オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.18 コーラス・ブレイド ~樽と砂袋の攻防

2007.01.06

 ディク先生にお金をもらって、早速出発……と思ったら、そううまくはいかなかった。

「一日二日働いて、ハイサヨナラと辞められるとでも思っているのか?」
 オレたちの行く手をふさいだのは、街外れの本屋の亭主。
 て、ちょっと待てよお。
「だって給金は日払いだし、オレたちは旅に困らないだけの金が欲しかったんだし、それももう都合できたわけだから……」
 もともと、長期での契約なんてしてなかったはずだ。
「お前には言っておらん!! むしろお前のような役立たずはどこへなりと行くがいい!!」
 オッサン、多感な年頃の青年(オレ)に、なんてことを。
「いやじゃー! ワシはまだシイナちゃんと一緒に働きたいんじゃあ~~!! 行かんでくれえぇ~~!!」
 グワシッと、店主はシイナの両手を取って、砕く勢いで握りしめる。
 このエロじじい!!
「このエロじじい!!」
 あ、なんか心の声が表に出てしまった。……って、今の台詞、オレじゃないぞ。
「あんたの若い子好きは傍迷惑なんだよ! むしろ私に迷惑だ! そのベタベタ触っているゴツい手をとっととお放し!!」
 オレの背後からご登場、つややかな菓子パンと見まごうような丸々としたお顔と、丸めた布団のようなふくよかさがチャームポイントの……店主のおかみさん。
 ぶっちゃけ、迫力あります。満点です。
「毎日代わり映えの無い砂袋みたいなかあちゃんとの生活に咲いた、一輪の花じゃああ!! ワシはまだこの潤いを手放したくはないんじゃあああ!!!」
 なんかすでに半ベソ。
 樽みたいな腹を揺らして童がえりするな、オッサン!!
 ていうか、奥さんを砂袋扱いって……いや、納得しかけてるオレなんだけども、ここで同意を示してしまったら、この迫力満点のおかみさんから鉄拳が飛んできそうだ。このままでは殴られキャラに堕ちてしまう。
「あんたみたいなエロじじいに長年連れ添ってきた心優しい連れ合いに、なんて言い草だい!!」
「年増は黙っとれい!!」
「年増ぁ~!?」
 ヤバい……何かが勃発しようとしている。
「コーラス……」
 手をグイグイと引っ張られながら、シイナが珍しく助けを求めるようにオレを見る。握られた手が振り解けないんだろうけど、ここで魔法とかぶっ放すわけにもいかないし。
 ん? 魔法?
「シイナ」
 こっそりと小さな声で話しかける。
「お前、ひとりなら長距離ひとっ飛びできるって言ってたじゃん? この街の真西の方角にエンデリックがあるんだけどさ、そこまで、ひとりなら飛んで移動できる?」
「……? ひとっ飛びって言っても、魔法力と気の力を使った超高速移動だから、一瞬では済まない。けど出来ることは出来るぞ?」
 それなら。
「じゃあさ、オレひとりで先にエンデリックに向かうからさ、お前、あと一日くらい本屋で働いて、オッサンなだめてから飛んできたらどうだ?」
 総体的に、その方が早く目的地に到着できる。ここで捕まったままギャアギャア言い合っているより、よっぽど早く事が済みそうだ。
「それなら、街じゃなくてお前のいる場所にピンポイントで飛んでいけるぞ。気配を辿っていけるから、知らない街に行くよりは正確に到達できる」
「あ、それいいじゃん」
 オレが素直に同意すると、シイナはしかし微妙な顔つきになる。
 まあね、そりゃね、このオッサンにあと一日付き合うのかと思えば気も重くなるわな。でもエロじじいのお気に入りはオレじゃなくてシイナだからな。何しろオレは男だし。
 ……こいつも中身は男なんだって知ったら、オッサンどうなるんだろうなあ。それとも、外見が女ならどうでもいいかな?
「……まあ、金は多いに越したことはないし……」
 シイナは自分を納得させているようだ。
「あの、おじさん」
「おお、なんだいシイナちゃん!?」
 オッサン……。
「そこまで言って下さるのでしたら、あと一日だけなら……私、お世話になります。コーラスには先に行ってもらいますから」
「おおお!! そうか!!」
「いいのかい? そりゃうちは助かるけど」
「はい、私も金銭的に助かりますし」
 シイナはニッコリと頷く。役者め……。
 ていうか、いいも何もおかみさん、あなたの旦那さん、未だにシイナの手をギッチリ掴んだまま離してくれないんですけどねー。
「そうと決まれば、早速開店じゃあああ!! 今日の給金は奮発しちゃうぞおお!」
『ラッキー!』

 ……今、シイナの心の声が聞こえてしまった。気がする。

「なるべく先まで進んでろ。夕方まで働いたら、すぐに追いつくから」
 小さな声でそれだけ言い置いて、シイナは全速力で走り出す本屋のオヤジにあっという間に連れ去られてしまった。
 順調に進めれば、シイナの仕事が終わる頃にはエンデリックに到着できてると思うけどね。
 まあ、頑張れよお。

「あの店主には、誰も逆らえた例がないな」
 クスクスと笑いながら物陰から姿を現したのは、ディク先生。
 いつからいたんだ、この人は。一部始終見てたのなら、助けてくれても良さそうなものなのになあ。
「君はともかく、彼女にひとりで旅をさせて心配じゃないかい?」
 ニヒルに笑うディク先生の言うことはもっともだけど、これには首を横に振るしかない。
「大丈夫だよ。あいつは中身全然女じゃないから。旅慣れてるしね」
 嘘は言ってない。
 ディク先生は『女らしくない』みたいな意味で取っただろうけどね。
 実際シイナは旅慣れてるだろうし、ディク先生は思ってもみないだろうけど、今回は魔法で飛んで来るから旅のうちにも入らないだろう。
「君がそういうなら大丈夫なんだろう。では君も気をつけてな。もうおかしなものを口に入れるんじゃないぞ」
 面目ない……。

 サラリと片手を上げて見送ってくれるディク先生にこちらも片手を振って挨拶をして、オレは小さな街を出た。
 そうか、帰りには土産を持ってまたこの街に立ち寄るんだった。
 ……今度は、本屋の店主に捕まらなくて済むようにしたいなあ。





==椎名の呟き==
本屋の店主夫妻がふたり並んだら、コーラスの4倍くらいの幅になります。
迫力あります。でも本好きなんだろうねえ、きっと。

★『コーラス・ブレイド』最初から読みたい方はこちら★


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