オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

スポンサーサイト

--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Vol.65 コーラス・ブレイド ~家族 (最終話)

2007.03.10

 エルベルンと決着をつけてからのオレがどうなったかというと。
 これが、まったくもって、これまでと変わらない日常の連続だった。

 そりゃあまあ、ね。

 サンレイクを再建するにしたって、一朝一夕で出来る仕事でもないしね。そうなれば、やっぱり普通に働いて生活するしかない訳で、働くしかないオレは、結局ポーラスでハンター稼業を続けている。
 ソルダムが作ってくれた二段ベッドの上から、シイナに叩き落とされて目覚める毎日(下段はシイナに乗っ取られた)。特に働こうとしないシイナは、その代わりに家でのことは良くこなしてくれている。と本人は主張している。オレの仕事が忙しい時は料理も頑張ってくれる彼のおかげで、大分胃が丈夫になった。多少の破壊音も気にならなくなった。慣れって怖い。というか、いい加減お前が家事に慣れろ、シイナ。

 変わったといえば、その仕事の合間にサンレイクに通うようになったってことくらいだろう。いや、くらいとかって言うほど小さい変化でもないか。
 まるで何も残されていないサンレイクの土地を、少しずつ、元の国に戻していけるように、小さなことから始めている。
 多分オレの一生をかけたって、あの頃と同じサンレイクに戻すのは不可能だろう。
 それでも、色々な人たちの協力を得て、サンレイクも人が暮らせるくらいの環境にはなりつつある。
 ハンターギルドのウェルバーさんは、サンレイクとエンデリックを行き来できる船を、オレに用意してくれた。
 サンレイクに行くには、どうしたって船は必要だ。トップクラス魔法師であるシイナなら、その程度の距離はひとっ飛びなんだけど、前に試しに連れて飛んでもらって、死にそうになった。シイナがオレを連れて飛ぶ程度はできなくはないが、連れられるオレが超高速の移動に耐えられないという結果。オレは普通の人間であるからして。それすらフォローできるような力の使い方を研究する、みたいなはりきりを見せてくれるシイナだけど、ちょっともう、あんな思いは御免被りたい。
 にしても、ウェルバーさんの好意に甘えっぱなしなのは、やはり気が引けたのだけど、結果的に世界を救うことになった功績への礼だと、無理やり押し付けるような形で、サンレイクへの航路を確保してくれた。そうまでしてくれているのを断わる手はない。世界を救ったなんて話はピンと来ないけど、せっかくの申し出を頑なに拒むのは、かえって失礼だよな。本当に、ありがたい話だ。国交についても、これから綿密に練り直してくれるそうだし。
 サンレイクの整地に力を尽くしてくれているのはエルフたちだ。
 人間の力では何年もかかりそうな仕事を、彼らは僅かな時間でこなしてくれる。本来エルフたちがこんなケースで力を使うことなんて滅多にないらしいんだけど、サウロいわく。こういう時があるのも、悪くはないんじゃないかと。エルフが表に出て、人間と一緒に協力しながら活動する、そういう国とそういう時代があるのも、それはそれで。歴史の1ページとしては、なかなか面白いと。
 そのおかげで、土と瓦礫と伸び放題の草ばかりだったサンレイクに、高原や牧草地が増えた。そうなればそこに生態系が生まれ、人の手だって加えやすくなる。
 ミリネの趣味で、川沿いには所々花畑があったりもする。精霊石がろ過する湧き水が作る川はすこぶる水質がいいから、そこに魚も暮らし始めるだろう。今は時々アッシェがたゆたっているけど。そうだった。昔は一日釣りで潰してみたい、なんてことも考えてたっけ。サンレイク唯一の美しい川。それもきっと、すぐに昔の姿に戻る。
 そんなサンレイクに、いくつかの小さな家を建ててくれたのは、ソルダム率いる建築家チームだ。いや、建築家じゃないけど。
 ソルダムやディク先生や力の有り余っているハンターたちが、協力し合って、コツコツと作り上げてくれた。
 オレや、他の人間がサンレイクに行く用事があった時に過ごせる家。これがあるから、何日も時間のかかる仕事だってやりやすくなった。それに事実上、家があれば人が暮らすことだって出来る。ちょっとまだ、食には困るかもしれないけどね。

 そのひとつひとつの行程に、オレは少しずつ関わってはいるけど。本当に、皆がいなかったら、こんな風にはならなかった。出来なかった。


 今日も、サンレイクの草地の上に、オレは立つ。
 皆でとり戻した、多くの手が作り上げてくれた、オレの国。
 最近作り始めた畑の管理のために、シイナと一緒に出かけてきた。何だか老後の別荘生活みたいだよな。それにしてはちょっとハードだったりもするけど。

 ポーラスほどの面積しかない小さな島国だけど。何にもないこの国は、こんなにも広かったんだなあ。
 沢山の人間がひしめき合っていたあの頃は、この国がこんなにも広いことに気付かなかった。気付かないくらいに、沢山の人が、ここで暮らしていた。
 次の瞬間に死を迎えることに気付かないまま、消えていった命たち。
 この国の、人々。
 今この国に立つのは、俺とシイナのふたりきり。

 エルベルンとの決着から、2年の時が経った。
 サンレイクが焼き落とされてから5年。最初の3年は、犯人を捜すために。あとの2年は国の再建のために。これまで、ただただ目的のためだけに動き回ってきたけど。
 今、少し心に隙間を空けて、この国を眺めてみれば。
 この国で生まれて散っていった命の形が、見え隠れする。
 彼らの営み。
 そして、それを自分の代で失い、その後をオレに託した当時の王。
 彼の思い。

 大きかったな。ここにあったものは。

 ちょっと泣けてくるよなあ。そろそろ泣いてもいいかなあ。
 ずっとずっと、忘れたみたいに動き回ってきたけどさ。
 てかダメじゃん。隣にシイナいるじゃん。そんな一生話のネタにされそうなこと、できませんて。人を鬼のように言うなとか言われそうだけど。
 別にいいや。泣くのは後でも出来る。
 いつでも出来ることってのは、後回しになりがちだけど。

「なー、シイナ」
「なんだよ」
 この土地にも風が吹く。
 結界の中にあってなお、それは海の匂いのする空気を運んでくる。
「ありがとな。本当に」
 まだきちんと礼を言えるほど、キリなんてついてないのかもしれないけど、それを言ってしまったら、きっと一生キリなんてつかないだろうし。
 何事かと目を見張るシイナに向き直る。
「別に、お前だけのおかげじゃないけどさ。でも、お前と会ってなかったら、何にも始まらなかった」
 あの時、オレの剣を狙うシイナに出会ってなかったら。
 オレは多分、今も何も始められずにいた。
 そして、オレに生きる責任を与えてくれたのもお前だ。お前が、オレという小さな国で生きていくことを決めてくれたから。
 シイナはただ、静かに、愉快そうに笑う。
「礼を言うのはこっちの方だ、なんて、お決まりな台詞はあんまり言いたくないけどな。いいじゃねえか。お互い様でさ。お前がお前の人生を捧げて継いだこの国に、オレたちは迎え入れてもらったんだ」
 シイナだけでなく。
 ソルダムもディク先生も、ケティさんも。それぞれが、2年前のあの時から、自分の国籍を、サンレイクだと名乗り上げるようになっていた。
 オレの国の国民だと、彼らはそう言ってくれる。
 ミリネやサウロも、多くの時間をサンレイクで過ごしてくれている。
「天涯孤独な連中を、お前が受け入れてくれたんだろ。小さなお前の国の、最初の国民たちはさ、まるで家族みたいじゃないか。コーラス、お前の」
 シイナやケティさんだけでなく、ソルダムもディク先生も、びっくりするくらいみんな揃って、ひとりきりだった。家族を失ったり、帰れなかったりする事情の中で飄々とひとりで暮らしてきた彼らと。
 家族みたいに暮らしていいんだな。オレは。
 今は、ソルダムはエンデリックで。ディク先生はポーラス西で。ケティさんはそのディク先生の家で。時々サンレイクを訪れながらそれぞれに暮らしているみんなと、いつかここで、家族になって。
 それでそれは、いつかどんどん、増えていくのかな?

「ますます本気で王様っぽくないな、オレは」
 冗談でもなくそんな風に言ってみれば、今度はシイナ、声を立てて笑った。
「今更言うな。種まきに浮かれたり木材と格闘する王様なんて、他でそうそうお目にかかれるものじゃないっての」
 そうですよ。どうせ庶民臭い方が似合う王様ですよ。
 ひとりじゃ何も出来ない王様だけどさ。
 ひとりじゃ、王様にだってなれないんだよ。
 オレを王様にしてくれる人々が、存在しなければ。

 成り行きの名前だけの国王だよ、オレは。
 だけどオレは、みんなを支えて、みんなに支えられて、生きて行く。


 シイナが求めた、オレの剣。
 オレが生まれた時から持ち続けていた、精霊石の剣。


 シイナとの出逢いを作ったこの剣から。オレ自身の、国作りが、始まった。





==椎名の呟き==
お疲れ様でございました。
始まった時のように、実にさりげなく終りを迎えます『コーラス・ブレイド』でございます。
これまで読んでくださった方に、心からの感謝を。
少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいのですけど。ドキドキ。

でもって、次回作もよろしくご愛顧いただければ光栄至極にございますw

★『コーラス・ブレイド』最初から読みたい方はこちら★


人気ブログランキング参加中!
よろしければポチッとお願いいたします♪
人気blogランキング



テーマ : 自作連載小説

ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

椎名シイ

Author:椎名シイ
 
オリジナル&二次小説、ボカロKAITOやゲーム感想や普通の日記をとめどなく。
一部微妙に腐女子向けかも!

インフォメーション

Twitter

管理人へのメールフォーム

pixiv
pixivは二次創作腐向け小説と絵。ジャンルは雑多。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

04月 | 2017年05月 | 06月
 日  月  火  水  木  金  土
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


訪問者数
ラグナロクTV

このブログ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
ブログ全記事表示
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。