オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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41 逢魔が時! 第四話【魔と降魔】…8

2007.05.29

 シンが巡になすりついてきた理由は、一瞬後に明らかになった。

「……なんだ、これ!?」
 シンを抱きかかえたまま思わず叫んだ巡の視線の先。部屋の壁から、真っ黒な影のようなものが、染み出してきた。
 液体にも固体にも見えない、黒い何か。それがゾロゾロと染み出してきて、何かの形を成そうとしている。壁の向こうには、シンが寝ていたはずのかぼの部屋がある。この影の気配に気付いて、脅えたシンは巡の部屋に飛び込んできたのだろう。
「魔物だな」
「魔物!?」
 落ち着き払ったように見えるが、かぼの声のトーンが低い。
「力は……さほど強くはないの。シン、変化しろ」
 かぼの命を受けて、巡にしがみついていたシンが、急速に人の形へと変化し始めた。
「うわ……」
 支えきれずに、巡は大きくなり始めたシンを抱えたまま尻餅をついてしまう。
 ドタンと大きな音を立ててひっくり返った巡の上に乗ったまま、人間の姿となったシンは目を見張って影の方へと振り返った。
「何なんだこりゃ! なんで魔物が!?」
「シン……痛い……ッ」
「あ、悪い」
 慌ててその場から立ち上がったシンに向けて、かぼが鋭い視線をそれでもやんわりと向ける。
「シン、ぬし、魔を浄化する力は持っているかの」
「いやー……」
 かぼの言葉には、シンは申しわけなさそうに首を振る。
「オレ純粋に猫なもんでさー。逃げる以外の防衛手段持ってないんだわ」
「だろうな……」
 魔物に、物理的な攻撃は通用しない。
 かぼたち物の怪が、滅多なことでは消滅しないのと一緒だ。その上、魔物と呼ばれる連中は、かぼたちのように、依存する何かを持たないため、魔物を消滅させようとするなら『浄化』するしかないのだが。
「わちの浄化能力だけで、何とかできそうかの……」
 かぼはぼやく。
「な、何なんだよ、かぼ! これは!」
「魔物だ魔物! 話はあと!!」
 巡の叫びを一蹴するかぼ。確かに、今は呑気にこの影の説明をしている場合ではない。
「塩か聖水でもあればな……」
 うぞうぞと形を成す黒い影は、四肢をうごめかす獣のように見えなくもなかった。二本の足で立とうとしているから人間のようだとも言えるのだが、不自然に揺らめくそのシルエットは、とても人間とは言いがたい。

「塩ならあるわよ~」

 のんびりとした声音と共に、部屋のドアが勢い良く開いた。
 姉、芽衣がそこに立っている。
「滅せよ、悪魔ぁ~!」
 拍子抜けしそうに力の入っていない台詞と共に、あまりにも不釣合いな素早さで、黒い影に向かってひと掴みの塩が投げつけられる。
 行動だけは電光石火だ。
「~~~~~~~~~~!!!!」
 声にならない声というか、奇妙な音を立てながら、黒い魔物はグググ、と身体をふたつに折り曲げた。どうやら苦しんでいるらしい。
「メグに変なことする奴は~、私がやっつけちゃうからねぇ」
 両手でガッツポーズの芽衣。その拍子に、左腕で抱えていた塩の入った紙袋の中身が、全て床に零れ落ちた。というかぶちまけられた。その量ほぼ1kg。
「芽衣……」
 しかし、その光景に頭を抱えたのは巡ひとりだ。
「よし」
 芽衣の塩投げを受けて、かぼは魔物に向かって両手を思い切り広げた。
 バシンと、その両手で、自分の身長の倍ほどもある魔物を左右から押さえつけるかぼ。そこからベコリとへこみ始めた魔物を、今度は上から押さえつけて、さらにへこませる。それはまるで、綿菓子を手で押しつぶしているかのような光景だ。
 何度も何度も繰り返して小さくなった黒いものを、最終的に、両手でギュウ、と押しつぶした。

 再び開いた手の中には、もう何も残っていない。
 手品のようだ。

「…………」
 あまりにもシュールな光景を、眉間にしわを寄せて見つめていた巡。
「浄化完了、だの」
 浄化。あれが。
 巡の知識上の『浄化』とは、大分違う。
「助かったぞ芽衣。いいタイミングだったの」
 かぼの言葉に、芽衣はぶちまけた塩を蹴散らしながら、巡の方へと駆け寄り、その肩を両腕で抱きしめた。
「だって、メグの部屋に来ようと思ったら、かぼちゃんの部屋から変なものがはみ出てたんだもん。蠢く黒い影っていったら幽霊しかないじゃない~? だったらお塩で撃退できるだろうって思って、慌てて台所から持ってきたんだよ」
 黒い影イコール幽霊。芽衣らしい判断である。
 それにしても姉、素晴らしい瞬発力だ。
 動く影→幽霊→塩という三段活用も瞬時に行っている。しかも今回は、その個性的な判断がドンピシャだったのだから、運がいいというか、もともと彼女の実力なのか。
「ていうか、なんなんだよ、これは……」
 巡がこんな風に、はっきりと魔物を見たのは、これが初めてだ。かぼたち物の怪とは違う、意志の薄い魔物。巡にとっては幽霊と大差ないそれ。
 そう、幽霊なんてものだって、これまでに一度だってお目にかかったことなどないのだ。
「純粋な魔物……」
「純粋な魔物?」
 さっきもそんなようなことを言っていたかぼだが。巡には今いち、現状そのものが理解できない。急に黒い影が現れて。その影が塩のひと掴みで苦しみ。かぼが、それを握りつぶした。一体この部屋で、今何が起こったのか。
「こんなものが今普通に出てくるわけはないんだがの」
「……?」
 かぼの言葉にうんうんと頷くシンと、まったく意味のわかっていない巡。そしてそれを抱きしめる芽衣。

「奴らの仕業か……」
 腕を組んでため息をついたかぼの次の言葉を、一同は一斉に視線を向けて待つのだった。





==椎名の呟き==
椎名は男兄弟がふたりもいたので、子供の頃は綿菓子の潰し合いをよくしていましてね……。そんな思い出がヒントになった、かぼの浄化方法ですw

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