オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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32 Beautiful World ~小さな恋のものがたり05

2008.05.28

*RO恋人クエストにつきネタばれ有り、ご注意願います。

 アインベフでの人探しは、造作もない。

 人口の少ない小さな村だから、数人に名前を言って回れば大抵の人間の居場所はつかめる。クルトもすぐに見つかった。今まで意識をしたことがないから顔をつき合わせた事はないが、シイナが良く行く酒場の比較的近所の長屋に、彼は住んでいた。
 今日は家の方にいるんじゃないかね、と指し示されて訪ねてみれば、警戒心のなさそうな人懐こい笑顔がシイナを迎えた。
 もしかして見た事くらいはあるのではないか、とも考えていたが、シイナの記憶の中に、この青年の姿はなかった。

「そうですか……カーラが、僕によろしくと……」

「ええ」
 あちこち汚れて擦り切れた作業着に身と包んだクルトは、覇気のない瞳を床に向けて彷徨わせた。人は良さそうだが気の弱そうでもある彼は、確かにあの母親が好みそうな男性ではないようだ。第一印象だけで判断しろと言われるなら、もしもシイナが親だったとしても少し考えてしまう。
 人の好みはそれぞれだし、カーラが彼を好きだというのには、他に理由があるのかもしれないが。
「彼女は本当に優しい人なんです。こんな情け無い貧乏な僕のことを、そんな風に気遣ってくれる……美しくてしとやかで、優しくて……カーラ……」
「……」
 クルトは涙ぐんで目を伏せる。
 しかし、男が女を手に入れるのに、しなければならないのはそんな事ではない。
「君は、このままでいいの?」
「え?」
「カーラさんは、私には何も言わなかったけど、きっと君が来てくれるのを待っていると思うんだけど」
 クルトに無茶をして欲しくないと、優しい彼女は言った。彼女のもとを訪れたクルトが酷い目に遭うのを懸念してそう言ったのだろうが、本当は彼女だって、クルトに会いたいはずだ。
「簡単に言わないで下さい……。いえ、わかっています。僕がダメなんです。こんな村に住むこんな男では、あの家に許されるはずもないんです。カーラにだってふさわしいわけがない」
 すっかり諦めモードか。
 根本的に、悪いのは財力がないことではない。いや、クルトにそんな風に思わせてしまうカペルタやアインブロックにも問題はあるわけだが。根の深いふたつの都市村の歴史を鑑みれば、無理のないことかもしれない。けれど、身分の差に捕らわれているのは、カペルタ家だけではないということは確かなようだ。
 しかしここで諦めていたら、状況は何も変化しない。ほんの少しの行動で、変わるかもしれない可能性があるというのに。
「彼女のお母さんだけど……」
 シイナは、カーラの母親の言っていたことを、クルトにそのまま伝えてみた。

「……カペルタでは、今材料が不足しているんですか?」
 クルトは首をかしげる。
 そういう反応が返ってくるとは思わなかった。純朴なのかもしれないが、多少天然気味なのではないだろうか。
「いや、そういう話ではないと思うけど」
「材料が必要なら、少しは揃っているんですよ」
「え?」
 これもまた予想外の言葉。
「もちろんそんな状況を望んでいるわけではありませんが……もしもカペルタ家で、カーラの家で何かあったり困った事態になったときに使えればと……少しずつ貯めてきたので」
 クルトは言いながら、ゴソゴソと棚を漁った。
 取り出されたのは、小さな鍵だ。

 長屋のはずれ、案内された保存庫で、シイナは呆然とするしかなかった。
 量が半端ではない。さほど大きくない保存庫ではあるが、そこに所狭しと積み上げられた鉱石や石炭の数々。勿論工場で扱うのはもっともっと桁違いに膨大な量だが、それらは各所から集約されたものだ。個人でこれだけ集めるのに、どれだけの時間を費やすのか。
 貴重な財源であるはずのこれらを、金にも換えずにずっと置いておくなんて。
 カペルタ家の、ひいてはカーラのために。
 もちろん、それが本当にカペルタ家が困窮した時に役に立つかと問われれば、答えはノーだろう。けれど、重要なのはそこではない。
 今ここに用意されている鉱石たちが直接役に立つ事はほぼないと言ってしまってもいいだろう。けれど、クルトのこんな、相手を思う気持ちと長い時間を掛けての積み重ね。持久力。それだけは、本物だ。
 彼も、何の努力もしていないわけではなかったのだ。

 驚きの眼差しで見つめるシイナの視線を、クルトはただニコニコと、屈託のない笑顔で受け止めるだけだった。





==椎名の呟き==
自分でも思っていた以上に、クルトが天然です。

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