オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.2 コーラス・ブレイド ~オレ様プレゼントの神様

2006.12.20

 仕事の帰りに、子供たちの多い新興住宅街をゆるゆると歩いていたのがまずかったらしい。

 石畳の路上で、もっさりと子供たちに囲まれてしまった。ワイワイぎゃわぎゃわ、ギュウギュウとおしくら饅頭状態で纏わりついてくる子供、こども!!
 各ご家庭からひとりふたり、三人四人と、ジョロジョロと溢れ出て来たときには戦慄が走ったよコーラスさん!!
 なんだなんだ、この騒ぎはナンだ。
「お兄ちゃん、神様のおつかいなんでしょ! その袋の中、プレゼントなんだよね!!」

 あああああ。
 すっかり忘れていた。ばかばかオレ。
 今日は年に一度の、神様の下界ご機嫌うかがいの日じゃないかあああ。

 今日はアレだぞ。一年に一度、神様が世界を創造したと言われるこの日に、地上の皆さんお誕生日おめでとうとプレゼントを引っさげてやってくるという、胡散臭い記念日じゃないか!
 しかもだ、神様ひとりじゃ下界の人々にプレゼントを配りきれないからと、無数の使いを一斉に下界に派遣するのだそうだ。何でもその使いは、目立つように赤い服を着ているのだとか。
 ……オレ今日、渋めの赤の上着羽織ってるな。単にこの上着、衝撃に強く出来てるからハンター稼業で重宝してるだけなんだけど。うう、いちいち間が悪い。
 どこの世界でも似たようなイベントがあるのかなあ。
 毎年この国の政府がささやかな記念品を各家庭にひっそりと配布しているせいで、子供たちの多くはこの日に降臨して来る神様とその使いの存在を、心から信じているらしい。
 実際のところ、神様がプレゼントなんかぶら下げて下界を散策するなんて現場にはもちろん居合わせたことがないこのオレ。というか、そんな神様を見たことがあるなんて話は、生まれてこのかた聞いたこともないっての。
 所詮人間が作った後付けの記念日だろうがよ。
 神様ってのは、みんなの心の中にいるものなんだぜ。ははははは。なんて。
 あいにくとオレは、幼少から超現実的な英才教育を受けていたせいで、いるのかいないのかわかりもしない神様の存在など、信じたことがないのだよ!
 その英才教育の内容はどんなかって? それはまた今度。

「プレゼントはなーに? その中、何が入ってるの!?」
 爛々と輝く子供たちの瞳。
「えーと……」
 この袋の中には、今日討伐した三本角ウサギの亡骸が、ぎっしりと詰まっているのですよ。
 決して口を開けないで下さいませ。

 なんて路上で往生していたら、子供たちに混ざって、大人たちまで顔を出してきた。
 よもや彼らまで、オレを神様のおつかい扱いするんじゃないだろうな?

「こらこらあなたたち、お兄さんに迷惑でしょう!」
 少し離れなさい、と、数人の保護者らしき人物たちが、オレから子供たちを引き剥がしてくれる。オレと子供たちの間に、涼しい空気が割り込んだ。ああ、助かった。
「子供たちがご迷惑をおかけしてごめんなさいね」
 ……ほ。さすがに大人たちは、盲目的に神様の使いを信じているわけではないらしい。ひと安心。神様を強く信じるこの地域に来てまだ数年、この地において家庭という空間で過ごしたことのないオレにはどうも勝手がわからない。
 最初に声をかけてきたご夫人に、軽く会釈で答えれば、記念日にうかされたような、極上の笑顔が返ってくる。
「聖なるこの日に神様のお使いのような姿でいらっしゃるんですもの。せっかくですからうちで食事でもしていってくださいな。ぜひ!」
「ああ、それならうちでも、ぜひ!」
「それじゃうちも、ぜひ!」

 …………そうでした。
 ここいらではこれもあるんでした。
 地域で大なり小なり差もあることでしょうが。この地域では、今日この日に外をほっつき歩いている人間は、容赦なくそこいらの家に引きずり込まれ、歓迎と接待をこれでもかと浴びせかけられるんだった。
 お祝いは、みんなでしたほうが楽しいんですよね、そうですよ。
「お腹もすいていらっしゃるでしょう? さあ!」
 いやね、そりゃ腹は減ってますよ。こちとらモンスター討伐の仕事の帰りですからね。でもね、だからできれば早いトコ中央ギルドに帰還して、ゆっくりと羽を伸ばしたいと思ったりなんかして……。
「さあ、さあ、さあ!」
 ううう、お断りできる雰囲気じゃない。
 まあねえ、断わる理由もないけどさあ。タダ飯にありつけるわけだし?
 地域全体を上げて祝いムードの華やかさを、オレの付き合いの悪さでぶち壊したくはないんだけどね、確かに。

 もうこうなると、お言葉に甘えて見知らぬおうちにお邪魔するしかなさそうだ。
 仕事の後のゆったり静かなひとときは、今日は諦めるしかないんだろう。
 潔さも時には必要だぞ、コーラスよ……。


 結局夜が明けるまで、これでもかと美味い飯を食わされ(後半味がよくわからなかった)、翌日も祝いムードのあおりを食らってあちこちに引っ張り込まれて、いよいよ意識が浮遊しだした頃、ようやくオレは解放された。
 まさか住宅街ひとつを通り抜けるのに、丸一日以上を費やしてしまうとは……。
 まあ、それは別にいい。
 過ぎてしまえば楽しい時間だったと、表現できなくもない。
 こうなって、今心から心配していることがあるとすれば、ただひとつだ。
 肩に担いだこの袋。
 口を閉じれば密閉状態になるこの袋の中で、死んだら速攻腐り始める三本角ウサギの亡骸が、一体どんな素敵状態になっているのか。
 それだけが、本当に心配だ。というか恐怖だ。


 中央に帰って、この袋。マジで、心底。
 ……開けたくないなあ……。





==椎名の呟き==
えーと、ちょっと早いですけど、クリスマスネタって感じで。
クリスマスという名称ではないですけど、ちょっとやってみたくて。

★『コーラス・ブレイド』最初から読みたい方はこちら★


テーマ : 自作連載小説

ジャンル : 小説・文学

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