オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.60 コーラス・ブレイド ~前代未聞の自由人

2007.03.03

 いつまでも立ち止まってる訳にもいかないから、オレは歩きながら話した。
「外交官だったんだよね……彼女は。結界を操る権利を持った、数少ない人間だった」
 思い出すのはいつも、何の罪もなさそうな、くったくのない笑顔。
「そそのかされたんだろうなあ、エルベルンに。彼女は長いこと、本気で国を出たがってたから」
「そそのかされた?」
 シイナの言葉に、オレはただ頷く。
 サンレイクは唯一ハンターギルドを除いて、他の国との交流を持っていなかった。それはつまり精霊石を守るためで、そのために、国民が無闇に他の国へ移り住むことも禁じられていた。サンレイクがどういう国であるのか、無節操に広める訳にはいかなかったからだ。もちろん様々な事情で、移住が皆無、という訳ではなかったけど。
 長い歴史の中、サンレイクは殆ど国を開くことがなかったから、国民もそれで当然と思っている人間が多かった。けど、時折そういう風に外の世界に憧れる者も出てくる。オレだって外交の際に何度か中央ギルドにだけは足を運んだことがあるけど、やっぱり他国に興味はあったもんな。

「この前ね、もしも可能であるなら、ぜひサンレイクを訪れてみたいって人に会ったわ」
 その人は、サンレイクが精霊石の大量産出国であることに興味があったみたい、と彼女は言った。
 国交は殆どないけど、地理や歴史を学んでいる人間ならサンレイクが精霊石の産出国であること位は知っている。
「だけどもちろん許されないわよね、そんなことは。私が国を出ることだって許されないのに……」
 ため息をつく彼女に、そんなことは当然だ、とオレはその場で言葉を返したけど。
 エルベルンがサンレイクを襲ったのは、それからおよそ一年後。もしもその時彼女に声をかけていたのがエルベルンなのだとしたら。その後一年をかけて、彼女を懐柔していたのだとしたら。

「コーラスはその外交官と親しかったのか?」
「うん」
 オレが頷くと、シイナは思い出したように納得する。外交官なんだから王家と直接関わってるのも当たり前か、という解釈をしたらしい。
 親しいというか、なんというかね。
「オレの、母親」
「……は?」
 うん、さすがにシイナも驚いたっぽい。
「母親って、だって、なんで。お前の母親っていえば、つまり」
「そうだよ」
 後に王妃となるはずだった、王太子妃殿下だ。正確には、王太子妃、だった。
「前代未聞の騒ぎを起こしてくれたんだ、彼女は。オレがまだ10歳にもならない頃に、城から逃げ出したんだよ」
「逃げた!?」
 そう、文字通り、逃げた。

 オレの父と母は、幼い頃から結婚が決定していた間柄だったらしい。ありがちな設定だ。
 王家と、それに近しい由緒ある家柄の婚姻関係。勿論そこに、当人同士の意志の尊重はない。それも仕方のないこととして、ふたりは婚儀まで済ませた訳だけど。
 もともとオレの母というのは、大変に奔放な性格の人だった。
 本当なら、普通の国民がそうするように、自由でのびのびとした生活を渇望していて。成り行き上跡継ぎまで産んでしまって、いよいよ窮屈な生活となって。
 それに耐え切れずに、城から逃亡してしまった。
 望んでもいない場所での望んでもいない形の生活ではなくて、もっと自由に。できることなら、閉鎖されたこんな小さな国ではなく、外の世界で、広い世界で。
 そんな場所で、暮らしたかった。
 このままでは心が死んでしまうと、オレを産んだ時に、痛感したらしい。何度も何度も、そんな話を聞かされた。

「……」
 あ、シイナ、すっごく考え込んでる。
 まあそりゃあ、無理もないというか。オレだっていきなりこの手の話聞かされたら、返す言葉がなくて悩むだろうなあ。
「まあそんな騒動があってね。オレの祖父、王様も考えちゃった訳だよ」
 もちろん、母はすぐに捕まった。国外逃亡ができる訳でもないし、密かに身を寄せる場所もない。実家になんて絶対に帰れなかっただろうし。
 だけど、城での生活を嫌がって逃亡までしたような人間を、無理やり連れ戻したとして、いずれ王となる夫と共に、国を導いていけるのか。いつまた問題を起こすやもしれない。かといって、妃殿下が城外逃亡など、王家にあってはならない不祥事だ。
 だから王は、王太子妃の葬儀を行った。
 母を死んだことにして、国葬をあげて。彼女には別の名を名乗らせ、王家の人間ではなく、それに近しい貴族としての戸籍を与えた。
 一度でも王家の人間として生きた人間をおいそれと自由にすることは出来なかったから、せめてもの温情として、彼女を外交官に任命し、ハンターギルドとの国交を任せた。
 そうすれば、ほんの少しでも、国の外に出ることも出来るだろうと。
 甘かったんだな、王も、父も。
 オレには許婚が用意されていなかったんだけど、この辺の事情があったせいなのかもしれない。

 だけど、国の外と言ってもハンターギルドとの往復くらいしかない。必ず別の人間が傍に控えて目を光らせているから、出先での逃亡も敵わない。結界を解ける権利を有していても、ひとりでは海の向こうに渡ることはできない。
 外はこんなにも広いのに。
 わが国サンレイクは、ポーラス中央地区程度の広さしか持たない。
 多分、彼女の心が晴れることはなかったろう。

 オレを産んで自由を失った、なんてはっきりと口に出す人だったけど、オレのことを嫌っていた訳じゃないから、ハンターギルドに一緒に出かけるような時にも、そうでない普通の日にも、普通に交流は持っていた。
 城の外で、母親だと名乗ることはなかったけど。
 普通に愛情は注いでくれたから、その奇妙な関係に特に疑問も持たなかったんだけどね、オレは。
 でも彼女が話すのはいつでも、外への憧ればかりだったっけ。

「どうしても国を出たかったんじゃないかなあ。それで、エルベルンに加担した」
 結界を解いて国に入れてあげる代わりに、自分を国の外に連れ出してくれるようにと。そういう交換条件を取り交わしてたんじゃないのかな。
 エルベルンの目的を知っていたかどうかは知らない。
 でもきっと、彼の目的を知っていたとしても、彼女はそれをやっただろう。オレの母は、そういう人だ。
 誰も何も大事なものがなかったわけじゃないけど。
 彼女が一番大事に思っていたのは、他の何者でもない、自分自身だ。
 だから、エルベルンの姿が最後に違っていても、気にもしなかったんだろう。これから何が起こっても、自分が国を出られるのなら、どんなことになっても構わないと。

 けれど、自由にしてもらえる約束があったとして、それは叶わなかったんだろうな。
 このブローチが、物語っている。
 多分、エルベルンの最初の犠牲者は、彼女だ。
 サンレイクの生き残りの存在を、エルベルンが許す訳がないんだから。

「しょーもない人だよな」
 オレが苦笑まじりに言っても、シイナは無言のまま。ミリネもサウロもただ黙って歩いていた。いや、サウロはミリネの肩にとまってたんだけどね。
「最初に死んじまってどうするんだか。どんなに許されない重い罪を犯しても、これじゃ償うこともできやしない」
 まあね、全部オレの予想でしかないけど。
 多分、違ってはいないと思うんだよね。

 あの人――だったんだなあ。きっと、多分、本当に。

 何よりも自分の自由を望んだ母。その血を受け継いでいるオレ。
 オレはこれから、どうやって生きていくのがいいのかな。





==椎名の呟き==
想像以上に小さなサンレイク。しかも城の背面は断崖絶壁だし。
何しろ土台が天然石だから仕方ないですねえ。
人口はポーラスよりも多かったんです。なお狭いわ。

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