オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2007.11.30

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 シドクスは確かに、金を詰まれて仲間の命を売った。

 細々とした収入でその日その日を暮らしている炭坑夫にとって、それは目もくらむほどの大金。言い訳も出来ないほど真っ正直に、シドクスは仲間よりも富を選んだのだ。
 なぜあの時鉱石を発見した炭坑夫が命を狙われるのか。それはシドクスも未だに知らない。だが自分がその事を依頼されていなければ。誰か別の人間がその役を負ったとしたら、自分こそが仲間と共に葬られていたかもしれないのだ。どこに迷う必要があるだろう。

「しかし、それは甘すぎる考えだった」

 自分だけが助かるはずが、なかったのだ。
 自分は”彼ら”の手駒。彼らが直接手を下す必要がないようにと、選ばれた人材。
 約束された金が支払われることはなく。シドクスもまた、彼らに命を狙われる立場となった。役目を果たしたがゆえに、もう用済みなのだと。そして彼らに関わったからには、誰よりも最優先で抹殺しなければならない人物であると。

 そして、彼の、長年にわたる逃亡の旅が始まった。

 何故、こんなことになった。
 仲間も死に、自分も居場所を奪われ。
 仲間を売ったのは、確かに自分だ。それは言い訳しない。だが、どうせそれがなかったとしても、仲間も自分も死んでいた。何故、どうして。

 あの鉱物が原因なのか。

 あの不思議な石を発見して、すべてが変わってしまった。
 すべては、あの石が。

「その鉱石とは、一体何なんです?」
 シイナの言葉に、シドクスは弱々しく首を振る。
「それは私にもわからない。そして、それこそが私のもっとも知りたい事でもあるんだよ。だから私は、この街にやってきた」
「何故?」
「私は随分と長いこと逃げて逃げて、大陸中を逃げ回った。何年も何年も。だが最近になって、その鉱物がアインブロックに運び込まれたという噂を聞いたのだよ」
「アインブロックに……」
 それで謎はひとつ解けた。なぜ今になってシドクスがアインブロックに姿を現したのか。
「けれどそれは、あなたにとって危険な行為ではないんですか?」
 謎の鉱石がここに運び込まれているという事は、それに関わる人間もここに集結するという事だ。
「もちろんだ。だがどうせ私はいつでも追われている身だからね」
 何年もたったひとりで逃げ続けたシドクス。しかし、腑に落ちない謎もある。なぜそれほどにひとりの人間に執着しなければならない?
「いつも追われているからこそ、それほどまでしなければならないその物体が何なのか。私もそれが知りたいのだよ」
 結局その鉱石が何なのか、何の目的があるのか。シドクス自身何もわかっていないのだ。
「だがここまで来て、私の身体も限界を迎えてしまった」
 シドクスの口調が重くなった。
「すっかり弱ってしまってね。せっかくここに最大のヒントがあるかもしれないのに、もう身動きすることさえ、ままならない」
「シドクスさん……」
「シイナくん。もしも君が鉱石の正体を知りたいのであれば、それは間違いなくここにある。”彼ら”がこの辺をうろついているのを見た。情報は確かだった。だがこれは、命に関わる事だからね。……良く考えた方がいい」
 シイナが関わろうとしているこの件は、想像以上に尋常でない何かが裏に潜んでいた。それは、この事を知っている人間の命にも関わる事で、シイナは既に片足を突っ込んでしまっている。これ以上進むなら覚悟が必要で、誰にも相談もできない。

 ――誰も、巻き込みたくないなら。


 コンコン。
 ドアをノックする音に、シイナたちはギクリと視線を動かした。
「あの、シイナ様、シノータス様? よろしいでしょうか?」
 ホテルのフロント係だ。
 そういえばシイナは、荷物だけ取ってくると言い残してこの部屋にやってきたのだった。すっかり失念していた。シイナが降りてくるのが遅いので、何かトラブルにでもなっているのではないかと心配したのだろう。
 シイナが慌ててドアを開けた。
「あの、シイナ様、お話はどのように」
 シドクスとシイナが何事かを話している様子を見て取って、従業員は恐る恐るといった体で進行状況をうかがってきた。
「その事ですが」
 口を開いたのはシドクスだ。
「後からこの部屋に入ったのは私ですしね。どうも私も体調が優れないので、治癒療養に長けている聖職者の彼がいてくれれば、助かるのですよ。ホテル側に都合が悪くなければ、相部屋という形で収められればと、今話していたところなのですが」
「シド……シノータスさん……」
 自分の頭の中にぼんやりと形作られていたシナリオを、シドクスがスラスラと代弁してくれたので、シイナは驚く。
 従業員は、姿勢を正して二人を見つめた。
「基本的に当ホテルはツインもしくはダブルの作りになっておりますから、今回はこちらの不手際という事もありますし、もしもお客様がそれでよろしいのでしたら、それはもう……」
「それでは、そのようにお願いします」
 最後はシイナがそう告げた。
 それでは、と従業員が扉を閉めて去った後で、シイナはシドクスに向き直った。
「それで良かったんですか?」
「君だって、そのつもりだったんじゃないか?」
 確かにその通りだ。
 はじめは老人に部屋を譲るつもりでいたシイナだが、それがシドクスだと知って、そして彼と話をして事情が変わった。
「明日になったら鉱石について調べに出ますが、それまではここにいることにしますよ。ホテルの中だって、決して安全地帯じゃない」
 シドクスは過去に仲間の命を奪うような真似をしたが、いま命を狙われているのは彼である。過去の事件と今現在の状況は、まるで別問題だ。日がな一日張り付いている訳にもいかないし、シイナに何が出来るという訳でもないが、あまり長いことひとりにはしたくない。
「君も、外で夜明かしをするのは危険すぎるからね。窮屈ですまないが」
 だが、決心をしてしまったか、と、シドクスは少し哀しそうな表情になった。
「君が私のように、一生追われるような事態にならなければいいが……それはあまりにも過酷で、辛すぎる人生だよ」
 それを実際に経験したシドクスの言葉は何よりも重い。
「――後悔、していますか」
 シイナの言葉に、シドクスは目蓋をきつく閉じた。
「しているとも。私の周りには、誰もいない。誰にも心を許せない。許したが最後、その人物にも刃は向けられる」
 そんな誰かが、シドクスにもいたのだろうか。

 シドクスの眼差しは、どこか遠くへと、向けられていた。





==椎名の呟き==
この話でのシイナって、なんか自分で知らないうちに、でかい墓穴掘ってるタイプなんじゃないかな……w
しかもそこに片足突っ込んだ時にハッと気付いて、まあいいか、と両足入れちゃう、みたいな。

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2007.11.26

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

「失礼します……」
 小声で呟いて、その扉を開ける。
 先ほどベッドの上にいた老人は当然ながら見間違いなどではなく、未だにそこに横たわったままだった。
 が、その頭が微かに動き、シイナはピタリと動きを止める。

 ――目が覚めたのかな?

 できれば面倒な説明など無しに、そっと部屋をあとにしたかったのだが。
 ググ、と鈍い動きでうつぶせの頭が動き、皺の刻まれた顔が、こちらに向いた。その目蓋は微かながら開かれている。
「あ……」
 やはり、目を覚ましたのだ。
 どのように説明したものかと、シイナは逡巡する。老人にしてみれば、鍵をかけたはずの自分の部屋に、見知らぬ男が忍び込んで来たようにしか感じられないだろう。
「あの」
「もう嗅ぎつけられたのか……目標を目の前にして、私の命もここまでか……」

 何?

 意識がまだハッキリしていないのだろうか。再び目を閉じた老人は、うわごとのようにひとりごちたが、シイナの姿をしっかりと捉えようとはしていないようだった。
「あの……?」
 何だか物騒な物言いが聞こえたような気がしなくもない。
「これも因果応報か? ……ビンデハイム……」

 ――え?

 今、彼はなんと言った?
 ビンデハイム。確かに目の前の老人は、そう呼んだ。
 その名前は、アインベフで知ったばかりの、あの名前だ。シドクスという男の罠にかかり、仲間を失い正気さえ手放してしまった、あの老人の。

 なぜその名前を? って、答えは決まっている。

『アインブロックで、シドクスを見かけたって噂が立ってるのさ』

 酒場で聞いた言葉が、鮮明に脳裏を過ぎる。
 彼が。シドクス?
 そんなまさか。
 偶然の同じ名だろうと。心の隅を過ぎる思考があるが、そんな訳はない。目の前の老人は、因果応報という言葉も、発したのだ。
 たまたま同じ部屋を取ってしまった、本来何の接点もないはずのこの老人が。
 特に面倒ごとに係わり合いになりたい訳でもないし、係わり合いになる可能性も低いだろうと思っていたのに、どうしてよりにもよって、こんな偶然?
 それとも、これもめぐり合わせ――なのか。

 今このまま知らぬフリをしてしまえば、それで終わりだ。何も無かったような顔をして、このままホテルを出てしまえばいい。厄介ごとに巻き込まれる必要はない。
 けれど。
 シイナは、静かな動作で後ろ手にドアを閉めた。
「……あなたが、シドクスさんですか」
 シイナの言葉に、老人ははっとしたように、顔を上げた。そこに立つのが見知らぬ男だとわかって、ブルブルと首を振って、枕に顔を押し付けてしまう。
「いえ、いえ違いますよ。ええ人違いですよ。私はシノータスといいます」
 違う違う、と、老人は枕に突っ伏したまま首を振り続けた。
 だがもう、遅い。
「アインベフで、ビンデハイムさんに会いました」
 その名に、老人の動きが止まる。
「私はこの件の関係者ではありません。ルーンミッドガッツの大聖堂から派遣されてきた者です」
 恐る恐るといった体で、老人はそっと枕からはずした顔を、シイナへと向けた。
「……君は、私を殺しに来たのではないのか」
「違いますよ」
 すぐに老人の言葉を否定してから、シイナはふと考える。
 シドクスは、何者かに命を狙われているのか? 炭坑夫たちを殺害した連中と結託していたのは、シドクスの方ではないのか。だが目の前にいる老人からは、殺気も危機感も何一つ感じない。本当にただの疲れた老人、だ。
「私はアインベフで偶然ビンデハイムさんの話を聞いただけです」
「聞いた、だけ……」
「はい。ビンデハイムさんと、酒場のご婦人から、炭鉱の事件の事を。だから、貴方の名前を知っていた。それだけです」
 観念した老人は、力の抜けた顔でベッドの上からシイナを見上げた。
「なぜ君は、私の居場所がわかった?」
 シドクスの言葉に、シイナは困ったように頭を掻いた。別にシイナがシドクスの居場所を突き止めたわけではない。第一シドクスを探す理由がない。すべては偶然である。
 最初から話したほうがいいだろうと、シイナは口を開いた。

「そうか……」
 シドクスは深く頷いた。部屋のダブルブッキングなどという変なめぐり合わせに、彼も苦笑しているようだ。
「シイナくん。何故君は、私に声をかけた?」
 シドクスの問いかけに、シイナはほんの少し神妙な顔つきになった。
「私は――真実が知りたいと思ったんです」
「真実?」
「何故炭坑夫たちが命を狙われなければならなかったのか。姿を消したあなたがどうしてアインブロックを訪れたのか」
「……」
「謎の鉱石とは、一体なんなのか」
 シドクスは弱々しく首を振る。
「興味本位で聞くような話ではない」
「……」
 そんなシドクスを、シイナはただ見つめる。視線を外すことなく。
 そんな風に口を閉ざすシドクスだったが、どこか、何というか、この件に関する話を、聞いて欲しがっているような、そんな気もしたのだ。けれどそれを躊躇わせる深い事情が、あるのかもしれない。何人もの命を奪った事件の、渦中にいた人だ。
「貴方が話してもいいと思うなら、話して下さい」
「君の、命を脅かす事になるかもしれない」
「……」
 それを知ってしまえば。
 つまり、そういう事だろうか。
 けれど、それでも。
 知りかけてしまった事の真実を抱く人間を目の前にして、何事もなかったかのように身を翻す事ができるほど、シイナは器用な人間ではない。
 命を危険にさらすような事態には、過去に何度も遭ってきた。
「それでも、です」
 シイナの言葉に、シドクスは目を閉じてため息をついた。諦めとも失意とも――逆に決意とも取れる深いため息。
「ひとつ、確認したい」
「はい?」
 シドクスの低く小さな声に、シイナも神妙な眼差しを向ける。
「君の知り合い縁者で、この件に関わっている者はいないか?」
「いません。アインベフで過去の事故の話を聞いた事のある人はいるでしょうが、少なくとも私の周りで、この件に関する調査をしている者は、誰も」
 シイナだってついさっきまでは、この件にこんな風に関わろうという気など、さらさらなかったくらいなのだ。シドクス本人と、出会ってしまうまでは。
「……そうか」
 それでは運命に任せて引き受けてくれるか。私の抱えているこの謎を。
 そう言って、シドクスは静かに口を開いた。

 異国の聖職者を前に、まるで懺悔でもするかのように。





==椎名の呟き==
クエストの進行上仕方のないことですが、シイナ思い切りが良すぎw
命は大事にしてください(切実)。

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2007.11.24

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

---4謎の鉱石と謎の老人

「お帰りなさいませ、お客様」
 シイナがフロントに顔を見せると、チェックインした時に受付を担当した従業員が、その時と同様にうやうやしく頭を下げた。
「シイナ様、203号室ですね……おや?」
 ふと首をかしげた従業員は、不思議そうにシイナを見つめる。
「シイナ様は確か、お出かけの時には間違いなくこちらに鍵を預けられましたよね?」
「ええ」
 それは間違いない。一度部屋には入ったが、ろくに荷物もないし、すぐに出かけなければならなかったので、今目の前にいる従業員その人に、鍵を預けて外に出た。よく憶えている。
「鍵がないんですか?」
 シイナの質問に、従業員は慌てたように首を振ってゴソゴソとカウンターの下をあさった。
「いえいえ、予備の鍵はございますので問題はありません。私が確かに鍵をおあずかりしたのですし……」
 つまりやはり、鍵がないのではないか。
 しかし従業員はさっさと予備の鍵を取り出し、何事もなかったかのようにシイナに向かって頭を下げた。
「お待たせいたしまして、申し訳ございません。こちらがお部屋の鍵になります。ごゆっくりくつろがれますよう」
「ありがとう」
 まあいいか、と、シイナはその鍵を受け取った。
 別に部屋に貴重品を置いていた訳ではないし、部屋に入れないわけでもない。シイナはあまり小さなことにはこだわらない性格だ。大雑把とも言う。

 二階にあがり、アインベフに出掛ける前にも一度入った部屋のドアを開ける。

「え……ッ」
 思わずシイナは目を見張ってしまった。
 シイナの視線の先。
 見たことのない老人が、室内のベッドに横たわっていたのである。

「失礼しました!」

 慌てて部屋のドアを閉じてしまってから、シイナはそんなバカな、と思い返した。
 いくら彼でも、一度入った部屋を間違えるほど間抜けではないはずだ。そのドアに記された部屋番号を確認すれば、確かにそこは203号室。シイナが取った部屋の番号であるし、今その手に握られているのもその番号の鍵で、シイナは確かにその鍵で、ドアを開けた。
 しかしつまり、内側から鍵をかけた状態で、老人はシイナの部屋のベッドに横たわっていたのだ。

 シイナはその足で、フロントに直行した。
「あの……」
「あ、はい、いかがなさいましたか?」
 シイナの気配と声に反応した従業員は、瞬時に戸惑いの色をその顔に浮かばせた。やはり何か不都合があったのだろうかと直感したのかもしれない。
 部屋に見知らぬ老人がいた事を、従業員に告げる。
「え、そのような事が……」
 一体誰がどうやってそんな勝手な事を、と呟きながら、従業員はふと思い出したように伝票や帳面を漁る。
「一応確認を……あ」
 ああ、と、彼は沈痛な面持ちで頭を抱えた。
「どうかしましたか?」
「…………」
 無言の従業員。なんだ、どうした。
「……まことに、まことに申し訳ございません」
「は?」
「シイナ様が外出されました後に、一度フロント担当が入れ替わったのですが……その……その時に、私のかわりに入った者が……シイナ様のお部屋に、別のお客様を入れてしまったようでして、私も今までその事にまったく気付きませんで……」
「え?」
「申し訳ございません!!」
「はあ……」
 鍵が見当たらなかったワケだ。ダブルブッキングとは。実際そんな事があるのかと、そんな場合ではないような気がするが、シイナは妙な部分に感心してしまう。
「私は他の部屋でも構いませんが?」
「それがその……ただいま満室になっておりまして……」
 ああ。なるほどそれは、少々困ったことになってしまう。
「こちらの不手際で……なんと申し上げてよいか」
「うーん……」
「……ですが、先にお部屋を取られたのはシイナ様ですので……シノータス様、ああいえ、後からいらっしゃった客様には、私のほうから謝罪と交渉をさせていただきますので」
 いかんともし難い状況だが、それがホテル側としても最善の策といえるだろう。しかし、シイナは少し考えた。
 部屋で横たわっていた老人。上掛けもかけずにぐったりとうつぶせになっていた背中からは、相当の疲れが見て取れた。その老人を無理やり起こして追い出すのは、少々気が引けてしまう。
 早く宿で休みたいと思っていたのは事実だが、絶対にどうしても、そうしなければならないというわけでもない。モンスター討伐の際に野宿をするなんて、これまで当たり前のようにやってきた事だし、だからシイナは、そういう状況に慣れている。
 だから自然と、あの老人に部屋を譲ってもいいかという思考にたどり着く。
「あの、私はかまいませんから、そのお客さんに部屋を譲ってやってください」
「え、ですが」
 シイナの言葉に戸惑う従業員。
 だが、その顔からは、あからさまに安堵の表情が見て取れた。こういう商売をやっているだけに、頭の回転が速いのだろう。故に、シイナの言葉に速攻で反応してしまったのがハッキリとわかり、申し訳ないが、内心笑いを誘われてしまった。
「私は大丈夫ですから。部屋で休んでいるご老人は、そのままそっとしておいてあげてください」
 普段からシイナはどこでも眠れる質の人間だし、必要ならば一日や二日は眠らないでもいられる。この街の場合、警報が出たときのモンスターの出現は心配だが、安全を考えるなら空港のロビーにでも陣取っていれば問題ないだろう。
「そうおっしゃっていただけるのでしたら……はい、重ね重ね、心よりお詫びと感謝申し上げます」
 深々と頭を下げながら、晴れ晴れとした笑顔を見せる従業員。そうと決まった時の対応も素早い。
 現金なものだ。
「荷物だけ、取りに行ってきますね」
 繰り返し頭を下げる従業員を尻目に、シイナは再び二階への階段を登った。





==椎名の呟き==
どうでもいい事ですが、煤けた街のホテルの割に、全室天蓋つきベッドなのですよ。
ゴージャスです。
一時期シイナは、このホテルの会食場のような場所で、豪勢な食べ物に囲まれながら座ってボーっとしていたものです(何

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2007.11.17
*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 案内員は、壁に向かう形で設えられた机のそばの椅子を引くと、ドッカリと腰を下ろした。シイナには中央付近にあるソファを勧める。
「ありがとう。……えーと?」
「ララクセルズ」
「そう。私はシイナ。ルーンミッドガッツの首都プロンテラ大聖堂に籍を置いているプリーストだよ」
 案内員――ララクセルズは、へえ、というようにあらためてシイナを見つめた。この辺ではあまり見かけない聖職者という人種が珍しいのかもしれない。

「……あの時は悪かったよ。最初にアンタを案内した時。オレから喧嘩をふっかけた」
 俯いたその顔を、シイナは少しだけ目を見開いて見つめた。
「いや、私も乗ったからお互い様だけど。随分御機嫌ナナメだったようだね?」
 シイナの言葉に、ララクセルズは自嘲気味に微かなため息をつく。
「ちょうどその直前に案内した客が、おかしなヤツらでさ。来るなり強いモンスターのいる場所はどこだとか、もっと便利な道具を売っている店はないのかとか、文句ばかりつけられて。大体、観光で来ている奴らみんな、警報が出ても避難もしないでモンスター相手に暴れまわってるし――そう、街の外に出て行く連中もさ、あからさまに楽しそうに、まるでモンスター討伐が目的みたいに、意味もなくモンスターを倒しまくってるような奴らが目立ってたんでさ。アンタの国の人間ってのは、よほど好戦的な人種なのかと思うくらいで」
 ルーンミッドガッツの国が、魔法や戦闘に長けている国で、そこに籍を置く冒険者の多くが各所に出かけてモンスター討伐を生業にしていることは、知識としては知っていた。しかし、これまでそれを間近で見る機会がなかったララクセルズには、彼らのその行動が理解しがたかったのだ。
 シイナは肩をすくめた。
「確かに、目に余る奴らってのはいるものなんだよね。それはこっちも悪いかな。けど……まあ、ね」

 自分たちが生きる道。

 誰もが、当たり前のように選び、進んでくる道。
 誰もが、時々ジレンマに心を支配されながら。
 それでも。

「世界中各地を横行するモンスターってのは倒しても倒してもキリがないものでさ。多分一生かけても終わることがなくて……いかにも楽しそうに狩りをしてるように見えるんだけど、ん、まあ実際楽しんでる人間もいるんだけど――楽しむくらいの気持ちでなきゃ、やってられない時もあるんだ。申し訳ないとは思うけど、少しだけ大目に見てもらえるとありがたい、かな」
 ララクセルズは、存外に素直に頷いた。
「今はわかるよ。さっきアンタ、モンスターに遭っても全然動じてなかったもんな。そういう能力に長けていて、そうやって生きているんだって事が、良くわかった。冷静に見てみれば、他の観光客だってみんなそうだった」
 お互い、初めて知る国の事だ。最初は理解しがたいのも無理はない。
 二人は、苦笑を投げかけ合った。
「もっとも、だからこそ気にいらないヤツでもいた時には、一発くらいブン殴ってやっても動じやしないから大丈夫だよ」
 あははは、とシイナが笑うのに、ララクセルズは呆れた表情を向けた。
「アンタ、可愛げな顔してけっこう口悪いなぁ」
「可愛げはやめてくれ……」
 さっきアインベフで老女に女性と間違われて「娘さん」などと声をかけられた事も、けっこうへこんだりしているのだ。昔から、シイナはその容姿について、女の子のようだとからかわれることが多い。本気で間違われることは滅多にないが。
「はは、それはすまない。……ああ、警戒が解かれたようだな」
 そう言われて窓から外を覗くと、相変わらず煙で視界は悪いままだったが、若干見通しが良くなり、モンスターの姿はいずこかに消え失せていた。
「そうか。じゃあそろそろおいとまするよ。世話になったね」
「オレも持ち場に戻らないとな。またわからないことがあったら声をかけてくれ。今度はちゃんと案内するからさ」
 顔を覆っていたマスクをはずした彼の、本心からの笑顔。

 ――真面目でいいヤツなんだな。うん。

 ララクセルズの言葉に、ありがとう、と言い置いてシイナは外に出た。相変わらず空は最初に見たときと変わらず、朱に染まって本来の色を失ったままだったが、それでも先ほどよりは遥かに呼吸しやすい。
「ホテルに帰らないとな……」
 休みたいと思っていたのを、ふいに思い出した。次から次へと何かが起きて、今日は忙しい。何もない一日よりは有意義かもしれないが、そんな呑気な事態でもないような気がするし。
 まあいい。とにかくホテルだ。

 石とコンクリートと鉄板で出来た道を、シイナは歩き始めた。





==椎名の呟き==
いやもちろん、楽しくて狩りをしているんですけどね? 紛れもなくw

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2007.11.08
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---3警戒警報

 アインブロックに着いて汽車を降りれば、目に見える場所にホテルの看板がある。部屋はもう取ってあるのだから、あとは帰って休むだけだ。
 しかし、そこに向かって歩き出した途端に、異変は起きた。

「緊急事態発生。工場からの煤煙により、大気汚染濃度が危険値まで到達しました。住人の皆さんは、速やかに屋内に非難してください。繰り返します――」

「なんだ……!?」
 町全体に響く音量で放送が流れ出し、急に辺りが騒がしくなった。と同時に、外を歩いていた人々が慌てて駆け出し、それぞれがどこかしらの建物の中へと逃げ込みだす。随分と慣れた様子で、オロオロとその場に立ち尽くすような人間は誰一人としていない。
「大気汚染濃度って一体……って、確かにこの煙、ただ事じゃないぞ……!?」
 最初にこの街に来たときとは比べ物にならないほどの、大量の煙。さすがに咳き込みそうになるシイナの視界に、煙以外の何かが見えた。
 いや、煙は煙だが……。
「モンスター!?」
 大気中を漂う煙とそっくりな姿を持つモンスターがそこにいた。ルーンミッドガッツでは見たことのない形のモンスターだ。
 これは予想外。
 周りで被害を受けている人間がいないことを確認して、シイナは己に守備魔法を掛けかけた。

「――やっぱり外にいたのか!!」
「えっ?」

 グイ、と肩を引かれて、呪文詠唱を中断された。
 そのまま手を掴んで駆け出す何者かに、シイナはつられて走る事しかできない。
「こっちだ」
 声のする方を見てみれば、煙の中でシイナの手を引っ張って走るのは、この街に最初に来たときに会った案内員だ。いつの間に近寄ってきていたのか。モンスターに気をとられていて気配に気付かなかった。
「クッ……痛ぇよ、コンチクショウ!!」
 先に行く彼は、容赦なく煙のモンスターの攻撃を受ける。
「ちょっと君、大丈夫か?」
「いいから早く!!」
 数十秒か走った先の小さな家屋の扉を開け放った彼は、そのままの勢いでそこに飛び込み、バシンと音をたてて扉を閉めた。
「はあ……」
 その場に座り込み、大きく息をついて肩を落とす。
「……ここは?」
 こぢんまりとした部屋の中を、シイナはぐるりと見回した。
「オレの家。屋内にいれば安全だから……」
 煙のモンスターは、確かに家の扉を破ってまで入って来ようとはしていないようだ。
「君、持ち場を離れて大丈夫なのか?」
 フウ、とため息をつきつつ呟くシイナを、案内員は呆れたように見上げた。
「この時ばかりはそんな事言ってられないんだよ。あの煙のモンスター。あんなのが群がってる外をうろついてたら、命がいくつあっても足りやしない。警戒警報が出た時に、外にいるヤツなんて誰もいないよ」
「……じゃあなんで、君は外にいたの」
 シイナの素直な疑問に、案内員はばつの悪そうな顔で俯いた。
「……探してたんだよ。アンタには、言ってなかったからさ。この街は時々ああいう風に警報が出されるんだって事。さっきアンタも見た通り、大気汚染が酷い間はモンスターも出現する。オレたちも自分の事で手一杯になるから、自己防衛してもらうためにも初めてこの街に来る人間には、必ずそれを伝えなきゃいけないんだけど……言い争いで、失念してた」
 命に関わる事なのにすまない、と、案内員は素直に頭を下げた。その職務意識の高さに、シイナは内心感嘆しつつ、クスリと笑った。
「いやまあ、私もこう見えて、そう簡単には死んだりしないから、気にしなくていいんだけどね」
 へ? と不思議そうな顔をする案内員の傍に膝をついたシイナは、見せて、と傷を負って血の滲んでいる肩に手を当てた。シイナの掌のあたりに透明な緑色の光が生まれたのを案内員が目で確認したときには、既に肩の傷は塞がっていた。痛くもかゆくも、なんともない。
「え、なんで? どうなってるんだ?」
「これも我々聖職者の力のひとつでね。戦闘にはあまり向かないけど、治療や防衛には長けているから、まあホテルに逃げ込む時間くらいは稼げたと思うよ」
 シイナの笑顔に、案内員はへたりこんだ。
「そういう事は早く言ってくれよ……」
「そんなヒマなかったじゃないか」
 ハハハと声を立てて笑うシイナに、案内員も諦めたように苦笑を返した。そこには、初めて会った時のような棘は存在しない。
「噂には聞いてたけど、アンタの国の人間は凄いんだな……」
「畑が違うだけなんだけどね。この国には、この国にしかできない事があるし。まあでも、君がその身体を張って私を助けに来てくれた事には、本当に感謝してるよ。ありがとう」
 あらためて礼を述べると、案内員の顔があからさまに赤くなった。こういう事に慣れていないのかもしれない。
「いや、そのな、オレの方こそ、っていうか、ああいう時はたまにホテルなんかも施錠されちまう事があるから、気をつけとけよッ」
 ああなるほど、それで彼は手近なホテルではなく、確実な自宅まで走ってきたわけか。シイナは納得した。

 うん。悪い人間じゃない。

 突然の出来事に少々驚いていたシイナだったが、事情を知って余裕が出てきたところで、目の前の若者をしげしげと観察するのだった。





==椎名の呟き==
初めてこの街を訪れた時に、案内を受けた男性のあまりの色男っぷりに陥落させられたPL椎名さんは、この街がたいそうお気に入りになりましたと。
そして、こんなお話を作るまでに発展するわけです。
もちろんゲーム中で、案内員とこんな風におしゃべりする機会はまったくないですがw

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プロフィール

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

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pixivは二次創作腐向け小説と絵。ジャンルは雑多。

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