オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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25 Beautiful World ~鋼鉄の都市08-1

2008.02.29

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

---8愛すべきもの

「ユミルの心臓って……オレでも聞いたことがある」

 深刻な顔で呟くララクセルズの言葉に、シイナは頷いた。
「ユミルの心臓の存在自体は、オレたち他国の人間でも知っている場合が多いんだ。けどその管理体制は厳重で、それにどれだけの力が秘められているのか、どんな可能性があるのかはまったく明らかにされていない」
 その名前と、それが浮遊都市ジュノーを支える動力源であるということは、多くの人間に認知されている。が、それだけが認識されているのだ。それだけでも大した事実だが、ユミルの心臓というものに秘められた隠れた部分を、一般人は何も知らない。

 そのユミルの心臓の欠片が、アインベフで発掘された。

 しかしそんな重要なものが発掘されたとしたら、それは国の機関に吸い上げられるのが普通ではないのか。誰かがそれを隠蔽し、独自に研究を開始している。
 国がそれをさせているとは考えにくかった。それにしてはあまりに施設や警備体制がおざなりすぎたからだ。
「そしてその鉱石を発見した炭坑夫たちが、次々と殺された」
 国がそんな事をさせているのだとしたら、国民にとっては大問題だ。それはあまり考えたくない事態である。
 そして、そんな風に動いている機関の事を、シュバルツバルドやルーンミッドガッツは知っているのか。そこが一番の問題だ。知らないままでいるのなら、報告する義務は生じるかもしれないが、もしもそれを知った上で、一般の人間にそれを知らせないまま動いているのだとしたら、一般人がそれを知ったことで不都合が生じるかもしれない。そうなれば、高い可能性でシイナやララクセルズやビンデハイムの身柄も、自由とはいえない状況に陥ることになる。

 世界を思うままに、と。シドクスはそう言った。
 そんな力を持つものを、彼らは発見してしまった。

 国にそれを知らせなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない。
 国にそれを知らせたら、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 どちらの可能性も考えられるときに、シイナはどう行動するべきか。
「知らないフリをするしかないんだよ」
「シイナ……」
「国が何だ。世界が何だ? 近くにいる人間ひとりも護れない奴が、関わっていい事じゃない。国が絡むほどに大きな問題であるとするなら、それこそ自分の身は自分でしか護れない。もうこれ以上、誰を失うのもゴメンだ」
 この腕の中で消えていく命を、留めることができなかった。
 死んでいった彼が辿ってきた苦難の運命を、少しも労うことも出来ないまま。安らかな人生に戻ることも出来ないまま。彼は確かに罪を犯したかもしれないけれど。
「失っていい命なんて、ひとつだってないんだ」
 膝の上で組んだ両手に、シイナは額をあてた。こうしてらしくもなく人前で身をかがめてしまうほどに、シイナにとって衝撃的な出来事だった。人ひとりも護れなかったことが。それほどまでに、自分の力が足りなかったことが。
 誰だって、何でも自分の思い通りに出来るわけではないし、どんなに頑張ったって抗えない力だってある。自分の力だけで何でも出来るなんて、それこそそんな考えは驕り以外の何物でもない。そんな事はわかりすぎるほどわかっているつもりだけれど。
 こんな事件に首を突っ込んでいいほど自分はご立派な人間ではない。どうせ自分が関わったところで、事態を変える事なんてできやしないのだ。けれどそうとわかっていても、そうせずにはいられないのは、己の心の弱さではないのか。
 その弱さの結果がこれだ。
 何も、できないくせに。

「それでもシイナは、シドクスの死を見届けたろう」

 ララクセルズの呟きに、シイナは顔を上げる。
「最初から知らないフリだって出来たはずだ。逃げ道はいくつもあった。例えば理由はどうであったって、シイナが彼の代わりに事件に関係したのは事実だし、多分、シドクスだってシイナに救われた部分があったと思う」
「……」
「オレがもしシドクスの立場だったとしたら、きっと最後に言うよ。ありがとうって」
「……」
 そう。
 シドクスは最後に言った。
 シイナに、ありがとう、と。

 シイナは黙ったまま、目の前に広がる夕闇の山脈と景色を見つめる。
 その景色が放つ蒼い輝きを宿した光が、一筋だけシイナの頬を伝って落ちた。

 ――どうして君は、そうやってオレを救う言葉を簡単に紡ぐことが出来る。

 思った通りだった。ララクセルズ。彼は人を救うことのできる人間だと。意地っ張りかもしれないけれどまっすぐなその心は、どれだけの矛盾を見せ付けられても、どれだけの理不尽さを知っても、きっと折れたりはしないのだろうと。出会って間もない彼に抱いたその思いは、やはり、裏切られる事は無く。
 今沈み込んだシイナの心を救い上げたのは、まっすぐで聡明な、彼のその手だ。

「――ありがとう」

 立ち上がり、ララクセルズに向き合うように振り返ったシイナの瞳は、穏やかな光を宿していた。





==椎名の呟き==
これをサイトで掲載してた頃は、ほんとシュバルツバルドって国は謎でねえー。
なんか、今もけっこう謎なんですけどw

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