オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

スポンサーサイト

--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

咎狗の血 源アキSS 【 一期一会 】

2010.10.27
勢いのあるうちに書いておこうと二作目。
咎狗って、二次創作的に色々妄想しやすいのね。
まあトシマで一緒になっちゃってからエンディングに至るまで、大抵5年くらい幅があるし(笑)

今回のはいつくらいの話なんだろ?
内戦よりは後、エンディングより少しだけ前、かな? まあその辺で。
春のお話です。
アキラ視点で、まあ何てことはない原点回帰? ていうかいつもそればかり?
これという題材を決めつつ、毎回同じような主題と展開に行っちゃうのは何とかならんのかね、自分。
バリエーションが欲しいわ。
(数多くこなせないので、ひとつに色々詰め込もうとするせい)


BL二次小説、そしてネタばれにも引っかかるであろう、なので下げます。
このジャンルのダメな方はご注意を!

※SS自体は18禁ではないです。

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
【 一期一会 】 -咎狗 源アキSS



 一見廃ビルにも見えるような、壁に亀裂や年季の入った汚れが散在する小さな貸しビルの地下に、その店はある。

 店へと続く下りの階段の前に立ち、アキラは微かなため息を吐いた。

 階段を下りた突き当たりの重そうな扉に「BAR-BAR」と書かれた酒屋。バーなのか理髪店なのかと問い質したくなるような名称だ。


 狭い階段を下りて、軽く軋むその扉に手をかけて引いてみれば、仄暗い通路よりも、さらに暗く見える明かりの充満する狭い店内が見渡せる。カウンターとテーブル席で20人も入れば一杯になってしまうような、決して大きくはない店だ。入っている客も、中壮年の男性客が数人。アキラのような若い客は皆無だった。
 テーブル席から空のグラスを引き上げつつ近寄ってきた、スタッフらしき人物を片手を軽く振って制し、アキラは店の奥に目を向けた。


「源泉」
 奥のカウンターに座る男に聞こえるように、心持ち大きく声をかける。
 その声に、カウンターのマスターの片眉が僅かに上がり、無造作に置かれたショットグラスに手がかかった。
「おう」
 振り返った源泉は、アキラの姿を視界に捕らえると、片手を挙げて応えた。
 源泉の隣に席をとったアキラの前に、グラスに注がれたウィスキーが静かに置かれる。アキラは以前に一度だけこの店に来たことがあるが、顔を憶えられているというよりは、この店には酒はこれしかないから、自動的にこれが出される。この他には、つまみになるものが、日替わりでそれこそ申し訳程度にあるだけだ。
 目の前に置かれたグラスには、ほんの少し舐める程度に口をつけて、アキラは源泉を睨みつけた。
「こんなところに寄り道して財布忘れたって、馬鹿だろアンタ」
「まあそう言うなよ。助かったって」
 パンパンとアキラの肩を叩く源泉は、それほど酔っているという訳ではなさそうだが上機嫌に見える。対するアキラは、源泉の使いで出版社に出向いているときに、別件の仕事で朝から出ていたはずの源泉から「金がない」の連絡を受け、家にも帰らずにここへと向かってきたのだから、すっかり上機嫌とは言いがたい。
 源泉は短くなった煙草をくわえたままニヤつき、カウンターテーブルを指差す。
「今日は塩茹でのピーナッツもあるってゆーしさ。アキラに食わせたいなーとも思ったし、丁度いいだろ」
 食ったことないだろ? と問う源泉に頷きながら、憮然とそれをつまみ、口に入れる。しっかりした素材を使っているらしく、食には無頓着なアキラでも、口の中に広がる香ばしい塩味のそれには微かに表情を変えた。
「うまいだろ?」
「……ん」
 ゆっくりと咀嚼しながら、こくりと頷く。
 そんなアキラの前に、コトリと小さな器が置かれた。黄味がかったオレンジ色の果物。
「びわのコンポートだ。最近はよく手に入るんだよ」
 無表情のまま、カウンターの内側のマスターがアキラへとそれを指し示した。
「なんだこりゃ? おいおいマスター、俺にはこんなサービスなかったぞ?」
「源泉さんにサービスしても、面白くもおかしくもないですから」
 冗談とも本気とも取れるマスターの言葉に、悪戯っぽく眉を寄せた源泉が唇の端を吊り上げる。
「さようですか。あーあ、べっぴんは得だよなぁ」
「べっぴんって言うな」
「へいへい」
 煙草を灰皿に押し付けた源泉は、フォークでびわをつつくアキラを、邪魔するでもなく眺める。先刻はノリで毒づいたが、その目許は幾分か楽しそうに細められていた。
 普段、食が細いどころか、食事というものにほとんど興味を示さないアキラが物を口に入れる姿を見るのは、それだけで源泉を安心させる。アキラも一応源泉の前ではきちんと食事を摂るけれど、最近になってようやく、好みのものを美味いと感じるようになってきた。その変化を見るのが、源泉も楽しいし嬉しいのだろう。


「それ食ったら、そろそろ出るか。あんまり遅くなってもアレだしな」
「……ああ」
 ごくんと口の中の物を飲み込んだ後で、アキラは頷く。もともと金を払いに来ただけだ。自分の懐に入れていた財布を源泉に差し出した。
「すまんな」
 悪びれなく笑う源泉に、アキラは軽いため息で応えた。





 季節は春とはいえ、夜の空気はまだ冷え込む。
 震えるほどではない、涼しい風を身体に受け止めながら、ふたり並んで夜の道を歩く。
「アキラ、ほら」
 不意に源泉が、前方を指差した。
 闇の向こうにある何かを指しているようだが、暗がりでよく見えない。
 数歩歩いたところで、突如その色は浮かび上がった。

 夜の空気に揺れる、白。

「……桜……?」
 もとは公園か何かであったろう空き地に、桜の大木が一本だけあった。
 結構な樹齢を数えるらしく、下方についている花ですら、近づいてみれば見上げるほどに高い。
「ソメイヨシノだ。この辺じゃ桜なんて、これ一本しかないんだよなぁ」
 タン、と源泉がその大きな木の幹を叩く。
 満開ではないが、八分ほど花を開くそれは、闇色の空間の中にあって、そこだけが白い輝きを帯びているかのようだ。本当は少し薄桃がかかった色なのだろうが、闇の中では純白かと見まごうほどに白い。
「……綺麗だな」
 ぼそりと呟いて、アキラは花に深く見入った。
 大戦後激減したせいもあって、桜の花もあちこちで当たり前に見るということは無くなった。その後の内戦が終結してから植樹なども進められてはいたから、それなりに増えてはいるが、これほどに立派なものは今では数少ない。
 以前源泉と行った土地で桜並木を見た。そのときも見事だと思ったが、久しぶりに見る大木は、たとえ一本でも誇らしく、雄々しくアキラの目に映る。
「何度ぶっ壊されかけても、こうやって生き抜いて咲き誇る。どの世界にも強いヤツはいるもんだ」
 ニッと嬉しそうに笑う源泉が、アキラの首根っこを掴むようにグイと引き寄せた。
「おい、ちょっと」
 途端に眉間にしわを寄せるアキラも相変わらずだが、源泉も当然動じない。
「なんだよ。寒くないか?」
「別に」
 確かに少々冷え込むが、誰が通るかわからない外でベッタリと引っ付きたいほどではない。たとえそれが雪の日でも、ご免被りたいアキラだったが。
「まあそう言うなよ。オイチャンはちーと寒いぞー」
 源泉は悪びれもせずさらにその肩を引き寄せ、後ろから抱きすくめる。年寄り、と毒づきたいアキラだったが、何を言っても無駄だろうとも思う。
 アキラの首に腕を回したまま、源泉は片方の手で、受け取ったままになっていた財布をアキラの上着の内ポケットにストンと差し入れた。

「オッサン」

 視線は合わせず桜の木を見上げたまま、アキラは呼びかける。源泉はそんなアキラの顔を斜め上から覗き込んだようだった。
「んー?」
 暢気そうな声が、アキラの耳を掠める。
「財布忘れたなんて、嘘だろ」
 ピクリと、アキラの首に触れた腕が微かに動く。図星だ、と思った。
「いやぁ、別に嘘なんかついちゃいないぞ?」
 欠片ほどの動揺を見せるその声に、アキラは無言でチラリと視線を送った。ほんの少しだけ、口許が笑みの形に変わるが、源泉からその微かな変化が見えているだろうか。
 源泉が懐の財布の存在も確認しないまま一日を過ごし、飲み屋にまで足を運ぶという状況が、アキラにとっては考えられないことだ。
 源泉の上着を調べ上げてもいいが、別にそんなことをしたい訳じゃない。

 この辺で桜が咲いているのはここだけだ、と源泉は言った。だから、今偶然発見したわけではないだろう。けれど、少し奥まっているこの通りは、今の二人の住処では、先ほどのバーへの行き来くらいでしか使わない。源泉に教えられなければ、用事が無ければバーへ足を運ばないアキラは桜の存在を知らないままだったろう。
 くだらない用事で出先のタイミングで呼び出したのは、多分、帰り道でアキラを驚かせたかったからだ。

「……確かに、強い。誰に必要とされている訳じゃなくても、当たり前に花をつける」
「アキラ」
 けれどこの花を見上げた多くの人が、ここでこの美しいものを目にしたことを喜ぶだろう。ここに桜の木があって良かったと思うだろう。前にこの花を見た人は、きっとまた期待して眺めに来る。花の蜜や葉を求めて、他の生物もこの木を目指す。それでも、誰かから望まれようがそうでなかろうが、桜は咲ける限り花を咲かせる。花を咲かせ、葉を茂らせ、死なない限り、ただ生きる。
 人と同じだ。そしてそれ以上に、理屈に縛られない。
 生きている意味など問わない。けれど、誰かが、何かが外側から意味を見出す。そうしてこの独りでない世界を、“生きる”。
 その姿を、アキラは美しいと感じた。

「まあ、な」
 源泉はばつが悪そうにガリガリと後ろ頭を掻いた。
「俺たちは、来年の今頃にはここにいない。この桜も、二度と見ることは無いかもしれんしな。せっかくの雄姿だ。眺めておいて損はないだろ」
 ひとところに定住しない生活だからこそ、源泉はその場所で、様々なものを発見し、知ろうとする。全てとはいかなくても、手を伸ばし、足を運んで届く範囲だけでも。職業柄知識欲は旺盛で、見たもの感じたものを己の中に堆積させつつ、それをアキラにも知らしめる。
 この世界にある沢山のものを、アキラに見せたいという願いが、彼にはある。
 良いことも悪いことも、嬉しいも悲しいも苦しいも楽しいも、記事にして人々に知らせるよりも、もっと多くのことを。
 二度とはない瞬間を、ふたりで一緒に。
 アキラも十分にそのことを知っていた。

 ほんの数秒、アキラは目を閉じた。瞼の裏の、白い花の残像。

 ── 二度と無いどの瞬間でも、アンタが傍にいることだけは、変わらない。

 視界を閉ざしていてもわかる、背中を覆う体温と源泉の匂い。
 当たり前に与えられるそれらが、ほんの偶然で発見する奇跡のような何かよりも、はるかに得がたいものであることを。
 同じように、自分が源泉に与えられるものは何かと模索するその心を。

 源泉には、言わないけれど。

 きっとわかっているだろうななどとも考えつつ、アキラは斜め後ろの顔を見上げた。
「そろそろ帰ろう。遅くなる」
「ん、そうか?」
 アキラの肩を捕まえていた両腕が、ふわりと緩んだ。
 離れる体温をそこに残すかのように、後ろ手に源泉の腰のあたりをひとつ撫でて、アキラは腕の中から抜け出す。
 一瞬、源泉の身体が硬直したのがわかった。
「昼間にまた来てみたい。多分違って見えるだろうから」
 そう言い置いて歩き出すと、背後から「そうだな」と笑う声が聞こえた。
「まったくお前さんは、オイチャンをタラすのが上手いよなぁ」
 背後で源泉がなおも呟いたが、聞こえないふりをする。こんなところでこんな時間に言葉尻の掴み合いをしてケンカになっても、近所迷惑なだけだ。


「アキラ」
 大きな歩幅で追いついてきた源泉が、何かをにゅっとアキラの胸元に差し出した。
 いくつかの花をつけた、30cmほどしかない、細い桜の枝だ。
「さっきの場所に落ちてた。どうせ置いといても枯れるだけだからな」
 ほれ、と揺らされて、勢いでそれを受け取る。折れて落ちたばかりなのか、いくつかの小さな花は、まだ瑞々しく咲き誇っていた。ならば家に帰ったら空き缶にでも挿してみようかと、クルリと弄んでみてから、急に気恥ずかしくなって、アキラは枝を持つ片手を下ろして歩を進める。
 そんなアキラの内心を知ってか知らずか、源泉はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべてアキラを見た。
「アキラさんには桜の花も似合うねぇ~」
 ── まったく。
 余計な一言でアキラの機嫌を損ねることに関しては、やられている本人の折り紙つきだ。
「アンタ、今頃酔いがまわってるのかよ」
「いやいや」
 妙な根回しで一応の目的を達成できて、源泉は上機嫌になっていた。だからこんな軽口に、自分だけが目くじらを立てても仕方がないし、馬鹿らしい。
 アキラは何度目かのため息を吐いて、いつものことだと遣り過した。


 二度とは来ない一瞬を、“いつものこと”で埋め尽くし、それを日常と呼ぶ。そういう源泉とのやり取りを、自分は存外に大切にしているのだろうから。

 枝を握る掌の先では、二度はない出会いの名残がゆらゆらと揺れていた。





=====================
冒頭でアキラが「オッサン」と声をかけていたら、この店の中にいるおじさん達が全員振り返ってアキラさん硬直確定。
アキラに「源泉」と言わせたいがために考えたお話だとか。
(冒頭で終わってますがな)
 

コメント
コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

インフォメーション

Twitter

管理人へのメールフォーム

pixiv
pixivは二次創作腐向け小説と絵。ジャンルは雑多。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2017年09月 | 10月
 日  月  火  水  木  金  土
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


訪問者数
ラグナロクTV

このブログ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
ブログ全記事表示
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。