*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。 ララクセルズは、視界に現れたモンスターを、凝視する事しかできない。
ここにたどり着いた時に最初に見たモンスターを、シイナはグールと呼んでいた。今こちらに向かってきているものも、同じような形に見える。
「あ、あれもグールか? シイナ……」
ララクセルズの問いに、シイナは小さく頷いただけだった。
「オレから離れるな」
シイナは迷わず詠唱を開始する。
「輝きの盾をその身に。キリエエレイソン!」
身体の能力に神の加護たるブレッシング。
速度増加。
護りの光エンジェラス。
幸運の福音グローリア。
ララクセルズとシイナ自身に、次々と護りの魔法を施して行く。
「本来在るべき光の国へと発ち還れ、ホーリーライト!」
――バシン!!
十字にも見える光を受けて、グールは短い咆哮と共にその場に倒れ伏した。間髪いれずに次々と放たれる聖属攻撃に、グールは次々と打ち砕かれ倒れ消える。
それは神々しいとも、壮絶とも取れる凄まじい光景だった。
ララクセルズは、呆然とそれを見つめ続ける。
その背後から地を這うようなうめき声が聞こえて、ララクセルズは仰天して身を引く。が、伸ばされるグールの手はすぐそばまで迫ってきていて、逃げようにも間に合わない。
迫ってくる腐り落ちた姿に、ララクセルズはギュウ、と瞼を硬く閉じることしか出来なかった。
「うわあ!!」
「大丈夫だ。そこを動くな」
シイナが施したキリエエレイソンの魔法は、光の盾となってララクセルズの身体をグールの攻撃から護った。身体のごく至近距離で、攻撃は反射されて当たらない。
シイナのホーリーライトがグールを襲い、その身体が光となって砕け散る。
襲ってきたグールを全て倒して、辺りはまたしんと静まりかえった。
「……」
「さすがは普段から不測の事態にも備えている案内員だね。下手に逃げ回ってくれなくて助かるよ」
単に、腰が抜けて動けなかっただけなのだが。
座り込んでしまったララクセルズの正面に、シイナは膝をついて身をかがめた。
「だがそれでも限界がある。ここは本当に危険なんだ。頼むから、わがままを言わないで聞き分けてくれ。君は帰るんだ」
悲愴とも言えるシイナの懇願に、ララクセルズは先程のように怒るような素振りは見せなかったが、首を縦に振ることもなかった。
「オレがわがままなら、お前もわがままだよ」
「ララクセルズ!」
「何でお前が頑なに俺を跳ね除けようとしているのか、大体の察しはつくよ。だがオレはお前に護られるために真相を知ろうとしたんじゃない。お前がオレの命を護るために何も言わないままオレから逃げようっていうなら、オレはこのままお前から逃げて、この修道院でモンスターに襲われて死ぬからな!」
「バカな事を言うな!!」
やれるものならやってみろ、とは、言えなかった。彼は本当にやるだろうと、確信があったからだ。出逢って間もないけれど、わかる。ララクセルズはそういう男だ。
「なんでお前は、傷つけないために距離を置くことばかり考えるんだよ。今までもずっとそうやってひとりで。それがお前のやり方だって、そういうのわかるけど、だったらオレにだって、オレの主張がある」
ララクセルズは立ち上がった。
「オレたちの街で起こっていることにお前を巻き込んで、それでお前に庇われたまま、何も知らずにのうのうと生きていくなんてな、オレの誇りが許さないんだよ」
「……」
「このままお前と別れたって、オレは真相を探るからな。明らかになるまでずっとだ」
ララクセルズの言う事は正しい。彼からすればもっともな話だ。本当に真実を隠蔽したまま彼らから離れようとするなら、シドクスをも連れてあの街を離れなければいけなかった。けれど、それには時間がなさすぎた。追っ手の追跡が早すぎたこと。そして根本から言えば、シイナがララクセルズと知り合ってしまったこと。
お互いにとって、どうでもいい通りすがりの人間ではなくなってしまったこと。
彼を巻き込まないようにと全てを内に秘めたままにすることが、彼の心と人生をも傷つけてしまうことになるだろう。自分が彼の立場だったら、きっと同じ事を言うし、同じ事をする。そして同じように傷つく。
シイナが強く何かを思うのと同じように、誰だって、その胸に宿っている何かが、あるのだ。
だから、わかる。
わかってしまった。
多分もう、逃げられないのだと。
==椎名の呟き==
ホーリーライト一発で倒れてくれるグールなんて、実際には存在しません……orz
これも、演出上の効果という事で(逃げ)。
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