オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.51 コーラス・ブレイド ~いつの世も、盲愛ってヤツは。

2007.02.19

 とりあえずオレの家に帰ってきて、より一層狭くなった家の中で、それぞれに話しやすい体勢をとる。
 シイナはベッドの上にあぐらをかき、サウロはテーブル、他は椅子に腰掛けて。
 ミリネが傷の治療を申し出てくれたのを、シイナは柔らかく断わっていた。何だかもう殆ど自分で治癒させてしまったらしい。多少の違和感は感じるのかもしれないけど、動くのにはさほど支障はないみたいだ。
「ケティには申し訳ないが、時間稼ぎにはなったんだろうな、結果的に。多分今エルベルンは必死なんじゃないか」
 そうなのかな?
 でもまあ、ケティさんの身体の方が、物理的に満身創痍っぽかったけど。
「身体に穴はあくは、力を使いきってる上に、ケティの身体的魔法能力は低いは、挙句に左腕の骨折、完治させてなかったからな……」
 そうか。骨折もあったんだっけ。
 ケティさんの身体を傷つけたのはオレの剣だもんな……。申し訳ないなんて、思うのも見当違いなのかもしれないけど。
 なんだかな。
 いや、今は落ち込んでる場合でもない。

「まあとにかく、身体の方は殆ど大丈夫らしいな。ならば、お前たちの知りたがっていたことを教えてやろう」
 あくまでこちらの仮説もあるが、と含みを置いてから、サウロは口を開いた。


 モーラは以前から、ひとりで大樹海の外の世界を、用も無くフラフラするのが好きだった。エルフの中では、そういう性格はかなり珍しい。遥か昔に外部との接触を断ってきた彼ら種族は、基本的には外界に姿を現すことはない。
 けれどモーラは、外を歩く。
 森で、空で、時には海で。モーラはこの世界の風景を眺めるのが好きだった。
 そうやって外を出歩いている時に、モーラはエルベルンと出会ってしまった。
 その時の彼は、まだほんの子供だった。

 エルベルンは、生まれながらに魔法力を持っていた。
 彼のひとつ上の兄も魔法力を持っている子供で、そのせいで、彼ら兄弟は、いつも誰からも孤立していた。
 魔法力を持っているからといって、必ずしも誰もが迫害を受けるという訳ではない。けれど、彼らの魔法力を制御する術を教える人間がいなかったせいで、兄弟は、しばしば子供らしい大胆さで魔法力を暴走させた。
 だから自然と、周りからは疎まれることになる。
 彼らの母親は、下の子であるエルベルンを生んでしばらくした頃、どこへともなく姿をくらませてしまったらしい。
 母親もまた、魔法力を持っていた。
 けれど彼女自身、あまりその能力を良きものとして捉えていなかったのか、魔法力を持って生まれたふたりの兄弟を育てることを放棄し、彼らの前から消えてしまったのだ。
 子供ふたりを押し付けられ、捨てられた父親。
 その後も子供たちの魔法力によって孤立を強いられた彼は、その憤りを、誰にぶつければ良いのかわからなかった。
 子供が魔法力を持って生まれてきたのは、そもそも母親が魔法師だったせいではないのか。誰のせいでもない、母親のせいではないか。なのに何故、自分がこんな目に遭う。


「でも……魔法力ってのは、遺伝する訳じゃないんじゃなかったっけ」
 確か、シイナの魔法力は遺伝じゃなかった気がする。
 その疑問には、シイナが答えた。
「正確にははっきりしてないんだ。遺伝することもあるかもしれない。突発的に発生することも多い、というだけで」
 そうなのか……。
 相変わらず良くわからない世界だ。


 憤りをぶつけるべき相手は、今目の前に存在しない。父親の怒りの矛先は、子供たちへと向いていった。
 魔法などというものは、自分自身にとってはまるで無縁のものなのに。自分は何も悪くないのに、周囲からの批判を受けるのは、魔法師の保護者である自分。
 何故ちゃんとした教育が出来ないのか。
 親がそんなだから子供が。
 ――知ったことか。ならお前たちが育ててみろ。
 魔法力を持つ子供の育て方など、誰も教えてはくれなかった。
 彼は、子供たちを遠ざけるようになり、それでも近寄って来ようものなら、暴力で突き放した。
 魔法なんてものが、何故この世に存在するんだ。存在するなら何故、それは受け入れられないのか。
 受け入れられないのは魔法のせいではなく、それを行使する者の未熟さのせいであるという事実に、彼は行き着くことが出来なかった。


「そんな彼らを、モーラは陰からずっと見つめていたんだな」
 サウロは目を伏せる。


 そんな折、ただの人間であった父親は、唐突に魔法力に目覚めてしまう。
 遅い能力の開花。
 滅多にあることではないけれど、まったくないケースでもない。
 これまでずっと憎み続けていた魔法力に目覚めてしまった父。魔法が使える子供が悪い、それを産んだ母親が悪いと、ずっと憎み続けていた『魔法』に。
 父親の中で、何かが切れた。
 これまで使うことも出来なかった魔法のせいで、どれほど虐げられてきたことか。

 ならば。
 これまで被ってきた理不尽な扱いの分だけ、この力を、行使してやればいい。

 畑を焼き、家屋を倒壊させ。人を傷つけ。彼は狂気によって、破壊の限りを尽くした。
 そしてその狂気は、エルベルンの兄に及ぶ。
 兄は、父親の魔法によってその身体を引き裂かれた。
 人としてありえない姿となって地に転がった兄を、その目で見つめていたエルベルン。次の標的は、間違いなく自分。
 殺される。バラバラにされる。
 恐怖に逃げ惑うエルベルンを、父の魔法が容赦なく襲う。

 傷つき、体を動かすことすら出来なくなって、死を覚悟したエルベルン。その目の前に、モーラが現れた。
 死を待つだけのエルベルンを、魂の秘術によって救ったのだ。
 エルベルンの父親その人に、エルベルンの魂を移して。

 私情で動いたのは確かだ。けれど、あの父親を野放しにしておくことなど出来なかった。そして、小さな命を、その恐るべき父親の身体ででも、せめて生かしてあげたいと。

 救った命ではあるけれど、父親の犯した凶行は消し去ることは出来ない。その姿で生きていくのは困難であると判断し、モーラはエルベルンを大樹海へと連れ帰った。
 そして周囲の反対を押し切って、エルベルンの心を癒すことに専念したのだ。

 モーラによって救われ、その心を癒され、若い魂を育てられたエルベルン。周囲に疎まれ続け、肉親に殺されかけた彼が、長い間共に過ごした彼女に恋心を抱いたのは、それから10年も経った頃。
 愛されることに貪欲なエルベルンが、モーラに同じ想いを強要するようになったのは、そうなってみれば当然といえる現象かもしれなかった。
 しかしエルフは、その想いに答えることは出来ない。
 人間が異性を愛するようには他人を愛せないエルフと人間では、エルベルンの望む関係を作り上げることはできないのだ。
 けれど何度それを説いても、エルベルンは納得しない。
 本格的に、エルフたちはモーラにエルベルンとの別離を迫る。
 もう彼はひとりで生きていける。そもそも、エルフの社会の中で、人間が生きていくのは不可能だ。もう彼の心にも限界が近づいている。
 モーラは周囲の意見を聞き入れ、エルベルンを外の世界へと連れ出し、自分だけが大樹海へと戻ってきた。
 それで終わったと思っていたエルフたちの誤算が、そこにあった。
 モーラは、外の世界で密かにエルベルンと対面を繰り返していた。
 そして、何度も何度も、彼が納得できるまで説得し続けていた。
 もうやめろと、エルフたちはモーラが外の世界へ出て行くことを禁じた。そしてエルベルンがモーラを求めてやってきた時には森を閉ざし、その逢瀬を食い止めた。
 その段になって、モーラもようやくエルベルンに会うことを諦める。
 どんなに話してもわかってもらえないなら、もう会わない方がいいと、その時にようやく判断した。
 とても近しく、愛していた人だったけれど。
 そうして彼らが再び会うことはなく、20年ほどの時が過ぎる。
 年月の間で姿を見せることもなくなったエルベルンのことを、誰もが心に思い描くことがなくなった頃。
 ひとりの男が、大樹海に迷い込んできた。
 まれにだが、こういうことはある。
 だがその男は、森の中央付近まで深く入り込んだ後で、急に名乗りを上げた。
「私は世界を制する魔法師、ダーゼオン!! 狭い世界で守護者を名乗る愚かなエルフたちよ、貴様らを残さず焼き払ってやろう!!」
 一瞬にして森を結界で包み込んだ男は、間髪いれずに大樹海全体を業火で焼き尽くした。
 もちろん、人間の張る結界など、エルフが破るのはたやすいこと。エルフたちは再びの厄災を恐れ、森を捨て各地に散った。
 その時、モーラの命だけが、その場で消え去った。
 彼女にだけ、エルフのものではない結界が張られているのを、大半のエルフが察知した。けれど、それを瞬時で解き放ったモーラは、その場で消えることを選択したのだ。
 まさかと、誰もが思った。
 これは、あの男の仕業なのかと。だとすれば、モーラがその命を捧げることを選んだのは、彼と、そしてエルフたちへの贖罪のつもりだったのではないかと。
 けれどこんな。
 こんな大それた事態にまでなるなんて。
 大樹海以外の各地をも襲った厄災は、その後ぱったりと止み、その男は世界から気配を消してしまった。
 だから、確信は持てなかったが。


「おそらくエルベルンは、年老いた父親の身体を捨て、魂の秘術によって新しい身体を手に入れたのだろうな」
 だから、当時彼に気付くことができなかったのか。
 で、その後すぐにエルベルンはシイナの身体に乗り換えている。無茶苦茶だ。
 そして、唯一護ったはずのモーラの行方がわからなくて、悶々としていたんだろうな。まさか、あの時に死んでしまったのではないかと。けれど、そんなはずはないと。きっと、そう自分に言い聞かせながら。
「色々な意味で気の毒すぎて、安っぽい同情心すら湧いてこないな……」
 呟いた言葉に、サウロはいつものごとくに鼻を鳴らした。
「愚か者の自業自得だ。共感なぞしてくれるなよ、坊主。お前を力の限りつつき尽くしたくなるからな」
 それはマジでカンベン。
 もちろんオレは、彼に共感なんて出来る訳がないんだけどね。
 それが普通なのか、単にオレが人の深い部分を知らなすぎるのか、それはどうだかわからないけど。
 ただ、そんな風に生きることだけは、絶対に出来ないんだろうなとは思うよ。
 これから、世界や人の、どんなことを知ってもね。





==椎名の呟き==
なーがーいー。
シイナの件にかすりも出来なかった。とっほっほ。
そろそろいつもの軽さを取り戻したい今日この頃。

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