オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.61 コーラス・ブレイド ~食うが先か出すが先か

2007.03.04

 背の高い草ばかりの中を延々と歩く。
 エルベルンに焼かれてから3年、草ばっかり伸び放題だな。それでも植物が育ってくれてただけまだいいのか。懐かしき我が国の大地。
 でもほとんどモンスターと出遭わないところを見ると、ソルダムたちのモンスター陽動は上手く行ってるんだなあ。さすがのふたりだ。後でコンビ名考えてやった方がいいかな。

 一日近く歩きっぱなしの予定だから、時々は数分の小休止。サウロはやれ軟弱だだの時間の無駄だの言うけど。お前はいいよ。ミリネの肩に乗って移動してればいいんだから。そのミリネも顔色ひとつ変えずに長距離移動できてるけど、このか弱そうに見える小さな身体のどこにそんな体力があるのか。それとも、体力使わない方法でもあるのかな。あれば伝授して欲しいものだけど。何しろこの長距離、ひたすらのんびり歩いてるのは、オレたち人間の体力温存のためなんだから。
 燃費悪くてすみませんねえ。

「あのな、コーラス」
 背の高い草を倒してその上に腰掛けて休憩中、ふいにシイナがこっちを見る。
「たとえ血のつながりがあったとしたって、お前の母親のやったことは、お前には関係ないんだからな」
 …………。
 シイナ、ずっとそんなこと考えてたのか。
 オレはソルダムとディク先生のコンビ名をどうするかばかり、悩みに悩み抜いてたっていうのに。
「そりゃそうだよ。オレと母親はこれで案外ドライな関係だぜ? あの人がやったことで、オレが責任を感じなきゃならないことなんて全然ないじゃん」
 そう言ってみても。む、何だか冷たそうなその視線。
「そうは見えねえんだよ」
 何でお前が不機嫌になるかな。
「これまで、何の責任も重圧も感じてなかった訳はないよな。たったひとり残ったサンレイクの生き残りのお前が」
「……」
「その、お前がひとり生き残った事件の原因を、間接的に作ったのが誰か。それがわかったのは、たった今さっきだ。そしてそもそも、なぜサンレイクがそんな目に遭わなければならなかったのか。この地が、どんな場所であったのか」
 責任がどうとか、被害者か加害者か、そんなことが言いたいんじゃないんだろうな、シイナも。

 モーラへの叶わぬ想いから狂気に走ったエルベルン。
 自由を求めその狂気に国を差し出した母。
 再び踏むことは無いとさえ思えた、サンレイクの地。

 それら全てを踏みしめて、生きていくはずのオレ。
 その混沌を、どうやって昇華して行けばいいのか。

 確かに、行くべき道を見出すのに、苦心してはいるんだけどね。

「例えば、償いたくても、その相手はもうどこにもいない。国を再建しようにも、残っているものは何もない。だからオレはさ、サンレイクという、王の名さえも無意味なものだと、そう考えてたんだけどね、これまで」
 国を滅ぼしたその犯人を探し出して。これからも繰り返されるかもしれないその脅威をどうにか食い止めて。そのことに一生を捧げられるなら、それもまた良し。もしも早いうちに解決を見ることが出来たなら、その後にはハンターとしてポーラスで暮らしていくか。漠然とそんなことを考えたりもしてたんだけど。
 サンレイクという国の成り立ちを、サウロから聞かされた。
 エルフから託されたこの地を。オレは守っていかなければいけないんじゃないのかな。そのために栄えてきたはずなんじゃないか。サンレイクという国は。
 だけど、残されたオレひとりで、どうやって?
 そんな風に思い始めていたのも、確かだ。
「坊主。念のために言っておくがな」
 サウロが呟いた後で、エヘンと咳払いした。その後、さらにもうひとつ。なんだよ、言いにくいことならわざわざ言わなくてもいいぞ。って、それはそれで気になるんだけど。
「確かにエルフは人間にこの地を託した。だが、今こうなったこの土地をどうするか。それはお前の自由だ。国を再建するもよし、ここを捨てるもよし。一度離れてじっくり検討するのも悪くは無かろう。我々は、この地を守れと誓いを立てさせはしたが、結局のところ、どうしていくかは人間次第だ。そうでなくとも寿命の少ない人間、代が変わっていくごとに状況が変わるのも仕方のないこと。それはエルフも承知の上だ。託すというのは、そういうことなのだぞ」
 噛んで含ませるような長台詞をしゃべるサウロというのも珍しい。
 でもだからー、別にその現場にお前がいた訳じゃないだろうって、何度心の中で言ってみても無意味ですがね、ええ。
「サウロは……コーラスさんがひとりで背負うことはないと、言いたいんですよ」
 うお、びっくりしたあ!
 久々のミリネの声だ。
「そんな風には言っておらんわ!!」
 サウロの言葉をフォローするミリネってのも初めて見たぞ。いつもなら逆なのになあ。って、なんですか、サウロのくせに、オレのこと心配なんてしてくれちゃってた訳?
「なんだサウロ、オレのこと結構好きなんじゃん?」
 ちょっと調子に乗って鳥頭をゴシゴシなでまわしてみたら、その手に向かって速攻のくちばし攻撃。やばいですって、手首刺されたらオレここで死んじゃうってば。
「オレ様を侮辱するか、人間風情が!!」
 ひどい、サウロがオレを好きになるのって、侮辱レベルなんですか。
 うんまあ、いいけどさあ。
「色々考えなくもないけど、大丈夫だよ。何とかなるんじゃないかって、そういう風に思うことにしたから」
 責任も重圧も、迷いも。目の前に山のように積み重なってはいるけどさ。
「オレは王様なんて器でもないんじゃないかなって思ってたけどさ。だからここに戻ってきても、何もできることなんてないんじゃないかってそう考えてたけど。逆に何にも残されてないこの国を、たったひとりで守っていくなら、王でなくともできるよな」
 せめてオレの生きている間だけでも、なんて。オレがそんなちっぽけな責任を果たしたところで、世界の時間の流れの中では、瞬きほどの長さもないのはわかってるけど。
 それでも、一度でも授かった、この名があるなら。
 その名の許に、この国を預けられたのなら。
 それを捨てた時に、オレはオレの誇りすらも、捨てることになるんじゃないのかな。
 何にもないこの地を、なんて、途方も無いことのようにも思えるけど。もっと途方も無いことを、先代たちはやってきた。国を守るってのはそういうことだよな。
 全てを破壊されて、行き場を無くしたこの土地を、それでもオレは愛してるんだよ。
 捨てることが出来ない程度にはね。
 ここに戻ってきた時に、そう感じた。オレが作っていくなんて大それたことは言えないけど。オレがこれまで生きてきた、これから生きていく国だ。すぐに、ここで暮らすのは無理でもさ。

 シイナと雨の中話してた時、降り続く雨が鬱陶しくて、気分もどんどん沈みっぱなしで、だから尚更陰鬱になっちまうんだ、なんて。いつになったら止むんだろうなんて、そんな風に考えてたけどね。
「止まない雨はないよ。明けない夜もない。少なくとも、オレが暮らすこの世界で、そんなことは許されない」
 あの時の雨だって、ちゃんと止んだだろう?
 シイナを見てみれば、やれやれと肩をすくめてため息をつかれた。
 オレ、何か呆れられるようなこと言ったか。
「お前はやっぱり王をやれよ」
 急に何を言う。
 たったひとりしかいない国で、しかも何も残ってない場所で、王だとかそういう地位って無意味じゃないのかな。
「何度も言うけど、オレがそういう器だとも思えないんだけどね?」
 シイナ、立ち上がる。つられてオレも立ち上がった。
「だったらお前はオレの王になれ。オレの籍はお前にくれてやる。お前はお前の手が届く小さな国の王であればいい」
 そのまま歩き出したシイナに、慌ててついていく。ミリネも立ち上がって何食わぬ顔で歩き出した。
「ひとりじゃないんだよ、お前は。オレがいてやる。そして必ず、お前の周りには人が集まる。お前はその国の王になる。器かどうかなんてのは、自分ではなく他人が認めるものだぜ」
 そうなのかな。それでいいのかな?
 少なくとも、オレはここで、シイナの生きて行く場所くらいにはなれるのかな。どうやって生きて行こうなんて、考えあぐねていたこいつの。
 もしもそこに、生きて行く道を見出してくれたのなら。
 それでも、いいのかな。
 そしてオレは、ひとりじゃなくてもいいのかな。
「だって、それならそれで大変なんだぜ、これからさ。この土地に、植林したり住む場所作るところから始めなくちゃならないんだぜ。大量の肥料を、船で運ぶことなんて出来るのかな」
「肥料の心配かよ!! だったら動物でも放せばいいだろうが。自然に肥料を出してくれるぞ」
「動物の輸送だって大変だよ! 第一こんな背ばっかり高い草食ってくれる動物なんている訳? それならやっぱり牧場作るための種まきから始めなきゃならなくなるし」
「どちらにせよ時間だけはかかるって話だろうが!! 大体お前はそれを、本当にひとりでやるつもりでいたのかよ!」
「言ってるうちに無理っぽいなとは思い始めてたけどさ!!」
 いかん。どんどん話題がずれてきた。気がする。
「確かに、お前が自分の器について悩むのもわかる気がするな……」
 あ、いきなり前言撤回かこのヤロウ。自分だって家畜の下ネタ振ったくせに。

「貴様ら、その話の前に、エルベルンのことを考えんか――――!!」
 サウロ、キレた。
 そうだね。そうでした。
 全てのことはその後だよ、シイナさん。
「先に言い出したのはお前だ」
 またそうやって、なんで簡単に人の考えを読むかなぁ、こいつ……。





==椎名の呟き==
このままいくと、草刈りから始めることになりそうです。この国の王様。

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