オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2007.05.29

 シンが巡になすりついてきた理由は、一瞬後に明らかになった。

「……なんだ、これ!?」
 シンを抱きかかえたまま思わず叫んだ巡の視線の先。部屋の壁から、真っ黒な影のようなものが、染み出してきた。
 液体にも固体にも見えない、黒い何か。それがゾロゾロと染み出してきて、何かの形を成そうとしている。壁の向こうには、シンが寝ていたはずのかぼの部屋がある。この影の気配に気付いて、脅えたシンは巡の部屋に飛び込んできたのだろう。
「魔物だな」
「魔物!?」
 落ち着き払ったように見えるが、かぼの声のトーンが低い。
「力は……さほど強くはないの。シン、変化しろ」
 かぼの命を受けて、巡にしがみついていたシンが、急速に人の形へと変化し始めた。
「うわ……」
 支えきれずに、巡は大きくなり始めたシンを抱えたまま尻餅をついてしまう。
 ドタンと大きな音を立ててひっくり返った巡の上に乗ったまま、人間の姿となったシンは目を見張って影の方へと振り返った。
「何なんだこりゃ! なんで魔物が!?」
「シン……痛い……ッ」
「あ、悪い」
 慌ててその場から立ち上がったシンに向けて、かぼが鋭い視線をそれでもやんわりと向ける。
「シン、ぬし、魔を浄化する力は持っているかの」
「いやー……」
 かぼの言葉には、シンは申しわけなさそうに首を振る。
「オレ純粋に猫なもんでさー。逃げる以外の防衛手段持ってないんだわ」
「だろうな……」
 魔物に、物理的な攻撃は通用しない。
 かぼたち物の怪が、滅多なことでは消滅しないのと一緒だ。その上、魔物と呼ばれる連中は、かぼたちのように、依存する何かを持たないため、魔物を消滅させようとするなら『浄化』するしかないのだが。
「わちの浄化能力だけで、何とかできそうかの……」
 かぼはぼやく。
「な、何なんだよ、かぼ! これは!」
「魔物だ魔物! 話はあと!!」
 巡の叫びを一蹴するかぼ。確かに、今は呑気にこの影の説明をしている場合ではない。
「塩か聖水でもあればな……」
 うぞうぞと形を成す黒い影は、四肢をうごめかす獣のように見えなくもなかった。二本の足で立とうとしているから人間のようだとも言えるのだが、不自然に揺らめくそのシルエットは、とても人間とは言いがたい。

「塩ならあるわよ~」

 のんびりとした声音と共に、部屋のドアが勢い良く開いた。
 姉、芽衣がそこに立っている。
「滅せよ、悪魔ぁ~!」
 拍子抜けしそうに力の入っていない台詞と共に、あまりにも不釣合いな素早さで、黒い影に向かってひと掴みの塩が投げつけられる。
 行動だけは電光石火だ。
「~~~~~~~~~~!!!!」
 声にならない声というか、奇妙な音を立てながら、黒い魔物はグググ、と身体をふたつに折り曲げた。どうやら苦しんでいるらしい。
「メグに変なことする奴は~、私がやっつけちゃうからねぇ」
 両手でガッツポーズの芽衣。その拍子に、左腕で抱えていた塩の入った紙袋の中身が、全て床に零れ落ちた。というかぶちまけられた。その量ほぼ1kg。
「芽衣……」
 しかし、その光景に頭を抱えたのは巡ひとりだ。
「よし」
 芽衣の塩投げを受けて、かぼは魔物に向かって両手を思い切り広げた。
 バシンと、その両手で、自分の身長の倍ほどもある魔物を左右から押さえつけるかぼ。そこからベコリとへこみ始めた魔物を、今度は上から押さえつけて、さらにへこませる。それはまるで、綿菓子を手で押しつぶしているかのような光景だ。
 何度も何度も繰り返して小さくなった黒いものを、最終的に、両手でギュウ、と押しつぶした。

 再び開いた手の中には、もう何も残っていない。
 手品のようだ。

「…………」
 あまりにもシュールな光景を、眉間にしわを寄せて見つめていた巡。
「浄化完了、だの」
 浄化。あれが。
 巡の知識上の『浄化』とは、大分違う。
「助かったぞ芽衣。いいタイミングだったの」
 かぼの言葉に、芽衣はぶちまけた塩を蹴散らしながら、巡の方へと駆け寄り、その肩を両腕で抱きしめた。
「だって、メグの部屋に来ようと思ったら、かぼちゃんの部屋から変なものがはみ出てたんだもん。蠢く黒い影っていったら幽霊しかないじゃない~? だったらお塩で撃退できるだろうって思って、慌てて台所から持ってきたんだよ」
 黒い影イコール幽霊。芽衣らしい判断である。
 それにしても姉、素晴らしい瞬発力だ。
 動く影→幽霊→塩という三段活用も瞬時に行っている。しかも今回は、その個性的な判断がドンピシャだったのだから、運がいいというか、もともと彼女の実力なのか。
「ていうか、なんなんだよ、これは……」
 巡がこんな風に、はっきりと魔物を見たのは、これが初めてだ。かぼたち物の怪とは違う、意志の薄い魔物。巡にとっては幽霊と大差ないそれ。
 そう、幽霊なんてものだって、これまでに一度だってお目にかかったことなどないのだ。
「純粋な魔物……」
「純粋な魔物?」
 さっきもそんなようなことを言っていたかぼだが。巡には今いち、現状そのものが理解できない。急に黒い影が現れて。その影が塩のひと掴みで苦しみ。かぼが、それを握りつぶした。一体この部屋で、今何が起こったのか。
「こんなものが今普通に出てくるわけはないんだがの」
「……?」
 かぼの言葉にうんうんと頷くシンと、まったく意味のわかっていない巡。そしてそれを抱きしめる芽衣。

「奴らの仕業か……」
 腕を組んでため息をついたかぼの次の言葉を、一同は一斉に視線を向けて待つのだった。





==椎名の呟き==
椎名は男兄弟がふたりもいたので、子供の頃は綿菓子の潰し合いをよくしていましてね……。そんな思い出がヒントになった、かぼの浄化方法ですw

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2007.05.27

 もう大丈夫だからと、巡は家に帰された。
 けれど不安は消えない。
 もう家に帰った方がいいと朝比奈は言っていたが、正直、家の中なら安心だなどと、今の巡には到底思えなかった。
 相手は既に巡の家も知っていて、いつどんな手を使って乗り込んでくるかもわからないのだ。もっともだからといって、他に逃げ場がある訳でもないのだが。

 どういうつもりで、かぼと一緒にいるのかと訊かれた。
 どういうつもりって、要は成り行きで。
 でも今は家にかぼやシンがいるのが当たり前になっていて、いなくなればいいとか、そういう風には思わない。
 それを知って、相手はどうしようというのだろう。
 そこに魔の刻の者がいる限り、また彼が現れるのは必至だ。本人もそう言っていた。
 それで、どうする?
 朝比奈の言うことをそのまま受け止めるとするなら、氷村はかぼを、どうにかしようとしているのではないか。例えば、物の怪であるかぼを、消してしまう――とか。
 彼にそんなことが出来るのかはわからない。
 けれど、そうする気満々なような、そんな気配はあった。。
 それをするためなら、手段も選ばないような、そんな気さえする。そんな容赦のない印象が、あの氷村にはあった。

「どうすればいい?」
 考えの煮詰まった巡は、かぼに向かって訊いた。
「どうもこうもないわな。なるようになるし、なるようにしかならん」
 かぼの返答は明快だが曖昧だ。
「過去にそういう輩がまったくいなかったわけでもないしの。わちらは慣れっこだ。それをかいくぐってきたから今わちはここにいる。けど、負ければそういうわけにはいかんの」
 相変わらずの、不真面目そうなニヤけ顔。多分、かぼ自身は大真面目に答えているのだろうが。
 けれど巡は落ち着かない。当然だ。
 自分が誰かに狙われるなど、これまでに経験したこともなくて。それが、どう出てくるかもわからない。
「まあ、少なくともあ奴そのものは、ぬしにはそれほど危険はないだろ。この界隈にいる限りはな」
 呑気そうに、かぼは言う。
「なんで」
「奴の身元は、割れてるだろう。経歴に何がしかの虚偽がある可能性もなくはないが、それにしたってこの近辺の学校で教鞭を取っている身だ。警察沙汰になるような無茶はしないだろうよ」
 かぼの言葉は少々難しかったが、それでも、それもそうか、と巡は思う。が。警察沙汰。あまり体験したくはないが、実際はどうだろう。
「もっとも、あの男以外の誰かが出てくればわからんがの。そもそもその何とか機関というのは、わちも良く知らん」
「……」
 嫌なことを言ってくれる。
 こんな状況で、頼るものが何もないというのは苦しい。何かが起こった時に、身体を張って大丈夫だと安心させてくれる存在がないというのは。普通に生活している限りは、未だ年長者の保護下にいるのが当然なのに。
「……メグ。これは母上にも相談した方がいいかもしれん」
「えっ?」
 自分の思考を読むかのような台詞に、巡は驚いてかぼを見る。
「メグ自身の危険の可能性もそうだがの。やはり、ぬしひとりで対抗しようとするのは良くない」
 それに、遅かれ早かれ、この世界は別のものへと変貌していく。
 できることなら、それを知っている人間から少しずつ、そういう世界への免疫を作っていった方がいいと、かぼは考える。
 もうメグは知っているのだから。
 メグから家族へ。そして地域へ。急ぐことはないし、ただそんなことをふれ回っても、どうかしてしまったと思われるのがオチだ。だから、まずは一番近いところから。幸いメグの家族はかぼたち物の怪に一応の理解がある。それに関係するところで巡が狙われていると知れば、彼女たちなりに守ってくれるだろう。
 その時、かぼやシンがどう思われるかは定かではないが。


 カリカリ。

 ドアの向こうで、微かな音がした。

 カリカリカリカリ。

 巡はすぐに察する。これは、猫のシンが扉に爪を立てている音だ。入れてくれとせがんでいるのだろう。
 かぼが立ち上がって、ドアを僅かに開けてやると、「やーん」と甘えるような声で飛び込んできたシンが、巡に飛びついてきた。
「シン。どうした?」
 やんやんと巡の肩にやたらと擦り寄るシン。普段から人懐こいが、こういう彼は珍しい。
「……」
 かぼが、そんなシンの様子に目を細めた。

「そう来るか。相談する間も与えてくれんらしい」
 かぼは、小さな声で呟いた。





==椎名の呟き==
どうでもいいけど、長い一日だね……。

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2007.05.25

 世界のいたる場所には、魔物が出現しやすいポイントというものがある。それに関する定義は確立されてはいないが、長い歴史の中で、その地点だけは確実なものとして確認されている。未だに発見されていない地点もいくつもあるのではないかという仮説もあるのだが。
 それは日本にもいくつか点在していて、そのひとつが、藤乃木学園グループの小中高の学舎が近接して建つ地域一帯なのだ。
「なんでそんな場所に学校なんて作ったの……」
 巡の疑問ももっともだ。
 朝比奈は苦笑する。
「まず最初に言っておくけどな。魔の刻に対する研究機関、これを起ち上げた創立者の中に、藤乃木学園グループの理事長もいるんだ」
 藤乃木学園グループの理事長。学園を創立した人物だ。
 随分な高齢と聞くが、巡はその人物を見たことがなかった。これまでに一度も、学校で姿を見せたことはない。だからもちろん、そんな怪しげな機関の創立メンバーだなんてことも、知るわけがなかった。もっとも、そんな機関の存在自体を、巡はついさっき知ったのだが。
「もともとあそこには古くから魔の浄化を生業としてきた藤乃木家の有する社があって、神域とされていたんだけどな。成瀬は知らないかもしれないが、高校の裏手には、今も小さな社は残っているんだぞ。で、まあ……」
 朝比奈、少々言いよどむ。
「学校の作り自体が祓いに都合のいい形になっているとか色々あるんだが、要は、将来的に退魔に優れた人材を育成する場にしたいと、そういう目論見があったんだけどな」
「…………」
「……コメントに苦しむ心境なのは良くわかる。がな、まあ、あまり馬鹿にしたものでもないんだぞ。近い将来、魔の刻が訪れれば、おのずとそういうものに対抗できる人間ってのは増えてくるのが自然の摂理ってもんで、それを教育する専門機関があれば、さらにそれは優秀な者になる」
 朝比奈の言いたいことはわかる。
 だが巡にとってはどうしても現実味がないというか、想像の世界に行きがちな子供を現実に引き戻す役割を担っているはずの大人が、率先してそんなことをやっているなんて信じがたい、という感情の方が先に立ってしまうのが正直なところだ。
 もっとも、今となりにかぼがいる時点で、それは想像の世界ではないのはわかっているのだが。
「だから今は、あくまで準備段階で、藤乃木学園は普通の学校として機能しているんだけどな」
 まあそのうちわかるよ、と、朝比奈は言う。
「いずれ、10年20年と経てば、時代の変化にお前も気付く」
 魔の刻という、現実に。
「で、話を戻すけどな。そうやって創立した学校なんでな。その中の教員や学生には、研究機関の人間が紛れ込んでるんだよ」
「学生も?」
 巡の意外そうな言葉に、朝比奈はうんと頷く。
「高校だけだけどな。そもそもその機関ってのが、古くから横の繋がりのある連中だけが関わっている由緒正しき内輪受け軍団なんでな。せいぜい高校生くらいにはなっていないと、内情が露呈しかねないんで、メンバーには、ほとんど子供はいない」
 本当に、現実にあるとは思えない話だ。

 朝比奈も実のところ、ふと気付いたらそのメンバーの中に名前を連ねていた、という経歴がある。
 朝比奈家というのも、古くからそういったことに深く関わりのある家系で、神道に身を置く親類も多くいる。その中には機関に関わっている人間も少なからずいて、朝比奈自身、知らずの内にその力ゆえにメンバー候補に上がっていて。
 高校在学中にそれを知った朝比奈は、それ以来、頑なにそれを拒んでいたのだが。
「本人の意志もお構い無しにそんなことを言われてもなあ……」
 それで、内情を少々知っているのに仲間にならないからといって裏切り者扱いされても、正直困る。というか理不尽この上ない。
 こんなはずではなかった。
 機関の創始者の中では、朝比奈は藤乃木家とだけ面識がある。他のメンバーは日本や世界のあちこちに散らばっていて、名前さえも良く知らない。けれど。藤乃木に関して言えば、そんな風に人を拘束するような人間ではなかったはずだ。
 裏切り者の烙印を避けられない――なんて。
 そんな風に言われなければならない理由が思いつかない。
 誰も最初から、そんな機関を作ってくれとも入れてくれとも頼んでいない。
 多分、そんなことを言っているのは一部の過激派の人間だけなのだと思うが。一度しっかりと、藤乃木に確認を取った方がいいのかもしれない。

「先生が藤乃木小の教師なのは、その機関の関係?」
 機関の人間ではないと、朝比奈は言うが。無関係であるとは、巡には思えない。
「確かに、普通の教師とはルートは違うな。まあ教職は取ってたし、知らない仲でもないし、機関云々とは関係無しに、これからの時代、ゲートであるこの場所で勤務することで、多少は子供たちを護ることが出来るんじゃないかと藤乃木に打診はされたんだよな」
 機関とは関係無しに。そういうはずだったのだが。
「ふうん……」
 無表情に納得する巡に、朝比奈は多少の居心地悪さを感じる。後ろめたさというか。今この子に、自分はどういう感想を持たれているのか。
「正直な話、別にオレは機関に悪い感情は持っていない。けどな、いちいち乱暴な行動を取る連中には、感心できないんだよ」
 そんな人間ではないと思っていた氷村でさえ。
 かぼに対する負の感情は、まるで隠していなかった。
 物の怪であるが故に、人間と共にいていい存在ではないと、全身で語っていた。
 どうしてあんな風に攻撃的になってしまったのか。

 当のかぼはといえば、朝比奈と巡のやり取りを横で聞きながら、呑気な顔でソフトクリームを征服している。巡に負けないくらい、感情の読み取れない少女だ。

 さて、どうしたものかな。
 朝比奈は、隣に座る巡にも聞こえないような微かな声で呟いた。





==椎名の呟き==
風呂敷が~、でかくでかくぅ~♪
この何とかいう機関の壮大な活動を、このお話で書くつもりはないんですけどねw
そんな世界になりつつありますよ、というのがこの第四話のメインなので。

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2007.05.22

 彼は、その名を氷村喜孝(ひむら・よしたか)といった。
「オレの知っているあの人は、魔の刻の住人との共存派だったんだ」
「共存派?」
 朝比奈の言葉に、巡は首を傾げる。
「ああ」
 魔の刻の到来と共に、出現するはずの、凶暴な魔物たち。攻撃的な彼らには、防衛なり何なりの対策を取らねばならない。それは、生の刻を生きる者たちのために。つまりは自分たちのために。
 それと同時に、魔の刻を生きる無害な物の怪たちとは、共に生きていけるようにと。
 そういう風に考えている人間は多い。
 物の怪たちは、人間と魔物の間にあって中立だ。
 特にルールがあってのことではない。ただ彼らは、己が暮らせるだけの場所さえあればいいのだから、人間にしても魔物にしても、無闇に狩ろうとする意志がないだけの話で。
 魔の刻の住人にとって、生の刻のパワーは自分のためには良くないものだ。だから、魔物たちは生の刻の住人に対して攻撃的になるわけだが、何かを拠り所にする、かぼたちのような物の怪は、生の刻の力が多少強くても、何の問題もない。魔の力しか拠り所のない純粋な魔物たちよりは、ずっとタフに出来ているのだから。多少不便はあっても、その場に存在することくらいは出来る。
 そういう中立な立場の彼らだから。
 彼らまで攻撃対象にして、敵に回すのは得策ではない。
「むしろわちらは、自分の領域を荒らそうとする存在こそを、敵とするだろうな」
 かぼが呟く。
 人間であろうが、魔物であろうが。例えばこれがミーシャなら、自分が拠り所とする川という存在を脅かそうとするものが現れたら、その対象と本気で闘うだろう。
 人間であるとか魔物であるとか、そんなことは関係ない。
 だから、それなら。
 人間は、物の怪たちと心を通わせて、彼らを味方に付けた方がよほど有利になるはずなのだ。中立であるからこそ彼らは、自分が護ろうとするべきもののために、純粋にその力を振るう訳で。
「例えばわちは、メグの家には世話になっているからの。メグやその家族に危害を加えようとする者が現れれば、そいつと闘うくらいのことはやるだろうな」
「……」
 そういう風に例えられると、巡にもわかりやすい。
「それがわかっているはずなのに、どうしてあの人は……」
 朝比奈から見て、氷村という男は、それを一番強く思っている人間に見えていた。
 魔の刻をどうやって生きていこうかと思いあぐねる集団の中にあって、いかに物の怪たちと力を合わせていくか、そして魔物たちと無駄な戦いをしなくて済むにはどうすれば良いのかを、考えている人間だと思っていたのに。
 何が彼を変えたのか。
 それとも、朝比奈が知っていたはずの彼は、もともと虚像でしかなかったのか。
「魔の刻の住人たちを殲滅しようなんて考えている人間は、それがいかに無謀であるかをまるでわかっていない。魔の刻と生の刻の移り変わりの歴史を、まったく鑑みていない」
 本当に、人間さえ生きていれば他はどうでもいいと考えているのか。
 それほどまでに、人間以外の違う次元の種族を、許すことが出来ないのか。
 この世界は、人間だけで成り立っているのではないのに。
「わざわざ敵を増やすことはないのにの……」
 人間が牙をむけば、物の怪だって対抗せざるを得ないのに。

「氷村さんはな。藤乃木高校の教師なんだよ」
「え……」
 朝比奈の言葉に、巡は一瞬面食らう。
 あれが、教師? 普通に?
 初対面の印象が特殊だっただけに、そんな普通の職業の人だということが、少々理解しにくい。けれど、それであの女子高生が「先生」と呼んでいた訳かと納得する。彼女にとっては、氷村は自分が通う学校の教師なのだ。
 しかし。
「なんで? そんなに、逢魔の力のある人って多いの?」
「いや、ちょっと特別なんだ」
 どういう風に言っていいかわからない、巡の短い質問の意味を、朝比奈は正確に理解したようだ。
 逢魔の力なんて、そうそう持っている人は少ないだろうと巡は考える。これまでそんな素振りを見せる人間を見たことなんてなかったし、朝比奈のことを知るまでは、こんな特殊なのは自分くらいかと思っていたのに。だって実際に、お目にかかったことがなかった。
 なのに。
 巡、朝比奈、氷村に女子高生。
 なんでこの地域に、こんなに集中しているのか。
 あの少女だって、そう遠い場所から藤乃木高校まで通ってきている訳ではないだろうし、この地域の人間ではないと思っていた氷村ですら、その学校を職場としていたなんて。
 巡は、そう質したかったのだ。
「特別って、どういうこと?」
 朝比奈は、またも考える素振りを見せてから、巡を見た。
「藤乃木学園グループの学舎があるあたりな。あそこ、魔の刻の住人が発生しやすい『ゲート』があるんだよ」
 なんだ、それは。
 ゲート?
「便宜上の言葉で、本当に次元を繋ぐ門とかがある訳じゃないけどな。つまりわかりやすく言っちまえば、魔物が発生しやすいポイントがな」
 巡は、少しもそんなことは知らなかった。当たり前だが。
「お前の通う小学校含め、藤乃木学園が建っているのは、そのせいなんだ。もともとあそこには、そのために、学校を建てたんだ」
「……え?」
 そのためにって。
 なんの、ために?

 予想外の朝比奈の言葉に、巡はその瞬間、ただ面食らうことしか出来なかった。





==椎名の呟き==
えーとw
氷村喜孝という名前を聞いたことがある方がいらっしゃいましたら、とりあえず知らないフリをしておいてくださいw いつか、ご説明申し上げますので!
知らない方はそのままスルーで♪

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2007.05.20

 かぼと初めて会話した公園までやってきた朝比奈は、せがまれたソフトクリームをかぼに渡しつつ、ベンチに腰掛けた。その場に立ち尽くす巡にも、座るように促す。
「まあそう緊張するなよ。って言っても無理か」
 苦笑する朝比奈は、いつもの彼だ。
 けれど、今まで知っていた朝比奈とは違う。もっとも、巡は自分の担任教師であるという以外、朝比奈のことは何も知らなかったが。
「まあひとつずつだな。とりあえずオレは、最初に教室に来たときから、その子のことは見えていたよ」
「え……」
「別に言ってやっても良かったんだが、お前があんまり必至に隠そうとするからさ。それにあそこにいた他の人間にこの子が見えていない限り、隠し通そうとする意識は必要だと思ったし」
 巡は、あの時朝比奈に言われた言葉を思い出した。

 悟られたくなければ冷静に対処できるようにするんだな。

 最初からそのつもりで、朝比奈は巡にそう告げたのだ。
「先生は、逢魔の力があるってこと?」
「ああ。まあ、それ自体はそんなに珍しいことじゃないけどな。これからそういう人間はどんどん増えてくるし」
 それはかぼも言っていた。けれど、巡は自分以外にそういう人間を見たことがなかったから、驚きを隠せない。
 荘二郎にもミズは見えていたが、あれは荘二郎の家に関係が深い物の怪だったから荘二郎が感知しやすかったというだけで、彼自身に逢魔の力がある訳ではないと、かぼが前に言っていた。実際かぼのことも、巡と一緒にいて巡がかぼをそこにいる者として扱っていたから見えていただけで、だから、正体を知るまでは、かぼのことを普通の人間だと思っていた訳だし。
「それで、な」
 考える素振りを見せつつ、朝比奈は巡とかぼを見る。
 刺激の少ない話し方を考えあぐねているようだ。
「魔の刻と生の刻の移り変わりの歴史は、これまでにも暗に研究されてきてたんだ。昔からな。スパンの長い事変だけに、表に出ることはなかったが」
 これまでの千年は、生物の繁栄の時代である生の刻だった。
 千年と一口で言っても、これは途方もなく長い時間だ。千年前までは魔物が横行していて、またその時代が来るのだと言われても、大抵の人間はピンと来ない。
「神職だとか名のあった家系だとか、古くから代々続いている家の口伝や書物でだけ、その事変は語り継がれてきた。オレもまあ、そのクチでな。で、オレが生まれた頃には既に、連中との横の繋がりができてた訳だ」
「連中……」

 先程巡の前に姿を現した彼ら。
 もともと彼らは、逢魔が時ではなく、その後に来る本格的な魔の刻への対策を講じる集団だった。
 これから先、この世界は魔物が横行する世の中になる。
 今は物の怪と言われる者たちが出現するだけで済んでいるが、いずれ時代が進めば、生の刻の住人に危害を加えようとする連中も姿を見せ始める。それは、長い歴史の中での研究で明らかだ。
「本当に、そんな世界になるの?」
「なるな。近いうちに。とはいっても、1年や2年の話じゃない。50年か100年か……そういう未来の話だけど」
 魔の力が強まれば。
 この世に存在するものに依存している物の怪だけでなく。魔の力のみから発生する魔物も出現し始める。彼らは、人間をはじめとする生の刻の住人のようには意志を持っていない。無害な者もいるがその大半は、生きる者に襲い掛かってくる危険な存在となる。
 ただ存在しやすい世界となるために、その本能のままに。
 巡は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「どうにも……できないの」
「できないな」
 これまでも繰り返されてきた歴史だ。
 そうやって、生の刻の住人と魔の刻の住人は、交互に繁栄と衰退を繰り返してきたのだ。人間の知る歴史の表舞台には出てこなかっただけで。
「だから、連中は、そんな時代を迎え撃つために、魔物に対抗できる機関を作り上げようとしているんだよ」
 フウ、とため息をつきつつそこまで言った朝比奈に呼応するように、かぼもその両腕を組んで息をついた。
「それ自体は別段悪い話ではないよな。命の危険がある以上、それに対抗するのは人間の自由だ。攻撃には防衛しなければならん」
「そうだな。けどオレは、連中からは手を引いた」
 巡が、朝比奈を見る。
「なんで?」
「性に合わないんだよな。そういうの。人間の未来を考えるのは結構だけどさ。でもだからって、誰もが社会のために、官庁に所属できる訳じゃないよな。そういうことだ」
 それに、と、朝比奈は付け加える。
「連中の中に、いわゆる過激派のような人間が出始めたし」
「過激派?」
「この世に存在する全ての魔物を敵対視する人間たちだ。彼らは、魔の刻の住人をすべて排除しようと考えている」
 人間に襲い掛かる存在だけでなく、たとえばかぼやミーシャやシンのような存在も全て。
「要領が悪いの……そんなことが可能だと思っているのか」
 自分も標的になっているというのに、呑気な口調のかぼ。
「うん。無理だな。人間の力でそれは、限界がある。魔物たちが生の刻の連中を喰らい尽くすのが不可能なのと同じくらいに、人間が全ての魔物を排除するなんてできっこないんだ」
 けれど、それをやろうとしている。
 魔の刻の住人というだけで、何も罪のない者まで。

「だからまさか、あの人までそうなるなんて思ってもいなかったのに……」
 最近怪しい動きを見せる連中の中に。まさか、彼の姿を見つけることになろうとは。
「あの人……」
「お前に声を掛けてきた、彼だよ」
 朝比奈は再び、大きなため息をついた。





==椎名の呟き==
まだ出てこない『彼』の経歴……。
相変わらず構成が上手くできないもの書きだな、椎名。

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2007.05.18

「指一本でも、とはまた、随分な言い様だな。まるで私が悪役のようだ」
 クックッとさも愉快そうに笑う青年は、スルリと巡に近付くと、その肩にポンと手を乗せた。
 その瞬間、巡の視界から朝比奈の姿が消える。
 正確には、一瞬の動作で朝比奈が動いたために、その動きを予測していなかった巡の動体視力がついて行かなかったのだ。
 青年と巡の間に瞬時に割り込んだ朝比奈の右拳が、青年の顔面めがけて打ち込まれるが、彼は驚く風でもなく、その拳を片手で受け止めた。止められた朝比奈の方も、それは予想の範疇だったのか、戸惑うこともなく左腕で巡の身体を自分の背後へと回り込ませる。
「充分悪役ですよ。満足な理由も述べずに個人の事情に深入りするなんて。しかも相手は子供だ」
 受け止めた朝比奈の拳を、青年はグイと払う。
「躊躇無しに攻撃してくるとはな。随分と嫌われたものだ」
「まさか、あなたが魔狩人になるなんてな……」
 朝比奈の背後に庇われた巡には、彼の言っていることの意味がわからない。
 魔狩人?
「いつ私が魔狩人になったと言った?」
「違いますか」
「いや、違わんがな」
 青年を睨みつける朝比奈に対して、睨まれている青年の方は余裕の笑顔だ。
「朝比奈、お前の方こそ、何故私達から離れた? 私たちのやっていることを知っている以上、裏切り者の烙印を押されることは避けられんぞ。正義でも気取っているつもりか」
「正義なんてありませんよ。オレはただ、オレのやりたいようにやっているだけだ。魔狩人たちのやり方はオレの意志とは相反する。それだけです」
 そうだろうな、と青年は呟いた。
「お前がそうであるように、私も私の意志で動いているだけの話だ。お前と意見が合わないのは仕方のないことだな」
「……」
 朝比奈は、唇を引き結ぶ。ギリ、と歯噛みをしているのが巡にもわかった。
「結局……あなたも人間以外はどうでもいいんですか」
「どうとでも」
 気楽な様子でそれだけ言うと、青年は一歩退いて、朝比奈から離れた。
「お前がいるんじゃ分が悪いな。出直すとしよう。だが私は、そこに魔物がいる以上、見過ごすつもりはないからな」
「……」
 コツコツと音を立てて歩き出す青年を、朝比奈は微動だにしないまま、ただ睨みつける。ここで追いかけたり引き止めたりするのは得策ではないと判断してのことだ。
「せんせってば」
 まるで存在を無視するようにその場に取り残されて、そこにいた少女はパタパタと青年の後を追う。クルリと振り返って、巡に向かって「またね~」と笑顔で言いおいてから、いそいそと青年に追いついて共に歩き出した。

 その場に残されたのは、三人だけ。
 無言のまま朝比奈を見つめるかぼと、険悪な表情を隠そうともしない朝比奈。それにおののく巡。

 訳がわからなかった。
 ここは小学校の校門前なのだから、朝比奈が出て来たのは別に不自然なことではない。むしろ巡たちは、朝比奈に会うためにここに来たのだから。
 けれど、先程の青年と朝比奈の会話は。
 人間だとか魔だとか、そんな単語を平然と使う朝比奈を、巡は理解できない。

「……先生?」
 やっと呟いた巡の声に、朝比奈はハッとしたように巡を見下ろし、曖昧な笑顔を見せた。
「悪い。驚かせたな」
 ハハハと笑って見せるが、巡の表情から戸惑いの色は消えない。朝比奈は困ったように巡を見下ろした。
「まあ……いつかは通らなきゃならない道だしな……」
 ポリポリと、頭をかく。
「あれが、対魔物の研究機関とやら、なわけか?」
 巡の足許で、ずっと黙っていたかぼが口を開いた。
 朝比奈は頷く。
「そういうことだ」
 巡は、目を見開いた。
「先生、なんで、かぼが……!?」
「あ」
 かぼに向けていた視線を、朝比奈は再び巡へと移した。
「どういうこと?」
 最初から、朝比奈がかぼの存在に気付いていたという事実を、巡はまだ知らない。
 色々なことを、順を追って話す必要があった。
「これから、嫌でも面倒くさい事態になる。でもって長期戦になるのは必至だ。最初から、話を聞いてくれるか?」
 困ったように、けれど優しい表情に戻った朝比奈に、巡は安堵しつつ頷いた。

 ここではもう、頷く以外に出来ることはない。
 遠慮がちな態度の朝比奈だったけれど。
 巡にとって、話を聞く以外の選択肢は、無いように思えた。





==椎名の呟き==
あれえ? 相手は何の先生だ?
今回出すつもりだったんだけどなあ……。

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2007.05.17

 家を出た途端、かぼは巡を小さな声で制止した。
「まて」
「?」
「わちを見るな。わちの言うことだけ、そ知らぬフリで聞け。……和菓子店の方角に、見知らぬヤツらのひとりがいる」
「……」
 ヤツらのひとりって、相手はひとりではなかったのか。
 もしかして、本格的に何かヤバい状況なのだろうか。まさか誘拐団とか。それともここいら一帯の土地の買い上げだとか。
「和菓子店の方角はマズい。学校に行けば、まだ担任が残ってるんじゃないかの」
 巡のような子供を何がしかの理由で狙っていると決まった訳ではないが、何かがあってからでは遅い。
 巡は黙ったまま、学校の方角へと方向を変えて歩き出した。
 走り出したい衝動に駆られるが、それは何とか耐える。


 藤乃木小学校の校門が視界に入ったあたりで、巡はビクリと足を止めた。
 門の前に、誰かがいる。
 クリーム色のワイシャツにカーキ色のスラックスと、姿はどこにでもいそうな普通の青年だったが、まとう空気が違うというか。
 妙なプレッシャーを感じさせる雰囲気。
 ゆるりと首を傾けたその青年は、巡の姿を視界に捉える。
 力強い視線だった。

「こんにちは」

 やわらかいのかそうでもないのか、判断に苦しむ声音で、静かにそれだけを口にする青年。
「……こんにちは」
 一応、巡は挨拶を返してみた。
 怪しい空気満点だったが、ここで端から疑う素振りを見せては、こちらが不利になる可能性もある。正直、巡の警戒心は最大値まで高まっていた。多分、この人物は、何がしかの特別な用事があってここにいて、そして彼の意識のベクトルのようなものが、真っ直ぐに巡へと向かってきている。
「もう夏休みになるんだな。キミ、名前はなんていうのかな?」
 ブルリと、巡の肩が震えた。
「なんで僕の名前を聞くの? おじさん誰?」
 巡の反応に、青年は眉を寄せて困ったように微笑んだ。そうしてもなお、とっつきやすいようには見えない。
「オレはまだ20代なんだがなあ。まあ子供から見れば充分におじさんか」
 唇の端をつり上げつつ、ガリガリと後ろ頭を掻く。
「警戒心が強いのは結構だが、キミひとりでは我らの追尾は撒けんよ」
「……」
 青年の言葉に、かぼの目つきが鋭くなる。
 間違いない。
 この男は、まともな類の人間ではない。そして今、その標的は巡だ。一体何が目的なのか。
「僕に何の用?」
 巡は青年を睨みつける。が、それだけの言葉を発するのが精一杯だった。こんなシチュエーションに今まで出遭ったことがないのだから、おののくのも無理はない。

「せんせ~ってば」

 急に、巡の後方から細い女性の声。
 ビクリとした巡が振り返った。
 高校生らしき制服を着た少女がひとり。屈託のない笑顔で巡の至近距離に立っていた。確か、巡の通う小学校のごく至近距離の高台にある、藤乃木学園グループのひとつである私立藤乃木高校の制服だ。
「……!!」
 気配にまったく気付かなかった。
「ダメじゃない。こんな小さい子脅かしちゃ~」
 高校生とはいえ、大して年も離れていなさそうな少女に小さい子扱いをされて、いささかムッとする巡だったが、今はそんな場合ではない。
 無言のまま微動だにできない巡に、トコトコと近付いてくる女子高生。
「私たちが用があるのは、そこのおチビちゃんの方なんだし~」
「!」
 彼女の視線は、はっきりとかぼを捉えている。
「そういうわけにもいかん。彼が逢魔の力を持っている限りは」
「……」
 逢魔。
 彼はハッキリと、そう告げた。
「話を聞かせて欲しくてね。どういうつもりで、その魔物と共にいるのか」
 コツン、と音を立てて、青年の革靴が、一歩巡の方へと踏み出した。
「魔物って……」
 ジリ、と、巡は半歩後方へと退く。しかしその先には、ニコニコと微笑む女子高生がいる。
「とぼけなくていい。キミが逢魔の力を持っていて、その魔物と一緒に行動しているのはわかっている。私は」

「そこまでにして下さいよ」

「!」
 後方からの声に、青年は一瞬の動作で振り返る。
 校門の内側から姿を現したのは、朝比奈だった。
「うちの生徒をナンパするのはやめてもらえませんかね」
「先生!」

「朝比奈……」

「!?」
 巡の呼びかけに続いた青年の「朝比奈」という言葉に、巡は驚愕した。
 この人物は、朝比奈の顔見知り?
「今そいつに指一本でも触れたら、いくらあなたでも容赦できませんよ」

 何が起こっているのか。
 巡には、事態がまったく理解できなかった。





==椎名の呟き==
椎名にも事態がまったく理解できません。
なんて嘘ですけど。
次回、先生vs先生? 一体相手は何の先生だ。

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2007.05.15

 くれぐれも身体と誘拐と宿題の進行状況には気を配るように、と、おかしな指示を飛ばす朝比奈の言葉を締めくくりに、一学期が終わった。

 何だかんだと溜まった荷物を抱えて下校する生徒たちの間を縫って、朝比奈は巡の傍に寄って来た。
「成瀬~、お前は特に気をつけろよぉ」
 わざわざ近くにまで来てそんなことを言う朝比奈に、巡は微かに目を据わらせてしまう。
「大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないヤツほど大丈夫とか言うもんだ。あんまりひとりで変なところに行ったりするなよ。お前は実績があるからな」
 朝比奈の言葉に、巡は実際何も言い返せない。
 かぼに出会ったときもそうだったが、巡は大人しそうな顔をして好奇心旺盛な質なので、興味のあることに遭遇すると、それを追及するために無茶をしてしまうような部分がある。そういう時に他人を巻き込まないのはある意味美点かもしれないが、ひとりで行動するが故に、何かがあるまで誰も気付けないという嫌いがある。
 まだ小学校にあがる前、巡はひとりで遠くはなれた街まで歩いて出かけてしまい、迷子になったあげくにヒッチハイクを繰り返して市内を一周した後で、農家のおばさんのリヤカーに乗って帰ってきたことがある。
 理由はただ、流れる川がどこまで続いているのか知りたかったから。
 けれど当然川沿いをそう長いこと歩いて行けるわけもなく、途中で辿っていたはずの川を見失い、どうやって帰ればいいのかわからなくなってしまったのだ。
 自分の住む町を正確に言えないほど幼かった巡が、一度も警察のお世話にならずに帰ってきたのはまさに幸運だ。関わった大人たちが、誰も警察に届けようとすらしなかったのも、おかしな巡り合わせかもしれない。
 一家の武勇伝として語られてはいるが、巡の担任になった時にその話を聞きかじった朝比奈は、頭を抱えずにはいられなかった。
 本当に誘拐でもされたりしたら大変なことになっていたというのに。
 それ以外にも、地味な実績ならいくらでもある。
 天然な巡の姉を朝比奈も見たことはあるが、実際巡も相当なものだと思う。
「休み中はオレも学校にいないことも多いからな。緊急連絡先、ちゃんと控えてあるだろうな? お母さんに確認しておけよ」
「はあ……」
 なんで自分ばかり、こんなに心配されなければならないのだ。
 ちょっと心外な巡。
 確かに、特にクラスの問題児という訳ではないのだが。
「実際、夏場ってのはおかしな連中もボコボコ出てくるもんだ。家に帰っても安心せずに、鍵をかけるのを忘れるなよ」
 それはもう、学期末の注意事項でも散々聞いた。
「わかりました~」
 こういう時は、素直に返事をしてさっさと退散するに限る。
 決してちゃんと話を聞いていない訳ではないが、教師の説教などというものは、反論すればするだけ長引くものだし。
「特に知らない人間には気をつけろよ。お前は巻き込まれ型なんだからな。俺の目の届かないところで、余計なことに首突っ込んだりするなよ!」
 担任は伊達ではない。朝比奈は巡の性格までしっかりと理解している。
 しかしえらい言われようなのは確かだった。


 家に帰った巡からその話を聞かされたかぼは、声を立てて笑った。
「そりゃあ仕方ないの。ぬしはちょっと目を離すと何をしでかすかわからんからの~」
 かぼにだけは言われたくない。
 大体、自分にそんな評価がついてしまったのも、ちょっと前にかぼ絡みで意味不明な行動を取っていたのが決定打ではなかったのかと、つい人のせいにしてしまいたくなる巡。
 まあ、確かに理由としてそれは大きいかもしれない。
「そうか……夏休み……長い休みか……」
 かぼは、急に何かを考えるような素振りを見せる。
「……何」
「まあ、確かに気を付けるに越したことはないの。子供の長い休みというのは、大人の目が届かなくなる」
 至極まともなことを言うかぼ。こうも現代事情通だと、生の刻の間、時々しか目を覚まさなかったという論が、ますますもって怪しくなってくる。かぼに言わせると、物の怪は目覚めた段階の社会そのものを簡単に受け入れられるのだということらしいが。
 かぼは、珍しく真面目な表情で巡の顔を見つめた。
「なるべくひとりにならないように心がけろ」
「は?」
 いくら休み中とはいえ、その言い方は少々大げさではないだろうかと巡は思う。
「何だよ、急に」
「ん~」
 困ったように目を伏せ、腕組みをするかぼ。
「どうも最近、おかしな人間がうろついているように感じての」
「おかしな人間?」
「この近所でな。どうもここいらの住人じゃない感じの人間を、何度も見かけてな。この家の前でも何度か」
 かぼ、ちょっと嫌なことを言う。
「思い過ごしとかじゃないのか?」
 それが気のせいでないなら、ちょっと気味の悪い現象だ。
「なんと言うかな……今日もな、この家の前にそいつがいてな、ここから外を見ていたわちと、目が合ったのだよ」
「……」
 目が、合った?
「それで、どうした?」
「どうもせん。そのまますぐにいなくなってしまったからの。まさに見ないフリ、といった感じだったかの」
 かぼは、見た目だけはまったく普通の子供と変わらないから、目が合ったくらいではそれが物の怪であることには気付かないだろう。
 けれどかぼが素で見えるということは、その人間は逢魔の力を持っているということで。
 それを、自覚しているのかいないのか。
 微妙なところだ。
 けれどどちらにしても、知らない人間がこの辺りをうろついているというのは、あまり気持ちのいい話でもない。
「母上がいない時は、できれば天笠の爺さまのところにでも行っていた方がいいかもしれんの」
「……」
 それはそれで、色々と不都合が出てくるようにも思う。

 だが、大人たちにも知らせておくに越したことはないだろう。
 今は母親は家にいないから仕方ないとして、荘二郎には知らせておいたほうがいい。かぼの言う通り、物の怪絡みだと面倒だし。

 巡は、早速とばかりに立ち上がった。





==椎名の呟き==
第四話開始です。13日は疲れに寝てしまい。14日は雷、そして今日はN●Tの不具合……。
ありえない確率での不都合による更新遅延で申し訳ないです。
や、最初に寝ちゃったのが悪いんだけど。
さて、14話はいきなり気持ちの良くない話ですね。これまでになく、面倒くさいことが起きそうな予感、ですかね?

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2007.05.11

ん~、難しかったなあ。

お話の内容の割に、心に迫ってくるものもそんなに多くなかったんじゃないかと思われる第三話ですね。
いや、どう受け取られるかは読む方の自由なんですけどw

もともと第三話はお涙頂戴とか、ミズの心情に迫るようなテーマではなかったんですけどね。
だからあえて、結構深刻な事態なのに、軽く流しているような部分もあるんですけど。そのせいもあって、かなりまとまっていない感がひしひしと……;;
椎名のことだから、こういうテーマをマジで書こうと思ったら、読んでいる方が「もうやめてくれ」と言いたくなるくらいにくどくど書きそうな気はします。
しつこいのが椎名の作風ですから!
(胸張れることじゃないだろ)

まあつまり、ぶっちゃけ言ってしまえば、ああいう物の怪もいれば、こういう物の怪もいる、みたいな、そんなことを書きたかっただけなんですけど。
それを説明するのに、寿命とかのことに焦点を絞った結果がああいう展開となったわけですね~。
ここで言っている「生の刻」の生物にも色々なものがいるように、「魔の刻」の住人には、もっと色々なものが存在してるんだよと。
これには第四話でも触れるつもりですが。むしろ次回はそれがメインテーマかな。また別のタイプの魔物について触れるはずです。
大きく逸れる可能性も大ですが!

何しろその日その日でぶっつけで書いているから、どういう展開になるのか予想もつかない……。もちろん大筋は決まってるんですけどー。
新しいキャラもジョロジョロ出てくるのではないかと。
ああいや、そんなには出てこないか(どっちよ)。
そして、姉さんの活躍はあるのかと。
名前だけ出て、全然活躍してないじゃん。
一応当初の予定では、次回参戦のはずなんですけどねー。
自分の中でどう転ぶかもわからないってのがまた。

現在の予定では、エンドレスエンド形式で、第五話あたりで一応の終わりを迎えるはずの「逢魔が時」なのですけど。
どこまで予定通りに進行できるものやら。

どうか、ゆるゆるとお付き合いくださいませ!


2007.05.10

「かぼは、天笠さんの新しい水盤見た?」
 学校から帰宅した巡が開口一番言うのに、かぼは顔をしかめる。
「ぬしが連れて行ってくれんのに、わちが単独で見てくるわけがなかろうよ」
 よく言う……。
 巡は小さな声で、呟いた。
 いつもひとりで好き勝手に出かけてるくせに。
「しかし、今度は黄味の勝った淡い色の水盤とは、爺さまの趣味もよくわからんの」
「ミズの水盤は藍色だったもんね。でも前のは天笠さんが選んだ訳じゃないし……って」
 やっぱり既に水盤を見ているんじゃないか。
 どうしてこう、すぐわかる嘘を言うかな、と巡は思うけれど。どうせあれこれと言い訳を返してくるだろうから、何も言わない。巡が天笠和菓子店に行くのに、かぼを連れて行ってなかったのは事実だし、そのことで拗ねているのだろう。
 けれど、一緒に行けば菓子を要求されるし、それを却下すれば荘二郎が売り物を分けてくれようとしてしまうし。それでは申し訳ない。


 荘二郎は、ミズの水盤が壊れてから、すぐに新しいものを買い込んできた。
 ミズの水盤は、庭の池の中に沈めたらしい。
 即刻破棄してしまうのはあまりに忍びないが、いつまでも壊れた水盤を抱えているのは良くないと判断してのことだろう。
 失くした物に縛られていては、新しい一歩は踏み出せない。
 今度の水盤も、長い時間を天笠家で過ごすことになるだろう。


「あまりにも人間くさかったの……ミズは」
 かぼが、ポツリと呟く。
「そう?」
「人には人の、物の怪には物の怪の心のありようというものがあるのだがの。違う時間、違う次元に存在する者同士だ。心のあり方まで同じだったら、色々と不都合もあるだろう?」
 確かに、それはそうかもしれない。
 物の怪でなくたって、例えば人間と動物だって、多分まったく違うものだ。
「人間に愛されて生まれた物の怪ならでは、なのだろうな。前にも言った、人間への憧れが、とても強かったからなんだろう」
 おかげで厄介だったが、などと、かぼはわざとらしくため息をつく。
「天笠さんが、かぼが悪役になってくれたおかげだって言ってたけど」
 かぼがミズを諭してくれなかったら、ミズは納得できずに泣いたまま消えていたかもしれないと。
 けれどそんな巡の言葉には、かぼは気もなさげにフンと鼻をすすった。
「別にそんなつもりはないわ。人の情という根拠を持って生まれ、それを抱えたまま消え行くことができる、そんな幸福な存在だというのに、わがままばかり言っておるあやつに腹が立っただけだからの」
 そんな風に言うかぼに、巡はあの時かぼが呟いた言葉を思い出した。
『長ければいいというものではないわ』
 かぼは、そう言ったのだった。

「なあ、聞くけど……」
 ポツリと呟く巡に、かぼはなんだと首をかしげてみせた。
「長い時間を生き続けるって、やっぱり辛い?」
 聞かれたかぼは、キョトンと巡の顔を見返す。
「別に、辛くはないぞ。わちらにとっては、それが普通だ」
 うん、と、かぼは自分をも納得させるかのように、ひとつ頷く。
「生まれれ来ることに意味のある存在だというのは、うらやましくもあるかもしれんがの」
 まるで、天変地異のように生まれてきている、他の物の怪よりもずっと。
 けれど、そういう自分の存在は、それが当然のことと物の怪たちは受け止めているものだ。
 だから。
 生の刻に生きる者たちと、同じような心を持っていてはダメなのだ。
 例えば人なら、この空虚な時間の長さには、とても耐えられない。

「天笠さんも、寂しくなるかな」
 たとえ一ヶ月という時間でも、ミズは一緒に暮らした娘か孫のような存在だったろう。それもあれほどまでに、人間くさい彼女がいなくなって。
「寂しいなどと思わせてはならんのだよ。なんのための人間社会だ。メグがそう思うのなら、傍にいてやればいいだけの話だろう。苦になることでもなかろ」
「……まあね……」
「わちだっておるしの!」
 かぼはやかましいから、寂しいどころか鬱陶しくて仕方がないと思うけど。
 そんな風に憎まれ口を叩いても、今日のかぼは上機嫌に見える。
「爺さまの心の中に、ミズはいるからの。問題ない」
 それこそ生まれた時からずっと共にあった水盤。大切にしてきたその心が、消えてしまう訳ではない。
 そう、巡もかぼも荘二郎も。ミズのことは忘れない。

 生まれてきたことに意味を持っていた幸福なミズだけれど。
 生まれてくることに、理由なんてなくたっていい。

 生まれてから過ごしてきた時間の中で、育ててきた何かがあるはずなのだから。

 それは形では残らない何かで。
 だからこそ。
 ずっと、そこにあって受け継がれていく。

 ミズという存在は。きっとそんな何かの、結晶だったのだ。





==椎名の呟き==
これだけ書いてもまだ消化不良か!
とりあえず、第三話はこれにて終了でございます。
第四話は、第二話で触れた伏線のお話になりま~す。

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2007.05.08

 別れるくらいなら、出会わないほうが良かった?
 死ぬことがつらいなら、生まれてこないほうが、良かった?

 でも、ミズは幸せだったよ。

 せっかくお話できるようになったおじいさんとお別れするのが悲しくて悲しくて、ミズはそれを認めようとしなかったよね。
 だけど、それを悲しんでちゃいけなかったんだ。
 だって、最後におじいさんと一緒に暮らせたことが、ミズにとっては幸せ。
 存在を知られないままで消えていったとしたら、今ほど悲しくはなかったかもしれないけど、今ほどの幸せも知らないままだった。
 幸せの裏には、悲しみがある。
 悲しみの裏には、幸せがある。
 大きければ、片方も大きく。小さければ、片方も小さく。
 振り子みたいなものだね。


 明かりを落とした真夜中の和室の中。
 水盤の傍で眠る荘二郎の掛け布団に身体を預けて、ミズはずっと囁くような声で話し続けていた。
「ミズは幸せ。だってミズがこうしているのは、ミズの水盤が、人にとてもとても愛されてるってことの証明だもんね」
 愛が、自分を生み出した。
 自分はなんと幸福な存在であることか。

 愛されたまま消え行くことの出来る自分は、この上なく、幸せだ。

「おじいさんがまだ小さかった頃、みんなに荘ちゃんって呼ばれてたよね。ミズも、そう呼んでれば良かったなあ」
 呼んでも気付くことなく、振り返らない人間に対して、ミズは一度も名前で呼びかけたことはなかった。呼びかけたって意味がないような気がしていたから。
「沢山名前を呼んでいたら、もっと早く気付いてもらえたのかもね」
 もう、確認する術はないけれど。
「荘ちゃん……にゃは、なんか照れるなあ。やっぱおじいさん、でいいや」
 ポリポリと、ミズは頭をかく。
「メグちゃんも、かぼちゃんも優しい子だよねぇ」
 かぼにはしこたま怒られたけれど。
 荘二郎や巡を傷つけないための、精一杯の優しさだったのだろう。ミズがわがままを言わずに、全て納得して運命を受け入れられるように。誰かが、言わなければならないことで。
 それをかぼは、自分が引き受けたのだ。
「ミズのために作ってくれたシュークリーム、凄くおいしいから、あの子達にもわけてあげてね。あ、でもそしたら、お金儲けられなくなっちゃうかあ。う~ん……でもでも、メグちゃんやかぼちゃんと、ずっと仲良くしていてね。そしたらおじいさんだって、寂しいことなんてないもんね。それに」
 そうしたらきっと、ずっとミズのことも忘れないでいてくれるだろうし。
「忘れないでね。ミズのこと……なんて、言わなくてもきっと、おじいさんはミズのこと忘れたりしないと思うけどね~」
 ミズは、掛け布団の上から荘二郎の身体を抱きしめた。傍から見れば、それは荘二郎の身体の上に張り付いているようにしか見えなかったけれど。
「恥ずかしいけど、明日おじいさんが起きたら言っちゃおうかな~。ミズは、おじいさんのこと」


 コトン。


 静かな音を立てて、床の間に置かれた水盤が、綺麗にふたつに割れた。

 長い年月を経て刻み込まれていた亀裂が、己の重みに耐えられなくなって、無理に繋がっていることを、今、やめたのだ。

 器を失って、そこにたたえられていた水が床の間の上に広がり、音もなく畳の上に流れ落ちた。
 活けられていた水蓮の花だけが、割れた水盤の上に静かに佇んでいる。


 荘二郎の身体の上から、ミズの姿はあとかたもなく消えていた。
 これまでのことが、まるで夢であるかのように。


 荘二郎は、そっと閉じていた目を開けた。
 暗闇の中、水に濡れた床の間の上で、ふたつに割れたまま役目を終えた水盤を、静かに見つめる。

 ――悲しいことなど、何もない。
 そう、すぐに、自分も行くのだから。

 それまではそう、老いぼれは老いぼれなりに、この世界で満足いくまで生き抜かねば。悔いのない人生を歩んでいかなければ、ミズに合わせる顔がない。
 きっと幼いあの少年は、泣いてしまうかもしれないし。
 そうしたら、泣くなと肩を叩いてやらねばならないだろう。
 もしも泣かずに耐えることが出来たら、強い子だと褒めてあげよう。

 あの物の怪の少女には――ありがとうと。

 明日はこんなにも、忙しい一日になる。
 大丈夫だ。悲しんでいる暇もなさそうだ。
 ミズの言葉だって、ちゃんと聞くことが出来た。
「お前の言葉、最後までしかと聞き届けたぞ、ミズ……」

 荘二郎は、再びそっと目を閉じた。


『明日おじいさんが起きたら言っちゃおうかな。ミズは、おじいさんのこと』

 ミズは、おじいさんのこと。


 おじいさんのこと、だーいすき。





==椎名の呟き==
や、すみません。また連日の遅い帰宅でした;;
次回で第三話、最終回になりますです!

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2007.05.05

「運命は変えられないよ」
 かぼは呟く。

「時の流れは、物体を消耗させる。物体が消耗すれば、魂だって消耗する。それがどういうことなのか、わからなくはないだろう」
 かぼの言葉に、ミズは黙ったままだ。
 巡には、かぼの言うことはやっぱり理解しがたかったけれど。
「抵抗などできないのだ。だってミズは、皆を置いて旅立つのではなく、皆に残されるのだからな」
 魂が消えるということは、魂を持つものを置いていくことと同義ではない。むしろ、置いていかれるのはミズの方だ。
 例えば天国のような場所へと駆け上って行くのではなく。
 歩くことをやめて立ち止まったミズの魂は、時間の流れから置いて行かれる。
 それが、魂の死というものだ。
 本当のところはともかく、かぼはそういう風に、魂の消失というものを位置づけていた。
「いつかは皆、そうやって足を止める。そして自分の傍を通り抜けていく『時間』というものを、操ることなど出来ない。他の皆の『生きている時間』はな」
 だから。
 だからミズは、怖かったのかもしれない。

 死ぬ、ということは。
 魂が身体を抜けて飛翔するのではなく。
 疲れきった魂が、時間から取り残されるということ。

 多分きっと、そういうこと。

「私も、そう長いこと生き続けるわけではないよ」
 静かな口調で、荘二郎が言った。
「どうせあと10年か20年か。すぐに私も、この世からいなくなる。悠久の時間の中では、瞬きほどにも満たない一瞬だ」
 荘二郎が、ほんの少し、笑った。巡たちには初めて見せる表情かもしれない。
「そして私が立ち止まる場所は、きっとミズのいる場所だろう。そこは、時間から取り残されている場所なのだからな」
 その言葉は、ただの慰めでしかない。
 本当のところは、誰にだってわからないのだ。
 けれど荘二郎は、根拠のない慰めをミズに向け続けた。
「だからミズは、安心してそこで待っていれば良い。ほんの僅かな時間だ」
 この世での、時間稼ぎがバカバカしく思えるくらいに。

「おじいさんは、悲しくないの?」

 ミズは、荘二郎を見上げた。
 しかし荘二郎は、首を振る。
「悲しいことなどあるものか。私は何も失いはしない」
 朝が来て夜となるように。生の刻と魔の刻も、どちらもきちんと訪れる。
 表裏一体であるこれらのように。
 すべてのものは、もとをただせばきっとひとつだ。
 そして荘二郎の中から、ミズの存在が消えることはない。
「天笠さんは、ひとりじゃないよ。少なくとも、僕やかぼにはもう出会ってる。この街には、天笠さんのお菓子を楽しみにしている人も沢山いる」
 巡がようやく、自分なりの結論を口にした。
「そしてミズも、ひとりじゃない。君がどこで立ち止まっても、そこにはみんないる」
 これまで見送ってきた、沢山の人たちが。
 だから、悲しむ必要なんて、どこにもない。

 それが真実であるかどうかはわからない。けれど、それはどうでもよかった。
 避けられない運命を目前にする相手に、差し出さずにはいられない優しさが、あるだけだ。見つからない真実を詮索するくらいなら、例えば優しい嘘がいい。
 かぼが、その後を引き継いだ。
「ミズ、ぬしは運命に対して絶対的に無力だ。だがそれは、全てのものがそうだ」
 だから、折り合いを付けていかなければ。
 生きているものも、そうでないものも。
「ミズと出会えたことは、私にとって幸運だったのだ。だから、お前に関することで悲しいことなど、何もない」
 荘二郎が、ミズを縛っていた紐を解いた。もうミズは、その場から動いたりはしない。

 愛するという心を、そのままその姿へと変えて返してくれるそんな存在に。
 出会えたことが、幸運だ。

「ミズと出会えて、幸せ?」
「幸せだ。ミズもそうだろう?」
「ミズはおじいさんに出会えて……」

 幸せ。

「うわあああぁぁん」
 ミズは声を上げて、泣き出した。
 迫り来る瞬間を、その小さな身体全部で受け止めようとするかのように。





==椎名の呟き==
仮定ばっかりだあw
フィクションなんだから、結論付けちゃえばいいのにね……。

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2007.05.03

 かぼは、あっという間の仕草でミズの身体を掴むと、自分の洋服の飾り紐をするすると外し、それでミズの胴体をきつく縛り上げた。
「痛い、いたーい!!」
「ぬしが妙な真似をするからだ」
 背中で固く結ばれた紐を、ミズは自分で解くことはできない。
 その端をしっかりと握ったまま、かぼはこともなげに座りなおした。
「しばらく大人しくして頭を冷やせ」
「ちょっと、かぼ……」
 巡が呟きかけても、かぼはその紐を解く様子はない。縛り上げるなんて、ちょっとやりすぎなんじゃないかと巡は思ったのだが。
 巡は、頑として聴く耳を持たないかぼではなく、荘二郎の方へと向き直った。
「天笠さん……その、その水盤は、修復、みたいなことは、できないの?」
 恐る恐る、といった体で、巡は荘二郎に問いかける。
 骨董品の修復、なんて言葉を、巡はテレビで何度か聞いたことがある。
 けれど荘二郎は無表情のまま。
「できなくはないだろうな」
「……それなら……」
 荘二郎は、そんな巡の言葉に首を振る。
「お前さんの言うこともわからんでもない。だがな、それをやったとして、いつかもたなくなるのは逆らえない運命だ。確かに私が生きている間くらいは過ごせるかもしれない。だが、傷つき壊れかけた身体を無理やりつぎはぎだらけにして生きて行きたいと、お前さんなら思うかね?」
「……」
 巡は、正直言葉を返すことができなかった。
 それでも、少しでも長く生きられるのなら、その方がいいんじゃないかと。そんな風にさえ思えるのだけれど。
「お前さんはまだ若い。それでも長く保てる方がいいと、そういう風に思うかもしれんな。だが老いというものはな。自分の持つ機能が、正常に働かなくなるということなのだよ。弱って折れた足や腕を無理やり縫い付けて、長く息をし続けなければならないというのは、決して幸せなことではない」
 言っていることの意味はわからなくはないけれど。
 でも。だけど。
 ミズは、ただ。
「ミズは……天笠さんを残して行きたくないと、そう願っているだけなんでしょう?」
 それだけが彼女の唯一の願いなのだとしたら、それに伴う苦しみなんて、承知の上なのではないかと。難しいことはわからないけれど、その願いくらい、叶えてあげたっていいんじゃないかと、巡は考えた。
「そうだよ。ミズは、ミズはただぁ……」
「ぬしは黙っておれ」
 乗り出して巡の言葉に勢いをつけようとするミズの行動を、かぼは一言で一蹴した。
「メグ。こやつのは、ただのわがままだ。ぬしが真面目に取り合ってやる必要はない」
「……かぼ」
 あまりに冷たい、かぼの態度。
 物の怪は全体的にドライかもしれないが、ここまでだったろうか。
「天笠の爺をひとりで残したくないなどと言ってはいるがな。そんなことは余計な世話というものだ。こやつは爺のために言っているのではない。自分のためだ。全てな」
「そんなあ!」
 かぼの言葉には、当然のごとくに反発するミズ。
 自分はただ、荘二郎に寂しい思いをさせたくないと、それだけを考えていたというのに。
「爺がひとりだなどと決めているのは、ぬしの勝手だ。ぬしは、ひとりきりになる爺のために言っているのではない。己が『ひとりきりの爺』に必要とされている存在だと、思いたいだけではないか」
「……!!」
 違う、と、ミズは力なくその首を振る。
「違うよ、そうじゃない。ミズは本当に……」
「本当に爺のことを考えていると言うのなら、自分がいなくなった後のぬしのことを考えている爺の気持ちが何故わからない! 存在の理を捻じ曲げることで、ぬし自身にまで歪みを与えてしまうことを良しとしない爺の意志を、何故汲めない! ぬしはただ、行くな傍にいてくれと言って欲しい、必要とされていたいだけだ!!」
 ひとりの寂しさを味わわせたくないということは。
 それを真剣に考えているということは。
 ミズ自身が、そんな寂しさを過去に何度も味わって、辛い思いをしてきたということだ。
 その寂しさを知らないのなら、荘二郎にそんな思いをさせたくないなどとは思わないはずで。慣れていようがいまいが、そこに逃げられない辛さがあるのは事実。
 荘二郎だって、人工的に永らえさせてまで、ミズにそんな思いをさせたいわけがない。
「人間のように、未練がましいことを言うな、ミズ」

 巡には、かぼや荘二郎の理屈は素直に納得することができない。
 けれど、一番身近な年長者である母のことを考えた。
 これまで意識したことは無かったけれど、順当に行けば、親子ほどの差がある母のほうが、巡よりも先に死ぬことになる。巡のほうが先に逝くという事態は、親不孝というものだ。
 もしもその時が来たら。
 死の縁に立つ母がもし、生きることを望んだとしたら。
 死への行進を続ける身体を引きずって、「お前を残して行くのが心配だから、この身体をとりあえず長く保ってくれ」と懇願されたとしたら。
 多分、困ると思う。
 そうまでして母を長らえさせることを、自分はきっと望まないだろう。

 そういうことなんだろうな。

 巡は、ぼんやりとそんなことを考えていた。





==椎名の呟き==
えーとその……延命措置とかの是非を問う趣旨のお話ではないので……念のため……w

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2007.05.02

某MMOを休止して以来、久しぶりに何かオンラインゲームできないかな~なんて、淡い期待を持ちつつ。

椎名はハンゲにIDを持っているので、コンチェルトゲートをDLしてみた。

重くて動きやしない……。

もっとも、これはあまり真剣にやりたいと思ってたわけでもないから、動かなくても別にいいんだけどさ。そんなに時間が取れるわけでもないし。
(ならなぜやろうとするのか)

まあそれならってんで、低スペックでも動くとかいううたい文句のマギノビをインストール。
これはちょっと、戦闘しなくてもまったり過ごせるとのことで、期待もあったりなんかして。
これはどうかな、どうかな?

……重いどころの騒ぎじゃない……。

使い物にならん……。
ていうか、OPムービーだけで何分かかってんだよ……。
ムービーと音楽、細切れ状態で10分以上眺めてました。
だめだ。

コレキンもかなり重いんだけど、つまり、アレかなあ。
通信速度が問題なんかなあ。
メモリとかはそれなりに普通に積んでるはずだし、B●Tとかの確認もしてみたんだけどなあ。
やっぱりこの時代、ADSL1.5Mはきついか?
某MMOも最近になって、さっぱり動きにくくなってたしなあ。

けど光に変えたりコース変更でモデム変えたりするの面倒くさい……。

しばらくはオフラインゲームでガマンするかなあ。
どうせオンラインでゲームやってたって、黙々とひとりぼっちで遊ぶのが好きなんだし(でもほら、ひとりでも、オンラインはオンラインの醍醐味ってもんがあるし……)。

まあまだサモナイ3の二周目クリアしてないしね。
うっかりオンライン系にハマると、ここの更新が立ち行かなくなってしまうし!

……はあ~、しょぼーん。


2007.05.01

 ミズは、無表情だった。
 もう、寿命なのだと教えられても。
 それが逃げられない運命であると聞かされても。

 思ってもみないことを言われて、思考がついて来ないのか。それとも薄々感じていたことを認めるのに時間がかかっているのか。ミズの心の中を、巡が読み透かすことはできなかったけれど。
「最近この部屋からあまり水盤を移動しなくなったのは、もういつ壊れてもおかしくなかったからだ」
 荘二郎は、水盤と、そこに座るミズを見つめたまま、ゆっくりと話す。
 それまで荘二郎は、水盤を陽のあたる場所に出したり店先に移動してみたりと、色々なことをやっていたらしい。
 けれど、ここ最近それが出来なくなっていた。
 流れるというほどではないが、微かな水漏れも発生しているような状態だったのだ。持ち運ぶ際に、突然壊れてもおかしくない。

「物には絶対に寿命がある。無機物でも有機物でも。魂にだって、終わりは必ず来るものだ」
 魂の大きな流れについては、荘二郎の知るところではない。人にしろ物の怪にしろ、心とか魂とかいう物が、形を失った後にどこへ行くのか。どのような形になるのか。あるいは完全に消滅するのか。それは、誰にも、わからない。
 けれど、個々としての魂、たとえば今そこにある『ミズ』という魂が、終わりを迎えようとしているのは紛れもない事実だ。
 いずれは荘二郎や巡だって。
 そして、ずっと遠い未来に、かぼやミーシャやシンだって。
 いつかは。必ず。
「だから、ミズ……」
 言いよどむ荘二郎。
 こんな告知など、したいはずはない。けれど、それをしなければ、ミズは大きな誤解を残したまま、この世から消えることになる。

 荘二郎の言葉を遮るように、ミズはフワリと飛んだ。

「ミズ?」
 呼びかけにも応えずに、ゆるりと荘二郎の目前を横切り、開いたままの襖の向こうへと向かう。
「ミズ!」
 どこへ行こうとしているのか。
 そのままどこかへ消えやしないかと、一瞬戦慄した荘二郎が立ち上がりかけた。
「今の状態で、水盤から離れて遠くへは行けないと思うがの……」
 ボソリと呟くかぼを、立ち上がりかけた荘二郎と巡が見つめる。
「弱くなった魂は、拠り所を離れては存在できんよ。別に弱ってもいない、わちらですら長いこと遠ざかってはいられんのだからの」
 例えばミーシャが川から離れてはいられないように。
 弱ったミズは、なおさら水盤からは離れられない。
「でも……」
 あまりに無表情だったミズの様子が気になった巡が口を開きかけた時、ミズが先程と同じ調子でゆるゆると戻ってきた。
 腕に、何かを抱えている。
 どこにでもあるような、木工用ボンドだった。
「ミズ!?」
 片腕一杯にそれを抱え込んで、グルグルとそのボンドのフタを回すミズ。外したフタを投げ捨てて、ボンドの口を水盤へと向けたミズの目前に、荘二郎は瞬間の判断で腕を差し出した。
 水盤との間に入り込んだ荘二郎の和服の袖に、飛び出した白いボンドが大量にかかる。
「何をする!」
 荘二郎の声に、ミズはパッチリと見開いた目を彼のほうへと向けた。
「何って、ボンドで水盤をくっつけるんだよぉ。壊れかけてるなら、ボンドで直せば大丈夫じゃない。水漏れしそうな部分、ミズが一番知ってるしぃ」
 さも当然のように言うミズから、荘二郎はボンドの容器を取り上げようと手を伸ばした。
「やめなさい」
 厳しい顔を見せる荘二郎に、ミズは眉を寄せる。
「なんでぇ? どうしてジャマするの?」
 荘二郎の手から、ボンドを守るように抱え込むミズだが、掌サイズのミズと荘二郎では、力に差がありすぎる。そうでなくともミズは弱っているのだ。
「そんなことをして何になる!」
 荘二郎にボンドを取り上げられて。怒気を帯びた声で責められるような形になって、ミズの表情に初めて感情が浮かんだ。
「なんでよぉ!? 水盤が壊れたら、ミズが死んじゃうんだよ!? 消えちゃうよ? おじいさんはその方がいいのお!?」
「だが、だめだ!!」
 多分、ミズは気付いていた。
 水盤自体が寿命を迎えていることを知っていて、それでも認めたくなかったのだろう。だから無理やり理由付けをして言い逃れをしていたのに、止めを刺すように真実を突きつけたのは、荘二郎だ。
 ミズは激しく首を振る。
「物の怪は凄く長生きなんだから! 人間よりずっとずっと! だから、ミズは人間がミズより先にいなくなっちゃうのだって、ずっと見守ってきたよ。悲しくたって寂しくたって、それが運命だって思って、思うようにして、せめて静かに見守るのが一番いいんだって」
 まくし立てるミズは、そこで大きく息を吸い込んだ。
「長生きなのに! なのになんで、よりによって、やっとミズのこと見えるようになったおじいさんより先に、ミズが消えなくちゃならないの!?」
「ミズ……」
「ミズがいなくなったら、おじいさんひとりぼっちじゃない!! ミズはひとりだって平気だよ、慣れてるもん。そうやって生きていくのが物の怪だもん。でもおじいさんは違うじゃない。おじいさんをひとり残して、ミズだけが消えちゃう訳にいかないでしょお!?」
 人は、いつか死ぬ。
 ミズが生まれてからまだ100年ほどしか経っていないが、その間だけでも、ミズは自分が知る人間を幾人か見送ってきた。ただひとり、ミズの存在を見つけてくれた荘二郎だって、いつかは。
 それをわかっていて、ミズはずっと見送る覚悟をしてきたというのに。
 自分が先に行かなければならないなんて。
 この家でひとりで暮らす、荘二郎を残して。
 その事実を否定するように、ミズはただ首を振って硬く目を閉じる。

「長ければいいというものではないわ……」
 かぼが、俯いたまま小さな声で呟いた。





==椎名の呟き==
水を張った水盤にボンドをたらしても、上手くいかんのよ、ミズ……。

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