オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.42 コーラス・ブレイド ~ついでの昔話

2007.02.06

 結局シイナは総督室でつぶれてしまった。
 背負って歩くオレの肩に盛大に胃の中身をぶちまけるというオマケつきだ。
 きっちり貸しにしておいてやりたいけど、この男のことだから、どうせそう上手くはいかないんだろうさ。はあ。
 それでも家に帰って風呂を沸かしてたら、しっかり乗り込んできて一番風呂を乗っ取った挙句に、綺麗さっぱり気分良くベッドを占領して高いびきをかましてくれるあたり、その神経は太いなんてモンじゃない。

「どーする、ソルダム? とりあえず飲み直すか?」
 オレが酒の瓶を棚から取り出すと、ソルダムはげんなりと首を振る。
「お前、どれだけ飲むんだよ……。オレはもういいよ。シイナが持ってきた茶でも入れるから」
 そう言ってどこからともなく取り出したのは、何故かお茶用のポットだ。うわ、ちゃっかりギルドの事務所から戴いてきたのか、もしかして。
「事務のおねーさん、頼んだら喜んでこれくれたぞ」
 そりゃそうでしょうよ。
「あれだけ気に入られてりゃね」
「いや、ちゃんとお前にって」
「そうなんだ?」
 それは意外だ。
「ああ見えて、心配してるみたいだったよ。お前のこと」
「へえ……初耳」
 まあね。あれでもあの人、オレの正体知ってる数少ない人間でもあるし。普段はもちろん、そんなこと表面上に出したりしないけどさ。

 湯を沸かしてちゃんと入れたお茶と果実酒という、変な組み合わせの飲み物をテーブルに並べて、オレたちは飲みなおした。
「でもまあ良かったじゃん。あの時はそこしかアテがなくてハンターギルドに身を寄せたんだろうけど、肌に合ってるみたいでさ」
「まあね~」
 もともとオレは身体ひとつになったら剣しか取り得のない人間だし。大雑把で気さくな連中が多いから、それなりに親しい仲間も増えたし。
「オレのところに来たばかりの頃は、お前けっこう沈んでること多かったじゃん。オレだってそこそこ心配してたんだぜ」
「うそだァ。オレ、あの頃も今も、そう変わらないと思うけど?」
 ソルダム、盛大なため息をつく。
「表面上はな。お前さん、オレの『目』を忘れたのか? 他はごまかせても、オレはそうはいかないよ。ていうか当然だと思うぜ? あの状況を考えれば」
 そりゃまあ、ねえ。
 何もかも、だもんなあ。
 全部を失って、ただのひとつも守ることができずに、ひとり逃げ延びたオレですから。自責も後悔も何もかも、俺の中に無かった訳じゃないけどさ。でも出来得る限り、前向きにと考えてたつもりなんだけどなあ。
「お前がオレのところにいた半年間、オレはお前のリハビリ期間のつもりでいたけどな」
 それには、ほんっとに感謝してます。
 問わず言わずでオレから出る言葉だけに耳を傾けて、よく見捨てずに面倒見てくれたよ、実際。
「面倒見のいいソルダムさんに、お茶のお代わりをお持ちしますよ」
 なーんかいたたまれなくなってオレが立ち上がると、ソルダムはケラケラと笑い声をたてた。
「茶ッ葉ばらまくなよ」
「オレはそんなにドジっ子じゃありませーん」
「まあなー」
 ソルダムはさも愉快そうに、頬杖をついたままで笑う。
「それは知ってるけど、お前はシイナと一緒に何かをさせると、想像外のことをやらかしてくれるからなあ。今はひとりだから、まあOK?」
 実績があるだけに、何も言い返せない。香草燃やしたりアザラシ連れ帰ったりしたけどさあ、確かに。
「すいませんねー。なんでだかなあ。別にドジっ子コンビになるつもりなんてないんだけど」
「……楽しいからだよ」
「は?」
 茶を入れなおしてテーブルに戻ると、入れたてのそれをひとくち飲みこんでから、ソルダムはまた口を開いた。
「一緒にいて楽しいからさ。そういう風になるんだよ。遠慮も何もなしに、それでも一緒にいられる存在ってのは、貴重なんだぜ」
 そういうものなんだろうか。
 ソルダムと出会って3年、シイナとなんてまだ数日、オレは他人が自分にとってどういう存在かなんて、具体的に考えようとなんてしたことがないけど。
 友人、とかいう言葉が一番近いのかもしれないけど、シイナに関して言えば、そういう言葉もまだ当てはめるような時間の余裕は無かったんだけどな。ソルダムはソルダム、シイナはシイナとしてそこにいるってだけで、それは確かに安易に気を許してしまった存在で、ディク先生にしてもミリネにしてもそうなのかもしれないけど、信頼だけが先に来てて、それがオレにとってどんな存在なのかなんて、意識的に考えるなんて、これまでこれっぽっちもなかった。
「大事なものが増えるってのは、弱みにもなるけどな。そういう弱みってのは、あっていいものだとオレは思うよ。時にそれは、何にも負けない強さにもなる」
 不思議なもんだね。
 大切にしていたもの、全部キレイさっぱり失って、それでもまだ、新しい何かが心に宿るものなのかね。何にもなければ、再び失うこともないのにな。まあもっともオレは、いつまでも過去に引きずられるつもりもさらさら無かったんだけど。
 そんなのは、オレが生きてく上で許されることじゃないって思うし、何よりも、そこに置いていかなければいけないものを抱えたままじゃ、いつまでも先には進めない。いつでもそう思ってるつもりだけど、本当に気付かないうちに、オレが進むために力をくれる存在ってのは、自然と近くに来てくれるものなんだな。
 そんなことを呟いてみると、ソルダムはその笑顔を苦笑に変えた。
「お前はてんで自分をわかってないね……」
 なんだよ。
「自然にじゃなくて、それはお前が……まあいいや」
「言いかけてやめるなよ」
 含んだ言い方はフェアじゃないっての。
 けどソルダムは、ただ笑うだけでそれ以上を言おうとしない。こうなると、絶対にそれ以上言わないもんな、こいつ。
どーせオレはもの分かりが悪いですよーだ。





==椎名の呟き==
ここの風呂も湯船つきが標準です。単に椎名の趣味です。
しかし飲みネタでどこまで引っ張るつもりか。いや、別にひっぱりたくてやってるわけでは決してないんですけど……。本来クドいのが、椎名の作風でして、はい(殴)。
ところで、次回は変にシリアスというか、リリカル展開が予想されます。コメディ好きの方は、お覚悟の程を!!
(リリカルてなんだ。ていうか別に言うほどのことは無い)

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