オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2007.04.24

 巡は今日初めて、ミズの元となっている水盤の姿を見た。
 それは深い深い藍色で。絵柄は入っていないが、意識して作られた色むらが目を楽しませる、上品な雰囲気を持つ水盤だ。荘二郎は何の銘もないと言っていたが、大量生産とはいえひとつひとつ手で作られただけの事はある。
 そこには、薄いピンク色の水蓮が活けられていた。

「おじいさんはいつも、お庭の蓮の池から、このお花を持ってきてくれるんだよぉ」
 その水盤に腰掛けながら、ミズはニコニコと笑っている。
 今のミズを水盤からあまり離してしまうのは良くないんじゃないかと考えて、天笠家まで足を運んだ巡だったが、一見してミズに、弱っているような変化は見えない。
 水盤自体も、巡の目から見てどこが良くないのか判断することは出来なかったが、荘二郎の話によると、もう全体的に弱っていて、目には見えにくい亀裂もあちこちに生じているらしい。いつ真っ二つになってもおかしくないから、おいそれと動かすことも出来ない状態なのだ、と、少し悲しそうに見える表情で言っていた。
 それでもこうやって、ちゃんと水を張って花を活けている。

「ミズはさ、どうしてこうやって、物の怪になったんだと思う?」
 何とはなしに、巡はミズに訪ねてみた。その言葉に、ついて来たかぼも巡に視線を向ける。
 ミズは、いきなりの巡の質問に、うーんと首をかしげて困った顔を作る。
「わかんない。でもぉ、この水盤を大事にしてくれる人と、お話が出来るかもしれない存在になれたのは、嬉しいよぉ」
 物の怪になったからといって、全ての人間と会話できる訳ではない。ミズはまだ生まれてから百年しか経っていないという話だが、その間に、ミズの存在に気付いたのは、荘二郎が初めてであったらしい。
 なにもこんな今わの際になってと思わなくもないが、こういう時だからこそ、ミズの存在力が強くなったのだと考えられなくもない。
 命の、最後の灯し火のように。
「そうだよな。物の怪と人間は、会話が出来る。……なあ、かぼ」
 巡は、今度はかぼの方に話を振った。
「物の怪はどうして、人間の姿で生まれてくるんだ?」
 巡の言葉に、かぼはキョトンと目を見開く。
 数秒そうしたあと、かぼはあからさまに呆れた表情で巡を見た。
「別に全ての物の怪が人間の格好をしている訳じゃないぞ。人間であるぬしが、人間の形をした物の怪しか認識できていないだけだ」
 物の怪の総数で言ったら、人間と話の出来る物の怪のほうが、出来ない物の怪よりも数は少ないかもしれない。話す機会がないからこそ、人間である巡には認識しにくいだけで、本当はそこかしこに物の怪は存在しているのだ。
「だとしてもだ。じゃあなんで、かぼやミーシャやシンや、ミズみたいな物の怪は、人間みたいな姿で生まれてきたんだ? 元は人間じゃないだろう?」
 かぼは何だかわからないが、ミーシャは川で、シンは猫で、ミズは水盤だ。人間でないものから魂を独立させて生まれてきた彼らが、どうして人間の姿でいるのかが、巡にはわからない。
 かぼは、どこか遠くを見つめるような表情で、巡から視線を外した。
「正直、そこのところの真実は、わちら物の怪にもわからんよ。だが……」
「だが?」
「人間の姿に転じる物の怪の多くは、人間と関わりの深い環境にいることが多い。だから、人間の姿になって生まれてくるのかもしれん」
 かぼは再び、巡を見た。
「人間と、話がしたいのかもしれんの」
 人間の使う言語を用いなければ、人間と交流を図るのは難しい。
 人間を含む、全ての生物の力が弱まる魔の刻でしか大手を振って存在できない魔物たち。けれど、それでも、いつの世もその生命力で大股闊歩で生きる人間に。
 憧れて、いるのかもしれない。
「己らを生物の代表のように勘違いしている種族だがの。それをまるごと否定できない魂の強さを持っているのが人間だ」
 憎まれ口も忘れないかぼ。だが、別にそんな人間を責めている様子でもない。
「人間と、何らかの形で関わりたい願望の表れなのかもしれんの」
 もちろんかぼにも、真実はわからないけれど。

「ミズはぁ、おじいさんと話がしたかったよぉ、ずっと~。やっとそれが叶ったんだもん、すごく嬉しいさぁ~」
 これまで生きてきた百年間のうちの、まだほんの一ヶ月ほど。
「ミズの水盤をこの家に置いてくれた人のことは、ミズも憶えてないけどねぇ」
 物の怪として魂を得る前のことは、ミズもさすがにわからないらしい。
「だから他の物の怪のことはわからないけどぉ、ミズは絶対、人とお話したくて、お礼言いたくて物の怪になったんじゃないかなあって、そう思うよぉ。この水盤で心を癒されてる人たちに、ちゃんとその気持ちを、水盤も受け止めてるよって、そう教えてあげたくて……」
 嬉しそうにそこまで言って、ミズはふと俯いた。
「でもぉ……おじいさん、まだミズに美味しい水くれないんだよ。どうしてなのかなあ。ミズのこと、嫌いになっちゃったのかなあ」
 それでもそんなはずはないとでも言いたそうに、ミズは言葉にしてしまった後で、フルフルと首を振った。

 そうではないのだと、巡はミズに言えなかった。

 水が変わったのではない。ミズが変わったのだ。
 巡があの小川の水を持ち帰った日だって、荘二郎はその水を、水盤に張ったらしい。けれどその時ですら、ミズは水が綺麗になったと喜ぶ気配はなかったそうだから。

 どう言えばいいのかわからない。
 自分が言っていいのかどうかも。

 荘二郎はこれから、どうするつもりでいるのだろう。





==椎名の呟き==
最近、仕事からの帰りが遅くて……更新飛び飛びになってしまって申しわけありませんです。
昨日も早くからグッスリ寝込んでしまいましたあ~;;
あ、一応もう一度確認しておきますね~。
物の怪の存在定義は、もちろん椎名のこのお話でのことですから!
もしも読んで下さる方との見解の違いがあっても、そこはご容赦下さいませね~。

★『逢魔が時!』最初から読みたい方はこちら★


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