オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.8 コーラス・ブレイド ~桃色のまんじゅう

2006.12.26

 鳥だの魚だのを取り混ぜた揚げ物の皿盛りをムグムグと口に運びながら、シイナがふと壁にかかっている品書きに目をやった。
「なあ、桃色まんじゅうって食べていいか?」
 うげ。
 別に何を食べるのも勝手だけど。
「桃色まんじゅうって、お前、それクソ甘い花の蜜がまんじゅうの皮被ってるようなモンだぞ? それ食うの?」
 ていうか、食っていいかって、確認取るのはそれ、もしかして飯代オレ持ちな訳?

 湖の端で話し込んでいた俺たち、ふたりの腹が盛大に切ない音を立てたのをきっかけに、街中の飯屋に場所を変えていた。

「オレはもともと甘いものは苦手な方だよ。けどこの身体が甘いもの好きらしくてな。こいつで一度食べたら不思議と美味いと感じるようになって」
 桃色まんじゅうみっつくださーい、と、胸の熱くなるようなオーダーをしやがったシイナは、揚げ物の残りの征服にかかる。
 いくら甘いもの好きな身体って言ったって、みっつは食いすぎじゃないのか。みっつは。

 女の身体、というキーワードで、ふと気色悪い事実を思い出してしまった。
「そういやお前、出会い頭は女言葉使ってなかった?」
 今も見た目は女なんだけど、本人の言葉だけでなく、話してみればこいつの中身は確かに男だ。女の格好してるからって、わざわざ女らしく振舞うこともないと思うんだけど。
「言葉遣いの悪い女は好きじゃない」
「へ?」
「この子、今生きてたら18歳だぞ。オレはこんな妙齢で乱暴な振る舞いをする女はあんまり好きじゃないの。だから自分もやらない」
 そうなんですか。
 ていうか、そういう問題なのかな?
「それに、格好が女である限り、女らしく振舞っといた方が何かと得だぜ。初対面の人間は、それだけで油断するし」
 女らしい女は、槍振り回して魔法ぶっ放さないと思うけど。
「じゃあなんで、今は素なんだよ」
 素朴な疑問だったが、シイナはあからさまに表情を歪めた。
「一度バラしちまったモン、今更取り繕ったって気持ち悪いだけだろ」
 うんまあ、それはそうだけどね。
 これで中身が凄まじくオッサン年齢だったら、いくら女は女らしく、なんてモットーを抱え上げたとしたって、何かアレな気はする。いや、若けりゃいいって話でもないけどさあ。
「シイナっていくつ?」
「22」
 へえ。オレよりふたつ上か。にしちゃあ、持ち合わせてる女性像とか、妙に考え方オッサンくさくないか。
「お前は? ていうかオレ、お前の名前も聞いてないぞ」
 あれ、そうだっけ。
「コーラス。20歳だよ」
 へえ、とシイナは目を丸くした。
 うん、言いたいことはわかる。けど言うなよ。20歳には見えないとかそういうことは。それはあちこちから言われ続けて、けっこうコンプレックスなんだからな。
「見えないな。この子と同じか下くらいだと思ってた」
 言うなっつーのに。
 でもまあ、見た目が有無を言わさずその人の印象になるものなのは確かだよな。
 積み上げられた桃色まんじゅうを手にとって嬉しそうにかじりつくその姿は、確かに歳相応の少女にしか見えない。今はわざとそう振舞ってるわけでもないだろうに。
 ああ、湯気になって立ち上がる甘ったるい匂いがたまらない。

「しかし、どうしたもんかな……。自分で発掘するしかないのか? そんなことやってる時間ないんだけどな」
 桃色の物体をほおばりながら、シイナは片手で頬杖をついてため息をついた。
 精霊石の話か。
 しかしこいつ、こんなトコでオレと飯食ってて、オレに賊としてハンターギルドに連行されるかもしれないなんて、全然考えてないのかな。考えてないんだろうな。
 オレもそうするつもりはないけどさ。
 けど、確かにこいつの今の一番の問題は精霊石だ。
 ちゃんとした精霊石を手に入れようとすれば、普通ではちょっと考えられないくらいの金がかかる。今は産出量も極端に少ないから尚更だ。でもって、それだけ出ないってことは、発掘だってそうそう出来るものじゃない。私有地でない場所で、魔法に使えるほど質のいい精霊石を偶然発見、なんて、一攫千金夢物語だ。
 だからこそ、こいつは追いはぎみたいな真似をしてたんだろうし。
 実際、それしか方法が無かったんだろう。
 それを手に入れたからって、どうにかなる問題なのかって、それはわからないけど、そこから始めなきゃ一歩も前に進めない事だってある。

「お前がついてくる気があるなら、心当たりがないでもないんだけど」
 ポツリと呟くと、まんじゅうを持ったシイナの手がピタリと止まった。
「……はあ!?」
 予想通りのリアクションありがとう。
「コーラス、お前実はどこかの凄い御曹司か? 誕生祝に精霊石ってのも不思議な話だとは思ったけど」
 とてもそうは見えないとでも言いたそうだな。
 でもオレが今目の前でヒョイと精霊石を出してあげるわけではなくてだな。
「ちょっと遠いけど、知ってる鍛冶屋のところにあったはずなんだよ。質は間違いなくイイぜ。多分売ったり使っちゃったりはしてないと思う」
 シイナがげんなりと顔を前方に傾ける。
「あのな……それでそれは一体いくらするんだよ。そんな金があったら、わざわざ盗賊まがいのことなんてやってない」
 オレも、盗賊まがいのことやってた人間に金の話なんて持ち出しませんよ。
「タダでもらえるはずだよ。ちょっと訳アリの一品だから」
「訳アリ?」
「別に盗品だとか、呪いがかかってるとかそういうものじゃないから安心しろよ」
 シイナはいぶかしそうな顔をするけど、今ここで長々と世間話のように話すようなことでもない。
「それがまだそこに残ってれば、確実にもらえる。どうする? 来る?」
 数秒の間。
 手に持ったそれは、早く食べちゃいなさいよ。
「…………わかった」
 うん、それしか今は道がないもんね。

 とりあえず、これで話は決まったって訳だ。





==椎名の呟き==
お食事処でのんびりですか。
でもコーラスは何食べてるんでしょうね。
鳥や魚や果物の蜜や、でもまんじゅうや揚げ物って、身体にいいんだか悪いんだか。

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