オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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27 Beautiful World ~鋼鉄の都市08-3

2008.03.14

*ROシドクスクエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 夜になっても工場からの機械音が鳴り止まない道を、ふたりはゆっくりと歩いた。

「なあ、シイナ」
「うん?」
 立ち止まったララクセルズに、シイナはその視線を向ける。
「もしアレなら、ここにいる間オレの家に来てもいいぞ。あんまり金がないとか言ってたじゃないか」
 ともすればあれこれと考え込んでしまいそうなシイナの思考を止めるように、ララクセルズは努めて明るく話しているようだ。彼らしい心遣いに、シイナは微笑む。
「でもそれはちょっと困るなあ」
「……なんで」
 明らかにムッとしている様子の彼に、シイナの笑いは止まらない。でもまあ、困るというのも嘘ではない。
「結構、長くなりそうだからね」
「長く?」
 うん、とシイナは頷いた。
「暮らそうかな。ここで」
 ポツリと洩らしたようなシイナの言葉に、ララクセルズはポカンと口を開けた。
「なんで!? あんなに奇麗な場所で暮らしてられるのに!?」
 彼の言う事ももっともだ。ここは暮らすにはあまり快適な場所ではないと、ここで暮らす人々は皆言う。だが彼らだって、ここでずっと暮らしているではないか。きっと理由は色々あるだろう。
「好きだよ。この街がさ」
 常に煙に包まれた工業の都市。汚れた空気の中であくせくと暮らす人々は、大雑把で他人の事なんて構っている場合じゃないように振舞っていながら、それでも暖かい。
 赤く錆びた建物や通りは、彼らの労働の象徴だ。
 労働を尊び、創造を重んじ。
 こんな街やここに住む人々を、きっとシイナは愛する。
「どうせ身軽だしね、オレは。だから、さすがにそうなると、やっかいになるのは少々困るかなと」
「バカ! 構わないよ、そんなことは!!」
 怒ったように怒鳴るララクセルズに、今度はシイナがポカンとしてしまう。
「それこそそういう事なら、いつまでだっていていいよ! ……オレひとりだし、母親とかたまにしか来ないし、だから生活はその、かなり殺伐としてるけど」
 段々言いよどむ彼だが、そんな彼の不器用さを、シイナは微笑ましく思う。シイナが愛するのは、きっとこんな優しさだ。
 人を育む体温のような。
 過去に一度は遠ざけようとした事のある、人が人に向ける、優しさ。
 こういう、人の思いをきちんと正しく受け止める事ができて、初めて自分も優しい人間になれるのではないかと、シイナはふと、そんな風に考えた。

 相棒がいなくなって、その時以来忘れていた――忘れようとしていた、人と人との間を行き交う、思いという名の絆。
 その絆は、時に優しく、時に厳しくはあるが、けれどきっと、生きていくのに無くてはならないものなのだろう。
 それを失くしたまま、生きていけるはずなど無かったのだ。

「……うん」
 ララクセルズの提案に、静かに頷くだけのシイナだったが、彼はそれで満足したようで、本当に嬉しそうな笑顔を見せた。
「そっか」
 その笑顔に、シイナは少しだけ意地の悪い微笑を返す。
「それも悪くないかもね。目を離すと何をしでかすかわからない君は、近くにいた方が心配なくて良さそうだ」
「なんだそれ! 人の事言えないだろ!!」
 笑ったり怒ったり、忙しい男だ。
 プイと背中を向けて再び歩き始めるララクセルズだが、その背中は勿論本気で怒ってはいない。

 まだ確実に安全だと言えない状況だから、できればまだしばらくはここで、自分とララクセルズの身のまわりを確認しておきたいというのも事実だ。ララクセルズが絶対にひとりで先走らないという保障もないし、万が一自分がそうなってしまったとしても、その場合は彼が抑止力になってくれるだろう。


 極力巻き込みたくないと思っていた、底の見えない深い事件。それを隠し通すには、シイナの力が足りなすぎた。ひとりで抱えきれずに共有することしか出来ないのなら、その荷物を取り合うのでは駄目だ。それは、お互いを傷つけることにしかならない。
 その荷物の重みを、預けあっていかなければ。
 そうしてそれでも、望むことが許されるなら。
 出来るだけ。
 出来るだけ、彼には平和であってほしい。

 目を離すと何をしでかすかわからない男だから。
 ――通りすがりのオレなんかのために、自分が傷つくことも厭わない君だから。

「感謝するよ」
 シイナの言葉に、ララクセルズの動きがピタリと止まった。一瞬振り返って見せた驚いたような顔を隠すように、その眉を寄せて彼はクルリと背を向け、シイナの視線から逃れた。
「そんなのいいっての!」
 ズンズンと歩くララクセルズの背中に、シイナはただ視線だけを投げかけた。

 君との出逢いに、感謝する。

 先を行き過ぎたララクセルズは、立ち止まって顔だけをシイナの方へと向けた。
「早く歩かないと置いてくぞ」
「はいはい」
 シイナが思うこんな事を口に出してララクセルズに告げれば、きっと彼は走って逃げる所の騒ぎじゃないのかもしれない。けれど今のシイナは、そういう楽しみを後に取っておいてもいいという状況を与えられたわけで。

 そんな先の事を想像してつい漏れる笑みを隠せないまま、シイナはララクセルズの後を追って歩いていった。





==椎名の呟き==
ひとまず、鋼鉄の都市編はこれにて終了です。
大変にお疲れ様でした。
色々補完されて無い部分も多いですが、『Beautiful World』のお話自体はこれで完結ではありません。
次回は閑話休題で、まったく関係ないジャンルの物が少々入るかもしれませんが、このシリーズはまだ続きます。
よろしければ、どうかお付き合いくださいませw
ご覧になってくださった方々に、心からのお礼を。
ありがとうございました!

★このお話の続きのシリーズはこちら★
★『Beautiful World』最初から読みたい方はこちら★


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