オリジナル&二次創作の小説を、まったり速度でお届け。 最近ボカロ(KAITO)にハマって大変な噂です。

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13 逢魔が時! 第一話【逢魔が時、来たる!】…13

2007.03.31

 巡が出て行ってすぐ、かぼは部屋の窓を開けて、外に身を乗り出していた。
「雨、止まんの……」
 かぼは昔から、雨に当たるのを極端なくらいに避ける。
 振り落ちてくる雨粒がその身体に当たるたびに、その内側にある温かさが失われていくような、そんな感覚があった。
 そんな雨の中、巡は出て行ってしまった。
 怒られるからついて行くことはできなかったけれど。でも一番に見えるところで待っているのなら構わないかなと。そんな風に思って、窓から外に出る。
 雨は嫌いだけど。
 少し当たるくらいなら、大丈夫だろう。
 雨に当たることよりも、巡がそこにいてくれないことの方が。
 だって巡は、かぼが目覚めたときに、最初に見つけた、真っ直ぐな瞳だから。かぼに名前をつけてくれたり、何も言わなくても黒猫を家に連れ帰ってくれたり。かぼに世話を押し付けるのは、これからも、かぼが巡の家で暮らしていいって、そう言ってくれているのだ。とても、優しい子なのだ。
 だから早く巡を見つけられるように、雨の当たる玄関先に、かぼは座り込んだ。
 それでもやっぱり雨は冷たくて。
 流れ落ちる水と一緒に、自分の中の何かもこぼれ落ちていくようで。

 早く巡を見つけようとする意志と裏腹に、かぼの瞼はゆっくりと、閉じていった。


 天笠和菓子店は、巡の家の近所ではあるけれど、それでも数百メートルは離れている。家を出てからむっつりと歩いて雨に濡れてしまった道を、巡は今度は走って帰った。
 あの時、結局買ってやらなかったシュークリーム。これを見たら、かぼは喜ぶだろうか。知ってはいても、食べたことのないような素振りではあったし。そしてかぼが喜んだとしたら、やっぱり自分も嬉しかったりするんだろうか。それはどうだかわからないけれど、今、巡はかぼの喜ぶことをしようとしている。
 喜ばせたいと思った訳ではないけれど、喜ぶだろうな、とは考えた。
 そしたらまた上機嫌で、魔物のウンチク語りなんて始めるだろうか。そうすれば、巡はもっとかぼやあの黒猫のことを知ることが出来る。それは、悪くない。
 巡は、その勢いのまま、家の小さな門に駆け込んだ。
 その足が、止まる。

 かぼが、いた。

 門から少しだけ離れた玄関先で、うつ伏せになって倒れていた。
「……かぼ?」
 返事はない。
 雨の中、雨の中なのに、かぼはその場にうつ伏せになったまま、ピクリとも動かなかった。
 身体に当たる雨のしずくが、何の抵抗もなしに流れ落ちる。まるで石の上でも滑り落ちるように。
 こんな光景を、巡は以前にも目にしたことがある。
 あれは確か、車にひかれて道路で死んでいた、小さな猫だ。
 硬くなった身体の上を、冷たい水がただただ流れていたあの光景。

 かぼは、何と言っていた?
 雨は嫌いだと、言っていなかったか。

 ――そいつは水に当たっただけで消えてしまう。

 かぼのあの時の声が、今聞こえた。
 そんな物の怪がかぼのことではないと、誰も、言っていない。

 動かないかぼを見つめたまま、巡は手に持っていたシュークリームの袋を、バサリと取り落とした。
 なんだよ。
「なんだよ……」
 なんで、雨の中待ってたりするんだよ。
 命を懸けてまでやらなきゃいけないようなことじゃないだろう!?
 雨に当たるだけで死んでしまうような身体だったら、それを本人が知らないはずがない。でももし、もし、知らなかったら? ただ本能で嫌っていたのが、実は命に関わることだからだって、本人が知らないことだって、あるかもしれない。
 だけど、嫌いだって言ってたのに。
 嫌いだけど、それでも巡を待つために、こんなところで、ずっと。
 だけど死んでしまったら、何の意味もないのに!

「ばっかじゃないのか、お前!!」

 雨の中、立ち尽くしたまま。
 巡は動かないかぼに向かって叫んだ。
 悪態をついても文句のひとつも返ってこないことが、こんなにも胸に衝撃を与えるなんて。喧嘩なんかしたって。文句を言い合ってたって良かったのだ。
 こんな風に、動かなくなるより、ずっと、ずっと良かった。
 どうして、もっと前に気付けなかったのか。
 失くすのはあっという間だって、さっき聞いたばかりだ。もっと前に聞いていたら。でももっと前に聞いていたとしたって、きっとその時の自分には、やっぱりわからなかっただろう。
 絶対に戻ってこないものなんて、この世界にはいくらだって、あるのだ。


 この時。
 この、一見普通の少女と変わらない、陽気な物の怪との出会いと、別れが。
 巡のこれからの人生を、大きく変えることになる――。










 ――なんて訳はなくて。
「……しゅーくりーむ!!!!」
 ガバリと、少女が頭を持ち上げた。
「!!!!!!!!」
 巡、唖然。
「しゅ、しゅーくりーむがあ、水溜りにいいい!!」
 うつ伏せになったまま顔だけ上げたかぼは、まるで脂ぎった黒い羽と長い触角を持つアレのごとくに、カサカサとほふく前進でシュークリームの袋に這い寄った。
「もったいないじゃないか! このかぐわしき匂い、これはしゅーくりーむだろう!?」

 ……なんだ。何が起こった。

「お、お……」
「お?」
「お前、死んでたんじゃないのかよ!?」
 巡の叫びにポカンとしたかぼは、さすがに仰天の表情を作った。この少女には珍しい現象。
「何を言うか、失礼な!!」
「だって!!」
 頭の中を巡った様々なことを、取りとめもなくわめき散らす巡に、かぼはますます目を見開いた。
「メグ……ぬし、案外慌て者だの」
「なんだよ……」
 バツの悪そうな巡に、かぼは這いずった格好のまま、呆れたようなため息をつく。
「生きるか死ぬかの問題だったら『好き嫌い』で済むわけがなかろうよ」
 それはそうだが、巡は、かぼが無自覚なんじゃないかとまで考えたのだ。難しく考えすぎだと言われたとしても、雨の中倒れられていたら、誰だって驚く。
「それになあ、わちら物の怪は、魂が消えれば身体も残らんよ」
「そんなことを知ってるわけがないだろ!!」
 そりゃそうかと、かぼはナハナハと笑う。
「思いついたときに、話してやるぞ。わちらの色々なことはな」
 一度に全てを話すには、情報量が大きすぎるのだ。
 しかしそうか、とかぼはニヤつく。かぼが死んだら、巡は慌てるか、と。そう考えたら、自然と笑みがこぼれてしまうかぼだ。まだ、嫌われているわけじゃなかったと。
「ていうか」
 巡は一度、大きく息を吸った。
「大体なんでこんなところで倒れてるんだ、お前は!!」
 もっともな意見だ。
「あー……わち、雨は嫌いだからの。当たっているうちに、ついつい眠気がきてしまったのだ」
 巡には意味がわからない。
「それも追々な」
 かぼが雨の中で眠気を来たしてしまったのは、完全な逃避の表れだ。彼女が何かから逃避するには、眠るのが一番良いのを、かぼの本能は一番良く知っている。
 そして、彼女が雨を嫌うのも、ちゃんと理由があってのことなのだが。
 それもいつか、話す時もあるだろう。
「そのうち話してやるから、まずはこれを食べていいかの」
 ずっと抱えているシュークリームの袋を、かぼはきらめく眼差しで見つめる。
「その前に風呂に入れ」
 かぼの首根っこを捕まえて起き上がらせると、巡はその手からシュークリームを奪い取った。しかし果たしてこのシュークリームは、まだ食べられるのだろうか。
「メグのケチんぼ!!」
 その言葉も何度聞いたことか。
 何と言われても、こんな濡れ鼠のまま菓子を食うことを優先させるのは許さない。

 ケチと罵られても――生きてて、良かった。

 正確には、彼ら魔物は生きてはないらしいけど。
 動いてしゃべっているのだから、それはそれで良しとしよう。

 手足をバタつかせて抗議するかぼを引きずって、巡は雨の当たらない家の中へ入って行った。

 二人が住む、雨の届かない場所へ。





==椎名の呟き==
一応、この回で第一話終了となります。
最近更新少なくなっててごめんなさいでした。
出来るだけ多く更新できるように、頑張りますからね!!
しっかし、目指すハートフルにはあまりに遠い。案外難しいものですよね~。もっときちんと話を練って、丁寧に構築しないと。むむ、要精進。
第二話からは、もっと登場人物も増えると思いますので、またご覧になってやってください!

★『逢魔が時!』最初から読みたい方はこちら★


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