オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.21 コーラス・ブレイド ~空飛ぶ魔法使い

2007.01.11

 ガタガタと身体を揺さぶったら、寝起きの良いシイナはすぐに目を開いた。
 いや、この場合寝起きの良さは関係ないか。

「……悪い。思った以上に無理があった」
 赤くなった額を押さえつつ、珍しく殊勝な態度のシイナだ。
 うーん、でもこう見ると、やっぱりシイナなんだよな。さっきまでの……ケティさんとは別人に見える。不思議なもんだ。
「この身体で、ここまで長距離を一息に試したことがなかったからな……コーラスを見つけたとき、力の抑制が効かなくて、速度を殺しきれずに突っ込んだ」
「あっぶねえ……」
 お互いよく無事だったもんだ。石頭コンビで名が売れるかもよ。ていうか、その勢いでもし地面に突っ込んでたら、デコ赤くなるくらいじゃ済まないんじゃないかなあ。頭同士でゴッツンコして首の骨とか折らなかった俺たちの丈夫さなら、問題ないかもしれないけど。
「まさか空から人が降ってくると思わなかったもんなー。てっきりこう、目の前にヒュン、とか現れるものかと」
「そんなわけあるか。超高速だからそういう風に見えることもあるかもしれないが。この身体で地上の高速移動は不利なんだ。障害物を避け切れない。だから空に上がってから移動してたんだ」
 あーなるほど。そうでなくとも森抜けなくちゃならないもんな。進路木だらけだ。って、普通に空飛べるってのも凄い話だけど。
「シイナ自身の身体なら森の中の移動も平気だったのか?」
「全然問題ない。余裕」
 わー、相変わらず気持ちいいくらい自信満々だ。
 ケティさんて、白の塔にいても魔法師じゃなかったのかな?
「シイナにその身体くれた人って、どんな人?」
 オレの言葉に、シイナは眉を寄せる。
「なんだよ、急に」
「いや、何となく今思いついただけだけど」
 言わない方がいいんだろうな、多分。
 身体をくれた人が生きてるなんて知ったら、きっとその身体に居辛くなる。かといって出て行く方法がある訳でもないし、出て行ってもどうにもできない。そしてそれは、ケティさんの望むところじゃないだろう。

「この身体の持ち主は、ケティ・マイヤといって、白の塔のマスター、セロの世話係であり、彼の孫娘でもある。魔法師だが、力はあまりなかったな」
 えっ!?
「え? じゃあ何? シイナとその人、兄妹か従兄妹?」
「全然違う。オレはセロの爺さんの孫じゃないぞ」
「あれ? でも苗字同じじゃなかった? だからてっきり」
 やっぱり血縁は能力も受け継ぎやすいのかなとか思ってたのに。
「同じ苗字じゃない。セロの爺さんはセロ・マイヤで、オレはシイナ・ウエスコット。家名はそこまでだ。その下は、白の塔での称号だ。アン・ウィザーズはマスターである称号。デラ・ウィザーズは二位」
 なんだ、そうだったのか。
「もっとも、オレはウエスコットの養子だけどな」
「え?」
「捨て子ってヤツだよ。随分小さい頃だから、森の奥に置いて行かれた記憶はあるけど、本当の親の顔はもう思い出せない」
「……」

 オレは特殊な環境だったせいか、今いちピンと来ないんだけど。
 ごくごく普通な人々にとって、自分の血縁に魔法を使える人間がいるというのは、かなり許容範囲を超える事実であるらしい。
 魔法師一家なんていう環境であるならともかく、シイナはそうではなかった。普通の家にぽっと生まれた超強力な魔法力を持った人間。何をしでかすかわからないそんな子供を、喜んで育てる人間は多くないらしい。実際、力を持った子供というのは、加減なく力を暴走させることも多く、異質であることから周りと馴染めなかったり人を傷つけたりってこともままあって、扱いが難しいのだそうだ。それどころか、悪くすればその身内すら、その土地で暮らせなくなるような事件に発展することも度々あるのだと。

「っていうのは、後で聞いた白の塔の人間の話だけどな。それも、多分そういうことだろうってだけの裏付けのない話だ。でもまあそれで運よく白の塔に拾われて、それまで第二位の称号を持っていたガラック・ウエスコット・デラ・ウィザーズに引き取られて教育を受け、その後彼を押し退けて称号を奪い、次期マスターの地位を得た、と」
 多分、なんか、そこでも色々複雑な闘争なんかもあったりしそうだなあ……。聞くのが怖い気がするけど、シイナもあんまり話したくないんじゃないかな。
「言っておくが、お前が今考えてるほどグダグダした環境じゃないぞ。純然たる能力社会だから、力の強い者が上位に着くのは当然で、それは全員がわかっていることだ。ガラックだってオレの教育には惜しみなく情熱を注いでたしな。仮の親子だから、その辺の情はまるで皆無だったけど」
 ……いやいやいや。充分嫌な環境じゃないかね、それって。愛情のない親子関係なんて、あんまり理想的じゃあないだろうがよ。親子っていう関係自体が成り立ってないのかもしれないけど、それはそれで寂しいもんがあると思う訳よ、オレは。
 ケティさんの言ってたこと、わかる気がするよ。

 でもまあ、その辺のことをつついても仕方ないよな。
 本音はどうあれシイナはそれを納得して生きてきたんだって言ってるんだし、彼らの仇を取りたいとも言っていた。そう言えるのは、理想的ではないにしろ、そこで受けた恩恵のようなものだって沢山あったってことなんだろう。
 大体、そんなに最上級に理想的な環境で生きてる人間なんて、多分そうそういないよな。そんなもんだ。うん。

 唐突に、シイナがオレの額に手を伸ばしてきた。
 空いた方の手は、自分の額に当てている。
「お、お。すげえ」
 額にあった痛みが、嘘みたいに消えた。赤くなっていたシイナの額も、当てた手を外した時にはまるで元通り。オレもあれくらい赤くなってたんだろうなあ。
「これで歩くのにも支障ないだろ。話もいいが、街はもうすぐか?」
「あーうん。でも平気か? 疲れてるんじゃねーの?」
 そもそも、力のコントロールが出来なくて墜落してきたんだから、結構消耗してると思うんだけど。
「疲れてるよ。本屋で力いっぱい働いた後だしな。だから早く、街に入って休みたいんだよ」
 なるほど。一理ある。
「じゃあそろそろ行こうか」
「ああ」

 やれやれ。
 毒は食わなかったけど、ガチンコ勝負で昏倒はしましたよ、ディクさん。なんか色々と深い出来事もあったしね。
 でもとにかく、今日のうちにソルダムの工房には辿りつけそうだ。
 元気にしてるかなあ?





==椎名の呟き==
本当に、今日中に次の街に着くんですかと彼らに問いたい。
ていうか着きますけどね、次回にやっと目的地にw

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