オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.50 コーラス・ブレイド ~多分女は強い

2007.02.18

 ふたり分の体重に圧し掛かられて、オレは身体の自由を奪われたままだ。
 実際、動けないことは無いのかもしれないけど、どうやったら身体が動いてくれるのか思い出せない。
 オレの剣で貫かれたままのふたりがどうなっているのか。
 こんなところで仰向けになって呆けてる場合じゃないだろう、と頭の中だけで言葉が形成されるけど、どうすればいいのかわからない。
 そうだよ。シイナの状態を、確認しなきゃならないだろうが、オレ。
 視界の端でソルダムが走り出したのを確認したのと同時に、手元に妙な違和感を覚える。

 剣を握ったままの手が、わずかな動きを感じた。

 シイナの上に乗りかかっていたエルベルンの身体が、微かに、動いた?
 まさか。
「……グッ……」
 そこから漏れる声。
 その気配を察して、ソルダムも驚いて足を止めた。
 そんな。
 シイナが、身体を張ってもダメなのか。
 無傷のままのオレが何とかしなきゃと思うのに、まったく身体が動かない。第一、今もし妙な動きをしたら、エルベルンの下にあるシイナの身体の傷が、もっと酷くなる。
 目を開けないシイナの身体を置いて、エルベルンの身体だけが、少しずつ力を込めて腹に刺さった剣を抜こうとしてる。
 どれだけの気力なんだ、それ。身体を貫通した刃物を自分で抜くなんて、そうでなくとも難しいのに、刺さっているのは身体のほぼ中央で、場合によっては致命傷なのに。
「……」
 ぎっちりと目を閉じたまま眉間にしわを寄せるエルベルンを、オレはただ見ているしかできない。
 ソルダムとサウロがジリ、と動きを見せたところで、エルベルンから言葉が漏れた。

「……待て」

 えっ?
 その言葉と同時に、エルベルンの身体から、完全に剣が抜けた。
 その傷口からほとんど新たな出血がないのは、治癒魔法で傷をふさぎながら剣を抜いていたからか。
 荒い息をつきながら、仰向けになったままのオレの上で、それでもまだ手をついたまままともに動けない様子のエルベルンが、ゆっくりと瞼を押し開いた。

 真上からオレを見下ろすその瞳は、さっきまでの獲物を睨むような灰緑のものではなく。
 深く澄んだ湖水のような、エメラルド。

「……コーラス」

 今誰に呼びかけられたのか。
 頭で考えるよりも先に、感覚が察知する。
 この呼びかけを、オレはこれまで何度も耳にしてきたんだ。
 けど、そんなまさか。
「……シイナ?」
 オレの呼びかけに、目を細める金髪碧眼。まさか、本当に。
「シイナ!?」
「待てコーラス、動くな」
 瞬間飛び起きかけたオレの身体を、言葉で押し留める。
「ケティの身体を、何とかしないと……」
「あ、そうか……って、そんな場合じゃないってシイナ!! 自分の傷が先だろ!!」
「私が」
 うわ!
 気配を感じさせずに、オレの真横にミリネがいた。
 力をこめているのをまったく感じさせずに、ミリネが少しずつ目を閉じたままの赤毛の少女の身体を剣から引き抜く。
 物凄く、力持ちだったんだな、キミ。
 完全に身体が引き抜けた拍子に、剣はガラリと硬い音を立てて地に転がった。さっきまでその柄を握っていたオレの手は、完全に麻痺している。
 その身体からの出血もほとんど止まっていた。ミリネが治癒させてくれたんだろう。

「お、お前、ホントにシイナなのか」
 ついさっきまではエルベルンと認識していた金の髪の男を凝視する。
「他の誰かに見えるか?」
 だって、オレがこれまで知っていたシイナは赤い髪の小柄な少女で。気の強そうな大きな栗色の瞳で。もちろん声だってまったく違って。
 でもなぜか、目の前の男がシイナであると、オレは確かに認識していた。
 なんていうか、そこから感じるオーラが違うというか。
 ディク先生の時とはまったくケースが違うけど、やっぱり人は見た目じゃないらしい。
「戻った、のか? なんで? どうやって?」
 ずっと自分の腹を押さえたままのシイナが、深く息をつきながら首を振る。さすがにパッと傷をふさぐことは出来ないのか。
「わからん……でも多分」

 シイナがそう言いかけた瞬間、その場に横たわったままだったケティさんの身体が跳ね起きた。
「!!?」
 一瞬で、彼女の身体が飛び退る。
「な……」
 全員の視線を釘付けにした状態で、その栗色の瞳が歪められた。
 これまでシイナの声として認識していた高い声が、まったく違う人間の言葉を紡ぎだす。でもそれは、以前に聞いたケティさんのものじゃない。
「許さんぞ……貴様ら」
 まさか。
「エルベルン!?」
 どうなってるんだ、一体!?
 エルベルンの魂が、ケティさんの身体に? なんでだ!?
「私は貴様らなんぞに倒されんぞ……いずれ目に物見せてくれる!!」
 苦しそうに顔を歪めたエルベルンの身体が、スウッと宙に浮いた。
 逃げるつもりか。
 結界を解いていたらしいミリネが、慌てて向き直る。
「待て!! 貴様、ケティの身体を……!!」
 瞬間立ち上がりかけたシイナの身体を、今度はオレが押し留めた。
「無理だシイナ!! 今のお前の身体じゃ!!」
「けどな!!」
「今闘っても、ケティさんの身体を傷つけるだけだって!!」
 オレの言葉に、シイナの身体がピタリと止まる。
 お前、自分の時もそれくらい素直に出来なかったか。
「ミリネ、いいよ。結界は張りなおさなくていい」
 ミリネは状況を正確に判断していたのか、俺の言葉にただ頷く。次の瞬間に、エルベルンの拠り所となったケティさんの身体が、その場から消えた。
 正確には高速移動なんだろうけど。
 もう、捨て台詞を残す余裕さえも残っていなかっただろうな、あの様子じゃ。
「クソ……ッ!!」
 シイナは悔しそうにエルベルンの消えた空を見つめる。
「あいつがどこに行くかはもうわかってるんだし。あの様子じゃすぐには動けないだろ」
「けど、ケティが」
「シイナがあの身体にいた時だって、ケティさんは生きてたんだよ。今だってまだ生きてるかもしれない。だったら無闇に傷つけるのはまずいじゃん」
 シイナが、諦めたようにため息をついてその場に座り込んだ。
「ケティが生きてるってのは本当だったんだな……」
 人の言葉を疑ってたのかよ、お前は。
「半信半疑だったオレは、生きてるかもしれないケティの身体さえも犠牲にして、エルベルンを倒そうとしたのにな……オレを元の身体に押し出す、ケティの力を、感じた」
 え、そうなのか。
 ケティさん、実は凄い力持ってたりする?
「ていうか、そもそも、どうしてこんなことになってるんだ? あのままふたりとも死んでもおかしくない状況だったのに、なんで」
 こんな、そっくり魂を入れ替えるような状況に。

「そのケティとかいう女と、モーラのせいだな」

 サウロが急に口を開いた。
「え? なんだって?」
 ケティさんと、モーラ? なぜその組み合わせ?
「やれやれ……エルフと人間はまったく格の違うものだが、どちらの種族も、女はタフにできていると見える。心がな」
 言っている意味がわかりません。
「どういうことだ?」
「フン」
 訳がわからないオーラ全開のオレの言葉にサウロは鼻を鳴らしたけど、どうやら他人に気を遣うというスキルを手に入れたらしい。
「とにかくまず、その小僧の傷を治せ。大体の話の筋は繋がってきたからな。必要なら、その後で聞かせてやる」
 そうだ。わからないことが沢山ある。
 エルベルンとサウロのやり取りや、今起こった魂の交換のことも。

 でもそうだよな、まずはシイナの腹の傷を治さなきゃだよな。
 後のことは、それからだ。





==椎名の呟き==
この一週間の更新ペースが、トロいですね。ごめんなさーい。
ちょっと仕事でグダグダ、ヒットポイントが激減……ううう、まともに出勤する人雇用してくれないかな。マジで。
いや、愚痴ってる場合じゃないですって。安定したペースに戻れるように、頑張りますね~(ん、別に身体を壊すほどには頑張らないので心配は無用ですw)。

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