オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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Vol.64 コーラス・ブレイド ~だまし討ちでスイマセン

2007.03.09

 さあ、エルベルン。
 お前はこの剣に、何を見るか?
 俺がつき立てたこの剣に、お前は自分のもっとも望んでいた姿を見るはずだ。
 最愛のエルフの、眼差しを。

「……モーラ……」
 オレの剣を凝視したエルベルンから発せられた言葉は、予想通りの一言。
「モーラ……何故そんなところに……モーラ!!」
 距離を置くオレに近付こうとして、エルベルンは瓦礫の上で体勢を崩す。だからこれ以上その身体に傷なんてこしらえないでくれってば。
「そう、モーラの魂は、この剣に宿っているんだよ。お前が一番望んでいた魂が、ほらここに」
 オレはその剣をつき立てたまま。
 今、エルベルンの目には、剣の刃の輝きの中に、モーラの姿が映っているはずだ。ただじっとエルベルンを見つめる、その姿が。
「モーラ!!」
 エルベルンの意識が、完全に剣に固定された。

 この瞬間しかない。

 オレは、その剣を頭上に高く突き上げた。
 エルベルンの刺すような視線が、その動きを追う。
「東西南北、サンレイクの四方に眠る精霊石、その要石。その力をこの剣に集約せしめよ。主であるコーラス・サンレイクが、ここに命ずる」
 オレの言葉に、サンレイクの四隅に埋め込まれている精霊石が反応し、光を帯びた。それは瞬時に空まで届くような光の柱になったから、ここにいても肉眼で確認できる。
 その光の渦が、全てオレの持つ剣に集中して降り注いだ。
 強烈な、光の雨。
 その力は、この手から剣を弾き飛ばそうとするほどの勢いで。でもここで、集中を途切れさせる訳にはいかない。
「この力は、身体ではなく魂そのものを切り裂くよ」
「貴様、何を……」
 身体を傷つけずに、魂を切りつける秘剣。本来そう上手く使えるものではないけど、エルベルンの今の身体の奥にはケティさんの魂が眠っている。そしてここには、エルフもいる。サンレイクという場所とケティさんの魂とエルフの力。全ての要素があって、行使できる技だ。
「さあ、エルフたち。モーラの力を」
 姿を隠していたエルフたちが数人、そこに姿を現した。ミリネと共にエルベルンへと手をかざし、その奥に眠るケティさんの魂を内包したモーラの力を探る。
 捕まえた、と、ミリネが小さく呟いた。
「モーラの力と、我らの力で」
 ケティさんの魂を、外へと引き出す。
「ケティ、目を覚ませ。お前の意志で動き、お前の意志で感じる、それはお前の身体だ!!」
 シイナが叫んだ。
「行くよ。悪いが最期の言葉を聞いてやる余裕はない」
 せめてモーラと同じところに行けるといいな。
 魂の行方は、もちろんオレには計り知れないけどね。

 力を蓄えた精霊石の剣を、オレは真っ直ぐに振り下ろした。
 剣がまとっていた光が、エルベルンへと一直線に向かい、その身体を輝きで切り裂く。

「バカな……バカな!! 貴様ァ……ッ!!」

 それが最後。
 それ以外の時間の猶予は、彼には与えられない。
 その言葉を絞り出して、エルベルンの、ケティさんの身体はガクリと膝をついた。
 意識を失って前のめりになった身体が瓦礫の山から一枚の葉っぱのように崩れ落ちる。それをやんわりと受け止めたのは、その場にいた数人のエルフたちだ。
 そこへシイナがゆっくりと歩み寄った。オレもそれに続く。
「終わったか?」
「うん」
 エルフたちが支えるケティさんの身体を、その場に膝をついたシイナが受け取る。
「あっさりしたもんだな」
「そう言うなよ。結構大変なんだぜ」
 ほんの少しでも力が揺らいだら、ケティさんの身体ごと粉砕しかねない強大な力だ。それを操れるように、オレはずっと昔から、国の四隅にある精霊石にオレの名を憶えさせてきた。
 毎日のようにそこに通って精霊石に自分の名を刻み込む。それはサンレイクの王位継承者の仕事のひとつだ。
 つまり、四方にある要石ってのは、オレの銘入りの精霊石なんだよね。
 もちろんそれ以外に、祖父や父の銘入りの要石も存在するんだけど。本来それは主が逝去すると共に相応の処分をするものなんだけど、それは出来ないままになっている。後でちゃんとやっておかないとなあ。

「もういいよ。協力感謝する」
 オレが囁くと同時に、俺の愛用の剣からエルフがひとり抜け出してきた。
 エルベルンが見たのは、このエルフの姿だ。
 モーラの姿となって、この剣に宿ってもらった。エルベルンがこの剣に意識を傾け、この剣の力を真っ直ぐに受け止める状況を作るために。
 モーラがこの剣に宿っているなんて、ウソっぱちだ。
「それでもまだ信じてたんだなあ。モーラが何がしかの形で生きてるって」
 自分自身の、その手で奪った命を。だからこそ、認めることができなかったんだろうけど。

「……シイナ、さま?」
「!!」
 シイナが支えるケティさんが、緩やかに目を開けていた。
「ケティ!!」
「ケティさん!!」
 目を覚ましてくれた。
 あああ、良かった。自信が無かった訳じゃないけど、ちゃんと目を覚ますまでは、実際ケティさんの魂がどうなってるのかわからなかったもんなあ。ここだけの話だけど。
「シイナ様……」
「なんだ」
 か細い声に、シイナが耳を傾ける。
「何だか……死んでしまいそうに、身体中が痛いんですけど……」
「あ、悪い」
 そういえばケティさんの身体、満身創痍なんでした。
 とりあえず、シイナが治癒の魔法を施す。そうした後で、ケティさんは本当にゆっくりと、その身体を起こしてその場に座り込んだ。
「コーラスさん……ありがとうございます」
 多分これまでのことを全て記憶として持っているであろうケティさんは、オレに向かって深々と頭を下げた。
「いや。お礼ならオレの方が山のように言いたい。キミが頑張ってくれたから、どうにかすることが出来たんだ。本当に」
 シイナの身体が奪われた時から今まで、本当に良く頑張ってくれた。

 皆がいてくれたから、今のこの瞬間がある。
 オレも、シイナも、ケティさんも。ひとりきりだったら、絶対に、どうにもできなかった。

「終わったかーあ?」
 ソルダムとディク先生が、それぞれハンターたちとエルフを引き連れてやってきた。あの光が、合図となったはずだ。
 これで終わってなかったらどうするつもりだったんだろうね。まあ遠目から見ても、わかって頂ける状況だとは思うけど。
 オレは、ふたりに向かってグッと親指を立てた。
「ご協力感謝!!」
 それだけで、そこに集った全員の顔が、笑みに変わった。
「3年は長かったけど、土壇場は一瞬だったなー」
 ソルダムまで、シイナと似た様なことを言わないでくれ。こちとら精霊石の育成、およそ20年越しなんだぞ。それこそ生まれた頃から。
 まあ、いいや。
「無事終了。さて、これからどうしようかね」
 大きな仕事を終えて、だけどそれぞれが何だか、感慨の中でやけに静かに佇む。
 理由は多分簡単。
「とりあえず、眠いな……」
 同感です。
 今ここで全員で寝転がりたい気分だけど、港組やポーラスに報告もしなきゃならないしな。もう一仕事やり終えないと。
 それにもう、夜が明ける。

 夜の闇に沈んでいたサンレイクに、太陽の光が差し込んだ。
 朝だ。

 明けない夜はないよ。今がその時だって、強く実感する。
 いつも通り、毎日、繰り返し。
 必ず闇の中に光は差す。

 それが、オレの生きるこの世界だ。





==椎名の呟き==
サンレイクの王族って、めっちゃ出歩いてるんですよ。暇があれば、精霊石のご機嫌うかがい。国土が狭かったからいいけどね。
さーて。次回、最終回となります。
彼らの20年後の姿がそこに!! なんて大嘘ですけど!!

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