オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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18 Beautiful World ~鋼鉄の都市06-2

2008.01.11
*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 研究所から出る職員を待って、シイナは入ってきたときと同様に首尾よく研究所から脱出した。その足でホテルに向かって駆け出す。もう外は夕闇に沈みかけていた。

 早く。シドクスにこの事を。

 シドクスに出会ってまだ一日。
 この短期間で謎の一端を掴めたのは幸運とも言えるかもしれないが、それだけ状況が急速に動いているという証明でもあるのだ。のんびりしていたら、シドクスが危ない。

 やっとホテルの外観が見えてきたところで、ホテルから飛び出してきた人物に仰天してシイナは足を止めた。
「――シイナ様!」
 ホテルのフロント係だ。何故彼がホテルから飛び出してくるのだ。
「シイナ様、丁度良いところに……!!」
「どうしました?」
 駆け寄ってくる従業員に両腕を掴まれ、その尋常でない態度にシイナは一瞬の胸騒ぎを覚えた。
「ホテルに……っ、何者かが侵入いたしまして、し、シノータス様が……ッ!」
「……え?」
「とにかくシイナ様を呼んでいらっしゃいます! し、至急シノータス様に」
「……ッ!!」
 何があった。
 いや、何があったか、シイナにはもうわかりかけていた。
 急いでシドクスの許に向かわなければ。
 シイナは慌てふためく従業員に頷いて、ホテルの二階へと全速力で駆け上がった。
「シドクスさん!!」
 半開きになったままのドアから駆け込んだ部屋の中には、シイナを探しに出たフロント係に任されたらしいほかの従業員がシドクスについていたが、どうにも出来なくて逡巡しているようだった。
 部屋の床にはこの地特有の赤土を踏みしだいたような大量の足跡。
 開け放たれた窓。
 そしてベッドに横たわるシドクス。
 そのシーツには、赤黒い染みが大きく広がっていた。
 大量の、血。
 胸のあたりを、刃物で刺されたようだった。

「シドクスさん……!!」
 オロオロする従業員を手で制して、シイナはシドクスの身体を抱き起こした。シドクスにしか聞こえないように小さな声で、彼の名を呼ぶ。
「しっかり! 何があったんですか!」
「シイナ君……」
 大量の血は見間違いようもなくシドクスのものであったが、かろうじて彼の意識はあるようだ。
「誰が、こんな事を!」
 シイナは治癒の魔法を試みるが、それではもう間に合わない。
「……いいんだ、シイナ君。どうせ、私は半分死んでいたようなものだ……」
「シドクスさん……!」
 治癒できない。
 何よりシイナたちの持っている治癒能力は、生きようとする強固な意志と、生存するだけの身体能力がなければ効力を発しない。それが出来るようなら、皆とっくに不老不死にでもなっている。魔法も医療も、生きる気のない人間と、決められた寿命の前では本当に無力なのだ。
「シイナ君、鉱石の事は、わかったかい……?」
 途切れる呼吸の下で、シドクスはそのことだけが気がかりとでもいうように、シイナを見上げた。
「……あの鉱石は、ユミルの心臓の欠片でした」
 治癒魔法を諦めたシイナは、静かにそれを告げた。
「なんと……ユミルの心臓……だったか。そうか、そうだな……」
 シドクスは、クク、と小さく笑う。
「世界の力を思うままに……そうだ……私たちは、そんな発見を……してしまった」
 楽しいのか哀しいのかわからないような、そんな笑い声をたてるシドクスを、シイナはまっすぐ見つめて訴えかけた。
「シドクスさん、しっかり! 一体誰がこんな事を! ”彼ら”って! それは一体誰なんですか! 何をしようとして、彼らはこんな事を!!」
「彼ら、は……ッ」
 ゴホ、と、シドクスは言いかけた口から大量の血を吐いた。
「シドクスさん!!」
 溢れたその血は、シドクスを支えるシイナの手も衣服も赤黒く染め上げた。
「嬉しかったなあ……あれを発見したとき……皆で喜び合った……。またすぐに逢える……私も、そしてもうすぐ年老いたビンデハイムも……また……」
「何を言ってるんですか!」
「いいんだ……私はもう、いい……もう逃げることもなく……」
「シドクスさん!!」
 眉間に皺を寄せるシイナに、シドクスは笑いかけた。血で汚れたシイナの手を、弱々しい力で握りしめる。
「シイナ君、ありがとうな……」
「礼なんかいりません! シドクスさん!!」
 表情を歪めるシイナとは対照的に、シドクスは安らかとも言える静かな表情で、ゆったりと目蓋を閉じた。微笑むその顔にシイナはブルブルと首を振るが、もうシドクスは何も見ようとしていないのだろう。

 逃げて、逃げて。
 何年もかけて足掻いてみせたシドクスだったが。
 こうなってしまったらもう、諦めるしかないというのか。

 彼はもう、運命のすべてを受け入れているように見えた。

「アーク……元気、で……幸せに……」
「……ッ!!」

 騙された事も、永きに渡る逃亡劇も、一瞬にして忘れ去ってしまったかのように、シドクスはゆったりと微笑み。
 そんな微笑みのまま。

 パタリと、皺の刻まれた手が静かに落ちた。





==椎名の呟き==
今もシイナのセーブポイントはこのホテルなんですがねー……。
シドクスと出会った部屋には、近付けんですよ~……。
だって彼、今もまだずっと倒れてるんですもん。

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