オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.57 コーラス・ブレイド ~彼女はどこへ行った

2007.02.27

 ハイキング半分だった昨日と違って、今日はやたらと忙しい一日だった。
 とはいっても溜まった洗濯物やら洗い物やらを片付けて、夕飯の買い物を済ませてと、半日はもっぱら主夫業(と言っていいのか)で、午後になってからはハンターギルドの総督様と会談してただけだけど。いや、だけってことはないよな。サンレイクに乗り込むための綿密な打ち合わせという、かなり内容のある会談だったし。

「手配はみんな向こうでやってくれるんだから、楽なもんじゃないか」
 あまりに疲れきった顔をしていたせいか、またもあっさりとシイナに考えを見抜かれてしまった模様。
 街中の飯屋のテーブルで突っ伏していたオレ、壁のメニューを指差してみる。
「桃色まんじゅうは食わないの?」
 ケティさんの身体を使っていた時にはオレの金でみっつも食いやがったシイナ、今は心底イヤそうな顔をしてくれる。
「食わん」
 あ、やっぱり。
「アレは甘すぎてダメだ。もしかしてと思って試してみたが、やっぱり甘いものが苦手な味覚は変わってない」
 試したのか……。いつの間に。
「苦手なものがあるってのは、人生半分損しているような気がするな。世の中には甘いものは結構多い」
 いや、そりゃそうだけど、辛いものも苦いものも甘いものに負けないくらいあるんだから別にいいんじゃないかなあ、なんて、オレも甘いもの得意じゃないけど思う。
 やっぱり一度食べられる経験すると、もったいなく感じるものなのか? 未知の領域だからさっぱりわからない。

「こんなところにいたのか」

 急に声が掛かって、オレもシイナも仰天してしまう。
 ここで聞くことになるとは思ってもみなかった声だったからだ。
「ディク先生!?」
 屋外に設えられたテーブルについているオレたちの方へと、ゆったりと歩み寄ってくる長身。なんでこんなところにいるんだろ?
「キミたちが街を出て一日二日のうちに、西地区がモンスターに襲われてね」
 ああ、そうだなあ。中央も襲われかけたあのタイミングで、他の地域も襲撃を受けてるって話があったっけ。
「ディク先生は無事だったんだね」
 勿論、と、ディク先生は頷く。
「ハンターギルドの人間と地区の一般人とで共闘して街を守ったからな。もっとも私は、身体を使った戦闘はあまり本職ではないから、裏方に回っていたが」
「裏方?」
「私は火薬の作成も得意でね」
 ニヤリと微笑む色男。じゃなくて色女。いやなんか言葉が違う。
 火薬、ねえ……。つくづく敵に回したくないタイプの人だな。
「そこでのっぴきならない事情だと判断してキミたちと合流しようと、こうして出掛けてきたのにキミはいないし、エラールに聞いても街中としか言わずにお嬢さんに挨拶に行ってしまうし……まったく召喚獣というのはきまぐれな生き物だな」
 ははは。どこでもミリネの召喚獣には苦労してるみたいだなあ。でもきっとディク先生とエラールは気が合ってるんだろうけど。
「ところで」
 ディク先生はいかにも不思議そうな顔でオレたちを見る。
「シイナはどうしたんだ?」
 ああ……やっぱりそう来たか。
「オレがシイナですよ」
 シイナが冗談めかしてヒョイと手を挙げてみせる。
「……なんだって?」
 さすがのディク先生も、状況を把握するのに時間がかかってるみたいだ。
 そりゃそうだよなあ。つい最近まで小柄な赤毛の少女だった人間が、金髪碧眼のヤロウになってるとは、普通考えない。くそう、シイナ、オレよりちょっとだけ身長高いんだよなあ。
「私を担ぐような人間ではないよな、キミたちは……。話だけ聞いた時は今いちピンとこなかったが……まさか本当に魂の秘術なんてものが存在したとはな。驚きだ」
 ディク先生、あなたは間違ってません。オレだってそんな魔法の存在、微塵ほども知らなかったもんね。
「エラールがやたらと急かすわけだ。色々あったらしいな。話は後で聞くとして、さっきキミの家に寄ってきたが、ソルダムが楽しそうに野菜を切り刻んでいたぞ。アレは一体なんだ?」
 ヤバい。ソルダムが一番、主夫が板についてきている。
「そろそろ夕飯の支度してる頃だし」
「夕飯? それでキミたちは、飯屋なんかで何をしているんだ? 夕食を家で食べなくていいのか?」
 確かにもうすぐ夕食の時間だけどさ。
「これは間食。ハンターギルドに寄って来たら、腹減っちゃってさ」
 ディク先生呆れ顔。オレたちの食欲の旺盛さを理解しがたいらしい。
「まあキミたちに限って太る心配などとは無縁なのかもしれないが……では夕食には戻ってくるんだな。私はソルダムでも手伝うとしようか」
 おおお、ディク先生も料理ってするんだ。って、おかしい話でもないか。一人暮らしの女性だもんなあ。
「ヤツがひとりで作るよりはマシな物を食べさせてやれるだろう。期待して帰ってくるといい。詳しい話はそれからだな」
 やったー、と笑顔でディク先生を送り出すオレたち。いや、ソルダムでも充分食えるものを作ってくれるんだけどね。ゴメンね、オレたち、こんなところで遊び呆けてて。でもオレとシイナのセットは台所に立つのを禁止されてるもんで。

 手を振るディク先生を見送った後で、オレはシイナをしげしげと眺める。
「なんだよ」
 視線に気付いて、シイナはあからさまに顔をしかめた。
 実は「シイナはどうした」というようなことを聞かれたのは、今日になって三度目だ。
 一度目は中央ギルドの受付のおねーさん。彼女はどうしたんだと訊かれたから「ちょっと旅に出てる」と返してみたら、どうせ何か嫌われるようなことをしたんだろうとかなんとか、散々叱られた。理不尽だ。
 二度目は総督ウェルバーさん。彼にはちゃんと説明してあげたんだけど、やっぱり理解するのに相当時間を要したようで、今のオレみたいに、シイナをしげしげと眺めてたっけ。
「実際オレも、実はかなり微妙だったりするわけよ」
「微妙?」
「オレの国は焼かれて滅ぼされて、国民も家族も誰も残らなくてさ。オレはそんな仕打ちをしてくれた人間の、名前と顔しか知らなくてさ。その張本人の姿をずっと心に焼き付けて、絶対に探し出してやると誓って三年間を過ごしてきたわけだよ。あんまり話題に出すことは無かったけど、それこそ三年間、一日たりともその顔を思い出さなかったことなんてないんだ。その憎ったらしい顔がさー、今普通にこうやって隣に並んでるんだから、運命ってのは良くわからん」
「……」
 シイナは無言で瞳をそらす。
 そりゃそうだ。シイナにとってそれは一生の不覚であって、きっと黙ってれば一生引きずるかもしれない負い目なんだろうな。自分の身体を奪われて、その姿、その顔で、ヤツはオレの国を滅ぼしたんだから。そして多分、他の精霊石産出国も。
 何も言い返せないのも無理はない。
 でも、それじゃ困るんだ。
「それでもやっぱり全然違うんだもんな。中身が違うだけで、こうも変わるものかね」
 獲物をひと呑みにしようとする蛇みたいなエルベルンの瞳とシイナのエメラルドの瞳は、本当に別人のように違う。そして、まとう空気も。同じ顔なのに、こうも違って見えるのも不思議だけど、以前のケティさんの身体を使っていた頃のシイナと今のシイナ、どっちも同じシイナに見えるんだから、もっと不思議だ。
「エルベルンの罪は、お前の罪じゃないんだからな。それだけは憶えとけよ」
「……」
 そう無言で複雑そうな顔をしないで欲しいんだが。
「シイナが身体を盗られたことを迂闊だっていうなら、国を盗られたオレなんてもっと迂闊になっちまう」
「……」
 しばらく黙ったままだったシイナ、意地の悪そうな微笑みをオレに向けてきた。
「んーなこたァ、お前に言われるまでもねえよ」
 真意は、きちんと読み取ってくれたらしい。
 シイナは笑顔のまま、立ち上がった。
「そろそろ行こうぜ。連中が待ってる」
「おいおい、待てって」
 上機嫌に見えるシイナが歩いて行く後を慌てて追いかけようとして、グイ、と後ろから肩を掴まれた。

「コーラスさん、お会計」
 それは愛想笑いを浮かべる、店の主人。
「……」
 シーイーナーーー。





==椎名の呟き==
ディク先生、忘れてたわけではありませんよー。
思えば彼女と別れてから、殆ど時間経ってませんね。

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