オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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61 逢魔が時! 第五話【いのち短し】…5

2007.08.28
 コトリとテーブルの上に置かれた麦茶を、朝比奈は「いただきます」と口に運んだ。
 トレイの上の麦茶をかぼと巡の前にも置き、芽衣は自分もその場のソファに腰掛ける。
「ホント驚いたよぉ。部屋にいたはずのメグが、先生の車で帰ってくるんだもん」
 うん、と、朝比奈は頷いた。
「オレも驚いた。まさか木霊山から救助要請が入るとは思わなかったからな」
 巡の家付近から木霊山までは、車で移動しても30分ほど。もしも朝比奈に時間の余裕が無かったら、今頃巡の精神は朽ち果てていたかもしれない。そうなる前に、歩いてでも飛ぶ以外の方法で帰ってこようとするかもしれないが。
「ズルいなメグってば。私に内緒で木霊山まで遊びに行っちゃうなんて~」
 別に遊びに行った訳ではない。というか、一時話をしてトンボ帰りというか、ぶっちゃけ短時間の森林浴しかしていない。

「かぼちゃんは、どうしてメグにその現場を見せようと思ったの?」

 かぼの母体ともいえる少女が命を絶たれた村。
 聖域とされながらも、鬼となった物の怪に占拠されていた霊山。
 かぼは、静かな仕草で首をかしげた。
「氷村という存在に出会っていなかったら、話す気になったかどうかもわからん。それだけわちには、氷村は脅威だった。わちが連れて逃げなかったら、氷村の祖先たるあの赤子は、おそらく生きてはいなかっただろうしの」
 そんな氷村と、そして自分のルーツのようなものを。
 話すのには確かに、いい機会だったかもしれない。
 けれど、一番に思うのは。
「氷村を見たとき、人間の寿命の長さを思い知った。けどな、それでもな。同時に、間逆のことも思うの」

 少女の亡骸を目にし。
 その少女の産み落とした赤子をさらって逃げた後に、たったひとりとなって。
 誰にでもなく、見上げる空に向かって、かぼは呟いた。

 ――人の命は、なんて短い――。

 少女は年端も行かぬうちに、その命を武器によって奪われたが。もしそれが無かったとしても、人ひとりの命は、とてもとても儚い。だからこそ人は、子を残すことで命を繋いで行くのだけれど。
 それでも。
 巡だって、そうそう長くは生きられない。のんびりしていたら、気付いた時にはこの世からいなくなっているだろう。
 だから、巡がいなくなってしまう前に、話しておきたかった。
 そして、聞いておきたかった。
 かぼが、人の物の怪でも、何も変わることはないよと。

 出会った頃は、拒絶を恐れていた。
 人々に忌み嫌われた彼と同じように、かぼも巡たちから嫌われるのではないかと。だから、本当のことを言えなかったけれど。
 今は、そんな風には全然思っていない。
 巡なら、たとえ状況に理解が及んでいない結果だとしても、かぼの存在を肯定してくれるだろうと、確信が持てていた。そんな風に自信が持てるようになるまで、本当のことが言えなかったなどと、臆病者だと称されても仕方がないかもしれないが。
 突き放されたくはなかった。
 けれど、できるだけ早く、本当のことは言っておきたかった。
 だって、巡個人の寿命とは関係なく。

 多分。

「わちは、そう長いこと、メグの傍にはいられないからの」
「……!?」
 かぼの一言に、巡は目を見開く。
「……なんで?」
 そんな風にしか、問うことが出来ない。
 かぼは、そう遠くない未来に、巡の傍から消えようとしているのだろうか。
 だがかぼは、相変わらずヘラヘラとお気軽な笑みを巡に向ける。
「それは当然だろう。今はまだいいかもしれん。けどな、ぬしだっていずれは大人になる。ぬしがそうやって大人になって行く過程で、わちがずっとぬしに張り付いていたら、いつかきっと、わちのことを邪魔に思うようになるぞ」
「そんな」
「そうやって、いつか誰かと家庭を持つようになっても、かぼがずっとメグにくっついてる訳にはいかんだろ」
 コブつきならぬ、魔物つき。しかも、人間から生まれた、まるで人間のような物の怪。
 まだまだ認知度の低い物の怪と一緒のまま、人間の社会を生きていくのは難しい。本人はそれで良かったとしても、周囲がそれを受け入れてはくれないだろう。
 かぼは、そう考えている。

「……」
 そんなことを急に言われても。
 いつか大人になるなどという事実は、今の巡には、理屈でわかってはいても、心から実感することは到底出来ない。出会いがあれば、別れもあるという当然のことすらも。

 いつか来る『別れ』の予告に、巡は無言で考え込むことしか出来なかった。





==椎名の呟き==
そろそろ、逢魔が時のお話も、収束に向かいます。
こういうことを言っちゃうのはアンフェアですが、かぼがいなくなって終了、ということだけはありませんので、一応w

★『逢魔が時!』最初から読みたい方はこちら★


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