オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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63 逢魔が時! 第五話【いのち短し】…7(最終話)

2007.09.10

 これから、夜の時代が訪れます。
 それは、黒くて、陰鬱で、長い時間です。
 けれど彼らは、それを待っていました。
 短い時間しか生きられない私たちの様にではなく
 ずっとずっと永い時の中を、魂を彷徨わせながら。

 そんな彼らが欲しているのは
 そんな彼らのことを『知っている誰か』なのかもしれません。
 そして
 そんな彼らのことを『知っている誰か』と巡り会えた者は
 とても、幸せなのかもしれません。

 だから
 『逢魔』のもとに、彼らは集まるのでしょう――。




「あら、成瀬さんちの。どうしたの? こんなところで」
 店先に顔を出した近所のご婦人の声に、巡は幾分か下に向けていた視線を上げた。
「こんにちは。ちょっと、店番を」
 おじいさんは、切らしてしまった上白糖の買出しに出かけているから、と呟く。

 ここは、天笠和菓子店。
 荘二郎が出かけていて留守なので、その場にいた巡が店番をつとめている。
「あらあら。天笠さんがお砂糖を切らすなんて、珍しいのね」
「いえ、実は……」
 荘二郎が、店に出す菓子の材料を切らすことなど、まずない。そんな状況を作ってしまった原因は、巡――というよりは、かぼにあった。

 いつものごとくに店に遊びに来ていた巡たちだが、かぼと、一緒についてきていたシンがふざけあっている内に、店の奥にある作業場の、大量の砂糖を全てひっくり返して台無しにしてしまったのだ。
 いかに温厚といえど、さすがに怒らない訳にはいかない荘二郎。いくらかぼが物の怪とはいえ、甘やかしては将来(?)が不安だ。ひとしきり説教をした後、取り急ぎ砂糖の買出しに出かけてしまった。
 奥の部屋で正座しているかぼとシンの巻き添えを食って、巡は店番をしているというわけだ。
「まあ~、偉いのねと褒めるべきなのかしら。災難だったわね。気をつけないとダメよ? じゃあ、この芋羊羹をもらえるかしら」
「あ……はい、ありがとうございます」
 おたおたと、慣れない手つきで菓子を取り出し、袋に入れる巡。
「あと、包装紙を一組分いただけるかしら。包装はおばさんが自分でやるからいいわ」
「は、はい」
 巡は大慌てで、ズルズルと包装用の紙を引きずり出す。
「ゆっくりでいいわよ。でもなかなか、さまになってるわね」
 婦人は、そんな巡の様子を見てクスクスと笑う。
「こういうのを、お仕事っていうのよ。楽しい?」
 興味津々といった体で、巡に向かって腰を折る婦人に、巡は複雑な表情を向けた。
「楽しいっていうか……緊張します。店で物を売るのもそうだし……天笠さんは、自分で作ったものを、こんな風にお店に出してるんだなって思ったら、凄いなって思うし。でも……」
 でも。
 その後を、どう言葉で表現していいかわからず、巡は口ごもってしまう。
 そんな巡の言わんとしていることを、婦人はわかっているとでも言うように、コロコロと笑い声を立てた。
「私はここのお菓子が大好きよ。天笠さんのこれは、人が喜ぶお仕事よね。巡君にも、きっとその良さがわかるのね」
 そうなのかも、しれない。

 ある人は急いで、ある人は笑顔で。
 この店の菓子を買い求めて行く。買うということは、お金を払うということだ。つまりが、この店の菓子には、金を払う、価値がある、ということ。
 それは凄いことなのだと、最近になって巡は理解し始めていた。時々、天笠の家に遊びに来るようになったおかげで。

 みんなが、この店が好きで。
 そしてかぼも、この店のお菓子が大好きだ。

 そんな風に、誰かが喜ぶことを。
 シンや、ミーシャや、そして、かぼが喜ぶこと、を。
 自分の生きる術として行けたなら、それは自分にとっても幸せなことなのだと、巡は思うようになっていた。

「もう少し大きくなったら、店を手伝ってみるか」

 よく、荘二郎にそんなことを言われる。
 それについては、巡も前向きな方向で考えているところだった。
 単なる子供相手の戯言に聞こえなくもないが、荘二郎に限っては本当にそう思って口にしているのだろう。こんなことで、子供に社交辞令的発言をする人物ではない。
 中学に入ったら。手伝ってみるのもいいかもしれない。お給料をもらう訳には行かないから、本当に手伝いで。そして、もしもそうしているうちに、方向を見定められたなら。
 菓子作りを、教えてもらうのも、いいかもしれない。
「うちには跡取りがいないから、歓迎するぞ」
 などと、荘二郎は言う。これも、冗談ではないだろう。
 これも、ひとつの道だ。




「ほら、かぼ。シュークリーム」
「うおっ!」
 荘二郎が帰ってきて、かぼにと持たされたシュークリームを持って、巡は奥の部屋に入った。人型のまま大人しく正座しているシンと、その隣でゆらゆらと揺れていたかぼは、瞬時に振り返った。
「しゅーくりーむとな!!」
 正座をものともせず、シュークリームに向かって飛びかかろうとした二人の手を避けるように、巡はヒョイとそれを持つ手を上に挙げた。
「反省してるのか?」
「「してまーす」」
 巡の言葉に、綺麗にハモる、かぼとシン。
 フウ、と、巡はため息をついた。シュークリームをひとつずつ差し出し、自分もひとつを口に運ぶ。
 甘くて、やはり、おいしい。
「そのうち、僕がシュークリームを作ってやるよ」
 むぐむぐとクリームをほおばるかぼは、そんな巡をキョトンと見つめる。
「なんだ。天笠のあとを継ぐ気になったのか? 気が早いの」
 そんなかぼの言葉には、巡は苦笑を返すしかない。
「具体的に言うのは、まだ早いっていうか、怖いけどね。だけど」
 だけど。
「かぼの喜ぶものを、この手で作って、それをかぼに差し出せる人間になりたいよ」
 かぼや、ミーシャやシンや。両親に姉。朝比奈、荘二郎。他にも、沢山の人たちに。
 笑顔になってもらえる、何かを。

 そうして。
 そうしてかぼが、別れの悲しみよりも、傍にいる喜びを感じてくれるように。
 そんな、人間になれたら。

 ほんの短い時でもいいから、かぼが帰りたいと思える場所になれるなら。

「お子様は、本当に前向きだの~」
「別に。大人になっても、前向きでいるよ」
 口で言うのは簡単だが。その気でいなければ、そんな風にもなれはしない。
「悪くないの」
「うん。悪くない」
 クスクスと笑いあう二人をよそに、シンはシュークリームの最後のひと欠片を、その口に放り込んだ。
「人間って、面倒くさいな~。オレは別にいつまでだって、あの家に居座るけどな?」
「アハハ……」

 どういう未来が待っているかなんて、本当はわからないけれど。
 幸せだったと言える一生は多分、幸せなひと時の積み重ねで出来るものだ。
 だからできるだけ、そんな時を一緒に過ごせるように。
 ただ、それだけのために。

 だから、例えそれが短い時間だったとしても。
 無くても良かったなどと、とても言えやしないのだ。
 巡が遺して行く、そんな短い時の欠片を、永い時を歩むかぼが、その胸に抱えて行けるように。
 かぼが存在し続ける限り、その短い命の煌めきが、消えて無くなることの、ないように。




 だから、気付いて欲しいのです。
 『逢魔』という、特別な力を持つ、あなたに。
 悠久の時の、ほんのひと時を、共に、歩んで行けるように。

 あなたと私が、共に、優しい微笑みに――包まれるように。





==椎名の呟き==
おつかれさまでした~。
何となく始まって、何となく終わった感の強い『逢魔が時!』です。
実は一応、別のお話の前提だったりなんかして……。
物の怪とかって、実は結構流行ってたんですね。知らなかったよ。あっちでもこっちでも、物の怪ネタのあることあること……意外性のない話でごめんなさい。
また、次回作でお目にかかれればと思います。
その前に、トークでも入れるかな?
とりあえずは、これにて完結です! ありがとうございました!
アンド、色々すいませんっしたーーー!!

★『逢魔が時!』最初から読みたい方はこちら★


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