オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

スポンサーサイト

--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Vol.49 コーラス・ブレイド ~さくせん:いのちだいじに

2007.02.16

 一瞬でエルベルンの懐まで飛び込んだシイナを、大慌てで追った。
 とても魔法師とは思えない戦闘スタイルだな、しかし。
 でもエルベルンの攻撃もサラサラと避けていたシイナのことを考えると、もしかして魔法師に魔法攻撃っていうの、あまり有効じゃないのかもしれない。いろいろ知り尽くしてるだろうしね。
 いや、そうじゃなくて。
「シイナやめろ! 早まるな!!」
 オレの言葉には耳を貸さず、シイナはエルベルンの間合いに入って、槍でなぎ払う。エルベルンは後ろに跳び退ったけど、妙な感じで地に足を着いた。なんか、後ろに壁でもあるみたいな感じ?
 あ、もしかして、ミリネの結界か何かがあるのかな。だとすると、それ以上は後退できないはずだけど、シイナの背後にはオレがいるし、側方にはソルダム、ミリネ、サウロがそれぞれ構えている。
「シイナ、それお前の身体だろうが!!」
「だからなんだ!!」
 シイナはエルベルンを見つめたまま、こっちを振り返ることなく怒鳴る。
「そうだよ、オレの身体だ!! だからこそ、これ以上その身体を使って破壊殺戮を繰り返されるのを黙って見てられるか!? どうせもう戻ってこない抜け殻相手に躊躇してられるか!!」
 そうだけど。それはそうかもしれないけど。
「だけど待て!! 戻れないかどうかわからないじゃないか!! もし戻れる方法が見つかったとしたって、お前の身体そのものがなかったら、どうしようもないじゃん!!」
「そんな理想論を練り上げてる場合じゃないだろうが!! こいつが弱ってる今、叩くしかねえんだよ!!」
 弱ってるって。やっぱりそうなのか?
「そうだな。いくら優秀な魔法師の身体を使っているとはいえ、無駄に魔法力を使いすぎだ。召喚師を探してあれだけ全国各地を一息に魔法で行き来していれば、力も無くなるというものだな、エルベルン」
「……黙れ!!」
 叫ぶエルベルンは、けれどそこを動こうとはしない。息も大分上がってきてるところを見ると、シイナたちの言ってることが正しいんだろうな。
「だからお前もいちいちためらうな!!」
 だけど!
「けどシイナ、ケティさんが!! ケティさんは、その身体の中で生きてるんだよ!!」
 シイナがその身体の中に居にくくなるだろうと思ってたけど。でも出て行く方法なんてないんだからと思って黙ってたけど。
 どうしようもなくて、言ってしまった。
「……何?」
 シイナが振り返る。
「ケティさんは死んでない!! オレは彼女と話したんだから!! だからもし、シイナがもとの身体に戻れれば、ケティさんだって……」
 そううまく行くかどうかはわからないけど。
 でも可能性はゼロじゃないし、ケティさんだってそれを望んでたんだから。自分のことはともかくって言ってたけど、シイナのことだけはって。
「バカな、ケティが……」

 目を見開くシイナの首元に、エルベルンの腕が背後から素早く回った。
「……!!」
 しまった。シイナに隙を作らせた。
 シイナの身体を盾にするように、自分の身体の真正面でその首を締め上げる。
「エルベルン!!」
 剣を構えて間合いを詰めたけど、でもそれを振るう隙がない。エルベルンよりも先に、シイナの胸元に届きそうな距離で、オレの剣の切先は動きを止めてしまった。あとほんの少しで、エルベルンを捕らえられる距離なのに。
「動くな!! まだ女の身体ひとり分くらい致命傷を負わせる余力は残っているぞ!!」
 くそ。言われなくても動けない。羽交締めにされているシイナの身体を避けては剣を振るえない。もっとも、シイナという障害物が無かったとしても、オレには剣を振る勇気がないかもしれないけど。
 だけど、エルベルン。
 それでお前はどうするつもりなんだ。ミリネの結界からは人間のお前じゃ脱出できないだろうに、ここからどうやって、突破口を開くつもりだ? オレたちを全滅させる力はないし、シイナを連れて逃げるなんて、できるわけないだろうし。

「……わかった」

 シイナがやれやれと言うように、深くため息をついて、身体の力を抜いた。トントンと、自分の首に絡まるエルベルンの腕を叩いて、まるで「少しは緩めろ」とでもいうように触れる。
「やっぱりオレだって命は惜しいしな。ケティが生きているというなら尚更だ。どっちの身体も粗末には出来ない」
 シイナの諦めたような言葉に、エルベルンは一瞬目を見開いた後で、唇を引き結んだ。それは少しだけ、笑みの形になっている。
 本当に、シイナの本来の姿とはいえ、憎たらしい顔だ。
 シイナは、自分の胸に届きそうなオレの剣を見つめた後で、オレの顔に視線を向けた。
「コーラス、そのまま。動くなよ。絶対に」
 そりゃ動けないよ。動けないけど、じゃあどうすればいいんだ。
「動かすなよ。1ミリたりとも」
 念を押すように繰り返したシイナの身体が、一瞬ぶれて見えた。
 一瞬の視界のぶれに眉間にしわを寄せてしまった時には、シイナの顔が、前髪が触れ合うくらいの至近距離に迫ってきていた。

「……えッ!?」

 シイナの顔がここにあるっていうのは。
 それだけ、身体が至近距離にあるっていうのは。

 モンスターも一振りで両断する精霊石の剣が人の身体を貫くのに、抵抗を感じることは殆どないだろう。それだけ良く切れる剣だ。
 オレが長年愛用してきた自慢の剣だし。
 その剣が。
 シイナの身体と、背後のエルベルンの身体を真っ直ぐに貫いていた。
「……な」
 どういうことだ。
 どういうことだ、これは。
「……悪い。これしか方法が無かった。高速移動以外の魔法は感知されるだろうから」
 シイナ、そうじゃなくて。
「おのれ……貴様!!」
 シイナの背後で歯噛みするエルベルンは、それでもそこから逃れることはできない。絞めたいのか引き剥がしたいのかわからない、シイナの首に絡まったままの腕は、シイナの肩に爪を食い込ませたまま、ただ震える。
「無理だよ。こうなった今、お前の余力じゃオレの束縛からは逃れられない。温存してたんだぜ。これでも」
「おのれ……おのれ!!」

 シイナとエルベルンの身体から力が抜けて、二人分の体重がオレに圧し掛かってきた。その重量に耐え切れなくて、オレもその場に背中から倒れこんだ。剣から離すことができないオレの手に、ふたり分の血が流れてくるのを感じる。
「ゆるさ……」
 言いかけて意識を失ったエルベルンの体重を背中に受けて、シイナは深く息をついた。
「まあ、そりゃそうだよなあ。ためらうのも無理はない。オレがお前の立場だったとしても、やっぱり同じにしかできなかっただろうな」

 論点は、そこじゃねーだろ!!

「な、なんてことしてんだよ、シイナ!!」
 なんでこんなことになってるんだ!!
「だから仕方なかったって言ってるだろ……。オレがタメなしで使えるのなんて、この方法しかなかったんだから。せっかく油断させたって、察知されたら元も子もないだろ」
 だからそうじゃねえって言ってんだろ!!
 なんでこんな。
 もっと他に方法はあっただろ。なかったか?
 本当にこれしか、方法はなかったか?
 もう、わからない。
「精霊石!! ダメだ、シイナを殺すな!! オレの剣なんだから、言うこと聞けよ!!」
 これまで一度も話しかけたことなんてない精霊石に、ただ怒鳴りつける。
 意志を持つ無機物、なんて。
 だからってオレのいうことを何でも聞く、生きてる石って意味じゃないのに。
 でももう、何が何だかわからない。

 シイナの身体からも、一切の力が抜けた。
「バカシイナ!! 寝るな!! 寝たら死ぬぞ!!」
 この期に及んで、何を言ってるんだろうね、オレは。

「シイナ!!」
「シイナさん……!!」
 ソルダムの声と、ミリネの初めての叫び声を、オレはやけに遠くから聞いてるような気がした。





==椎名の呟き==
あーもーシリアスですか、そうでもないですか。
魔法の定義が面倒くさくて大変大変。<お前が言うな

★『コーラス・ブレイド』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



テーマ : 自作連載小説

ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

インフォメーション

Twitter

管理人へのメールフォーム

pixiv
pixivは二次創作腐向け小説と絵。ジャンルは雑多。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2017年09月 | 10月
 日  月  火  水  木  金  土
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


訪問者数
ラグナロクTV

このブログ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
ブログ全記事表示
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。