オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。
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2008.02.29

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

---8愛すべきもの

「ユミルの心臓って……オレでも聞いたことがある」

 深刻な顔で呟くララクセルズの言葉に、シイナは頷いた。
「ユミルの心臓の存在自体は、オレたち他国の人間でも知っている場合が多いんだ。けどその管理体制は厳重で、それにどれだけの力が秘められているのか、どんな可能性があるのかはまったく明らかにされていない」
 その名前と、それが浮遊都市ジュノーを支える動力源であるということは、多くの人間に認知されている。が、それだけが認識されているのだ。それだけでも大した事実だが、ユミルの心臓というものに秘められた隠れた部分を、一般人は何も知らない。

 そのユミルの心臓の欠片が、アインベフで発掘された。

 しかしそんな重要なものが発掘されたとしたら、それは国の機関に吸い上げられるのが普通ではないのか。誰かがそれを隠蔽し、独自に研究を開始している。
 国がそれをさせているとは考えにくかった。それにしてはあまりに施設や警備体制がおざなりすぎたからだ。
「そしてその鉱石を発見した炭坑夫たちが、次々と殺された」
 国がそんな事をさせているのだとしたら、国民にとっては大問題だ。それはあまり考えたくない事態である。
 そして、そんな風に動いている機関の事を、シュバルツバルドやルーンミッドガッツは知っているのか。そこが一番の問題だ。知らないままでいるのなら、報告する義務は生じるかもしれないが、もしもそれを知った上で、一般の人間にそれを知らせないまま動いているのだとしたら、一般人がそれを知ったことで不都合が生じるかもしれない。そうなれば、高い可能性でシイナやララクセルズやビンデハイムの身柄も、自由とはいえない状況に陥ることになる。

 世界を思うままに、と。シドクスはそう言った。
 そんな力を持つものを、彼らは発見してしまった。

 国にそれを知らせなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない。
 国にそれを知らせたら、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 どちらの可能性も考えられるときに、シイナはどう行動するべきか。
「知らないフリをするしかないんだよ」
「シイナ……」
「国が何だ。世界が何だ? 近くにいる人間ひとりも護れない奴が、関わっていい事じゃない。国が絡むほどに大きな問題であるとするなら、それこそ自分の身は自分でしか護れない。もうこれ以上、誰を失うのもゴメンだ」
 この腕の中で消えていく命を、留めることができなかった。
 死んでいった彼が辿ってきた苦難の運命を、少しも労うことも出来ないまま。安らかな人生に戻ることも出来ないまま。彼は確かに罪を犯したかもしれないけれど。
「失っていい命なんて、ひとつだってないんだ」
 膝の上で組んだ両手に、シイナは額をあてた。こうしてらしくもなく人前で身をかがめてしまうほどに、シイナにとって衝撃的な出来事だった。人ひとりも護れなかったことが。それほどまでに、自分の力が足りなかったことが。
 誰だって、何でも自分の思い通りに出来るわけではないし、どんなに頑張ったって抗えない力だってある。自分の力だけで何でも出来るなんて、それこそそんな考えは驕り以外の何物でもない。そんな事はわかりすぎるほどわかっているつもりだけれど。
 こんな事件に首を突っ込んでいいほど自分はご立派な人間ではない。どうせ自分が関わったところで、事態を変える事なんてできやしないのだ。けれどそうとわかっていても、そうせずにはいられないのは、己の心の弱さではないのか。
 その弱さの結果がこれだ。
 何も、できないくせに。

「それでもシイナは、シドクスの死を見届けたろう」

 ララクセルズの呟きに、シイナは顔を上げる。
「最初から知らないフリだって出来たはずだ。逃げ道はいくつもあった。例えば理由はどうであったって、シイナが彼の代わりに事件に関係したのは事実だし、多分、シドクスだってシイナに救われた部分があったと思う」
「……」
「オレがもしシドクスの立場だったとしたら、きっと最後に言うよ。ありがとうって」
「……」
 そう。
 シドクスは最後に言った。
 シイナに、ありがとう、と。

 シイナは黙ったまま、目の前に広がる夕闇の山脈と景色を見つめる。
 その景色が放つ蒼い輝きを宿した光が、一筋だけシイナの頬を伝って落ちた。

 ――どうして君は、そうやってオレを救う言葉を簡単に紡ぐことが出来る。

 思った通りだった。ララクセルズ。彼は人を救うことのできる人間だと。意地っ張りかもしれないけれどまっすぐなその心は、どれだけの矛盾を見せ付けられても、どれだけの理不尽さを知っても、きっと折れたりはしないのだろうと。出会って間もない彼に抱いたその思いは、やはり、裏切られる事は無く。
 今沈み込んだシイナの心を救い上げたのは、まっすぐで聡明な、彼のその手だ。

「――ありがとう」

 立ち上がり、ララクセルズに向き合うように振り返ったシイナの瞳は、穏やかな光を宿していた。





==椎名の呟き==
これをサイトで掲載してた頃は、ほんとシュバルツバルドって国は謎でねえー。
なんか、今もけっこう謎なんですけどw

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2008.02.22

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

「おい、シイナってば」

 シイナを追いながら、ララクセルズはその背中に呼びかける。
「行くって、どこに行くんだよ?」
「ここは人が多すぎる。誰もいないとこ」
「……」
 全てを話してくれるつもりなのだろうと、理解する。
 それならば、スタスタと歩くシイナの後ろを、ララクセルズは黙ってついていくしかない。そうでなくとも初めて訪れた街で、右も左もわからないのだ。

 シイナは人の多い街中を抜け、おおよそ人影の見えなくなった草原をひたすら歩いた。景色は夜の闇に溶け込んでいるが、シイナにとっては知りすぎているくらいの地理だ。ゲフェン付近の平地を歩いていけば、ほどなくミョルニール山脈を見渡せる場所に着く。そこなら滅多に人が通りかかることはない。

「この先に展望台がある。奢ってもらった礼に、ゲフェンの展望台を見せてやるよ。まあ有料ではないんだがね」
 深い谷に掛けられた石の通路を渡っていけば、谷とその向こうにそびえる山脈を一望できる展望台がある。深い水を湛える谷に浮かぶように設置されている展望台に立つと、まるで空を浮遊しているように感じられる隠れた名所だ。
 その美しさに、ララクセルズは目を奪われた。

 あまりにも、違う。
 ララクセルズの知っている生まれ故郷の風景は、いつも錆の色だった。
 轟音と煙で人々の安息の場は狭まり空までもが赤く染まっているように見えた。屋外ではマスクなしでは呼吸もつらいような、そんな、鋼鉄の街。
 彼にとってもちろん、そこは愛すべき、住み慣れた故郷に変わりはないけれど。

 この土地は、生まれて育ったアインブロックとは、雲泥の差だった。平地には草が生え、花が咲き誇り、こうして谷に差し掛かれば美しい湖と谷川の向こうには、色鮮やかな山脈の自然が目に飛び込んでくる。闇に沈むそれらも幻想的なまでに美しかったが、これが昼間だったら、太陽の光をうけたこの場所は、どれだけの輝きを放つことだろう。
 何よりも、空気がこの上なく奇麗だった。吸い込む空気を美味いなどと感じる瞬間が来ようなどと、思ってもいなかった。

「奇麗な場所だな」
 ララクセルズの心からの言葉に、シイナも頷く。
「うん。ここは特にそうだと思う」

 シュバルツバルドにだって美しい場所はいくらでもあるとは思う。アインブロックの向こうにあるといわれているリヒタルゼンの街などは、街のあちこちに花壇が溢れている色彩豊かな場所だと聞く。シイナもララクセルズも、そこに行ったことはないが。
 シイナは展望台に設えられたベンチを手で指し示した。
「座りなよ」
 言われるままに、ララクセルズはそこに腰掛けた。シイナもその隣に座る。
「さっきの人。シイナの上司?」
 その質問に、シイナは苦笑する。
「上司……まあそうかな。一応聖職者をまとめている人ではあるね。オレたちにしてみれば厳しい姉か母のような人だ」
「何も報告することがないって……」
 シイナが出遭った事件の事を言わなくていいのかと、そんな意味をこめたララクセルズの言葉に、シイナは静かにため息をついた。
「時期尚早。今回の件は、何が絡んでいるのかわからない。関係しているのが個人なのか、あるいは国そのものなのか」
 シイナのその言葉に、ララクセルズは息を呑んだ。

 国が、絡む?

「今この瞬間にプロンテラに報告するべきものなのか、そうでないのか。その判別が付かないんだよ。もしもシュバルツバルドの国自体が認知している問題なのだとしたら、オレじゃなくても誰かが陰で動いている可能性だってある」
 もしもそれが国を挙げる重要事項なのだとしたら、それを知ったシイナやそれを知らされた大聖堂やプロンテラ、全てがどんな風に渦中に巻き込まれていくのか、計り知れない。ルーンミッドガッツそのものが、すでに関わっている可能性だって無くはないと、シイナは考えていた。
「オレが関わっているのはね。そういう事なんだ」
 それを踏まえたうえで聞いてくれと、シイナは念を押す。
 ララクセルズが頷くのを見て、シイナは重い口を開いていきさつを話し始めた。





==椎名の呟き==
展望台、あまり近づいてないなあ。
だって、一人で行くには、あまりに空しいデートコースなのですよ(笑)。

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2008.02.15

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 ひとりでどうにかできると、思っていた。
 思わなければならなかった。
 誰も巻き込まないように、なんて。願うだけなら誰でもできる。だが、願うだけでは、それは決して叶わないのだ。
 ではひとりで駄目ならどうすればいいのか。答えはふたつ。すべてを放って逃げ出すか、それとも、誰かと手を取り合うか。

 本当はそれを避けたかったのか、望んでいたのか、もうわからない。
 けれどこれを、一蓮托生というのだろう。

「――わかった」
 シイナは、顔をうつむかせてポツリと呟いた。
「話すよ」
「……」
「全部話すから、早くここから離れよう」
 目の前の人物に、それだけの覚悟があるというのなら。それすらも受け入れられないとしたら、それは単なる傲慢でしかないと、シイナはそう思う。
 諦めたように立ち上がると、シイナはその場にワープポータルを出した。
「オレが乗ったらポータルが消えてしまう。君が先に乗るんだ」
「……シイナ」
「大丈夫。逃げないよ」
 トン、とララクセルズの身体をポータルへと押し出した。ものを言う暇もなく、その身体がその場から掻き消える。
 それを見届けて、シイナはそのポータルに乗らずに振り返った。
「まあ、因果な性分だな、オレも……」




 飛ばされた場所のあまりの賑わいに、ララクセルズはどうすることも出来ないままその場に突っ立っていることしか出来なかった。
 もう陽も沈みきった頃合いだというのに、その活気は静まることを知らないかのようだ。

 ここがどこなのかもわからない。けれど、急にそこに人が現れても、誰も気にする様子もない。自分の後から何人もそこに現れたが、皆また勝手に歩き出したりその場で休んでいたりと、なんというか行動が自由だ。アインブロックで見かける観光客のような、戦闘のために身を固めた人間が圧倒的に多い。シイナと同じ、聖職者の法服を着た人間も大量にいた。ここはルーンミッドガッツの国の、どこかの街なのだろう。
 けれど、シイナは来ない。
 意味もなく、あたりをキョロキョロと見回してしまう。
「まさか」
 逃げたのだろうか。
 一抹の不安を覚えた瞬間、目の前に現れたシイナの姿に驚愕した。
「うわ!」
 嘘をついて逃げたわけではないとはわかったが、その場にガクリと膝をついたシイナは、全身傷だらけだった。
「おい、シイナ……」
 呼びかけた瞬間、周りにいた数人の聖職者から次々と回復魔法を浴びせられて、シイナは何事もなかったかのように普通に立ち上がる。傷は全部消えていた。
「ありがとう」
 つと手を挙げて周りに軽く礼を言ったあと、シイナはララクセルズに向き直った。
「回復できないほど消耗してたわけでもないんだけどね。ここはそういう場所だから」
 こっそりと笑うシイナに、ララクセルズは言葉を返せない。実は彼も、ここに現れた途端に、傷も負っていないのに大量の回復魔法を浴びせられたのだ。ここに来た人間に、無差別に回復魔法をかけて回る聖職者は多いらしい。傷ついて戻ってくる冒険者にはありがたい話だろう。
 つまりこの場所は、魔物討伐の旅から戻ってくる冒険者たちの溜まり場のようなものなのだろうと理解する。

「お前、何やってたんだよ」
 逃げないと言ったくせに後から現れないから、正直ララクセルズは不安になっていたのだ。やっぱり逃げたのではないかと。
「ちょっとね。君をポータルに乗せた後、すぐにモンスターが大量発生してさ。そのままポータルに乗ってきちゃっても良かったんだけど、どうも目の前に現れたモンスターは倒しちゃわないと気がすまない性分で」
 言いながらシイナはララクセルズの内心に気付いて、フッと軽く微笑んだ。
「なんだ? 逃げたと思った? 君をこんな知らない街に置き去りにして逃げるわけがないだろ」
「お前なあ……ていうか、ここどこだ?」
「ここは魔法都市ゲフェンだよ……っと、ヤバ」
 言いかけてシイナは慌てて顔を隠そうとしたが、間に合わなかった。
「プリースト・シイナ?」
 夜の色のヴェールをまとった修道女が、規則正しい歩調で近づいてくる。
「シスター・テルーザ……」
 あまり顔を合わせたくない人に見つかってしまった。
「なぜあなたがここに? アインブロックに向かったのではないのですか?」
「いえ、私は法具の補充に立ち寄っただけです。室長こそどうしました?」
「私はトーマス司教の御用向きで」
 室長の言葉に、シイナは嘘くさい笑顔を張り付かせた。
「そうですか。私はまたすぐにアインブロックに戻りますよ。まだ調査も始まったばかりで報告できるようなことも何も無いので」
「そうですか。くれぐれもお気をつけなさいね」
 プロンテラ大聖堂聖職者の心得そのいち。人を疑うは聖職者の恥。シスター・テルーザは欠片ほどもシイナを疑わず、そのままゲフェンの街中を歩いていった。
「ふう……」
 そして聖職者の心得そのに。人を騙すは人の恥。もしも嘘がバレたら、厳しい室長のどんな制裁が待っていることか。しかし真実を話すわけにもいかない。要はバレなければいいだけの話だ。
「行こう」
「え、おい!?」
 歩き出したシイナに、その場で突っ立っていたララクセルズは慌ててその後を追った。





==椎名の呟き==
今じゃーゲフェンで辻ヒールをする人も少なくなりましたなあ。
ええ、自分もしませんがねえ。
色々と変わったもんだ(しみじみ)。

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2008.02.08

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 ララクセルズは、視界に現れたモンスターを、凝視する事しかできない。
 ここにたどり着いた時に最初に見たモンスターを、シイナはグールと呼んでいた。今こちらに向かってきているものも、同じような形に見える。
「あ、あれもグールか? シイナ……」
 ララクセルズの問いに、シイナは小さく頷いただけだった。
「オレから離れるな」
 シイナは迷わず詠唱を開始する。

「輝きの盾をその身に。キリエエレイソン!」

 身体の能力に神の加護たるブレッシング。
 速度増加。
 護りの光エンジェラス。
 幸運の福音グローリア。
 ララクセルズとシイナ自身に、次々と護りの魔法を施して行く。
「本来在るべき光の国へと発ち還れ、ホーリーライト!」

 ――バシン!!

 十字にも見える光を受けて、グールは短い咆哮と共にその場に倒れ伏した。間髪いれずに次々と放たれる聖属攻撃に、グールは次々と打ち砕かれ倒れ消える。
 それは神々しいとも、壮絶とも取れる凄まじい光景だった。
 ララクセルズは、呆然とそれを見つめ続ける。
 その背後から地を這うようなうめき声が聞こえて、ララクセルズは仰天して身を引く。が、伸ばされるグールの手はすぐそばまで迫ってきていて、逃げようにも間に合わない。
 迫ってくる腐り落ちた姿に、ララクセルズはギュウ、と瞼を硬く閉じることしか出来なかった。
「うわあ!!」
「大丈夫だ。そこを動くな」
 シイナが施したキリエエレイソンの魔法は、光の盾となってララクセルズの身体をグールの攻撃から護った。身体のごく至近距離で、攻撃は反射されて当たらない。
 シイナのホーリーライトがグールを襲い、その身体が光となって砕け散る。

 襲ってきたグールを全て倒して、辺りはまたしんと静まりかえった。

「……」
「さすがは普段から不測の事態にも備えている案内員だね。下手に逃げ回ってくれなくて助かるよ」
 単に、腰が抜けて動けなかっただけなのだが。
 座り込んでしまったララクセルズの正面に、シイナは膝をついて身をかがめた。
「だがそれでも限界がある。ここは本当に危険なんだ。頼むから、わがままを言わないで聞き分けてくれ。君は帰るんだ」
 悲愴とも言えるシイナの懇願に、ララクセルズは先程のように怒るような素振りは見せなかったが、首を縦に振ることもなかった。
「オレがわがままなら、お前もわがままだよ」
「ララクセルズ!」
「何でお前が頑なに俺を跳ね除けようとしているのか、大体の察しはつくよ。だがオレはお前に護られるために真相を知ろうとしたんじゃない。お前がオレの命を護るために何も言わないままオレから逃げようっていうなら、オレはこのままお前から逃げて、この修道院でモンスターに襲われて死ぬからな!」
「バカな事を言うな!!」
 やれるものならやってみろ、とは、言えなかった。彼は本当にやるだろうと、確信があったからだ。出逢って間もないけれど、わかる。ララクセルズはそういう男だ。
「なんでお前は、傷つけないために距離を置くことばかり考えるんだよ。今までもずっとそうやってひとりで。それがお前のやり方だって、そういうのわかるけど、だったらオレにだって、オレの主張がある」
 ララクセルズは立ち上がった。
「オレたちの街で起こっていることにお前を巻き込んで、それでお前に庇われたまま、何も知らずにのうのうと生きていくなんてな、オレの誇りが許さないんだよ」
「……」
「このままお前と別れたって、オレは真相を探るからな。明らかになるまでずっとだ」
 ララクセルズの言う事は正しい。彼からすればもっともな話だ。本当に真実を隠蔽したまま彼らから離れようとするなら、シドクスをも連れてあの街を離れなければいけなかった。けれど、それには時間がなさすぎた。追っ手の追跡が早すぎたこと。そして根本から言えば、シイナがララクセルズと知り合ってしまったこと。

 お互いにとって、どうでもいい通りすがりの人間ではなくなってしまったこと。

 彼を巻き込まないようにと全てを内に秘めたままにすることが、彼の心と人生をも傷つけてしまうことになるだろう。自分が彼の立場だったら、きっと同じ事を言うし、同じ事をする。そして同じように傷つく。
 シイナが強く何かを思うのと同じように、誰だって、その胸に宿っている何かが、あるのだ。

 だから、わかる。
 わかってしまった。

 多分もう、逃げられないのだと。





==椎名の呟き==
ホーリーライト一発で倒れてくれるグールなんて、実際には存在しません……orz
これも、演出上の効果という事で(逃げ)。

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2008.02.01

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---7真実の模索

 どさり。
「う……ッ」
 経験した事のない空間移動にバランスを崩したララクセルズは、その場に膝を着いてしまった。座り込んだままその場を見回す。突如変わった周りの風景。瞬間的に空間移動したのだと理解するには、少々の時間を要した。
 薄暗く、誇りっぽい空気。巨大な建造物の中のようだが、あちこち崩れ落ちていて、それが施設として機能していない廃屋なのは、一目瞭然だ。
 それに、纏わり付いてくる嫌な空気。
「な、なんだここは……」

「ララクセルズ!」

「うわあ!」
 突然真後ろにシイナが現れたので、ララクセルズは仰天して尻餅をついた。
「し、シイナ」
「バカ! なんでこんな危ないマネするんだ!」
 いきなり怒鳴りつけられて、ララクセルズはムッとして立ち上がった。
「バカとはなんだ! 元はと言えば……」
「走れ!」
「うわっ!」
 ララクセルズの腕を掴んで走り出したシイナの後方には、いつの間にか湧き出した得体の知れない化け物がいた。土色の身体はあちこちが腐っているように崩れ落ちていて、直視に耐えない。
「グールだ。気付かれた」

 薄暗い通路を走り抜けて、大きな空間に出た。
 奥には祭壇があり、巨大な十字架が掲げられている。そしてそれを仰ぐような形で並べられた長椅子。しかしそれはどれも朽ちて長いこと放置されているようだ。
「ここは、どこなんだ?」
 息を切らすララクセルズに、シイナは怒った顔で答える。
「修道院跡だ」
「……ここ、が?」

 人がいないところならどこでも良かったのだ。
 とにかく、誰もいない場所に逃げたかった。
 しかしワープポータルから移動できる場所の数には限りがあって、シイナが空間を繋いである場所で人のいない場所は、ここしかなかった。それでもシイナひとりならどうという事もない場所なのだが。
「ここは危険なんだ。それを……」
 いや。
 わかっている。不用意にこの場所への道を開いてしまったのはシイナだ。こうなることを予想するべきだった。けれど彼らの前から逃げ出すことしか考えていなかったシイナに、そこまで考える余裕はなかった。
「……すまない」
「……」
「ポータルをもう一度出す。それに乗って君は帰れ」
 その場にポータルを作ろうとするシイナに、しかしララクセルズは首を振った。
「イヤだね」
「ララクセルズ!」
「そうやってオレも誰も追いやって、いつまでお前ひとりで何もかも抱えたままでいるつもりだよ! それで生きることも死ぬことも! 最後までひとりで何でもやれるつもりでいるのかよ!!」
「……ッ!!」

 言葉が痛い。

 その通り。
 何もかもを、ひとりで最後まで抱えきれるはずがない。それはわかっている。
 けれどだからこそ、誰かがそこに介入してきた時に、その人まで抱え込む余裕なんて、どこにもない。
 今回のように命の危険すらある事態に誰かを巻き込むなんて、シイナに出来ようはずもなかった。
 だから。それならば、抱えるしかないではないか。

 何事かを言いかけたシイナだったが、周りを囲む気配にすばやく視線をめぐらせた。
 まずい。囲まれている。
 ここはのんびり話をしていられる場所ではない。
 ララクセルズも、一瞬遅れて自分たち以外の存在に気付く。
 数体のグールがゆっくりと迫ってきているのが見えた。逃げ道はない。

 他のモンスターが見当たらないのが救いか。これならララクセルズを連れていても、何とかなるかもしれない。
 シイナはゆっくりと身構えた。





==椎名の呟き==
実際は、修道院に直にポータルを繋げる事はできないんですけどね。
演出上の効果ってことでw

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プロフィール

椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

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