多いから、それなりに親しい仲間も増えたし。
「オレのところに来たばかりの頃は、お前けっこう沈んでること多かったじゃん。オレだってそこそこ心配してたんだぜ」
「うそだァ。オレ、あの頃も今も、そう変わらないと思うけど?」
 ソルダム、盛大なため息をつく。
「表面上はな。お前さん、オレの『目』を忘れたのか? 他はごまかせても、オレはそうはいかないよ。ていうか当然だと思うぜ? あの状況を考えれば」
 そりゃまあ、ねえ。
 何もかも、だもんなあ。
 全部を失って、ただのひとつも守ることができずに、ひとり逃げ延びたオレですから。自責も後悔も何もかも、俺の中に無かった訳じゃないけどさ。でも出来得る限り、前向きにと考えてたつもりなんだけどなあ。
「お前がオレのところにいた半年間、オレはお前のリハビリ期間のつもりでいたけどな」
 それには、ほんっとに感謝してます。
 問わず言わずでオレから出る言葉だけに耳を傾けて、よく見捨てずに面倒見てくれたよ、実際。
「面倒見のいいソルダムさんに、お茶のお代わりをお持ちしますよ」
 なーんかいたたまれなくなってオレが立ち上がると、ソルダムはケラケラと笑い声をたてた。
「茶ッ葉ばらまくなよ」
「オレはそんなにドジっ子じゃありませーん」
「まあなー」
 ソルダムはさも愉快そうに、頬杖をついたままで笑う。
「それは知ってるけど、お前はシイナと一緒に何かをさせると、想像外のことをやらかしてくれるからなあ。今はひとりだから、まあOK?」
 実績があるだけに、何も言い返せない。香草燃やしたりアザラシ連れ帰ったりしたけどさあ、確かに。
「すいませんねー。なんでだかなあ。別にドジっ子コンビになるつもりなんてないんだけど」
「……楽しいからだよ」
「は?」
 茶を入れなおしてテーブルに戻ると、入れたてのそれをひとくち飲みこんでから、ソルダムはまた口を開いた。
「一緒にいて楽しいからさ。そういう風になるんだよ。遠慮も何もなしに、それでも一緒にいられる存在ってのは、貴重なんだぜ」
 そういうものなんだろうか。
 ソルダムと出会って3年、シイナとなんてまだ数日、オレは他人が自分にとってどういう存在かなんて、具体的に考えようとなんてしたことがないけど。
 友人、とかいう言葉が一番近いのかもしれないけど、シイナに関して言えば、そういう言葉もまだ当てはめるような時間の余裕は無かったんだけどな。ソルダムはソルダム、シイナはシイナとしてそこにいるってだけで、それは確かに安易に気を許してしまった存在で、ディク先生にしてもミリネにしてもそうなのかもしれないけど、信頼だけが先に来てて、それがオレにとってどんな存在なのかなんて、意識的に考えるなんて、これまでこれっぽっちもなかった。
「大事なものが増えるってのは、弱みにもなるけどな。そういう弱みってのは、あっていいものだとオレは思うよ。時にそれは、何にも負けない強さにもなる」
 不思議なもんだね。
 大切にしていたもの、全部キレイさっぱり失って、それでもまだ、新しい何かが心に宿るものなのかね。何にもなければ、再び失うこともないのにな。まあもっともオレは、いつまでも過去に引きずられるつもりもさらさら無かったんだけど。
 そんなのは、オレが生きてく上で許されることじゃないって思うし、何よりも、そこに置いていかなければいけないものを抱えたままじゃ、いつまでも先には進めない。いつでもそう思ってるつもりだけど、本当に気付かないうちに、オレが進むために力をくれる存在ってのは、自然と近くに来てくれるものなんだな。
 そんなことを呟いてみると、ソルダムはその笑顔を苦笑に変えた。
「お前はてんで自分をわかってないね……」
 なんだよ。
「自然にじゃなくて、それはお前が……まあいいや」
「言いかけてやめるなよ」
 含んだ言い方はフェアじゃないっての。
 けどソルダムは、ただ笑うだけでそれ以上を言おうとしない。こうなると、絶対にそれ以上言わないもんな、こいつ。
どーせオレはもの分かりが悪いですよーだ。





==椎名の呟き==
ここの風呂も湯船つきが標準です。単に椎名の趣味です。
しかし飲みネタでどこまで引っ張るつもりか。いや、別にひっぱりたくてやってるわけでは決してないんですけど……。本来クドいのが、椎名の作風でして、はい(殴)。
ところで、次回は変にシリアスというか、リリカル展開が予想されます。コメディ好きの方は、お覚悟の程を!!
(リリカルてなんだ。ていうか別に言うほどのことは無い)

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2007.02.05

 人間が出現するずっと前から、のちに召喚師と呼ばれるエルフたちは、この世界で暮らしてきた。
 人や他の生物たちのように、この地の上に『暮らす』のではなく。
 この世界そのものと『共存する』という意味で。
 この地に存在する全ての物質の元素を、自ら使役するために形を変え、召喚し。エルフたちのその力は、全て世界の安定のために注がれる。この世の全ての物質と溶け合いながら、この世界の、平穏なる存続のために。
 個々の姿をとりながら、全ての物質と融合しながら生きるエルフたちは、すべての同種族と意思の疎通が可能だ。もともとひとつに溶け合う者なのだから、当然のこと。
 彼らは、世界中に散在する個々であり、同時にひとつなのだ。

 この世界を形作ろうとする力が人の形を取ったのが、エルフの始まりなのかもしれない。

 やがてこの世界に、エルフとはまったく違う次元である『地上』に足を据えて生きる種族、人間が出現した。
 独自の進化を遂げながら、消費と生産を繰り返し、この地を活性化させていく人間を、エルフは彼らと交わること無く見守ることを決める。
 エルフは、地上で生きる生物を、この地を繁栄させる者と判断したのだ。
 そうしてエルフたちは、繁栄を生物たちに託し、大半の時間を大樹海と呼ばれるひとところで集い、自らはただただ世界の安定のために、彼らを傍観する役目を果たしてきた。
 世界を護る者として。

 しかし長い年月を経るうちに、人をはじめとする生物たちは、より強くを求める遺伝子本能のままに、争いを繰り返し始める。
 それこそが、この世を活性化させるための理であるとはいえ、特に目覚ましい発展を遂げた人間は、己の繁栄のための手段を選ばず、時に世界そのものを破壊するほどの力で他を圧しようとした。
 永きに渡る歴史の中で、何度も繰り返された争いの痕跡。
 壊れたものを修復する間もなく、争いは繰り返される。

 世界がほころび始める前に、エルフたちは一計を講じた。
 そうして彼らが世に放ったのが、モンスターと呼ばれる、エルフとも生物とも異なる存在だ。
 モンスターを生物たちの天敵とすることで、同種族同士の争いの沈静を計ったのだ。
 モンスターたちは独自の手段で繁殖繁栄を繰り返すが、他の生物のように巨大な社会を持つことはない。縄張りや権力のために争うことをしないモンスターの存在は、確かな効果をもたらした。
 狩らなければ狩られる緊張の中で、同種族同士の争いは激減した。己の社会を守るために闘わなければならなくなった生物たちは、同士討ちに興じている場合ではなくなったのだ。そして、大きな組織を持たないモンスターを狩るのに、人間が世界を壊すことはない。
 そうしてまた安定した繁栄を取り戻した世界ではあるが。

 やはりそれでも、それを壊そうとする者は現れる。
 今回のように。


 ……というのが、サウロのおとぎ話というか昔語り、なんだけどね。
「初耳だよ……モンスターを作り出したのがエルフだなんて」
 グラスを傾けながら呆れ顔を作って見せても、サウロは知らぬ存ぜぬどこ吹く風、みたいな顔。
「当然だ。人間なんぞが知る由もない話だ」
 浅い皿に注がれた果実酒を、くちばしでビシビシとつつく鳥。
 宴会って言ったけど、まさかこいつまで酒を飲むとは予想だにしなかった。
「もっとも、モンスターを作り出した、というのは随分昔の話だからな。お嬢のように歳若いエルフは、その事実は種族としての記憶でしか持ち合わせてはいないが」
 今もモンスターを作ってるわけじゃないのか。
「エルフはモンスターの祖先を作り上げただけだ。奴らは奴らで勝手に繁殖と進化を続けている」
 う、また考えを読まれた。オレ、そんなに顔に出やすいのかな。
 サウロがギロリと睨むから、その皿に果実酒を注ぎ足した。
「エルフが直接石を投じたのは、その時だけだ。本来なら成り行きに身を任せるが最善だろうが、ただ眺めていたら世界が滅びる。面倒なことだ」
 返す言葉もございませんけどね。
 歴史が長すぎて、エルフと人間の存在が違いすぎて、なんだか話に実感が持てない。モンスターを放たれて怒るのも、人間同士のいさかいを止めてもらって感謝するのも、どっちも何だか違うような気がするし。
 本当に、散々言われてたことだけど、生きてる次元が違うんだなあ。
「この世界に関して、エルフは何をやるのも大抵可能だ。人間で言う神のようにな。だが、エルフはその力を使って人間のように私利私欲や征服のためにその力を使うことはない。これは絶対だ。だが今回のように、この世界の存在をも脅かそうとする輩を黙って見ているつもりもない」
 だからこうして、オレたちに協力してくれる訳だよね。
「オレ様も生まれて100年あまり、のんびり暮らしていたというのに……」
 100年も生きてるのか、お前。
「じゃあ、ミリネの召喚獣になる前はなにやってたんだ? お前」
 オレの質問に、酒をつついていたサウロは勢い良く振りかぶり、オレに酒を浴びせる勢いで怒鳴り散らした。
「阿呆かお前は!! オレ様はお嬢の召喚獣だぞ!! お嬢がその力で作り出したに決まっておろうが!!」
「え? だって」
 だってサウロ、100年生きてるって……100年生きてるサウロを作り出したのがミリネって……。
「ミリネって、何歳なんだ……?」
 サウロが再び怒鳴りかけたけど、酒をなめていたミリネがついと顔を上げて呟いた。
「200年近く生きているとは、思います……」
 ぶは。
 うっそーん。
 200年生きててその外見!? じゃあ一体エルフの寿命ってどのくらいなわけ? それとも生まれてから死ぬまでずっとその姿なのかな。ていうか、エルフって死ぬの? 子供とか産むの?
 色々疑問は浮かぶけど、聞いたらまたサウロに怒鳴られそうだ……。
「なんだ、そんなに驚いて。さてはお前、出会ってこれ幸いとばかりにミリネを手懐けて、大きくなったらモノにするつもりでいたのか?」
 突然傍らのシイナから恐ろしい言葉が出て、サウロが羽をバサッと広げた。
「なんだとお――――ッ!?」
「うわー! バカシイナ、おかしなこと言うな!! んな訳ないだろ!! 誤解だサウロ!!」
 ていうか何だ、なんでみんなオレのこと寄ってたかってそういうキャラにしようとしてる訳!?
「だよなー。お前鈍くさそうだしな、そんな計算高くないよなあ」
「おいシイナ?」
 なんかおかしくないか。
 オレの隣にあぐらをかくシイナをマジマジと凝視してみれば、両手でグラスをゆらゆら揺らしながら、ヘラヘラと気味の悪い笑顔を浮かべている。
「しこたま酔っ払ってんのか、お前――!!」
 ニヤついてたシイナ、急に眉間にしわを寄せてオレを睨み上げる。
「別に酔ってない。酒に弱いのはオレじゃなくてケティの身体だ。だから酔ってるのはオレじゃなくてケティなんだからな」
 ダメだこいつ……。
「お前は全然酔ってないな。もう何杯飲んでる?」
 シイナの反対隣に座るソルダムがオレを見る。
「オレは多分、一晩で飲める酒の量では酔いません。鍛えられたのもあるけど、多分血筋かね。酒場で会計係はいつもオレだもんね」
 多分、酔う前に量的に飲めなくなるよなあ。酒飲んでても剣振るえるのは自分では良い体質だって思うけど。
「頼もしい限りですな。シイナさんの方は、そろそろ別の飲み物にして差し上げた方が良いかと思われますが」
 そうやってオレの事を良く言ってくれるのはあなたくらいですよ、ウェルバーさん。
 ……しかしアレだな。総督室で宴会ってシチュエーションも凄いけど、皆で床に輪になって座り込んでって状態は、想像してなかったな。総督殿までオレの正面であぐらかいてるし。
「じゃあフルーツでも絞ってくるよ」
 立ち上がりかけたオレを、シイナが止めた。
「待てコーラス。そんなもの絞らなくていいから、お前はこれを砕いてオレによこせ」
 木の実割りを使わないと割れない硬い殻を持つ木の実の皿を、オレの目の前にズイ、と差し出す。
 タチ悪いな、お前……。
「いいよコーラス。フルーツはオレがやるから。大体お前にやらせたら、フルーツもグラスも粉砕しかねない」
 サッとためらいも無く立ち上がるかいがいしいソルダム。

 しかしね。なんつうか、その。
 ソルダムだってそこそこ酔ってるように見えるのに。
 素面ですら、そこまで信用されてないオレって、一体。





==椎名の呟き==
いつまで続く、総督室での宴会。いや、終わりますけど。
飲み会で会計係なのは、はい、椎名本人です。
だって酔う前におなかいっぱいになっちゃうんだもん。やはり私は、気分良く酔うためには日本酒ですね。ええ。

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2007.02.04

 目の前に見知らぬ少女が現れて、さすがにウェルバーさんも驚いたようだ。
 や、今オレもちょっとびっくりした。
 わかってはいたことだけど、やっぱりちゃんと結界が張ってある場所に、易々と入って来るんだもんなあ。人間の魔法師なら、絶対に出来ない。
「あれ、サウロは?」
 飛んできたのはミリネだけで、深緑色のやかましいのがいない。
「ここにいるわボケ!!」
「うわあああ!」
 ミリネの額から顔だけ出して怒鳴るのはやめてくれ!!
「貴様は何様のつもりだ坊主!! ひょいひょいとお手軽に呼び出しおって、こちらにも事情ってもんがあるんだからな!!」
「え、今忙しかった?」
「いや、別に」
 ならいいじゃんよおおお。
「……まあいいや。ミリネ、サウロ、そこにいるのがハンターギルドの総督、マジュレ・ウェルバー殿だ。3年前からの異変についての協力者となってくれる人だよ」
 サウロが相変わらずの横柄さで鼻を鳴らす。
「フン……ハンターギルドか。組織としてはでかいな、確かに」
「ウェルバー殿。召喚師のミリネと、その召喚獣であるサウロです。その、少女の方がミリネで、額からはみ出てるのが召喚獣ですが……」
 目を見開いてミリネたちを凝視していたウェルバーさんが、ハッとしたように我にかえった。
 そりゃ驚くわな。
「これは驚きました……。召喚師であるエルフのことは、多少なりと知識として持っていたつもりでしたが、こうも簡単に意思の疎通や空間の移動が出来るとは。陛下、あなたが呼び出したのでしょう?」
「ええ、まあ」
 サウロが苛立ったように、クワッと胸まで飛び出してくる。
「さっさと用件を話せ、坊主!!」
 わかったから、そこまで出てくるなら全身出て来いよお。
「用件というか、総督殿にミリネを紹介したかったってのが大きいんだけど、この場であらためてお願いしようと思ってね」
「お願い?」
 オレは、ミリネとサウロに視線を合わせる高さで片膝をついた。
「今起こっている異常事態の原因を探り、それを取り除いて平穏を取り戻したいという目的は、我々人間も召喚師も同様であるはずだ。我々の戦力は微々たるものながらも、召喚師たちの役に立てると思う。だから我々からも、あらためて依頼申し上げる。召喚師方にも、全勢力を挙げて我々に力をお貸し願いたい」
 サウロが、バサリと羽音を立ててミリネの額から飛び出した。
 アメーバ状でなくても出て来られるんじゃん。どっちにしても気色悪いに変わりはないけどさ。
「フン。長い歴史の中、こちらがどれだけ対策を講じても、人間というのは同じ種族同士で対立をしたがる。永遠に治らんな。それもこの世の理とはいえ、鬱陶しいことこの上ない。では訊ねるがな、亡国の王よ。貴様が今後、どれだけ人間同士でいさかい合うもそれは勝手だが、この世界を、そしてそれを守護し、貴様らを傍観する召喚師の存在を、脅かすことを一切しないと誓えるか。人間は我々と違って統率力がないからな、人間総てを挙げて誓えとは言わん。コーラス・サンレイク。お前は、誓えるか」
 サウロの目が、こちらを真っ直ぐに見つめる。
「誓う」
 人間のひとりとして。
 人間が、その住むべき世界を脅かしてまで何かを成し遂げようとするなら、その世界を平穏に存続させようとする人間は、たとえ同じ種族であってもその行為を許容することはないだろう。たしかにそれは、サウロの言うように情けなくて、悲しい対立でしかないけれど。
「同じ人間だからこそ、他を圧しようとする存在を捨て置くことはできない」
 サウロは頷いた。
「それが世界の理というものだ。わかった。では我々は、貴様らに助力を仰ぎ、また出来る限りの力を貸すことにしよう。その言葉、違えるな」
「わかった。感謝する」
 ミリネがス、と小さな動作で両膝をついた。
「……私どもからも、感謝申し上げます」
「うん」
 相変わらず、主人の方が奥ゆかしいなあ。

「そういうことです。ウェルバー殿。我々には、召喚師が味方についてくれます。彼らの特性については後にお話しすることとして、私があなたにお願いしたいのは、ハンターギルドの精鋭の全勢力を挙げて、暴走するモンスターの沈静にあたっていただきたいということです。普段請け負っている人間の諸犯罪その他に関しては、手続きは面倒ですが、各地自警団にあたってもらった方がいいかと」
「そうですな。そちらの手配は我々で行いましょう。陛下の方は、いかがなされるんです?」
「我々は、向こうの出方を探りつつ、状況によっては機を見て彼らが根城にしているらしいサンレイクに乗り込むことも考えています」
「そうですか。その件についても、打ち合わせが必要ですな」
 ちょっとばかり長くなりそうだ。
 でも面倒な各手配に関してはハンターギルドに一任するしかないから、今ここでしなければならないのは、触り程度の打ち合わせだけだし。

 一通りの打ち合わせが終わったところで、サウロが痺れを切らしたようにバサッと羽を広げた。
「つまらん話し合いはその辺でよかろう!!」
 つまらんってお前な。
 でもおおよそキリがついた絶妙なタイミングで言ってくるあたりが、さすがサウロというべきか。
「話が済んだらここで宴会だ!! ついでに下でやたら女に囲まれているソルダムも呼べ!!」
 良くご存知で。
 って、宴会!?
「なんだよ宴会って!!」
 サウロはエヘンと胸を張る。鳥だけに鳩胸だ。
「お前らは召喚師と関わった数少ない人間だ。少しおとぎ話を聞かせてやろうというのだよ。話の肴はあったほうが良かろう」
 おとぎ話?
「ウェルバー殿、時間は大丈夫ですか?」
 ウェルバーさんは、何も問題はないと頷く。
「おそらく、その話は我々にとって重要なものなのでしょう。何をおいても優先させるべきであると考えます」
「物分りがいいな、人間。そこの小僧も見習え」
「別に嫌だとは言ってないだろ!!」
 急に宴会とか言い出されれば誰だって驚くっての。
 誰も話を聞かないとは言ってませんよ、ええ。

 ああその前に、事務所で女性に囲まれて食器の講釈をさせられてるソルダムを、呼んでやらないとなあ。





==椎名の呟き==
総督室でのお話は……以下略。
召喚獣のクセに妙に庶民臭いサウロです。いつも宴会やってるんだろうか。

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2007.02.03

 実は結構縦に長いポーラス中央ギルドの最上階付近の大きな扉の前に立つと、シイナが微かに眉を潜めた。
「……結界?」
 さすが魔法師。
「うん。精霊石を使って作ってある。フリーの魔法師の力を借りてるだけだから、あまり強いものじゃないんだけどね。一応要人だから、警護の意味で」
 総督のお部屋ですから。
 部屋の内側外側から結界を張ったり解いたりすることが出来るように、機械工学と魔法力をコラボさせてるから、結構手が込んでるんだよ、これが。この部屋の結界を総体的に自由に扱えるのは総督ひとりだけだ。結界が張られている部屋には、例え扉を壊しても他者が入り込むことは出来ない。……多分、召喚師は別だろうけどね。
「ウェルバー様、お連れしました」
 部屋の中に通じているマイクに案内人が呼びかけると、すぐに応答がある。
「関係者以外はいないのだろうな?」
「はい。への153コーラス・サンレイクと、彼が認めた同行人1名のみです」
「よろしい。コーラス・サンレイクと同行人1名、入りなさい」
 重たそうな両開きの扉が開くと共に、多分結界が解かれたんだろう。シイナが少し、表情を変えた。
「案内ご苦労だった。呼ぶまで外しなさい」
 ウェルバーさんの言葉に、案内人は無言で一礼して扉を閉めた。バタンという硬い音と一緒に、多分結界も元通り張られたんだろうけど、オレにはさっぱりわからないんだよね。
 3人だけになった部屋で、部屋の奥の総督席に座っていたウェルバーさんが立ち上がった。オールバックできっちりまとめられた典型的な初老の顔は、相変わらずだな。

「良くぞおいで下さいました、サンレイク国王陛下。と、ここでの再会は喜ぶべきことではないのかもしれませんが」
 うやうやしく胸に手を当てて首を垂れる彼の洗練された仕草も、相変わらずだ。懐かしさすら感じるなあ、なんて、そんなに長いこと会ってない訳でもないけど。2年半ぶりくらいだし。
「何しろ『目覚ましコール』ですからね」
「ええ……」
 んーとまずは紹介しないと、だよな。
「彼は……彼女はシイナ・ウエスコット・デラ・ウィザーズ。白の塔のマスター継承権を持っていた魔法師で、壊滅した塔の生存者です」
 ウェルバーさん、微かに顔色を変えた。
「やはり……白の塔も壊滅していたのですか。陛下が2年半前、ここを訪れる直前くらいから、国と白の塔の連絡が取れなくなった情報が入ってきておりましたので……まさかとは思っていたのですが」
「ええ。私がシイナと会ったのは偶然ですが、白の塔とわが国の壊滅がほぼ同時期であるらしいことを考えると、一連の事件として認識するべきかと」
「そうですな」
 オレは、シイナの方に向き直る。
「シイナ。こちらはハンターギルド総督のマジュレ・ウェルバー殿だよ。サンレイクが唯一交易を持ってたのがハンターギルドでね。国があった頃から懇意にしていただいていて、オレも幼い頃から何度も顔を合わせていた」
 各ギルドの結界に使われている精霊石は、サンレイクから輸出されたものだ。
 オレがサンレイクを放り出されてからレーデンバルムの方に向かったのは、近かったってのもあるけど、ポーラス中央ギルドに向かうためでもあったんだよね。唯一状況を知らせられる知り合いは、彼とその周辺くらいしかいなかったから。
 だからソルダムのところで半年ほど厄介になった後、馴染みのよしみでハンターとして一般人の中に紛れ込ませてもらった。言わば恩人であるわけだ。

 シイナがウェルバーさんに向かって手を差し伸べた。
「初にお目にかかります。白の塔所属の魔法師、シイナと申します」
「ようこそ、シイナ殿。ご無事で何よりでした」
 無事というべきかどうか。ウェルバーさんが手を握り返したその女性、中身は男なんですよ。
「目覚ましコールということは、やはり現在起こっているモンスターの異常行動は、3年前の事件と関係していると見て良いのでしょうかな、陛下」
「おそらく」
 大人しくしていたシイナが、急にオレの肘をつついてきた。
「だからその目覚ましコールってなんだ? コーラス」
 これから説明するってば。話の流れを構築するのも大変なんだからな。
 と、ウェルバーさんがオレに先んじて口を開いた。
「陛下がここを訪れた時に、私はサンレイクの惨状を耳にしましてね。同時に各所で破壊活動が起こっていた。その後ぱったりと騒ぎは収まりましたが、あの破壊はもっと先の、更なる厄災の前兆でしかないのではないかと踏んだ我々は、そうなった時には全勢力をあげて対抗しようと、確約していたのです。いつか、何かが起こった時には力を合わせるべく、会談の場を持とうと。目覚ましコールというのは、その時来たるという合図の言葉なのですよ」
「その言葉、考えたのコーラスだろ……」
 えー。なんでわかったんだろ。
「私がシイナと知り合ったのはつい最近なのですが、たまたまこのシイナをつれてエンデリックに預けた精霊石を取りに行ったおかげで、思わぬ出会いもありました」
「思わぬ出会い?」
「召喚師が、こちらに接触を図ってきたんです」
 あそこで。召喚師であるミリネが自らオレたちの前に現れたのは、色々な状況が重なっていたせいだろう。ありえない場所での精霊石の反応と、それを持つ、ミリネ言うところの綺麗な人間の気配、そして何よりも、ここ最近になって頻発していた怪しい気配。それがなければ、ミリネだっておいそれとオレたちの前に現れたりはしなかったはずだ。
「召喚師が……」
「ええ。その召喚師のおかげで、ここ最近怪しい動きを繰り返す、大きな力を持った人間の存在を感知することが出来ました。そしてそれが、3年前のあの事件と関係している者であろうということも、予測できるに至りました」
「なるほど……。では、その召喚師の協力も仰げる、ということでしょうかな」
「はい」
 今、ここに呼べるかなあ。
 呼んだらウェルバーさん驚いちゃうかな。でも百聞は一見にしかずとも言うし、ミリネにも正式に協力を依頼した方がいいような気もするし。
 呼んじゃうか。

 ミリネー。ついでにサウロー。
 ここに来てくれないかなあ。




==椎名の呟き==
総督室でのお話は続きます。
話の流れ的に、真面目っぽい展開が続きそうかなあ。どうかなあ。

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追記
ぎりぎり2日中にUPできるかと思ったのに、PC機能のPOPリンクにジャマされたあ~~!!
悔しい~~~~!!!
たまにほんっとに邪魔な時あるね、これ。悪いけど。
切っとけばいいのかもしれないけどさ。
ぷんぷん。
(そのギリギリ進行をまずどうにかしなさいよ)


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2007.02.01

「ただいま帰りました~」
 ブンブンと片手を振りながら事務のおねーさんに近づくと、相変わらず無表情の彼女は顔を上げてちょっと瞬いた。
「ああ、コーラスさん、お帰りなさい。いつもより遅かったですね……あら」
 オレの後ろをついてくる二人に目を留めたらしい。
 シイナには、確か出発のときに一度会ってるんだよな。そこいらで偶然出会っただけの設定だったから、まさか一緒にいるとは思ってもみなかっただろう。
「あの時のお嬢さん、今までずっと一緒だったんですか? まさかいいようにタラし込んで……」
 大人しい顔してなんてこと言うんだ、このおねーさんは。
「違う違う。ちょっと色々と目的とか気とかが合ったから一緒してるの」
「はあ……まあコーラスさんのプライベートには干渉しませんけどね。そちらの方は初めてですよね?」
 なんか、オレおねーさんから普段どういう評価を受けてるのか凄く気になるんだけど。
「こんにちは。ろの235番、エンデリック地区所属のハンターで、ついでに鍛冶屋営んでます、ソルダム・フォルセントザークです」
 にこやかな挨拶をするソルダムの言葉に、おねーさん即座に反応した。
「ソルダムさんって、コーラスさんがいつも剣を鍛えに行ってる、あの鍛冶屋さん!?」
「はい。今日はこちらに用事もあったんで、御所望のイエローストーンのグラスセットを自らお届けに参りました」
 冗談めかして言うソルダムに、何だか妙に輝く視線を送っていたおねーさんが、グルリとこっちに向き直った。
「コーラスさん! こんなに素敵な方だなんて、一言も言わなかったじゃないですか! ズルいわ」
 何が!?
 オレの知り合いがいい男だと、いちいち申告しなけりゃいけないのか!?
 ていうか、そうですか、ソルダムは素敵な方、という評価に値するんですね。オレ、男を見た目で素敵とかどうとか判断する習慣がないモンで、今いちピンと来ないんだけど……。そりゃ、ディク先生くらい派手に目立つ人だと話は別だけど……って、あの人は男ですらなかったな。
 まあね、見た目はともかく、ソルダムはいい奴だけどね、実際。
「いやあ、顔だけで商売は出来ませんから。でもそう言っていただけるのは嬉しいですね、お嬢さん」
 あくまでにこやかなソルダムに、おねーさん明らかにわかるくらいに照れてる。というかむしろ嬉々としているというか。なんだなんだ、この扱いの差は。つうかソルダム、否定もしないんだな、お前は。
「大丈夫だ、コーラス。客観的に見て、お前は見た目も腕も並以上だから安心しろよ」
「そりゃどーも……」
 今このタイミングで、お前に言われるのが一番嬉しくないぞ、ソルダム。別にひがんでるわけじゃないし。決して。
「いつかソルダムさんとお話したいと思っていたんですよ! 私たちの間では、ソルダムさんの作品が大人気で……食器の最良の扱い方なんて話もお伺いしたいなんて、普段から……」
 食器の扱いなんて、別に鍛冶屋に聞かんでもいいだろーよ。素直にいい男とおしゃべりしたいと言いなさい。おねーさん、今が職務中だってこと、忘れてるだろ。
「んー、でもコーラス、用事あるんだったよな?」
「うん、まあ。ソルダムにもついてきてもらおうかと思ってたけど、ちょっとお願い事するだけだから、ここで話しててもいいよ?」
 なんか、ここでソルダムを連れ去ったら、オレが恨まれるような気がする。
「そっか。じゃあこっちのギルドの状況とかも見ておこうかな。ポーラス中央は初めてだから」
「うん、それがいい」
 そうは言うけどなかなか放してもらえないかもよ。
「まあいいや、じゃあおねーさん、ウェルバー様にお目通り願いたいんだけど。今上にいるのかな?」
 声を落として言うと、事務のおねーさんはちょっと表情を変えた。
「ウェルバー様に……? どのような御用件で?」
「いるなら、目覚ましコールですとお伝えくださいよ」
 ス、と、おねーさん無表情に戻る。さすがプロだね。
「御意に。お待ちください」
 立ち上がったおねーさん、事務カウンターの後ろの壁にあるマイクをオンにして、小声で何かを話してるようだ。
 ややあって、クルリとこちらに向き直る。
「では案内させますのでどうぞ」
「ありがと~」
 カウンターの奥にある通路から、ふたりの男が出て来る。うーん、彼らを見たのは初めてここに来た時以来かもしれないなあ。
「そんじゃちょっと行ってくるよ」
 ソルダムに片手を挙げると、彼もヒョイと手を挙げた。
「はいよ」
「じゃあソルダムさん、早速手の空いてる者にお茶を入れさせますので、もちろんソルダムさんのグラスセットで……」
 ホント、変わり身早いね、おねーさん。

「なんだ、今のやりとりは?」
 オレの後を歩くシイナは、いかにも不可思議そうな顔をしている。まあ、そりゃそうか。
「ああ見えて、あのおねーさん実はウェルバーさん直属の秘書なんだよ。普段はああやって総合の受付なんてやってるけどね。で、ウェルバーさんってのは、ここ、中央ギルドの総督」
「総督……」
 多分シイナは知ってるんだろうけど、今では各国に支所を持つハンターギルドを最初にたちあげたのは、ここポーラス中央だ。つまりはここが、ハンターギルドの総本山。で、そこの総督ってのは、つまりがハンターギルドの創始者からその役目を受け継いでいる人間で、早い話がポーラス中央の総督ってのは、ハンターギルド全体の総指揮者ってことになる。
「目覚ましコールってのは、まあオレたちの暗号のようなもの。来たるべき日のためにお互い示し合わせておいた、ね」
 意味のわからなそうなシイナには、実際にその目で確認してもらうこととして、だ。
 オレたちはひたすら上へと続く階段と廊下を、案内人の後をついて歩いた。





==椎名の呟き==
主要人物が、気味悪いくらいにみんな美男美女ですかね。
コーラスだってそこそこだと思うけど、要はおねーさんにとって見慣れているというか、いい顔するとつけあがるとか思われているのか。ナゾ。

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椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

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