オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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25 逢魔が時! 第三話【おじいさんの水盤】…6

2007.04.22

 荘二郎から聞いた話を、巡はそのままかぼに伝えたが、やはりかぼは、さして驚いた様子は見せなかった。
「そんな感じはしていたよ。魂の消えかけてる物の怪は、案外とわかるものだ。だが……」
「だが?」
 思案顔になるかぼに、巡はその表情を覗き込む。
「大抵、物の怪なんてのはその運命を甘受するようにできているというか、それが常なんだがの。ミズがそれを受け入れようといていないというのが、気になるところではあるな」
 荘二郎も、そんなようなことを言っていた。
 人間の姿になっているシンが、巡のベッドの上でゴロリと寝転がる。
「オレらみたいなのは、正直寿命なんて存在しないようなものだけどな。だから、付喪神的な物の怪の考え方ってのは、根本からは理解できねえけど……」
 かぼやシンは、元となるそのものの存在が消えて無くならない限りは、その魂は消えることはない。かぼが何の物の怪であるのかは聞かされていないが、これまでの言を鑑みれば、シンやミーシャと同じ存在なのだろう。だがミズは、荘二郎の持っている水盤の寿命が尽きれば一緒に消えてしまう。
 けれど。
「もともと『生きている』者たちと違って、わちらには存在するという事に関しての執着はあまりない。聞き分けのない人間と違って、運命を受け入れるのがたやすくできているからな」
 聞き分けのない人間で悪かったな。
 心の中だけで悪態をつく巡だが、ここで毒づいても始まらないので黙っている。今話しているのはそんなことではないし。
「人間に愛されて生まれた存在だから、ということかもしれんが、ミズのような物の怪など、他にも星の数ほどいるからの。もっともわちらも、その全てを掌握している訳ではないから、実際はどうなのかは、わかりかねるところだが」
 もっとも、存在し続けることへの執着があろうがなかろうが、それは必ず受け入れなければならない運命なのは変わりのないことで、だからどうだという話でもないのだが、何故ミズは、それを認めようとしていないのだろう。
「薄々わかっているはずだって、天笠さんも言ってたけど」
「人間だってそうだしな。巡にはまだわからんだろうが、事故や病気で突発的に死んで行く者以外、大抵は自分の命が終わりかけていることくらいはわかるものだ。だがミズは、それを受け入れようとしていない。理由はあるんだろうが……」
 未練とか、そういうものだろうか。それとも何か別の。
「なんにせよ、それがあるなら聞いてやること位はできなくはないが、運命は変わらん」
 だからな、と、かぼは巡を見た。
「ぬしはどうする。ミズとはあまり関わらない方がいいのではないか?」
 巡はえ、と表情を変える。
「なんで」
「別にぬしがそれでいいのなら、わちは構わんが……ミズと関わっていれば、必ず、ミズの死に目に遭うことになるぞ」
「!」
 ミズと関わった時に、かぼが言っていたことの意味が、今わかった。
 場合によっては、嫌な思いをすることになると。
 ミズは人間ではないが、人間のように会話のできる存在だ。だから、もう話をして、ひとりの人間のように、その存在を認めてしまった。ものの死は全て等しいとはいえ、やはり名も知らぬ存在の死を伝えられるのと、知っている者が死んでいくのは、全然違うものだ。
 だが巡は、まだ本当の意味で「死」というものを知らない。
 まだ誰のことも、失ったことはないのだ。
「それでもまあ、人間の死と物の怪の死は、まったく違うものだがの」
 ほんの少し、巡に気を遣ってるのだろうか、かぼは軽い調子でそんなことを言う。
「違うって?」
 幾度もの死と向かい合ってきたであろうかぼは、フウ、とため息をつく。
「物の怪は、その魂が消えるときに、器もあとかたも残らない。だが生の刻の生き物は……死体というものが、残る」
 そんなことはわかっている。わかってはいるが、それがどれほどの差であるのか、巡にはよくわからない。
「身体が残っているからこそ、その喪失感は、恐ろしくでかいぞ。……まあ、こんなことは口で言ってもわかるものではないし、本当は、その時になって初めてわかるものなんだがな」
 これまで動いてしゃべって息をしていたものが、その機能を一切停止する。
 例えば病気で、もう心臓が動いているだけのような状態になっていたとしても、それはまだ、生きている。
 それがすべて止まったときに。
 その身体は、嘘のように、違うものに、なる。
 もう二度と動かないし、しゃべらない。まるでこれまでのことが、夢であったかのように。
 流れていた血が止まり、体温が無くなった身体は、とてもとても冷たい。
 何年も動いてきたものなのに、そうなった瞬間から、腐敗が始まる。
 生と死の、境界線。

 それを知らない巡には、やはり言われても、心から理解することは難しい。

「話が逸れたな。とにかく、そういう『生物』よりは、物の怪の消失はあっという間だということだ。それでもな、そこにいた者が消えてなくなるという事実に変わりはない」
 だから、それが嫌なら回避することもできるのだぞ、と、かぼは言う。
 ミズと関わるのをやめればいいのだと。
「ミズは、もうそんなにすぐに、消えてしまうの?」
 巡の質問に、かぼは頷く。
「水盤次第だからの。今日消えてもおかしくはないのだよ」
 水盤が壊れたら、どうしてもダメなのだろうか。
 水盤を大事にする気持ちから生まれた物の怪なのに。その大事にしていた人の気持ちが、残ったりはしないのだろうか。
 いや、こんな風に往生際が悪いのが、人間なのかもしれないが。
 かぼがダメだと言っているのだから、そうなのだろう。
「それでも」
 巡は俯きがちになっていた顔を上げた。
「だからって僕は、逃げたりはしないよ。誰も逃げられないのに」
 ミズも、荘二郎も。
 巡が直接の当事者という訳ではないが、そのことを知ってしまったからには、まるで無関係という状態には戻れない。
「天笠さんだってきっと、辛くない訳はない。ミズだって」
 荘二郎やミズが、今どういう風に考えているのかも、ちゃんとはわからない。けれど、それを知っていてやる存在は、多い方がいいような、そんな気がしたのだ。
「もっと、天笠さんにもミズにも話を聞きたい。僕だけ無関係を決め込みたくない」
 一大決心をするような感じでもなく、淡々と言う巡。
「そうか」
 そんな巡に、かぼはただ頷いた。

 巡がそういう気でいるのなら、かぼはもう、何も言うつもりもなかった。





==椎名の呟き==
重いのかな? そうでもないのかな?
行かなければいけない側の気持ちがわからないってのが、書き手にはきついんですよねー。
だって本当のところは、死ぬ瞬間までわからない訳ですし^^;

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