オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.54 コーラス・ブレイド ~困った時の良かった探し

2007.02.23

 結局人の多いところに行く気も起きなくて、オレとシイナは湖の傍まで来ていた。
 シイナとオレが初めて会った場所だ。この湖のほとりには、ちょっとした談笑に使えるような東屋みたいなものがある。雨を避けるには好都合だ。
 だけどその東屋に設えられた椅子に腰掛けるオレとシイナの距離は、これまた微妙。
 なんなんだかな。とは思うんだけどね。

「お前、知ってたんだな」
 また最初に口火を切るシイナ。
「何を?」
「オレがケティの身体を使ってる限り、長くは生きられないってこと」
「……」
 うんまあ、ケティさんから聞いてたからね。
 だからシイナを元の身体に戻す方法がないかって模索もしたし、できればシイナがやったような、ふたりの身体を傷つける、なんてこともしたくはなかった。ふたりとも、無事のまま残したくて。
 でも守りたくて、守ることしか考えられなくて、結局は何も出来なかったんだけど。
「実際参ってるよ、オレは」
 そんなオレの心境を知ってか知らずか、シイナがフウ、とため息をついた。
「一寸先は闇。いつ切れるかもしれない命を抱えて、未来なんて存在しないつもりで生きてきたのにさ。元の身体に戻るなんて奇跡的なことが起きて、急に未来が開けちまった。困ってるんだよ。この先どうしたらいいんだろうな」
 ……そうか。
 そりゃそうだよな。
 死期を宣告された病人みたいな気持ちだったんだろう、これまで。だからその命を使い捨てるつもりで、その状況を作った原因を追うことに専念して。

 でも多分もうシイナは、その命を無駄にすることなんて出来ない。
 ケティさんとモーラによって生かされたってのもあるだろうけど。多分それ以外にも、オレと一緒で。オレにとってはシイナが、シイナにとってはケティさんが。自分の命を捨ててまで何かを成し遂げようとしたことが、こんなにも辛い。
 そうだよ、オレだって。
 その命を捨ててまでなんて、そんな風になって欲しくないって、そう思ってたんだから。だから、自分もそういう風にはなっちゃいけないんだって。
 自分のそばにいてくれる人を、そう簡単に残していってはいけないんだって。
 そう思ってたんだから。

「シイナがこれから何をしたって、どう過ごしたっていいよ」
 オレが呟いたら、シイナはゆるゆると視線をこっちによこした。
 やっと、言っても負担にならなくなったから。今まで思ってたこと、やっぱりちゃんと言っておかなきゃ。
「どういう風でもいいからさ。だから……生きててくれないかな」
「コーラス?」
 心底不思議そうな顔。そりゃそうだ。直球すぎた。
 でもどういう風に言えば、ちゃんと伝わるのかな。
「もう捨てるとか死ぬとか、そういうことは無しにしてさ、何でもいいからとにかく、生きてくって方向で、これからのこと、考えてくれないかな」
 自分で言っててよくわからないな、これは。でも。
「オレはシイナに、生きてて欲しいんだよ」
 無茶言ってるかな。
 いや、普通に考えれば無茶なことなんて全然ないと思うけど。
 でもやっぱり、もしもオレがあの時シイナと同じ立場だったら、シイナの言うとおり、シイナと同じ行動取ったかもしれないくせにさ。
 勝手だと言われればその通りだと思う。
 でも。それでも。
「……」
 シイナが、真っ直ぐにオレを見る。
「言いたいことは、わからなくはないがな」
 あ、なんか否定的な言葉が返ってきそうな予感。
「オレたちが相手にしているのは、世界の敵になり得る人間だぞ。お前が国を背負ってた頃の感覚でものを見てみろよ。ひとりの命と、多くの命、国土。どっちが大事だ?」
 もしも、自分が命を捨てることで、他の多くが助かるような状況になったら。
 考えたことが無い訳じゃないけど。
「目の前のひとりを守れもしない人間が、多くの命を守れる訳ないよ」
 これだけは、俺の中では絶対だ。
「……」
 シイナが目を丸くする。
 やっぱりアレかな。オレって、国を背負ってくみたいな立場には向かないのかな。もっとも今は、背負ってくべき国なんてないんだけどさ。
「……オレは」
 シイナが呟いた。
「オレはのうのうと生きてる権利なんてあるのかな。自己満足のために、ケティを見殺しにしてさ。散々利用するだけした後で……。大体、最初に秘術が成立した時だって、結局やったのはオレなんじゃないか。ケティがやったんじゃなくて、オレが自分で、ケティの身体を乗っ取った」
 そうかもしれないけど。
 だけどどうにかして、どんな手を使っても、その時の絶望的な状況を突破しようとして、そうしたんだろ。シイナも、ケティさんも。
「結果的にそのおかげでケティさんだって生きてられたじゃないか。そうじゃなかったら、白の塔は全滅してるはずだったんだ。シイナも含めて」
「……」
 そうだよ。
 シイナはケティさんの身体を使ってここまで来て。
 一度はケティさんの命ごと、自分の命も捨てようとして。
 それでケティさんは自分を犠牲にしても、シイナの身体を元に戻して。
 色々無茶ばかりだったし、危なく失うところだったけど。
 でもまだ失ってはいない。
 何だかんだ言ったって、そこにまだ道はあるじゃないか。ただ闇雲に探すだけだった道が、はっきりとわかってきて。今だって、消えずに行先を示してくれてる。
 シイナたちのやったことが、ちゃんと良い方に転んでるじゃんか。
 オレが今までやってきたことだって、ここに今がある限り、無駄になったりしてないってことだよな。絶対。

 オレたちはちゃんと、良い方へ進んできた。結果的に。
 大丈夫。

「結果オーライだよ。失敗も後悔も、いくらでもあるけど」
 今度はオレがシイナの顔を見た。
「躓けば越えられる。躓かないように用心して止まってたら、その分前に出るのが遅れるだけだ。だから大丈夫。オレたちは、大丈夫だよ」
「……」
「大体だ。オレが生きててくれって言ってるんだから、そうですかって素直に聞いてりゃいいんだよ。そう思ってる人間がいるんだって肝に銘じろ。そしたら絶対、命を粗末になんて出来ないんだからな」
 シイナだって知ってるはずだ。憶えてるはずだ。置いていかれる者の思いを。
「コーラス、お前なあ……」

 お前って、本当に。

 シイナがそう呟いたように聞こえた。
「なんだって?」
「なんでもねーよ」
 またそういう。なんでみんな、途中で言いたいことやめるかな。
「お前の能天気さを、ここのとこ忘れてたよ。その強引さもな」
 それはお互い様だと思うんだけど、どうよ。
「じゃあコーラス。お前も、無駄に命を捨てるようなことはしないと約束できるんだろうな」
 シイナが派手な仕草で息をつく。
「それはもちろん」
 人にそうさせて、自分だけ話は別って訳にはいかんだろうよ。
 つい最近まではいつ捨てても良いつもりでいたってのは、とりあえず秘密だ。っていうか、すでに言ってしまっていたかもだけど、そこはまあスッパリと忘れてくれ。あの時オレは若かった。ほんの数日前だけど。
「シイナが『そうしてください』ってお願いしてくれるなら、いくらでも?」
 からかい混じりで言ってみたら鉄拳が飛んで来るかと思いきや、腰掛けたまま足が出てきた。
 男のシイナさんは足技もアリですか。
「ま、後味の悪い平和ほど、イヤなものもないからな。せいぜい気をつけようぜ。お互いにな」
「そうだな」
 ホントにな。
 とりあえず、後悔や自己嫌悪してる暇があるなら、次を考えないとな。うん。
 前向きが、オレの信条だったはずなんだから。
 そうか。そうしとこう。
 オレの取り柄は、剣と前向きさってね。





==椎名の呟き==
あー、煮えた煮えた。
連載開始当初から、ここいらで一番煮えるんだろうなあと予想していた部分で、やっぱり煮えた。
次回からアクティヴでお願いします。マジでw
(誰に頼んでいるのか)

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