オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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30 Beautiful World ~小さな恋のものがたり03

2008.05.14

*RO恋人クエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

「お邪魔します……」

 広く間取られた居間に通されて、こちらに背を向けている女性にシイナが声をかけると、その女性は思いのほか豪快に振り返った。
 居間とほぼ一体型となっている台所で洗い物をしている姿は雇い人のように見えなくもなかったが、その眼光の力強さは人並みはずれている。
「ああ、いらっしゃい! アンタが最近アインブロックに住みついてるっていう冒険者かい? まあ誰であろうとこのカペルタ家より下等ってことに変わりはないがね、私は主人と違って心が広いからね。ゆっくりしていくといいさ。ただし、娘に妙なことをしたらその場で叩き出すからね!」
 主人、娘という事は。この人が、あのお嬢さんの母親なのか。
 富豪の奥さんという割に働き者に見えなくもないが、この土地柄ゆえか。
 良く見れば、雇い人のような女性は他にもいて、この母親よりももっといそいそと家事に精を出しているようだった。
「……どうも……」
 シイナが家に入る前にお嬢さんから話はされていたようで、確かにすぐに追い出されるようなことはなかった。が、これは少し、対応に難ありと言えそうだ。これがこの、控えめなお嬢さんの母親なのか。

「ごめんなさい、シイナさん……母がいきなり失礼な事を」
「ああ、かまわないよ。別に気にしてない」
 これでもシイナは、旅が多い生活上、こういった手合いは見慣れている。今は一緒に暮らしているララクセルズですら、初対面の時には随分な扱いを受けたものだ。この母親もハッキリとものを言うタイプではあるらしいが、心底悪い人間とは限らない。地域特有の差別意識は色濃いようだが。
 侍女らしき女性が茶と菓子を置いて去るのを待って、少女は口を開いた。
「自己紹介がまだでしたね。私はカーラといいます。シイナさん、どうぞお好きに姿勢を崩してくださいね」
 名前だけは、噂によく聞くから知っている。
 しかしさすがに娘にはこういう教育が行き届いているらしく、カーラの立ち居振る舞いは完璧だ。
「私が外に出られないのは、本当は空気や環境のせいなんかではないんですよ」
 世間話でもするように明るく自分の身の上話を始められて、シイナは少し驚いた。
「そうなの?」
「ええ。以前は私も自由に外を歩き回っていたんです。街の人はあまり父と交流を持ちたがらないですから、一部の方しか家には訪ねて来ないですし、街では違うお話が流れているようですけど」
 カーラは、少し俯く。

「興味本位で遊びに出かけたアインベフの村で、クルトに出会ってしまってから……」

「クルト?」
「クルトはアインベフで暮らしている男性です。とても優しい人なんですよ。私、クルトと一緒にいるだけで、とても幸せな気持ちでいられるんです。クルトもそう言ってくれてました」
 そう話すカーラの表情は本当に幸せそうで、彼女が本当にクルトという男性の事を好いているのだと、今知り合ったばかりのシイナでも容易に察することができた。
「恋人?」
 シイナが訊ねると、カーラは顔を朱に染めて両手で頬を押さえる。なんと初々しい反応だろう。
「……恋人なんて、そんな……私は彼のこと、とても好きですけど」
 照れていても言うことは言う。彼女も気風の良いこの街の住人ということか。
「けれど、両親は彼とのことに大反対で……。彼は、とても貧しいから」
 なるほど、ありがちな話ではある。
「彼と会っていたことがわかってしまって、両親には凄く怒られました。身分違いも甚だしいと……。両親は誰に対してもそうですが、特にアインベフが嫌いなんです」
 初めてアインブロックとアインベフを訪れてから、何度となく聞かされてきた話だ。
 もともとアインベフから独立したアインブロックは、アインベフから鉱石を運び込んで工場で加工する。工場が増えて、多くの収入を得る人間が増えてきたアインブロックには、富豪と呼ばれる人種も数多く存在する。働くだけの収入を得られない労働者も多いが、アインベフはそれ以上に貧しい。鉱石を掘り出す労働者が多いアインベフだが、その収入はたかが知れている。そうして高収入を期待してアインブロックに移り住む人間が増えているのだから、アインベフが貧しく寂れているのは当然のことだろう。
 アインブロックはアインベフを見下し、アインベフはアインブロックを嫌う。
 気風はいいが差別意識が激しいという風潮の原因だ。
「だからその日以降、私が隠れて彼に会ったりしないように、出歩くことを禁じられてしまったんです」
 それはまた、極端な話だ。

「……私、シイナさんがうらやましいです。あなたはあなたの意志と決断で、遠い国からこちらに移り住んだのでしょう? そんな勇気と行動力が私にあったなら……」
 実際のところ、そんなに一大決心をしてここに移り住んだわけではないが。
 もともと国中をほっつき歩いていた冒険者という身の上だ。シイナにとっては本拠地が変わる程度の事は、さほど抵抗を感じないだけだ。
 しかし確かに両親の反対を押し切って行動するというのは、カーラのような育ちのいいお嬢さんにはきついことだろう。女性であるなら尚更だ。
「彼……クルトの方からは、訪ねて来てはくれないの?」
 カーラはゆるりと首を振る。
「彼にそんな無茶なことはしてほしくありません。たとえ来てくれても、両親に酷い扱いを受けて追い返されてしまうだけですし……」
 たしかにそれはそうだが、だとするとこの男女は、身分違いで引き離されたまま、諦めることしかできないのだろうか。勿論そういう話は各地にごまんと転がっていそうだし、どうにもならないことだって多々ある。他人の家の事情にあまり立ち入るのもどうかとは思うが。
 しかしそれならば、このお嬢さんはいつまでここでこうしていればいいのだろう。
 両親が決めた男性と身を固めるまで?

 本当にそれでいいんだろうか。

 寂しそうに微笑むカーラに曖昧な表情しか返せないまま、シイナは出されたお茶をひと口啜った。





==椎名の呟き==
ゲーム上でのイメージをそのまま使用してしまうと、カペルタ家ってなんというか貧乏くさい富豪になってしまうんですよね。
そもそもこの家、富豪って言われてたっけ。なんだか記憶が曖昧ですが、お金持ちだったのは確かです(笑)。

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