オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.55 コーラス・ブレイド ~釣った魚はデカかった

2007.02.24

 ソルダムが突貫工事で扉を直してくれた翌日は、実に気持ちの良い快晴だった。
 ハイキングにはうってつけのこの陽気。
 って、この非常時に呑気にハイキングを楽しんでいるというわけでもなくて、ミリネやサウロと打ち合わせをするのに、水場に近い方がいいって言うから湖のほとりまで出かけてきているだけの話だ。
 勿論弁当持参で。
 料理をさせると前衛的な代物が出来上がってしまうオレとシイナは勿論手を出すことは出来ず、人数分の弁当をひとりで作り上げたのはソルダムだ。
 この男、本当に何でも出来る凄いヤツ。
 でも昨日シイナと家に帰ったら、壁際のベッドの上に作りつけの寝床が増えていたのには驚いた。ご丁寧にハシゴつきで。確かにシイナたちがいる間は重宝するんだけど、さすがに3段ベッドにするわけにはいかず。ソルダムは椅子や床で充分なんだって。本当にどこでもどんな状況でも暮らしていける男だな、ソルダム。たまには交換してやってもいいよ。
 と、そういう話はともかく。

「サウロ。なんで水辺がいい訳?」
 地面に敷いたシートの上を歩き回って、直に置かれた数々の食料をビスビスとつつくサウロに問いかけてみれば、たった一言。
「そのうちわかる」
 顔も上げないのか、お前は。
 オレの好物であるピクルスを集中攻撃しているサウロから、それを守ろうと容器に手でフタをしたら、思いっきりつつきまくられた。むしろ刺された。そのくちばしにはオレの手では勝てない。あああ、せっかく食べごろになるまで取っておいたのに。
 そのサウロを避けて器用に食べ物をつまむメンバーを尻目に、オレは釣竿を取り出した。
 いいもんね。オレは今日の夕食確保もするつもりでここに来たんだもんね。
 ここならさすがにアザラシは釣れまい。
 餌をつけて湖面に糸を放る。
 さて、と思う間もなく、いきなり竿がしなった。
「早ッ!!」
 オレってこんなに釣りの腕良かったっけ?
 ていうか、これだけ早いと腕以前というか。
 急いで竿を引いて、それでも逃がさないように慎重に糸を手繰る。
 と。
 釣りあがったのは、見たこともないような水色の、なんというか、綺麗な魚。
「なんだ、これ……」
 糸の先でビチビチと跳ね回るそれを、しげしげと眺める。こんな魚、この湖にいたっけ。何かの突然変異かな。
 その水色の魚が。
 急に、ドロドロとゼリー状に溶け出した。
「うえええええ!?」
 溶けたその身体が、針から離れ落ち、土の上でうだうだと蠢き出す。なんだこのきっしょい生き物はあ!?
「おお、アッシェ。待ってたぞ」
 後方で、サウロが何事もなかったようにその塊に話しかける。
 なに、なんですって!?
 そのゼリー状の塊は、蠢きながら徐々に地面に広がり、みるみるうちに人の形を取り始めた。ただし、下半身は魚のまま。
 人魚か? それは人魚なのか?
 一見美しい女性の姿に変身した、下半身魚の生物。しかし豊満な上半身は、なぜかフカフカのセーターのようなものをきっちりと着込んでいる。長くウエーブの掛かった水色の髪と水色の下半身に、金糸銀糸を織り交ぜたピンク色のセーター。こんな往来で何も着てないのも困りものだが、アンバランスにも程ってものが。それとも、一応この冬流行バージョン、みたいなのがあるのかな? 人魚にも。この冬って、ピンクが流行だったっけ。
 いや、ツッコミどころはそこじゃないだろ、オレ。
 一体この生物は。

「ちょっとアンタ!! なんてことしてくれるのよ!!」

 うわ、しゃべったあ!!
 そりゃ人間の姿してるんだから、しゃべってもおかしくはないけど、さっきまで魚だったじゃん!!
「この私を釣り上げるなんて、どういう了見!?」
 どういうって言われても。ちょっとちょっと。
 この人魚に話しかけたサウロを振り返る。助けて鳥さま。
「そいつはお嬢の召喚獣だぞ、坊主」
 ああああ……やっぱり……?
 なんでそんなのが、湖を泳いでる訳?
「ちょっと、ちゃんと答えなさいよ、アンタ!!」
「召喚獣が普通に餌に食いつくなよ!!」
 仮にも召喚獣なら、なんで放った餌に速攻食いつくかな。そりゃあオレだって釣り上げちゃうってば。
「本能だもの、仕方ないでしょう!? 私は水属性の召喚獣なんだから、それに殉じた生き方をしているに決まっているでしょう!!」
 鳥の餌を食べてるサウロなんて見たことないぞ!? オレの好物のピクルスなら完食する勢いだけどな!?
「ていうか、人間の姿の召喚獣って初めて見た」
 下半身魚だけど。
 すると人魚、えーと、アッシェ? はツンと唇を尖らせる。
「召喚獣は何にだって姿を変えられるわよ。いつもは属性に沿った基本形でいるけど。でも私は基本形が魚だから、エラ呼吸じゃ地上では死んじゃうでしょう!? 召喚師の身体にいる時は別だけど」
 エラ呼吸なんだ……。
 人間の姿でもあくまで下半身魚なのは、単に趣味か?
 オレホントに、ミリネの召喚獣の作成センスを疑いたくなってきた……。
「大体なんで召喚獣が湖を泳いでるんだよ……。召喚師や召喚獣は、一息で空間移動とか出来るんじゃなかったっけ?」
「出来なくはないわよ。でも私は水の中の方がより動きやすいの。水から水へ渡り歩くならお手の物よ。海、川、湖どんと来いってね」
 理屈はわかるけど……。
「アッシェには、調べ物をさせていたのさ。別に誰でも良かったんだが、こいつが久しぶりに海を泳ぎたいとうるさかったんでな」
 サウロ、今度は卵焼きに穴をあけ始める。微妙な親子関係が……。いや、召喚獣は別に関係ないのか。
「アッシェ、さっさと本題を話せ」
 イラつくように言うサウロに、そうだったわと目をぱちくりさせたアッシェは、ホフク前進で敷いてあるシートへと向かう。そして野菜をはさんであるパンを、ムシムシとかじり始めた。
 普通に食ってんじゃん。
「ミリネちゃんの予想通り、あいつかなり力失ってるみたいよお。サンレイクをがっちり結界で囲って、さらに誰も近づけないように、海のモンスターを活性化させてるわ。そんな余力があるなら、力を貯める方に集中すればいいのにね。バカみたい」
「え……」
 それはもしかして。
「エルベルン?」
「そうだ。こいつにサンレイクを探らせていた。結界で固めているということは、やはり力を失って篭城していると見ていいな。あれだけ力を消耗した上に、今の身体は魔法力の弱い身体だ。元通りになるまでにはかなりの時間が必要だろうが、叩くなら早いうちがいいだろうな」
 エルベルンの様子を直には調べられないんだな。そうか、サンレイクの結界は精霊石を使ってるものだからなあ。それもハンターギルドみたいな小さなものじゃなくて、島全体が精霊石だし。エルフでもそこには侵入できないって言ってたもんな。
「まったく、精霊石の結界だけはエルフにも破れんことをヤツが知っていたとは思えんが、偶然にしろ最良の隠れ家を作りやがって。怠慢だぞ、サンレイクの王。せっかくエルフがお前の先祖に番人を任せたというのに」
 へ?
 なんだって?
「番人?」
「なんだ、そんなことも知らんのか」
 知りませんが。
「まあ、人間なぞが憶えてもいられんくらい昔の話だがな。聞きたいか?」
 そりゃあ、もう。オレは無言のまま頷いた。
 仕方ないなと、サウロは思い出したように容器をひとつつきして、ピクルスをぽりぽりとくちばしで噛み砕いた。

 ああ……最後の一個、終了……。





==椎名の呟き==
コーラス、好物ピクルスなんだって。椎名も今日知りました。
つまり今日考えました。
アッシェは人魚なので女性です。何故って、男の人魚ってのはヴィジュアル的に、椎名が引いてしまうからです、はい。昔参加したPBM(多人数参加型ゲーム)では、筋骨隆々のオヤジ人魚と懇意にさせていただきましたが。ディクが。

★『コーラス・ブレイド』最初から読みたい方はこちら★


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